1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:12:52 ID:go+ET+zy0
ちなつ「…zzz」

ちなつ「…zzz」

ちなつ「…!」

ちなつ「……」

ちなつ「またか……」

ちなつ「やっぱりまただめだった……」

ちなつ「もう時間もないし……」

関連作品
京子「夢日記?」

003
3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:17:32 ID:go+ET+zy0
――1/1

京子「そういえば、初夢みんなみたー?」

あかり「みたよー、みんなでごらく部の活動してたよぉ~!」

京子「おいおい、初夢の無駄使いだな。あかりらしいよ……」

あかり「あかりらしいってなんかひどい…」

京子「結衣は?」

結衣「見なかった」

京子「まじかよ!もったいねえ!」

結衣「まあ、嫌な夢見るよりはましだろ」

京子「リアリストだな」

京子「で、ちなちゅは?」

ちなつ「ちなちゅいうな!」

ちなつ「……わたしは……」

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:20:54 ID:go+ET+zy0
ちなつ「私も、あかりちゃんと似たような感じかな……?」

結衣「?」

京子「そうか~、ちなちゅなら許す!」

あかり「えぇ~なんで~!?」

結衣「何を許すんだよ」

京子「つまらない夢を見た人はジュースおごりな!」

結衣「おい!」

あかり「うぅ~……」

結衣「で、お前はなに見たんだ?」

京子「ふふふ…私はですな……」

京子「池で人魚と友達になった夢です!」

結衣「なんだそれ」

ちなつ「京子先輩らしいです」

結衣「あと、おごりはナシだからな」

京子「ちぇ~っ」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:22:36 ID:go+ET+zy0
――ちなつの部屋

ちなつ「……嫌な夢だったな……」

ちなつ「でも、言えるはずないじゃん」

ちなつ「一言で言うにはとんでもなく長かったし」

ちなつ「それに……」

ちなつ「京子先輩が死ぬ夢だなんて……」

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:26:30 ID:go+ET+zy0
ちなつの見た夢は、夢とは思えないほどに、
異様に長いものだった。

正月の朝、彼女はどちらが現実か、分からなくなってしまったほどに。

ごらく部で集まったファストフード店にて、
京子の顔を見て安心するとともに、
それが「初夢」であったことが気がかりだった。

夢の舞台であった7月に、本当に何か悪いことが起こるのではないかと、
ちなつは酷く心配になっていた。

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:29:56 ID:go+ET+zy0
予定してたあらすじ書いて寝ます 
なんかもう死のう


ちなつは延々と、同じ夢を繰り返してみる。
その夢は、京子が夢日記をつけはじめるとともに、
少しずつ京子の見る夢の内容が悪い方へと向かい、
死ぬ夢を見た次の日、風呂場で死んでいるところを発見された、
というものだった。

体感でも現実と時間のはやさのかわらない、一週間もの長い夢。

ちなつは夢の中だとはいえ、不吉な気持ちがあり、
なんとか京子を救えないものかと苦心した。

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:33:49 ID:go+ET+zy0
しかし、ちなつの試みは全て失敗に終わる。
初夢では、京子が変な夢を見た、とごらく部に報告してきた時、
その夢の内容を忘れてしまっているので、ちなつは「夢日記」を薦めた。

しかし、夢日記を進めることで、悪くなっていったこともあり、
二回目は夢日記を薦めないでみた。
するとどうだろう、京子は夢など関係なしに、結局7日目、交通事故で死んでしまったのだった。

ちなつは悲惨な死に方にショックを受け、三度目からは、夢日記を勧めることにしたのだった。

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:38:44 ID:go+ET+zy0
「夢日記」を薦めずとも、京子は死んでしまうとなると、
「夢日記」を薦めたうえで、解決法を見出さねばならないのではないか、と、ちなつは思った。

それに、「夢日記」の内容の意味深さに、何か謎が隠されているのではないか、と感じ、
なんとかその謎を見つけようと苦心した。

何度も繰り返しているうちに、気づいたことがあった。

一日目から、四日目までに見る夢は、全て、繰り返すたびに変化していた。
一日目は京子が忘れてしまっていることだけ共通し、
二日目は、あまりにも掴みどころのない、ナンセンスな夢、ということだけ共通していた。
三日目は軽い悪夢であり、
四日目は、死に関係する夢であった。
内容はころころと切り替わり、ちなつは、それらの夢に本質はないのだと考えた。

15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:42:04 ID:go+ET+zy0
しかし、五日目は、全て、「溺れ死ぬ」ということが一致していた。
ある時は、「嵐に巻き込まれて溺れ死」に、ある時は「池に引きずりこまれて溺れ死」んだ。
ちなつは、京子が最終日に、「風呂場で溺れ死ぬ」ことと、何か関係あるのではないかと思った。

そして六日目の夢からは、ほとんど変化がなかった。
その内容はこうだ。

「7/6

雨が降ってて、夜の暗い湖が目の前にあった。
覗きこんだら鏡みたいで、私の顔が映ってた。
すごく綺麗で、しずかで、ずっといたいと思った。
ずっといたいと思ったからか、すごく長い時間いたような気がする。」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:44:30 ID:go+ET+zy0
そしてこの日記を書いた日の夜、京子は溺れ死んでしまう。
そして結衣が発狂直前になり、夢の中の時間が、細かくちぎれ始める。
結衣の発狂や、京子の葬式などが、走馬灯のようにさーっと過ぎ去った後、ちなつは目を覚ますのであった。

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:49:04 ID:go+ET+zy0
ちなつは、様々な方法を尽くした。夢日記を事細かに記し、
それを検証しながら様々なことを考え、実行した。だがしかし、良い方へは向かわなかった。
最終日、風呂にはいるな、というと、交通事故で死んでしまう。死は免れられない。その決まりだけは崩せなかった。
ちなつはやはり、京子の夢日記に謎があると思った。
だが、いくら考えても、最終日の夢の意味深さが解けなかった。

ちなつはその間、夢にばかり気をとられ、現実の世界では廃人のように、投げやりに行動した。
ちなつにとっては、むしろ夢のほうが現実で、一週間の後にくる、
たった一日の休憩期間のように、現実を過ごしていたのだった。

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:52:21 ID:go+ET+zy0
それで、ちなつは最終日の夢を必死に考えた。
夢の繰り返しの間に、結衣にこう忠告することを、決まりにしていた。
効果はなかったが、おまじないのようなものだった。

それは、

「京子先輩は死ぬんだって、実はわかってたんです」

「でも、もう防げないんです」

そして、

「でもまだ、これで終わりではないんです」

と。

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 20:56:36 ID:go+ET+zy0
とはいえ、2月に入った頃には、既に進展がほとんどと言っていいほどなかった。
その間に30週間、つまり7ヶ月。それに現実の1ヶ月を加え、体感では8ヶ月もの時間が過ぎており、ちなつはくたびれていた。
ただ無意味にループを繰り返すことに、うんざりして、夢日記を書く気力さえ、もうちなつには残っていなかった。

そして、夢の中の一週間を、現実のように、のんびりと暮らすことにした。
京子を救うことは後回しに、普段通り楽しく過ごすのだと思った。
そう考えて暮らせば、それほど暮らしにくいものではなかった。
そんな風にして、現実世界は4月に突入した。ちなつの体感では、既に二年間が過ぎていた。

22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:00:13 ID:go+ET+zy0
しかし、その頃になってようやく、少し進展があることに気がついたのだった。
それは、いままではほぼ無視していた、京子が死んでから、ちぎれたようになる記憶の部分だった。

その部分が、夢ごとにところどころ鮮明になって、ちなつの記憶に焼き付いた。

結衣がどんな風に発狂していたのかも、少しずつ明らかになり、
その後結衣が落ち着いていく経過なども、少しずつわかってきた。

見ることのできる期間が少しずつ伸び、
現実世界が6月になったころ、ようやく進展があったのだった。

23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:02:27 ID:go+ET+zy0
ちなつの見るちぎれたようになった夢の世界の中に、
結衣の姿があった。

京子の死からたちなおり、
京子のつけていた日記に、何かを書いていたのだった。

一度だけでは分からなかったが、その後何度も繰り返すうちに、
何を書いているのかも、明らかになった。

7/8

京子が死んだ夜、救急車を呼んで、午前5:00、疲れ果てた私は、病院で寝た。
その時に見た夢が、このノートの続きのようだと思うので、半分は京子のものとして、ここに代筆しておく。

京子が書いているとおり、夜の暗い湖が目の前にあって、とても美しく、静かだった。雨は降っていなかった。
私が覗きこむと、京子が映っていた。京子、京子、私は涙を流し、手を伸ばそうとした。
京子も私と同じように、手を伸ばしていた。それは鏡のようだった。
しかし、突然京子が消え、いつの間にか私が映っていた。
冷たい湖が手に触れ、私は悲しかった。

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:07:31 ID:go+ET+zy0
ちなつは怪しんだ。何かがないかと探った。
結衣が京子の夢を見ている。7/6に京子が見たのとそっくりの夢だ。
違うのは、誰が映っているか。結衣の見たのは、京子の姿である。

話は飛んで、6月29日

ちなつにも、ついに、京子らの見たのと同じ、その湖の映像が飛び込んできた。
最終日が終わった後、ふいにその湖の夢に迷い込んでしまったようだった。
湖に近づくと、そこには私の顔が映っていた。

そして、次のループでも、また迷い込んだ。

湖を覗きこむと、しかし、そこには、誰の顔も映っていない。

次のループで迷い込んだ時には、
京子の顔が見えた。手を伸ばそうとすると、消えてしまった。

そしてちなつが目をさますと、現実世界は7月を迎えていた。

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:11:16 ID:go+ET+zy0
ちなつが予感していたとおり、現実にも同じ事が起こった。
7/1に、京子は変な夢を見たといった。ちなつちゃんが出てたが、あまり覚えていないといった。
ちなつは今までと同じように、「夢日記」の話をした。もちろん、不安は募っていた。
そしてその夜、ちなつは今年はじめて、夢のない夜を迎えたのだった。

そして夢をなぞる。
京子は結局溺死してしまった。そして、結衣が狂ってしまった。

何もできないまま、時間が過ぎた。
夜にも、ちなつはもう夢を見なかった。

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:13:19 ID:go+ET+zy0
そして迎えた葬式、ちなつは諦めており、涙ももう流れなかったが、
焼香をしている時に、ふと号泣してしまう。
そして、何もできなかった自分がとてつもなく悔しくなってくる。

葬式が終わると、やけくそ半分に、ちなつは「おまじない」をしたのだった。

「京子先輩は死ぬんだって、実はわかってたんです」
「でも、もう防げないんです」

そして、「実はまだ、これで終わりではないです」

と。

ちなつはしかし、もうおしまいだと思った。

もう京子先輩は死んだ。

夢のなかじゃない、現実に、死んだのだと。

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:16:24 ID:go+ET+zy0
しかし、ちなつはその夜夢を見たのだ。

湖の夢。しかし、目の前に結衣がいた。

現実の結衣は、少しずつ発狂をあらわしていた。

空間に話しかけ、鞄からは、いつも溶けたラムレーズンアイスを垂らしていた。

しかし、夢のなかでは普段の結衣だった。

少し怯え、「ちなつちゃん、ここどこだろう」と。

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:19:43 ID:go+ET+zy0
ちなつは、はっと気づいた。

「結衣先輩、湖、湖です」

結衣は湖を覗いた。

「あれ、何も映ってない」

ちなつは言った。

「何言ってるんですか、良く見てみてください」

結衣が目を凝らすと、京子の顔があらわれた。

京子、京子、と、結衣は涙を流しながら、水面に手を伸ばした。
水面の京子も結衣と同じように、手を伸ばした。
しかし、突然京子が消えた。
結衣は空っぽの水面に手を触れ、その冷たさに手を引いた。
恐怖に顔をひきつらせて、ちなつの方を一瞥すると、結衣は消えてしまった。

33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:24:30 ID:go+ET+zy0
しかしちなつは、わかっていた。この夢には続きがある。

そして、京子先輩は死んでいないのだ、と。

夢の中の7/5、京子がその存在を隠した悪夢、その内容を、あるループで問いただし、聞かせてもらった。

京子は、「死んだ後も、しばらく夢の世界で意識を持っていた」と言った。


夢の世界の本人が死んでも、その本人は夢の外にいるのだから、
感覚は共有しているが、存在は共有していない。

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:29:09 ID:go+ET+zy0
「夢の中で死んでも、現実の本人は死なない」こと、

そして、

「夢の中の自分は、自分ではない」

という、当たり前のことだった。

ちなつは池の中に飛び込んだ。

「私は虚構の存在だから、私が死ねば、私が生き返るだろう。
そして、私の夢のなかで、京子先輩は何度も死んだ。
私の夢のなかで、京子先輩が何度も死んだ分、
私のなかで、京子先輩は何度も生きたじゃないか。
そして、この私は虚構なのだ。
私が死ねば、本当の私が生き、本当の私の中で、京子先輩が死ぬ。
そうなれば、あと一歩なのだ。」

夢の中のちなつは、そう思いながら、池の中を沈んでいった。
この夢だけは、忘れてはならないと思いながら、ちなつは死に、
そして朝、目を覚ました。

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:32:43 ID:go+ET+zy0
ちなつは忘れないよう、「夢日記」にその夢の内容をメモした。

夢のなかの私が死に、私を生き返した。

私が死に、京子先輩を生き返そう。

夢の中と、現実の生死は裏返しになっている。

現実で死んだものは夢のなかで生き、

夢のなかで死んだものは現実で生きる。

そして、1/1以降、私の中で夢が現実になっていた。

現実が夢になっていた。

そして、現実の7/1は、夢の7/1になっていた。

私は他の全ての人の現実を、夢として生きていた。

他の全ての人と、私の生死は、1/1以降、裏返ったままだったのだ。

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:34:00 ID:go+ET+zy0
私は、きちんと戻さないといけない。
私は死に、生きなくてはならないのだ。


私は首を吊ることにした。
ロープを首にかけ、頸動脈を圧迫し、意識を失った。

痛みのない死。

そして、

私は死に、

京子先輩が生き返った。

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/06/01 21:37:58 ID:go+ET+zy0
そうだ。

京子先輩が死んでいたんじゃない。

1月1日にあの夢を見た時、すでに私が死んでいたんだ。

なんだ、簡単なことじゃないか


痛みのないまま、私は死んだ。

体の筋肉が硬直していくのがわかり、

それが柔らかくなったあと、冷たくなった。

さて、どこにいこうか。


終わり


ちなつ「夢日記?」
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1370085172/)