3: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:32:35.43 ID:px5GbtGY0
1月。

迎春とはよく言ったもので、コタツは未だに仕舞えないでいる。

いっそとっとと暖かくなれば良いのに、なんてことを考えつつも、俺はコタツに足を突っ込み、みかんを口に入れながら目の前に居る奴へと顔を向けた。

京介「で、今回はなんだ? 改まって「人生相談がある」とか言うから結構身構えてるんだけどよ」

桐乃「うん……。 それなんだケド」

それだけ言うと、桐乃は言い辛そうに押し黙る。 なんだ、そんなに言いにくいことなのか?

その相談を受ける俺としては、あまり好ましくは無い展開だよな? これって。

でもまあ、すごくさらっととんでもないことを言われるよりかはマシっちゃマシだが。

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002
5: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:33:51.64 ID:px5GbtGY0
もう少しあれだ。 軽い雰囲気で受けたい物だ。

京介「黙ってちゃ答えようがねえぞ。 今更……って言ったらあれだけどよ。 そんな言い辛いことなのか? 俺に」

桐乃「……うん。 よし。 分かった」

俺が急かすとすぐに桐乃はそう答えた。 そして、ゆっくりとその人生相談を始める。

桐乃「実は、友達が旅行に行くって言ってるのね」

京介「あやせとか加奈子とかか? てか、こんな時期に? へえ」

正月……と言うにはもうとっくに過ぎてるしな。

しかし、それがどう人生相談に絡んでくるのだろうか。 俺の乏しい想像力では予想が付かないぜ。

6: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:34:53.13 ID:px5GbtGY0
桐乃「ううん。 違う友達。 てゆうか、あんたあたしの友達があやせと加奈子しかいないと思ってない?」

京介「いや……そういう訳じゃねえけどさ」

桐乃「ならいいケド」

京介「……おう」

桐乃「暮れとかお正月に行くなら分かるケドさ~。 もう学校も始まってるってのに、何でだろうね?」

京介「さあ? そりゃあ、その友達の家にも事情があるんじゃねえの?」

桐乃「かな?」

京介「うむ」

7: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:35:19.65 ID:px5GbtGY0
桐乃「……」

京介「……」

いやいや、続きを話せよ! もしかして今ので全てだったとか!? だとするとなんだ。 一体これはどんな人生相談なんだ。

あり得ない可能性だが、これって全く関係ない話だったりするのか……?

京介「おーい?」

桐乃「あ、えと……」

ふむ。 こいつにしては、やけにおどおどしてんな。

8: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:35:50.79 ID:px5GbtGY0
桐乃「さ、最近さ。 学校また始まったじゃん?」

京介「ああ、始まったな」

桐乃「そ、それで……あ、さっきの友達の話は関係無いからね」

関係ねえのかよ! てっきりそれが絡んでくると思ったのに関係ねえのかよ! 今までの会話は一体何だったんだ!?

京介「……それで?」

俺が聞くと、桐乃は少し困ったような顔になり、次いで怒ったような顔になり、口を開く。

9: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:36:22.18 ID:px5GbtGY0
桐乃「なんであんた怒ってんの?」

……俺が!? 俺がいつ怒ったんだ!? はは。 なんか笑えてきたぞ。

京介「いや別に怒ってはいないけど……」

桐乃「だって、なんか聞き方怖くない? 少しは黙って聞くことができないワケ?」

待て、待て京介。 落ち着け。 ここはあれだ、耐える場面だ。 そうに違いない。

京介「す、すいませんでしたね桐乃さん……続きをどうぞ」

桐乃「どうぞ。 じゃないでしょ? 頼み方としたらぁ……続きをお願いしますってのがフツーじゃん?」

10: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:37:33.02 ID:px5GbtGY0
京介「……う、ぐぐ」

こ、このヤロー……。 好き放題言いやがって!

俺はお前が相談があるっつうからここでこうして向かい合っているんだぞ!?

まぁ、相談が無かったとしてもお前のことは見てたと思うがそれは今どうでも良い!

桐乃「ほら、早く言わないと話すのやめちゃおっかなぁ」

なんで俺が下の立場になっているのか物凄く気になる。 だけど、なんか変だな。

……こいつ、なんか話を逸らそうとしてないか?

桐乃「どしたの? 変な顔して。 あ、元々かぁ! ひひ」

11: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:38:02.43 ID:px5GbtGY0
正直言ってすげえうざいぞ。 いくら可愛くてもうざい物はうざい!

だけど、それすら補って余りあるほど可愛い。

いやそうじゃねえ! 今は桐乃が可愛いとかそういう話じゃねえんだった! なんて奴だ。 魔女みたいな女だぜ……。

京介「んーっと、桐乃」

咳払いをしたあと、続ける。

京介「桐乃。 お前……なんか話逸らしてるか?」

12: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:38:38.13 ID:px5GbtGY0
俺がそう聞くと、桐乃は今の今までべらべらと喋っていたというのに、急に黙る。 そっぽを向いて、聞こえなかった振りをしている様だ。

うむ、なんていうかあれだ。

分かりやすっ!

それよりこいつ……すっげえ演技が下手だな。 俺も人のことは言えないかもしれんが、それでもこいつは酷い。

京介「おい?」

桐乃「な、なに? なんか用?」

京介「用があったのはそっちだろ! 人生相談、するんじゃなかったのかよ?」

13: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:39:04.14 ID:px5GbtGY0
桐乃「う……」

桐乃「……分かった。 話す」

やーっと話す気になったか。 つか、ここまで話すのを躊躇っているとなると、内容はぶっちゃけ聞きたく無いんだが。

もしこれで「京介、実は子供が出来たの」とか言ったらどうしよう。 いや、そもそもそういうことはしていない訳だから出来る筈も無いけどさ。

ま、例えってことで。

桐乃「えとね、実は」

桐乃は一呼吸し、口を開く。

桐乃「子供が」

14: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:39:58.49 ID:px5GbtGY0
京介「すとおおおおおっっっぷ!!! 待て!! ちょっと一旦待て!!!」

桐乃「な、なに? あんたが話せって言ったんじゃん!!」

京介「それはそうだけど、ちょっと待ってくれ! 俺にも考える時間が欲しいんだよ!」

必死に訴えると、桐乃はしかめっ面になりながらも口を閉じる。

ふう。

よし、よし……一旦落ち着け、俺。

15: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:41:13.73 ID:px5GbtGY0
まず、何かの聞き間違いの可能性は……無いな。 はっきり聞こえてしまったし。

でも、俺は断じてその……あれだ。 こ、子供が出来るような行為はやっていないはずだ。 あるとしたら……。

あれか? 酒を飲んで二人して酔っ払ってたときか!?

いやでも桐乃は「それはないと思う」って言ってたし……。

だからと言って、絶対に100%無かったとは言えんよな。 けどまさかなぁ!

……一応、その先のことを考えてみるか。

16: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:42:13.37 ID:px5GbtGY0
もし、もしもだぞ? 桐乃にその……子供が出来てたとして。

そ、それはもう大変なことになってしまうぞ。 てか、何の知識も無い俺たちがしっかり育てられるのかどうか……だよな。

それもそうだが、なんつうか。

俺は自分の意思の弱さが嫌になってしまいそうだ。 絶対にしっかりとするまで手は出さないと決めていたというのに、な。

だが、そうなってしまったら後戻りは出来やしない。 俺が今するべきことは、桐乃の話を聞くことだ。 それで、考えよう。 桐乃と一緒に。

17: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:42:39.71 ID:px5GbtGY0
京介「……よし。 良いぞ」

桐乃「なが。 折角話そうかと思ったってのに」

京介「わ、悪い。 ちょっと驚いちゃってな」

桐乃「まだ何も話してないのにどこに驚く要素があるっての……ま、良いケド」

いやいや、さっきの単語だけで十分じゃねえか。 ほんと、息が止まるってのを経験しちまったからな。

桐乃「でね。 最近学校帰りに寄り道してるのね」

18: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:43:22.06 ID:px5GbtGY0
京介「……病院にか?」

桐乃「……病院? あー。 それはまだ。 元気良さそうだし」

京介「え? それってもう分かる物なのか? いや、つうか病院はさすがに行った方が良いだろ」

桐乃「分かる物って。 あんた何言ってんの? そんなの見れば分かるっしょ」

言われ、桐乃のことを凝視。

京介「確かにお前は元気だけどよ」

19: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:44:43.27 ID:px5GbtGY0
桐乃「なんであたしになるッ!? あたしじゃなくて、猫だっての!」

……猫? 猫ってあれだよな。 動物の猫、だよな?

ん……? あれ、ちょっと待てよ。 なんか会話が噛み合っていない気がしてきた。

京介「……えっと、じゃあさっきの子供ってのは?」

桐乃「はぁ? そんなの子供の猫に決まってるでしょ。 子猫」

京介「か、かあああぁああああぁ……」

そ、そういうことかよ!! 人をびびらせるんじゃねえよこの野郎!!

20: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:45:11.39 ID:px5GbtGY0
京介「つまりはあれだよな? 桐乃に子供が出来たとか、そういう話では無いんだよな?」

桐乃「あたしに子供……?」

桐乃「は、はぁ!? そんなワケ無いでしょ!! だ、だってしてないんだし!!」

京介「そうだけどお前が紛らわしい言い方するからじゃねえかよ!! 最初から子猫って言っとけや!!」

桐乃「あんたが勝手に勘違いしたんじゃない! あたしはヘンなことなんて一つも言ってないっての!」

京介「普通は勘違いするっての! お前の言い方は毎回毎回紛らわしいんだよ!」

桐乃「そっちが変態だからそうゆう勘違いするんじゃないの!? あたしの所為にしないで、変態」

21: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:46:27.35 ID:px5GbtGY0
京介「ほ、ほう……」

桐乃「……なによ?」

京介「……覚えてるか。 一昨日のこと」

桐乃「一昨日? なんかあったっけ?」

京介「俺が風呂入ってるときのことだよ。 一緒に入ったろ?」

桐乃「だから、それがなに?」

京介「最初に入ってたのは俺だったよな? で、お前が後から入ってきたんだよな」

22: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:47:24.85 ID:px5GbtGY0
京介「あ、京介入ってたの? でも今から服また着るのは面倒だし~。 あたしも入る」

京介「と、お前は言ったな?」

桐乃「……言ったケド」

京介「今だから言うけど、あれは俺と入りたかったから敢えてそのタイミングで来たってことに俺は気づいてるからな」

俺が告げると、桐乃は飲んでいた麦茶を吹きそうになる。 その後それを慌てて飲み込み、咽る。

桐乃「ちょ、そんなワケないじゃん! あれは偶然だっての!」

23: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:48:00.17 ID:px5GbtGY0
京介「ど、こ、が、だ、よ! お前の方がよっぽど変態じゃねえか! この変態!」

桐乃「あたしはそんなんじゃなーい!! ぶ、ぶっ飛ばす!」

桐乃は言い、コタツから身を乗り出し俺に掴みかかってきた。 いつも言われっぱなしの分、言ったら案外すっきりしたな。 はは。

京介「はっはっは! どうだ! 俺よりお前の方がやべえんだよ!!」

桐乃「うっさい! 黙れ!」

桐乃は俺の服を掴んだまま、力任せに体をぶんぶんと振り回す。 こんなのは今となっちゃ可愛い物だぜ。

24: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:48:57.48 ID:px5GbtGY0
桐乃「こ、この……!」

俺がへらへらと笑っているのが気に食わなかったのか、桐乃は他の攻撃手段に移るべく、辺りを見回し……止まった。

桐乃「ひひ。 京介、あんたはそうゆうケドぉ」

桐乃「この前、あたしが料理してる時にあんた何してたっけ? ふひ」

京介「お、お前……それは」

桐乃「わざとらしく飲み物取りに台所に来てさ~。 あたしが制服なのを良いことに、覗こうとしてたっしょ?」

い、言うんじゃねえ! あれは俺の中ではもう既に無かったことになってんだからよぉ!

25: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:49:30.08 ID:px5GbtGY0
京介「は、はは……なんのことだか」

桐乃「はぁ!? しらばっくれる気!? マジ、妹が真剣に料理してるところでパンツ見ようとするとか、あり得ないんですケドぉ」

京介「あれはノーカンだ! 魔が差したっつうか……ついついというか……だから無し!!」

桐乃「無しになるワケあるかッ!」

それからしばらく言い合い。 こんな感じのお互いの恥ずかしい話がその後、数十分は続いた。

26: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:49:56.33 ID:px5GbtGY0
京介「……えーっと」

桐乃「……な、なに?」

俺も桐乃も顔を赤くしていて、お互いに視線を合わせようとはしない。 無理もないが。

京介「な、なんの話だったっけ。 最初」

桐乃「あんたが話を逸らすからでしょ! あたしは最初からちゃんと言おうとしてたってのに」

どこがだよ! お前がいっちばん最初に話を逸らしたんじゃねえか!

27: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:50:54.86 ID:px5GbtGY0
京介「……悪かったって。 で、子猫がどうとか言ってたけど」

桐乃「あ。 そだったそだった」

桐乃は怒りをあらわにした表情から一変。 いつも通りの表情に戻ると、話を続ける。

桐乃「あたしが学校の帰りに寄り道してるところまでは話したよね? で、その場所なんだケド」

桐乃「その、子猫のところなの。 捨て猫っぽくてさ……」

……あー。 つまりはこいつ、猫の世話かなんかを毎日してるということか。 学校帰りに。

28: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:51:22.26 ID:px5GbtGY0
京介「……で、それが今回の人生相談か?」

桐乃「まぁ……そうゆうこと。 あの猫さ」

桐乃「あたしたちで、飼えないかな?」

なるほど。 そう来たか。

俺もそれは出来ることならそうしたいが……。

京介「……猫の世話とか、育て方とか、分からないだろ?」

桐乃「調べるから! しっかりちゃんとやるから!」

29: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:51:49.76 ID:px5GbtGY0
京介「確かにこのアパートはペット大丈夫だけどよ、それでも金が掛かるだろ? 病院とかにも連れて行かないといけないと思うし」

桐乃「そりゃそうだケド……」

京介「今、結構自分たちのことで精一杯って部分もあるだろ? そんな状況でそれは、俺としては反対だ」

桐乃「……」

俺の言葉を聞き、桐乃は俯き、唇を固く結ぶ。

京介「何より、俺は……」

30: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:52:22.99 ID:px5GbtGY0
それを言おうとし、止めた。

エロゲーやらフィギュアやらじゃないんだ。 それには、命がある。

そして、それは俺や桐乃よりも……寿命は短い。

俺はそのことを口に出そうとしたのだが。

……今言うことでもねえな、これは。

桐乃「……分かった」

桐乃も大体の意味を悟ったのか、ようやくそれだけ口に出す。

31: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:52:48.63 ID:px5GbtGY0
そして、そんな妹に向けて、俺は話を続ける。

京介「飼うのは反対だ。 だけど、飼い主が見つかるまでってなら、反対はしない」

俺が仮に桐乃の立場だったとして、多分……同じことを言っていただろう。 今の桐乃の様に。

そして多分、桐乃が俺の立場だったら今の俺のように返すのだろう。 それが俺たちにとっても、その子猫にとっても、良いことなのだろうから。

桐乃「ほ、ほんと……?」

32: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:53:16.85 ID:px5GbtGY0
京介「こんなことで嘘は吐かない。 本当だ」

桐乃「やった! えへへ」

京介「だけど、しっかり飼い主を探すこと。 それが最低条件だぜ」

桐乃「うん。 おっけ!」

やれやれ。 俺って奴は、妹にとことん甘い兄貴だよ。

33: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:53:42.49 ID:px5GbtGY0
桐乃「ふひひ。 ひひ」

そう決まってからすぐに桐乃はその場所へと猫を取りに行き、今はその猫を連れて帰ってきている。

そろそろ寝る時間なのだが、桐乃はその猫に構い続けていて、その気配は感じられない。 

ふむ。

白い猫で、目鼻立ちがやけにはっきりとしていて、性別は雌。

……猫業界でもあるとしたら、桐乃みたいな立ち位置になりそうな猫だな。

34: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:54:26.55 ID:px5GbtGY0
「にゃー」

桐乃「チョー可愛くない!? マジヤバイ!」

お前の顔の方がやべえぞ。 割と真剣に。

猫も大分桐乃に懐いているようで、先ほどからずっと桐乃とべたべたとしている。 俺の方にも寄ってくれない物か。

京介「確かにな。 どれ」

俺は言い、その猫へと手を差し伸ばす。

35: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:55:11.00 ID:px5GbtGY0
「シャー!」

……やめて! 歯剥き出しでそんな怖い声を出さないでくれ。 思いっきり威嚇されてるよね、これ。

桐乃「ぷ。 あんた嫌われてるじゃん。 ウケる~」

京介「……うっせ」

桐乃「まだ小さいけど、女の子だもんね~。 あんな冴えない奴なんてイヤだよね?」

俺、お前の彼氏のはずなんだけどなぁ! 好き放題言いやがって。

桐乃が話し掛けている奴……猫だが、桐乃と触れ合っているときはやけに機嫌が良さそうな顔をしている。 なんか悔しいぞ。

36: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:55:39.56 ID:px5GbtGY0
京介「チッ……俺はもう寝るぞ」

桐乃「あ。 もうそんな時間? あたしも明日学校あるし、寝ないと」

桐乃は言うと、猫をタオルケットの上に乗せ、俺の後に付いて来る。

京介「……ふう。 お前、相当あいつに好かれてるんだな」

桐乃「そりゃそうでしょ。 あたしってチョー優しいからね」

京介「……へいへい」

言いながら、布団の中へ。 桐乃もすぐ横へと潜り込む。

37: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:56:38.62 ID:px5GbtGY0
京介「電気消してくれよ」

桐乃「やだ。 あたしもう寝る体勢入ってるし。 京介が消して」

京介「……はいよ」

渋々立ち上がり、扉の近くに設置してあるボタンを押す。

本当、人使いが荒い奴。

俺は二度目の就寝をする為に、再び布団の中へ。

入ろうとしたのだが。

38: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:57:09.50 ID:px5GbtGY0
「にゃあ」

……そこ俺の場所だぜ。 子猫ちゃん。

桐乃「ふひひ~。 可愛いなぁ」

京介「……俺、どうすんの?」

桐乃「ここ、今日猫ちゃんが寝るから、あんた反対来れば?」

京介「……りょーかいしました」

なんで俺は敷布団も無いところで寝て、猫様は布団の上なんだよ……。

39: ◆IWJezsAOw6 2013/08/18(日) 22:57:36.74 ID:px5GbtGY0
桐乃「ベツに良いっしょ。 少しならあたしとくっついても……良いから」

飴に鞭と言った感じ。 事実、俺はその言葉でちょびっとテンション上がったし。 本当にちょびっとだけな。

京介「んじゃ、おやすみ」

俺は桐乃の右隣へ。 猫は俺の定位置でもある左隣で。

桐乃「……じゅる」

……猫が少し心配になる俺であった。


ペット 終

57: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:14:55.34 ID:tcCZFDmB0
京介「ただいまー」

夕方、講義を終えて真っ直ぐ帰宅。

さて、今日は何をして遊ぼうかなどと考えながらの帰り道だった。

そして部屋に入るとすぐ、見慣れた後頭部が視界に入る。

京介「ただいま」

先ほど返事が無かった為、再度桐乃に向けて言う。

が。

58: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:15:22.08 ID:tcCZFDmB0
桐乃「ふひひ。 猫ちゃん可愛いよぉ……」

こいつ……挨拶くらいしろっての。

最近、ずっとこんな調子なんだよなぁ。 寝ても覚めても猫のことばかり考えているのだろう。 寝言もうるさいし。

……俺が言った言葉、しっかりと分かってるのかね。

俺はそんなこいつを見て少々苛立ちを覚え、言う。

京介「お前、俺が言ったことは覚えているよな? しっかり飼い主探せって言ったの」

59: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:15:47.90 ID:tcCZFDmB0
桐乃「分かってるって。 しっかり探すよ」

桐乃「……ふひっ」

やれやれ。 本当に大丈夫かよ。

京介「なら良いけどよ」

桐乃「てか、なんであんたは不機嫌なのよ。 ちょっと怖いんですケドぉ」

俺がそう見えるのだとしたら、それはお前が原因だ! 猫と遊んでばかりいやがって……。

しっかり飼ってくれる人を探さないと駄目だと言っているのに。

それが俺たちにとっても、猫にとっても良いことなのだろうから。

60: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:16:16.99 ID:tcCZFDmB0
京介「別に~」

俺は言いながら、コタツの中へと入る。 ちなみに、桐乃はそこから少し離れた場所で猫とじゃれ合っていた。

桐乃「ふうん。 ま、どーでも良いケド。 それより今日の材料当番そっちじゃなかったっけ?」

当番……当番………。

……ああ、そういやそうだった。

京介「すっかり忘れてた。 帰る途中で買ってくる予定だったんだけどな……」

桐乃「ぷ。 間抜けすぎじゃん?」

61: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:16:50.19 ID:tcCZFDmB0
京介「うっせ。 んじゃあ俺は買ってくるけど、桐乃も来るか?」

桐乃「んー」

桐乃は少し考え、口を開く。

桐乃「あたしはいいや。 猫ちゃん一人で残すのも不安だし~。 もうちょっと遊んでたいし」

京介「……へいへい」

62: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:17:20.04 ID:tcCZFDmB0
俺もお前も学校があるから、その時はどうしてもその猫だけになるんだけどな。 ていうか、こいつは多分……ただ遊んでいたいだけだろう。

まぁ、今くらいは良いか。 ずっと飼うわけでもあるまいし。

桐乃「ちょ! 顔舐めないでよ~! ひひ」

京介「……近所迷惑にならないようになー」

俺の言葉は桐乃に聞こえていたのか分からない。 桐乃は俺の方には目も暮れず、猫と遊んでいた。

63: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:17:51.10 ID:tcCZFDmB0
京介「……ただいま」

二度目の帰宅。 今度は部屋の奥からしっかりと返事がある。

桐乃「お! おかえり。 買ってきた?」

京介「まあな。 ほら、これで良いか?」

俺は言いながら、ビニール袋から一つの物を取り出し、桐乃に手渡した。

桐乃「そうそう! サンキュー」

64: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:18:17.61 ID:tcCZFDmB0
桐乃「ほら、猫ちゃん猫じゃらしだよ~」

桐乃は俺が渡した物を早速、猫のところへと持っていく。 どんだけ楽しみだったんだ、こいつ。

京介「料理の材料、こっち置いとくぞー」

桐乃「ふひっ」

聞いちゃいねえ。 程々にして欲しい物だぜ。 全く。

俺は材料を台所へと置くと、そそくさと居間へと戻った。

そうしてコタツに入り、猫と遊ぶ桐乃を眺めていたとき。

65: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:18:43.57 ID:tcCZFDmB0
「にゃぁ」

猫は小さくそう鳴くと、俺の方へとトコトコ歩き、床に付いていた俺の手をチロチロと小さい舌で舐め始める。

お、おいマジか。 お前この前まで怖い顔して俺のこと威嚇してたじゃねえか。

急にどうしたんだよ。

てか……や、やべえ。 こいつ超可愛いんじゃね?

京介「お、おう……なんだよ急に」

66: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:19:11.48 ID:tcCZFDmB0
「にゃー」

返事をするようにそう鳴くと、今度は俺の体へ自身の体を擦り付ける。

京介「……お礼でも言ってんのか? はは」

桐乃「ちょっとちょっとちょっと!!! 何あたしの猫ちゃん取ってんの!? しかも猫相手にデレデレして……マジきもい」

京介「俺が取った訳じゃねえし、お前の猫じゃねえだろ! それと別にデレデレなんてしてねーよ!」

桐乃「良いから早く返して。 猫ちゃんこっちだよ~」

桐乃は言い、猫じゃらしを振る。すると 猫は桐乃の方に顔を向け、すぐさまそちらへと駆け寄って行く。

67: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:19:41.95 ID:tcCZFDmB0
……むう。 なんか納得いかねえ。

桐乃「やっぱあたしの近くに居る時の方が嬉しそうだよねー。 当たり前だケド」

言ってろ言ってろ。 俺には別にどうでも良いことだしよ。

京介「……それより桐乃、そろそろ飯の時間じゃね?」

桐乃「え、もうそんな時間? うう……」

桐乃は猫の方を名残惜しそうな目で見つめ、やがて決心したかの様に桐乃は言った。

68: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:20:12.83 ID:tcCZFDmB0
桐乃「よし! 待ってろ! あたしはすぐに戻って来る!」

何もそこまで気合たっぷりで言わなくてもな。 どれだけ猫と遊びたいんだお前。

桐乃「言っとくケド、あんた猫ちゃんに手出したらただじゃ済まないからね」

京介「……へーい」

全く、俺をどんな奴だと思っているのかね、こいつは。

百歩譲ってあやせや加奈子や黒猫やらなら分かる。 だけど相手が猫だぞ!?

69: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:21:09.84 ID:tcCZFDmB0
俺は適当に返事をし、その場に横になる。 そのままなんとなく部屋の中を見回したところ、ある物が視界に入ってきた。

部屋の隅……に、なんだ? あれ。

それが気になり、体を起こすと近くまで行き、しゃがみ込んだ。

床に小さな、穴? こんなのって最初からあったっけ?

まあ、大分年数は経っていそうだし、そういうのが出てくるのは仕方の無いことかもしれねえな。

京介「なあ、桐乃ー。 ここに穴空いてるんだけど、お前知ってた?」

70: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:21:44.05 ID:tcCZFDmB0
桐乃「んー?」

桐乃は一旦俺の方へと来て、すぐ隣でしゃがみ込む。

……なんか、こいつがここまで近くに居るのってちょっと久し振りな気がするぜ。 最近ずっと猫と遊んでばっかだし。

俺より少し前へ出て、桐乃はその床に出来た小さな穴を覗き込む。

桐乃「ほんとだ。 何これ?」

桐乃「んー。 なんも見えない。 てか、あんたが空けたんじゃないの?」

71: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:22:05.66 ID:tcCZFDmB0
京介「どんな目的でだよ……」

桐乃「うーん。 でも、一応これって言った方が良いよねぇ」

桐乃「って! なんであんたは髪触ってくんの!?」

驚くから急に大声出すなって。 別に良いだろ、それくらい。

京介「いや……近くで見てたら、桐乃の髪って綺麗だなーって思って。 触った」

桐乃「そ、そう?」

京介「……おう」

72: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:22:32.06 ID:tcCZFDmB0
桐乃「で、でも今はダメ! 料理作らないといけないし……」

京介「なら、後でならいいの?」

桐乃「……ちょっとだけだかんね」

やったやった。 なんだかムカムカする日でも、良いことってのはあるもんだな。 へへ。

……あれ、どうして俺はそう思っているのだろうか。

まあ、良いか。

73: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:23:00.69 ID:tcCZFDmB0
桐乃「ごちそーさま」

京介「これからなんかするか? エロゲーとか」

桐乃「それも良いケド……今日は猫ちゃんと遊ぶ」

京介「そかー。 んじゃ、俺はレポートでもやるかな」

俺はそのまま机に向かい合い、桐乃はコタツの中に入りながら、猫と遊ぶ。

74: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:23:27.89 ID:tcCZFDmB0
つうか、こいつも良くずっと遊んでいられるな。 それに付き合っている猫も猫だが。

いくら可愛かったとしても、ずっと一緒で飽きない物なのかねぇ。

そんなことを思い、桐乃の方に顔を向け。

……むしろもっと一緒に居たいくらいだな。 なんて感じるのだった。

75: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:23:54.04 ID:tcCZFDmB0
京介「……ふぁああ」

大きな欠伸をし、その体内時計のおかげでそろそろ寝る時間かと思い、時計に顔を向ける。

時刻は23時。 結構良い時間だな。

京介「桐乃ー。 俺そろそろ寝るけど」

言いながら、今度は桐乃の方に顔を向ける。

桐乃「……すぅ」

寝てるしな。 こんなところで寝てたら、また風邪引くじゃねえかよ。

76: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:24:20.28 ID:tcCZFDmB0
京介「ったく」

仕方無い。 布団まで運んでやるとしよう。

開いていたノートやらを片付け、桐乃の元へ。

京介「気持ち良さそうに寝やがって……しょうがねえな」

京介「……にしても、無防備すぎるだろ」

上の服が若干捲れてるし。 下も何故か微妙にずれている気がするし。

何よりこいつ、こんな天使みたいな寝顔だぜ。 はあ。

77: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:24:47.76 ID:tcCZFDmB0
京介「……くそ、可愛い顔しやがって」

俺はそっと、桐乃の顔を撫でる。 桐乃はぴくっと体をさせていたが、起きる気配は感じられない。

京介「あ、そういや髪触らせてもらってねぇ……超損した気分だな」

今思いっきり触ってもいいが……なんかこう、もっと話しながらが良い。

京介「明日だな、明日。 桐乃を膝枕でもしながら触ってみたいぜ……」

俺はそのまま桐乃を抱きかかえ、布団の上まで運ぶ。

78: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:25:14.56 ID:tcCZFDmB0
「シャー!」

京介「……んだよ。 なんか文句あんのか、猫」

「……」

俺のことを睨み続ける猫。 どれだけ俺のことが嫌いなんだ、こいつ。

京介「はいはい。 お前が大好きな桐乃さんは寝てるんだよ。 明日また構って貰え」

俺は猫にそう言うと、桐乃を布団の上に寝かせ、掛け布団を掛ける。

79: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:25:49.82 ID:tcCZFDmB0
それにしても、こいつって本当に寝顔はどこかのお姫様って感じだよ。 起きたら鬼だけどな。

京介「おやすみ、桐乃」

桐乃にそう言い、俺は居間へ一度戻る。

さて、俺はお茶でも飲んで寝るかな。

そう思い、台所でコップに麦茶を注ぎ、コタツへ。

ぼーっとしながらそれを飲んでいたところ、足の辺りに何か暖かい物が乗る感触がした。

80: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:26:24.77 ID:tcCZFDmB0
「……」

京介「……お前、俺に構ってると桐乃に怒られるぞ」

俺の言葉に猫は無言。 どこか機嫌が良さそうな顔で目を瞑っている。

二人っきりのときにこれだけ懐いてくれると、なんか俺はある人物を思い出すぞ。

京介「へへ」

少しにやけながら、猫の頭を撫でる。 思ったよりもふかふかしてるんだなぁ。

81: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:27:12.06 ID:tcCZFDmB0
「シャー!」

すると猫はいつもの怖い顔で俺のことを睨み、布団の中で眠る桐乃の元へと駆け寄っていった。

京介「はぁ……」

ほんと、そっくりだよ。 お前ら。

なんとなく懐かしい気分になりながら、その日は眠るのだった。

そして、事態が進展したのは次の日の午後のこと。

82: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:28:58.07 ID:tcCZFDmB0
桐乃「京介! 大変!」

京介「なんだ? 帰ってきて早々に」

桐乃「学校の友達なんだけど……猫の話をしたら、引き取ってくれるって」

京介「おお! 本当か? 良かったじゃねえか!」

桐乃「……うん。 そうなんだケド」

桐乃は分かりやすくしゅんとなる。 ああくそ! こうなるのが嫌だったんだよ、俺は。

83: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:29:42.50 ID:tcCZFDmB0
京介「悲しそうな顔してんじゃねーよ。 喜んであげるべきだろ? つっても」

京介「……無理もないか」

こいつがどれほどあの猫を好きだったのかは分かるし、その猫が他の人のところへ行くとなって、どんな気持ちになるのかも……また、分かる。

だとしたら俺が取ってやるべき行動は。

京介「桐乃」

84: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:31:09.29 ID:tcCZFDmB0
桐乃の頭の上に手を置き、俺は言う。

京介「笑って、見送ってやろうぜ。 俺の前でならいくら泣いても良いからさ、あの猫の前ではせめて笑って……な」

京介「そっちの方があの猫も、安心して行けるだろ?」

それが多分、幸せだ。

桐乃「……うん」

85: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:31:53.40 ID:tcCZFDmB0
こうして、俺と桐乃の前からあの猫は去っていった。

短い間ではあったけれど、今回のことで分かったことが一つある。

それは。

俺も桐乃も、ペットを飼うのには向いていないということ。

桐乃は夢中になりすぎて、別れのときに酷く傷ついてしまうから。 あいつは優しすぎるんだ。

友達に対しても、俺に対しても、あの猫に対しても。 誰にだってあいつは優しい。

自分以外には……な。

86: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:32:31.08 ID:tcCZFDmB0
だからこそ、自分にもう少し優しくなっても良いのでは、と俺は思う。 しかしそんなことを本人に伝えれば、こんな感じで返事が返って来るのは目に見えている。

「ヤダ。 京介が言っているそれが、あたしなんだから。 あたしがそんなんだから、京介が居るんでしょ?」

と、多分こんな感じだろう。

それが桐乃らしいし、俺の妹らしいってこと。

だから、今回は良い勉強になったのかもしれない。

それにあいつは強いしな。 あいつは俺が強いと言うけれど、俺はあいつが強いと思うんだ。

87: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:32:58.65 ID:tcCZFDmB0
かつて、桐乃は俺にこう言ったことがある。

「あたしは逃げてばかりで、京介に助けられてばかりなんだよ」

と。

果たして、それは本当にそうなのだろうか。

その時、俺は思ったままにこう返した。

「逃げるのにも、勇気は必要だろ。 俺なんか今まで逃げようとすらしてなかった。 お前のことも、真正面から向き合っていなかった」

桐乃はそれに対し顔を背けるという逃げの行動をしたのだが、俺はそんな桐乃を見て、やはり強いと思うのだった。

88: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:33:23.91 ID:tcCZFDmB0
そして、俺のこと。

俺にもやはり、ペットという物は向いていないのだろう。

それは桐乃がそうだから、という理由ではない。 桐乃のよりも恐らくは明確で、はっきりした理由が今回のことで分かった。

まぁ、でも。

敢えて話す様なことでもないし、別に言わなくても良いか。

恥ずかしいからな、一応これでも。

89: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:33:51.38 ID:tcCZFDmB0
桐乃「京介! なにぼーっとしてんの? とっとと帰るよ」

京介「お、おう」

ついさっきまで泣き笑いみたいになりながら見送っていたというのに、元気が良い奴だよ。

京介「なんか、少しだけ寂しくなるな」

桐乃「へぇ? あんたは喜ぶと思ってたんだケド」

京介「喜ぶ? 猫がいなくなってか?」

90: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:34:28.29 ID:tcCZFDmB0
桐乃「そ」

京介「……俺ってそんな性格悪そうな奴に見えるか?」

桐乃「いや……そうゆーことじゃないんだケド」

京介「なら、なんだよ?」

桐乃「ひひ。 京介、あの猫に嫉妬してるんじゃないかな~。 って思ったの」

京介「……猫に嫉妬するわけねえだろ。 馬鹿か」

桐乃「どうだろね? ふひひ~」

91: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:34:55.24 ID:tcCZFDmB0
全く持って嫌になってしまう。

俺が猫に嫉妬していた? 兄である俺が、妹と仲良くしている猫に?

もしそんな奴が居たとしたら、どれだけシスコンなのかと聞いてやりたいぜ。

確かに桐乃はここ数日、猫に構ってばっかではあったけれど。

出掛けるときも、俺一人のことが多かったけれど。

一緒にゲームやることも、殆ど無かったけれど。

92: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:35:31.98 ID:tcCZFDmB0
……。

……悪いかよ嫉妬して! そうだよ俺は猫に嫉妬してたんだっての!

京介「桐乃、帰ったら遊ぼうぜ」

桐乃「……え~。 どうしよっかなぁ?」

桐乃「あたし今日忙しいんだよねぇ。 ひひ」

桐乃「まぁでもぉ。 京介が素直になればあたしも構ってあげても良いかな~」

京介「……俺はいつでも素直だっつーの」

93: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:35:56.35 ID:tcCZFDmB0
桐乃「あっそ。 じゃああたし一人でエロゲーやるし」

こ、この野郎め。 絶対分かって言ってやがる。 お前だって俺と遊びたい癖によお!

……でも桐乃の方が我慢強いしな。 こいつは俺がこのままなら、絶対に一人でエロゲーやる気だ。

京介「……寂しかった」

桐乃「え? なんて? 聞こえな~い」

京介「寂しかったっつってんだ! 桐乃と遊べなくて!」

94: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:36:52.21 ID:tcCZFDmB0
桐乃「シスコンきも~い!」

京介「文句あっか!」

俺は機嫌良さそうに笑う桐乃を勢いよく抱き締める。 これもなんか、久し振りな気がするぜ。

桐乃「ちょ、やめてよ……人通ったらどうすんの」

京介「知るか。 今こうしたかったんだよ」

桐乃「……ふん」

95: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:37:34.63 ID:tcCZFDmB0
京介「桐乃、俺」

京介「お前がいないと寂しすぎて生きていけねえよ。 一生こうして抱き締めていたいくらいだ」

桐乃「それじゃあたしが死んじゃうっての……色んな意味で」

京介「そうかよ。 へへ。 すっげーどきどきしてんな、お前」

桐乃「……京介が急に抱き着くからでしょ」

桐乃「てかッ! いつまで抱き着いてんのよっ!」

96: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:38:19.42 ID:tcCZFDmB0
桐乃はそう叫ぶと俺を突き飛ばす。 顔真っ赤じゃねえか。 へへ。

桐乃「か、帰ったらその……膝枕してよ。 やりたかったんでしょ?」

京介「お、おう! マジか!」

さすがは桐乃様。 マジ天使。

桐乃「ほーらー。 そうと決めたらちゃっちゃと帰る。 早く!」

桐乃は言うと、俺の手を引き、ずんずんと歩き始める。

97: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:38:38.80 ID:tcCZFDmB0
……あれ?

京介「桐乃、一つ良いか?」

桐乃「ん? なに?」

京介「なんでお前、俺が膝枕したいって思ってるの知ってんの?」

桐乃「……」

桐乃は歩くのを止め、俺の方を向かずにゆっくりと口を開いた。

桐乃「……な、なんでだろうね?」

98: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:39:53.99 ID:tcCZFDmB0
……さてはこいつ。

京介「お前あの時起きてたな!? 狸寝入りだったのかよ!」

桐乃「な、なんのこと? 意味分かんないし~?」

京介「よくよく考えればそうだよな。 前に「俺が隣に居ないと寝付きが悪い」みたいなこと言ってたもんな? 勢いで」

桐乃「……だったらなんなのよ!? 文句あるッ!?」

き、キレやがった。 見事な逆ギレだぜ。

99: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:40:50.61 ID:tcCZFDmB0
京介「文句は無いけどよ……あんな無防備で寝るんじゃねえって」

桐乃「あんたがどーするか試しただけだし」

まあ良いか……。

試したというからには、その結果の方が気になっちまうしな。

京介「……で、結果は?」

桐乃「八十点ってとこかなぁ」

100: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:41:17.77 ID:tcCZFDmB0
京介「どっかで減点ポイントでもあったのか?」

桐乃「抱っこして布団まで運んでくれたのは良かったケドね。 最後がダメ」

京介「具体的に何がどう駄目だったのか教えてくれよ。 次の参考にするから」

桐乃「最後。 あそこまであたしが待ってたってのに、何もしないとかありえないから。 フツー、キスくらいするって」

京介「何を基準に普通だよ……」

桐乃「決まってんでしょ。 エロゲー」

101: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:42:03.18 ID:tcCZFDmB0
京介「お前、現実とゲームをごっちゃにするなって言ってたじゃねえかよ!」

桐乃「別にごっちゃにはしてないっしょ。 ただ参考として言ってるの。 文句ある?」

京介「へいへい……じゃあ、キスすればいいのか? 今」

桐乃「今なんてひと言も言ってないでしょ! 空気考えろっ!!」

京介「分かった分かった。 寝る前にすれば良いんだろ?」

桐乃「あたしに聞くなっつーの!」

そして桐乃の激しいツッコミが俺の背中辺りにぶち当たる。

102: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:42:49.90 ID:tcCZFDmB0
……今回は俺も桐乃も、学んだことは確実にあるだろうな。

俺に言えることはひとつだけ。

俺はお前一人居てくれれば、充分だということだ。

なんて思いながら、俺より数歩先を歩く桐乃の背中を見ながら笑って付いていく。

それはそうと。

103: ◆IWJezsAOw6 2013/08/20(火) 13:43:05.77 ID:tcCZFDmB0
あれが狸寝入りだったとしたら、結構前のあれも……もしかしたら。

可能性は充分にある。 だから、朝起きた時あいつはにやけていたのか。 それをされたと分かっていたから。

……へへ、なんだか聞いたら面白いことになりそうだ。

帰ったら早速、聞いてみることにしよう。


出会いと別れ 終

115: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:05:46.80 ID:qsOOelxu0
こんにちは。
乙、感想ありがとうございます。

>>114
前に投下した短編で、京介の顔にきりりん専用と書かれたときのことです。

それでは、投下致します。

116: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:06:12.38 ID:qsOOelxu0
京介「……お前、何やってんの?」

俺の目がおかしくなってしまったのか。

それとも桐乃の頭がおかしくなってしまったのか。

いや、それともこれは至って普通の光景……では無いよな。 だとするとなんだ。

桐乃「え、えーっと」

照れながら言う桐乃を見て、これはもしかしたらマズイことになったかもしれないと思いつつ、俺は一歩、二歩、後ずさる。

もうすぐ2月に移ろうかという今日この日。 俺は桐乃の姿を見て、ぶっちゃけ引いた。

117: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:06:54.17 ID:qsOOelxu0
京介「……で、何してんの?」

桐乃「ち、ちがっ! これにはちゃんと理由があんの!」

京介「ほ、ほう。 じゃあなんでお前が自分に手錠をしているのか、理由を聞かせてくれ」

桐乃「えっと……これ、あやせが「お兄さんがセクハラをしてきた時は、これを使ってね」って言って渡してきたんだケド」

桐乃「と、当然? あたしとしては……そんなの断ろうとしたんだよ? だけどあやせが無理矢理渡してきて」

桐乃「で、家に持って帰って来たの。 最初は本当にどうでも良かったんだよ? そんで……暇だったし、やっぱり興味はあるじゃん? だから、どんな物かなーって思って付けてみたの」

118: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:07:30.22 ID:qsOOelxu0
京介「結果は?」

桐乃「自分で外せなくなった」

だろうな! そりゃ一人じゃ外せねえよ!

京介「まあ理由は分かったよ。 てっきり俺はお前にそういう趣味があるのかと勘違いするところだったぜ」

桐乃「ならいいんだケド……とりあえず、これ外してくれない?」

言いながら、その手錠の鍵を俺に手渡す。

119: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:08:09.89 ID:qsOOelxu0
京介「……」

桐乃「なによ? 早くして」

京介「頼み方が違うんじゃないのか? 桐乃さんよぉ」

桐乃「あ、あんた何言ってんの?」

京介「だから、人に物を頼む時はどうすればいいのかってことだよ。 まあ、別に桐乃が嫌だって言うなら良いけどよ~」

桐乃「……は、外して頂戴」

なんで黒猫口調!? 上から目線なのは変わらないぞ!?

120: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:08:44.33 ID:qsOOelxu0
京介「え~? どうしよっかなぁ~?」

俺はいつもの桐乃の口調を真似し、言う。

桐乃は一度俺のことを睨むが、自分の状況を考えたのか、顔を伏せながらゆっくりと返す。

桐乃「は、外して……ください」

……おお?

お、おおお!? ヤバイ。 言わせて見た物の、予想以上にぐっとくる。 てか可愛い。 それと同時になんか罪悪感が沸いてくるぜ。

多分、この手錠の所為だが。

121: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:09:13.17 ID:qsOOelxu0
京介「し、仕方ねえな~。 は、ははは」

顔がすっげえニヤニヤしてるのが自分でも分かるぞ。 てか、今の録音しときゃよかったよ!

桐乃「……ん」

桐乃は黙って、腕を突き出す。

桐乃の細い腕に、がっしりとした手錠が付いているのは何と言うか……何と言うか。

京介「……ほらよ」

俺はコタツの上に置いてあった鍵を取り、手錠を外すと桐乃に鍵を手渡した。

桐乃「……ありがと」

京介「お、おう。 良いさ、構わねえよ」

結構素直なところ、あるじゃん。 へへ。

なんて思いながら、隣に座る。

桐乃「……隙ありッ!」

桐乃は俺がその場に座り込んだ瞬間、そう叫ぶと飛び掛ってきやがった。

122: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:09:59.97 ID:qsOOelxu0
京介「な、なんだよ!? 急に抱き着いてくるなって!」

桐乃「うっさい! ちょっと黙れ!」

俺が必死に桐乃を押し返そうとしても、中々うまく行かない。

んで、なんかもみくちゃになっている間に。

桐乃「ひひひ。 ざまー!」

俺の右手首に手錠。 桐乃の左手首に手錠となる。

123: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:11:01.23 ID:qsOOelxu0
京介「お、分かったぞ。 今お前はこう思っている」

京介「京介と繋がって嬉しいな。 えへへ」

京介「な?」

桐乃「な? じゃない!! あんたが変に動くからこうなってるんでしょ! さっさと外しなさいよ」

俺の妹はいつだって変わらないなぁ。 いやいや、まあこの状況も面白いっちゃ面白いけどよ。

京介「……わーったよ。 鍵は? お前にさっき渡したけど」

124: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:11:28.28 ID:qsOOelxu0
桐乃「えーっと。 あれ?」

桐乃「あ! あそこ!」

桐乃が指差す先には鍵……と、穴。

もみ合いになっている間に吹っ飛んだらしい。

そ、そうか……この前見つけたこの穴は、この伏線だったのか!!

と、馬鹿なことを考える俺。

125: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:11:55.96 ID:qsOOelxu0
京介「……よし、まだあの位置なら大丈夫だ。 ゆっくり取れば大丈夫」

桐乃「早くしてって! あんたと手錠で繋がれるとかチョーやだ!」

酷い彼女で酷い妹だ。 俺はお前と繋がれてても嫌じゃないってのに!

京介「お、おし」

俺はゆっくり、一歩一歩そこに近づいていく。

桐乃「ちょ、引っ張らないでよ!」

126: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:12:22.89 ID:qsOOelxu0
……あ、やべえ。

桐乃はそのまま床に倒れそうになり、俺は振り向き、慌ててそれを受け止める。

桐乃が無事なのは良かった。

それは良かったのだが……。

鍵は、穴へと吸い込まれていってしまった。

127: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:12:54.51 ID:qsOOelxu0
桐乃「どーすんの、これ」

京介「……俺だって泣きたいぞ。 言っておくけど、こんなエロゲーみたいな展開は最悪だ」

さっきは嫌じゃないとか考えた物の、動き辛いったらありゃしない。 俺が右手を動かせば、桐乃の左手も一緒に動き、桐乃が左手を動かせば、俺の右手も一緒に動く……と。

全然面白くねえ! さっきまでの俺の馬鹿!!

桐乃「チッ……」

俺のすぐ右に桐乃。 対面して話すことも出来なくは無いが、お互いが手をコタツの上へと置かないとならないので、少し疲れるのでこの位置だ。

128: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:13:26.34 ID:qsOOelxu0
桐乃「もーマジ最悪」

桐乃の顔が若干嬉しそうに見えるのは気のせいということにしておこう。 気のせい気のせい。

京介「……あ、スペアの鍵とか、あやせ持ってるんじゃねえのか?」

桐乃「……たまには良いことゆうじゃん!」

桐乃はパッと顔を明るくすると勢いよく立ち上がった。

京介「いててっ! いってーよ!」

当然のように俺の右腕は引っ張られ、手首に少々の痛み。

129: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:14:08.10 ID:qsOOelxu0
桐乃「あ、ご、ごめん。 つい」

そう素直に謝られてしまうと、なんだか俺が悪いことをした気分になるっての。

京介「別に良いって。 で、あやせに連絡するんだろ?」

桐乃「うん……って」

携帯を操作していた手を唐突に桐乃は止める。

京介「おい?」

桐乃「……あやせ、今日から出掛けるって。 今日の昼間に聞いてたんだった」

130: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:14:36.91 ID:qsOOelxu0
……マジすか。

京介「いつ帰ってくんの?」

桐乃「……明日の午後」

今日は金曜日だから……少なくとも一日はこれで過ごさないといけないのか。

京介「……やるっきゃねえな。 くそ」

桐乃「あ、あんたと一日こうして過ごせってこと!?」

131: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:15:04.82 ID:qsOOelxu0
京介「そうするしかねえだろ! だって鍵は取れないし……あやせが戻ってくるのを待つしか無いじゃん」

桐乃「……もし、あやせがスペアの鍵持ってなかったら?」

京介「そりゃあ……」

桐乃「あ、あたしは!」

桐乃は顔を赤らめながら続ける。

桐乃「……一生このままでも、大丈夫だから」

132: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:15:30.79 ID:qsOOelxu0
京介「な、なに言ってんのお前!? それは色々マズイことになるだろ! お前だってこの状態じゃ学校行けないし、モデルの仕事もできねえぞ!?」

桐乃「ぷ。 冗談に決まってるでしょ。 なに慌ててんの? ふひ」

ずっと桐乃が近くに居る所為か、なんだか変に緊張しちまうな。

……いやまぁ、それはこの状況に限らないかもしれんが。

京介「……は、はは。 あれ、今日って金曜日だっけ?」

133: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:16:16.27 ID:qsOOelxu0
桐乃「今更なに? ボケが始まりでもしたの?」

京介「いや……俺の記憶が正しければ、今日って」

嫌なことを一つ、思い出してしまったぞ。

京介「黒猫と沙織が遊びに来るって言ってた日じゃないか?」

桐乃「うん。 そだケド」

不幸ってのは、とことん重なる物だなぁ。 なんてしみじみ思う。

134: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:16:44.25 ID:qsOOelxu0
京介「お前なんか軽いな! この状態見られたら、いくらあいつらでもマズイだろ!?」

桐乃「見られても大丈夫だって。 何でか知りたい?」

言いながら首を傾げる桐乃。 く、くう。 可愛すぎる。

京介「お、おう……教えてくれ」

桐乃「それは~。 あたしが京介に襲われかけたってことにするから、大丈夫」

京介「お前は大丈夫だけど俺は全然大丈夫じゃねえじゃんか!」

135: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:17:11.24 ID:qsOOelxu0
桐乃「だってあんたが動くからこうなったんっしょ? その所為でずっと」

桐乃「……ずっと繋がったままだし」

そこで恥ずかしそうに言うのはやめてくれ! 俺まで恥ずかしくなるからさ!

桐乃「とにかく! 別に見られない様にすれば良いだけでしょ。 袖が長い服とか着てさぁ」

京介「すげえ良い案だな。 で、どうやって服着るの?」

136: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:18:36.82 ID:qsOOelxu0
桐乃「……気合い?」

気合いでどうにかなるならしてくれ。 頼むから。

桐乃「あーもう良くない? なんか考えるの面倒だし」

桐乃はそう言うと、そのまま後ろへ寝転がる。

俺はそのまま座っていても良かったのだが、変に距離を開けて桐乃が手首を傷めたら嫌だし、一緒になって寝転がった。

137: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:19:31.75 ID:qsOOelxu0
桐乃「なに見てんの?」

京介「お前だって俺のこと見てるじゃねえか」

桐乃「あたしは良いの。 あんたはダメ」

京介「んだよそりゃ……」

桐乃「ふん」

桐乃は言い、俺に背中を向ける。

138: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:19:58.85 ID:qsOOelxu0
おいおい、だからそんな急に姿勢を変えるなって。 こいつ、手錠のこと忘れてねーか?

そんなことを思いながら、桐乃の動きに付いて行く様に動いたのだが。

だが。

桐乃「……」

京介「……」

桐乃に覆い被さる形になってしまった。 じょ、状況が状況だけにやべえ。

139: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:21:45.32 ID:qsOOelxu0
桐乃「きゃ~。 襲われるぅ~」

……似合わねー! お前はこう、あれだ。

「シスコンどけッ!」

とか言って殴るのが似合ってるって。

てか、これは若干言い辛いことなのだが。

京介「……お前、その、下……見えてるぞ」

主に、下着が。

140: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:22:12.15 ID:qsOOelxu0
桐乃は当然、慌てて俺を突き飛ばそうとでもするのかと思った。 だけど、俺の予想は見事に裏切られる。

桐乃「知ってる。 だって、わざとだもん」

頬を紅潮させ、横を向きながら桐乃はそう言った。

京介「わ、わざとって……何が?」

桐乃「……京介、嬉しいかなって思って」

お、お前何言ってんの!? もしかして今ので実は頭強く打ってたのか!?

141: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:22:40.17 ID:qsOOelxu0
京介「そ、そりゃあまあ嬉しいけどよ! お、お前なぁ!」

俺も俺で変なことを口走っているしさ。

桐乃「……」

桐乃は黙って俺を見つめる。 恥ずかしそうな顔で、俺から目を逸らすことはせずにじっと見つめる。

それが分かるということは、俺もまた桐乃から視線を外せずにいるということだ。

142: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:23:08.17 ID:qsOOelxu0
「ただいま」

と、俺と桐乃が見つめあっているときに、背後からそう聞こえる。

この時、俺が思ったこと。

まずひとつ目。 やべえ、終わった。

次にふたつ目。 何か言い訳を考えなければ。

最後に。 物凄く驚いている桐乃の顔もやはり可愛い。

143: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:23:36.56 ID:qsOOelxu0
京介「ちょ、ちょっと待ったああああぁああああぁあああ!!」

俺は急いで振り向き、開きかけた扉に向かって叫ぶ。 もうありったけの大声だった気がするぜ。

後で苦情が来たら謝らないとな。

しかしそんな叫びも虚しく、扉は完全に開かれる。

そこにいるのはやはり黒猫、そしてその背後に沙織。 今日はメガネを掛けているようだ。

じゃねえ! 別に沙織がメガネを掛けたバージョンでも掛けていないバージョンでも、そんなのはどうだっていいんだ! 今はこの状況を……。

144: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:24:03.58 ID:qsOOelxu0
黒猫「あ、あなたたち……!」

黒猫は当然驚き、扉を開けたままの格好で硬直していた。 沙織もあまりの出来事に言葉を失っている様子。

そして数秒そうして固まった後、黒猫はようやく口を開く。

黒猫「……ごめんなさい。 お取り込み中だったようね」

そして、ゆっくりと扉を閉めようとする黒猫。

京介「違う!! お前は壮大な勘違いをしているぞ黒猫ぉ!!」

慌ててそれを止めようとしに行くが、桐乃の存在を思い出し、静止。

桐乃「あ、あああああ……」

駄目だこりゃ。

145: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:24:50.66 ID:qsOOelxu0
黒猫「それで、あなたたちは一体何をしていたの? こんな日が昇っている時間から」

その言い方はやめて欲しいぜ。 日が沈んでいたら良いみたいじゃねえか。

あの後、結局正気を取り戻した桐乃が黒猫に連絡を取り、なんとか一旦は呼び戻すことができた。

二回目ともなると、入る前に「……大丈夫かしら?」との確認があったのだが、俺としてはなんだか納得がいかない展開である。

京介「ま、待て黒猫。 それよりもお前が「ただいま」って言いながら入ってきたことについて俺は問い質したい」

146: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:25:20.50 ID:qsOOelxu0
黒猫「ふん。 そんなのは決まっているわ。 だってここ、わたしたち全員の場所じゃない」

京介「いつからだよ!?」

沙織「それはもう、遥か昔のことですな……」

遠い目をしても、誤魔化せないからな。

黒猫「今度から気をつけるわ。 あなたたちの邪魔をしても悪いしね」

京介「だから、別にお前が思っているようなことじゃねえって。 本当に、マジで」

147: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:25:50.27 ID:qsOOelxu0
桐乃「……そこまで否定しなくても」

桐乃が隣で何かを呟いている。

……いや俺にははっきり聞こえたけど、聞こえなかったということにしておこう。 恥ずかしいから。

沙織「では、京介氏ときりりん氏は一体何をしていたのですか? きりりん氏に覆い被さるように……」

沙織「京介氏もきりりん氏も顔は真っ赤でしたし。 きりりん氏は女性の表情をしていましたし」

京介「お前ちょっと黙れ! な!?」

こいつ、人をからかうの好きすぎだろう。 なんでそこまで改めて説明してやがるんだよ!

148: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:26:16.69 ID:qsOOelxu0
黒猫「それより、わたしが気になるのはそっちの方ね。 そのあなたたちを結んでいる銀の鎖……シルバーチェーン」

なんで横文字なんだ。 つうかただの手錠だろうが。

京介「ああ、これはだな……」

黒猫「そういうプレイかしら?」

京介「ちげーーーーよ!! なんでそうなるッ!?」

いやまあ、そういう風に解釈されても仕方ないっちゃ仕方ない状況ではあるけどな。 でも違う、違うんだ黒猫。

149: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:26:46.20 ID:qsOOelxu0
京介「ええっとだな……簡単に説明すると事故なんだよ。 俺たちにとっても望んだことじゃないから。 こんな状況であれだが一応言っておくけどよ。 な、桐乃」

桐乃「そ、そうそう! 嬉しくないって言えばウソになるケド……でも、そうしようとしてしたワケじゃないから」

……駄目だこいつ。 まだテンパってるだろ。 でもお前が嬉しいと思ってくれているのに俺は喜べばいいのだろうか。 素直に喜べる状況じゃないけど。

黒猫「あ、あらそう。 良かった。 あなたたちのことがちょっとだけ心配になってたのよ」

敢えて桐乃の台詞に突っ込まない辺り、黒猫から優しさを感じるぜ。 こいつ、本当に良い奴だなぁ。

150: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:27:36.15 ID:qsOOelxu0
沙織「ですが、そういうのには大体鍵が付いているのでは?」

京介「それなんだけど、一個あった鍵を……失くしちまってな。 元々はあやせの物だから、あいつがスペアの鍵を持ってくれてたら助かるんだけどさ」

沙織「ほほう……なるほどですな。 それで、もし持っていなかった場合は?」

沙織「もしや、お二人は一生愛の絆で結ばれたまま……」

京介「いやそうなったら他の方法探すけどな」

でも愛の絆で結ばれてるのは否定しない!

思いながら桐乃の顔を見て、これはとてもじゃないが恥ずかしすぎるので口には出せないと感じる俺。

151: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:28:51.61 ID:qsOOelxu0
桐乃「ね、ねえ。 京介」

そんな俺の考えなんて知らずに、桐乃は言いながら俺の服の袖を空いている方の手で引っ張る。

京介「どした?」

俺がそう聞くと、桐乃は数秒置いて、ゆっくりと口を開く。

桐乃「……その」

なんだよ。 俯いてゴニョゴニョと言っているが、さっきとは違い全然聞こえないぞ。

152: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:29:20.96 ID:qsOOelxu0
京介「桐乃?」

桐乃「だ、だから……」

何かを訴えるように桐乃は俺のことを上目遣いで見る。 この妙な緊張感は一体何だ……。 桐乃が何を言いたいのか、分からないぞ。

沙織「あ、分かったでござる。 きりりん氏、お手洗いですな?」

えーっと。

京介「……マジ?」

153: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:29:47.18 ID:qsOOelxu0
桐乃「……」

桐乃は返事はせずに、黙ったまま一度、首を縦に振った。 つまりは肯定。

同じ性別だからこそってか。 そういうことね。

京介「……行くか」

桐乃「い、行くってまさかトイレに!? なんであんたと一緒に行かなきゃならないのよ!!」

京介「俺だって一緒に行きたかねーよ!! でもこんな状態なんだから仕方ないだろ!? それともあやせが戻ってくるまで我慢できるってか!?」

154: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:30:14.66 ID:qsOOelxu0
桐乃「そ、それはムリだけど……」

京介「だったらしょうがないじゃねえか。 ほら、行くぞ」

桐乃は渋々頷き、俺と一緒に立ち上がる。

ていうか、最初からそういうなら訴えるんじゃねえっての。 察せ無かった俺も悪いけどさ。

黒猫「ふふ。 行ってらっしゃい」

京介「やかましいわ!」

嫌味ったらしく笑う黒猫にそう言い、俺と桐乃はトイレへと向かう。

155: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:30:41.46 ID:qsOOelxu0
そうだ。 変に意識するからこんな妙な空気になっちまうんだ。 平常心、平常心。

桐乃「じゃ、じゃあ入るから……その、そこで待っててね」

京介「お、おう……」

言い、桐乃はトイレの中へ。

手錠の鎖を扉に挟むようにして、俺はそこの床へと座り込む。

桐乃「……ねえ、京介」

すると桐乃はすぐに出てきて、俺に何かを言おうとする。

156: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:31:11.42 ID:qsOOelxu0
京介「……どした?」

桐乃「……届かない」

ううむ。 この状況でその言葉を使う意味は。

届かないってのはつまりあれか。 手を伸ばした状態じゃあ座れないってことか。

……どうすんの!? まさか俺も中に入れってか!?

桐乃「だから、あのね。 京介も入ってくれないと」

……そうらしい。 マジかよ。

157: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:31:38.20 ID:qsOOelxu0
京介「分かった! もうここまで来たらヤケだな! 任せろ桐乃!!」

「たかがトイレ一つで騒々しいわよ。 もう少し静かにいちゃついて頂戴」

と、俺が叫ぶとすぐに今の方から黒猫の声が聞こえて来る。

その言葉に俺も桐乃も気まずそうに顔を逸らし、黙ってしまった。

……。

黙ってても進まないよね! 俺はそう、仙人の気分で一緒に居ればいいのだ。 動じず、動じず。 静かな心で。

158: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:32:09.48 ID:qsOOelxu0
そんなことを思い、トイレの中へ入った。

トイレの中へ入った。

いやきっつ!! これかなりキツイぞ!? そりゃあ、昔……桐乃がまだ小さい時。

夜中に俺を起こして「お兄ちゃん、おトイレ行きたい」とか行って一緒に行く事がありはしたけどよぉ!

その時は扉の前で待ってたし、中まで一緒になんて初だぞ初!?

むしろこんな経験をする奴の方が絶対少ないだろ! つうか兄妹で付き合っててこんなことをする奴なんてのは俺だけかもしれん!

159: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:32:37.72 ID:qsOOelxu0
京介「……えーっと」

桐乃「……こっち見ないでね」

京介「み、見ねえよ。 アホ」

俺は桐乃に背中を向け、その場にしゃがみ込む。

あーやっべえ。 すげえ緊張してきた。 マジでどうしてこうなった。

桐乃「じゃ、じゃあ、脱ぐから」

一々言わなくて良いだろ!? それを言ったところで誰も得はしねえぞ!?

160: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:33:05.22 ID:qsOOelxu0
ま、まさかこいつ……その、する時も「今からするから」とか言うんじゃなかろうな!? だとしたら俺は逃げるぞ! 全力で逃げる!

そんな俺の心配を他所に、布が擦れる音がする。 制服のスカートが桐乃の肌と擦れている音だろう。

マズイ。 マズイマズイマズイ! お、俺はどんな顔してりゃ良いんだよ!?

繋がれている方の腕は桐乃任せにしてあるから、その動きでどんなことになっているか大体想像できちまうんだよ!

狭い場所の所為か、桐乃の香水の匂いがしっかりするし。 何よりこいつが黙ったままってのがなんていうか気まずい。

161: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:34:45.30 ID:qsOOelxu0
京介「だ、大丈夫そうか?」

桐乃「……うん」

耐え切れず話しかけたのは良いが、会話が続かない。 俺ってこんな桐乃相手に緊張する奴だったのかよ!

程なくして、水を流す音が聞こえてきた。

よ、ようやく終わったか。 そう思い、桐乃の方に顔を向ける。

が、桐乃は未だに座っていて。 下は……脱げたまま。

162: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:35:13.60 ID:qsOOelxu0
桐乃「ば、ばかっ!! 見るなって言ったじゃん!!」

桐乃は叫び声にも似た感じで言うと、俺の頭を思いっきり叩く。

京介「い、いってえ! だ、だってよ……流す音聞こえたから」

慌てて顔を逸らしたは良い物の……す、少し見てしまった。

一緒に風呂に入ってて今更って話だが、出来る限り見ないように努力はしてるからな! 桐乃もその時は隠しているし! だから俺はこんなおどおどしてんだよ!

163: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:37:03.96 ID:qsOOelxu0
桐乃「お、音消す為に決まってるでしょ!! ばか!!」

桐乃はさっき殴られた威力には遠く及ばない力で、俺の頭をぽかぽかと叩く。

京介「悪かったって! 本当にすまん! だから、頼むから早くしてくれ!」

桐乃「変態変態変態ッ!! 後で説教だかんね!!」

も、もうこの際どうなっても良いから! とっととこの状況から脱したい!!

164: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:37:29.94 ID:qsOOelxu0
京介「……はぁああ」

黒猫「ふふ。 どうしたの? そんな死にそうな顔をして」

京介「察しろ。 俺はもう一日の体力を使い切ったぞ……」

桐乃「……マジさいてー」

沙織「仲が良さそうで何よりですな。 はっはっは」

京介「今はお前の笑い方がすっげえ腹立つぜ……沙織」

165: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:37:55.84 ID:qsOOelxu0
桐乃「あんた絶っ対! 許さないから」

普段だったらこんな事が起きた後は、必ず俺から距離を取る桐乃だが、生憎今日はそうは行かない。 離れようと思っても離れられないからな。

まあその所為で、俺は先ほどから桐乃に足をゲシゲシと蹴られているわけだが。

京介「とりあえず、何か良い案はねえのかよ? お前ら」

俺は言い、黒猫と沙織を助けを請う様に見る。 すると、沙織が口を開いた。

沙織「……いやはや。 これは言おうか言わないか迷っていたのですが----------」

166: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:38:30.28 ID:qsOOelxu0
黒猫「待ちなさい。 沙織」

黒猫がそれを途中で止め、なにやら沙織に耳打ち。

沙織「い、いやあ……しかしですな、黒猫氏」

黒猫「良いから。 あなたも面白がっているじゃない。 この状況を」

沙織「それはまあ……そうじゃないと言えば嘘になりますが」

黒猫「とにかく、これは二人の為でもあるのよ」

167: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:39:34.97 ID:qsOOelxu0
沙織「そう仰いますと?」

黒猫「桐乃はいつも、京介に向かって酷いことばかりしているじゃない。 二人っきりの時はどうか知らないけれどね」

黒猫「でも、こうして物理的に近い距離にずっといれば、少しは変わるかもしれないわよ?」

沙織「は、はあ……拙者としては黒猫氏が楽しんでいるように思えますが……」

黒猫「黙りなさい。 これはわたしが決めたこと。 これ以上無駄な口を叩くようならば、闇の眷属失格として、葬り去るわよ」

168: ◆IWJezsAOw6 2013/08/21(水) 13:40:22.78 ID:qsOOelxu0
いつから沙織は闇の眷属になっていたのだろうか。

つか、殆ど丸聞こえだからな?

黒猫「と、言うわけで京介、桐乃。 わたしたちに出来るアドバイスは皆無よ。 皆無」

京介「そーですか……」

てか、こうなってくると本当に明日まで桐乃とずっと同じ行動を取らなきゃいけないってことに、現実味が出てきたぜ。 今更だけどさ。

お互いに同じ方向の腕を繋いでいないことだけが、救いだな……。


あやせの贈り物 終

187: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 12:56:37.13 ID:1f0QAB9H0
京介「じゃ、またな」

黒猫「ええ、また」

沙織「お幸せに。 にん」

桐乃「あんたたち、マジで今度あったら覚えとけ!」

桐乃が怒るのも無理はない。

ここぞとばかりに、こいつらは俺たちのことをからかいまくってきたからな。

188: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 12:57:09.21 ID:1f0QAB9H0
具体的に言うと、わざとらしく「どうして桐乃は京介が動くと一緒の方へ動くの? それほど京介と一緒にいたいのかしら?」

だとか。 後は「黒猫氏。 別にいつものお二人ではありませんか……おや、今更気付きましたが、その手錠はどうされたので!?」

だとかな。

沙織も最初は一線引いていた感じであったが、黒猫に触発されてこのザマだぜ。

いつもは俺たちのまとめ役でもある沙織だが、同時に年頃の女子でもある。 その行動にも無理はねーけど。

ねーけど! 俺たちの気持ち考えろや! なんか思い出したら俺もムカついて来たぞ!

189: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 12:59:10.08 ID:1f0QAB9H0
桐乃「……じゃ、じゃあ中もどろっか」

ほらぁ! 二人っきりになると気まずくなるじゃねえかよ! あいつら今度覚えとけよ!

今回の恨みは桐乃とじっくり話し合って、いつか晴らすとして……。

それよりもまず、明日までどうやって生き延びるかだ。 そう言うと重大なことに感じられるが、実際はただの馬鹿二人って感じだけど。

それでも俺と桐乃にとっては超重要なことなんだよ!

だ、だって一応……一応って言ったら怒られるか。 俺は桐乃のことが好きなわけだし?

そんな相手と四六時中一緒ってのは……なんつうか、疲れると思う。

190: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:00:05.90 ID:1f0QAB9H0
今だからこんな気持ちになるわけだけどな。 今だけ、昔の俺に戻りたいぜ……。

勿論、桐乃に対するこの気持ちは持ち越して、な。

あれ? でもそうすると結局は今の俺と同じな訳で……。 ああくそ! 訳分からん!

桐乃「京介、なにぼーっとしてんの? さっきの説教あるんだケド」

京介「お、おう……わり。 さっきのってあれか。 あのトイレでの----------」

桐乃「わざわざ言わなくていいから! あんた、あたしに何してくれたかちゃんと分かってんの?」

191: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:01:19.49 ID:1f0QAB9H0
京介「あ、謝ったじゃねえかよ……俺だってわざとじゃないんだし」

桐乃「そんなのカンケー無いっての。 大事なのはあんたが見たってことなんだから」

京介「そ、そんなじーっと見てたわけじゃないだろ!? すぐに顔逸らしたしよぉ……」

桐乃「でも見たことには変わり無いし~。 ってことで、罰ね」

こええ。 桐乃さんの口から「罰」って言葉が出ると、大体ろくでもないことになるんだよ。 恐ろしい。

京介「え、ええっと……今回は何すれば良いの?」

192: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:02:10.09 ID:1f0QAB9H0
桐乃「ふふん。 これ! 一緒にチャレンジね」

桐乃は言うと、一枚のチラシをカバンから取り出す。

……えっと、なんだ?

『魔法少女メルル! まじかるポスターを先着50組の方にプレゼント! 当日、とあるお題をクリアした方のみの限定品!』

京介「……この状態で?」

桐乃「ち! が! う! ちゃんと日付見てよ! 来月でしょ? これ、二人一組だからあんたと一緒に出るから」

193: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:03:58.31 ID:1f0QAB9H0
京介「それくらいならお安い御用だけど……」

そのお題ってやらから、何故かすげー嫌な予感がするけど……。 まあ、それで許してもらえるなら良いか。 デートにもなるしな!

桐乃「取れなかったら死刑だから」

つまりバッドエンドってことですか。 俺の命くっそ安いなおい!

京介「任せとけって。 つっても、お題ってどういうのが出るんだ?」

桐乃「さぁ? 行って見ないと分からないっしょ。 毎年景品色々変えてやってるみたいなんだケド、毎回内容違うみたいだし」

194: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:04:36.24 ID:1f0QAB9H0
京介「ふうん」

ま、たかがイベントでそんな大袈裟なことはやらされないだろう。 ファン層は成人男性が殆どだし、腕立て伏せ何回、だとかその程度だろうな。

桐乃「よし! じゃあ、そうと決まれば夜ご飯作ろうかなぁ」

京介「お。 宜しく頼むぜ」

桐乃「なに言ってんの。 あんたも一緒に作るんだって」

京介「さっきので罰だったんじゃねえの!?」

195: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:05:03.62 ID:1f0QAB9H0
それはお前もだろうが!

京介「何がだよ」

俺が言うと、桐乃は左腕を上にあげる。

当然、繋がれている俺の右腕も。

桐乃「あたしたち、今離れられないんだから当たり前じゃん」

……そうでした。

桐乃「……はぁ。 京介ってほんとどっか抜けてるよねぇ」

それはお前もだろうが!

京介「何がだよ」

俺が言うと、桐乃は左腕を上にあげる。

当然、繋がれている俺の右腕も。

桐乃「あたしたち、今離れられないんだから当たり前じゃん」

……そうでした。

196: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:05:36.42 ID:1f0QAB9H0
京介「桐乃。 お前随分見ない内にすっげえ手際良くなったよなぁ」

桐乃「そ、そうでもないっしょ。 ベツに」

京介「いやいや、だって最初の頃とか、野菜まるごとカレーにぶち込んでたじゃんか」

桐乃「……忘れろ」

包丁を持ったまま俺の方を向かないでくれ。 色々包丁にはトラウマがあるんだから!

197: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:06:06.48 ID:1f0QAB9H0
京介「……は、はい」

桐乃「それじゃ、京介。 位置的にあたしが火使わないとダメだし、これで材料切ってね」

京介「はいよ。 えーっと、何作るんだっけ? 今日」

桐乃「和風にしようかなーって思ってんの。 で、前に黒いのから茶碗蒸しの作り方教えてもらったし、それと焼き魚って感じかな」

へええ。 なんか桐乃が遠い存在になってしまったように思えてくるぜ。 ついこないだまで包丁の持ち方さえ危なかったっつうのにさ。

ついこないだって言っても、もう二年くらい前になるのか? そこまで前では無いか。 けど、本当に努力してるんだな、こいつ。

198: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:06:32.67 ID:1f0QAB9H0
桐乃「あ、ちょっと付いてきて。 冷蔵庫にだし汁入ってるから、今日はそれ使う」

京介「だし汁? って、何の?」

桐乃「茶碗蒸しの。 あんた、本当になんも知らないんだね」

京介「桐乃と暮らすようになってから、殆ど料理なんてお前任せだしなぁ。 おかげで毎日美味い飯だぜ?」

桐乃「ふん……」

照れやがって。 可愛い奴だ。

199: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:07:36.52 ID:1f0QAB9H0
桐乃「これさ、黒いのから貰ったんだけど、すっごく美味しいんだよねぇ。 今度、これの作り方も教えてもらうんだ。 えへへ」

この嬉しそうな桐乃を見たら、黒猫はどんな顔をするんだろうな? 桐乃から直接これだけの好意を受けたことなんて、あいつは殆ど無いだろうし。

京介「良かったな。 はは」

桐乃「でしょ? 他にもあいつ、なんか色々知ってそうだし……沢山教えてもらおっと」

桐乃「で! 京介はぼーっとしてないで早く材料切ってよ。 椎茸と人参と鶏肉置いておくから」

京介「お、おう。 えっと……どんな風に切ればいいの?」

200: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:09:13.55 ID:1f0QAB9H0
桐乃「あーもう! ちょっと見てて。 こうして、こうするの」

桐乃は言いながら、食材を手際良く切る。

桐乃「分かった?」

な、なんとなくは分かった。 てか、足引っ張ってる気しかしねえよな……これ。

京介「た、多分大丈夫だ。 よし」

それから四苦八苦の末になんとか材料を切り終え、一安心。

201: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:09:40.58 ID:1f0QAB9H0
俺はもう、お前の小さな手を一緒に切っちまうことにならないか心配で心配で仕方なかった。

そんな心配を知らず、桐乃は手際良く容器やらを出し、材料と卵を中に入れる。

桐乃「よし! 後は蒸し器で~」

おおう。 いつの間にそんなのを買ったんだ。 全然知らなかった。

京介「それ、いつ買ったの?」

桐乃「んー? 最近だよ。 あやせと仕事だったとき、その帰りに買ったの」

203: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:10:07.61 ID:1f0QAB9H0
京介「へえ……」

まさか、茶碗蒸しの為だけに買ったとかか? 確かにこいつだったら買いそうだ……。

桐乃「レンジでも作れるみたいなんだけどね。 どうせなら、本格的に作りたいじゃん?」

京介「俺の為にそこまでしてくれるなんて、泣けてくるぜ」

桐乃「べ、ベツにあんたの為じゃないっての!! ばか!!」

205: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:12:43.09 ID:1f0QAB9H0
桐乃は言い、手をぶんぶんと振り回す。

手首超痛いからやめてくれ!!

桐乃「……で! このまま後は少し待ってからみつば入れて、後は待つだけ。 その間に魚も焼いちゃお」

京介「お、おう」

そんなこんなで、料理を作る俺たち。

俺はもう疲れ果ててしまっていたのだが、桐乃はやたら元気そうだ。 楽しいんだろうな、料理作るのが。

206: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:14:19.59 ID:1f0QAB9H0
京介「……おおお。 滅茶苦茶美味そうじゃねえか」

桐乃「でしょ? あたしが作ったんだから、当たり前じゃん?」

さて。

ここまでは特に問題無し。 至って普通に料理を作れたのだが。

問題はここからだ。 俺はある一つのことを危惧している。 先ほどからずっと。

京介「座る場所は……隣同士じゃないと駄目だよな。 やっぱ」

桐乃「ま、仕方ないでしょ。 今日はトクベツに隣座ってあげるから」

207: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:14:51.82 ID:1f0QAB9H0
京介「へいへい。 なんか距離近く無いか?」

桐乃「そ、そんなことないっての。 もしそう思うなら、それはこれの所為だから」

言い、桐乃は手を持ち上げ、俺に手錠を見せる。

……体がすげー密着しているのも、多分その所為ということにしておこう。

京介「それでな……桐乃。 一つ問題があるんだ」

桐乃「なに?」

208: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:16:08.31 ID:1f0QAB9H0
京介「俺が右手を食べる為に使うと、お前の左手も一緒に持ち上がるだろ? それって、お前がすげー疲れるんじゃないかと思うわけよ」

桐乃「……確かに、食べ辛いし疲れるカモ」

京介「だから、とりあえずお前先に食べちゃえよ。 俺待ってるからさ」

桐乃「はぁ? あたしが折角作った料理を冷めてから食べるってゆうの? 信じられないんですケドぉ」

京介「だったらどうすんだよ? お前は両腕動かしながら食わないといけねーんだぞ?」

桐乃「……良い方法、一つあるケド」

209: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:16:47.16 ID:1f0QAB9H0
京介「な、なんだ?」

桐乃「あたしが京介に食べさせて、京介があたしに食べさせるの。 それなら大丈夫……だと思う」

京介「……それは違う意味で大丈夫じゃないんだが」

桐乃「だ、だって仕方ないでしょ! うん、仕方ない……仕方ない」

そう自分に言い聞かせるように、桐乃は何度も呟く。 そこまで仕方ないを連呼されると、ちょっと悲しい。

京介「わ、分かったよ。 そうしよう」

俺はそう返すと、左手でスプーンを持つ。

210: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:17:22.25 ID:1f0QAB9H0
これは茶碗蒸し用だったのだが、慣れない左手となるとこっちの方が他のを取るのにも良さそうだな。

てか、今更だけどそれなら俺は左手で飯を食えば良かったのでは……と思う。 いやまあ、今更だけどね。

桐乃「……は、早くしてよ」

桐乃は俺とは反対側を向き、小さく言う。 つか、そっち向いてたら食べさせられねーぞ?

京介「ほら、桐乃。 こっち向けって」

桐乃「……チッ」

可愛らしく舌打ちをすると、桐乃はようやく俺の方に顔を向ける。

211: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:17:50.25 ID:1f0QAB9H0
京介「……」

桐乃「無言でする!? フツーは「あーん」ってするでしょ!?」

そこでキレるのかよ!? 俺だってすっげえ恥ずかしいんだよ!

京介「わ、わりいな。 んじゃ……あーん」

桐乃「……」

桐乃は無言で口を開け、俺はスプーンですくった茶碗蒸しを桐乃の口の中へ。

212: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:18:22.53 ID:1f0QAB9H0
……予想以上に恥ずかしい。 風邪を引いてぶっ倒れている時は仕方なく……ってのもあったから何とか正気を保つことができたが、通常の状態でこれはかなり来る物があるな。

桐乃もそれは同じ様で、物凄く恥ずかしそうにもぐもぐと口を動かす。

京介「……次、お前の番だけど」

桐乃「わ、分かってるっての」

桐乃は右手で俺と同じ様に茶碗蒸しをすくい、俺の方へ押し付ける。

桐乃「……」

京介「さっき桐乃「無言でやるな」って言ったじゃねえかよ!? なんでその本人が無言なんだ!!」

213: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:19:10.77 ID:1f0QAB9H0
桐乃「あ、あたしは良いの!! 文句ある!?」

京介「あるっての! 俺だってお前に「あーん」ってして欲しいからなぁ!」

勢いに任せて本音を言う。 こういう時の対処法。 どうにでもなれ。

桐乃「な、なら仕方ない……」

桐乃「……はい。 あーん」

……か、可愛い! 手、ぷるぷる震えてるし、何より表情がやべえ! ていうか近いし!

214: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:19:44.07 ID:1f0QAB9H0
京介「お、お前可愛いな」

桐乃「ぶっ! な、なにいきなり!? やめてよ!!」

そう言うと、桐乃は慌てて俺と距離を取ろうと動く。 で、当然俺の腕ごと引っ張られ、桐乃と一緒にその場に倒れ込むこととなった。

京介「……急に引っ張るなって」

桐乃「京介がヘンなことゆうからじゃん……いきなり」

自然と俺の右手と桐乃の左手が、重なっていた。

215: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:20:10.79 ID:1f0QAB9H0
京介「き、桐乃……」

桐乃の手はとても暖かく、柔らかく、なんだか安心する感じ。

桐乃「……いつまでも押し倒してるの」

口ではそう言うが、抵抗する桐乃の力は弱い。 ううむ、なんだこの状況!

京介「め、飯食おうぜ。 冷めちゃうから」

危ねえって、本当に。 理性がな。

216: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:20:53.97 ID:1f0QAB9H0
桐乃「……ふん」

桐乃は不満そうに言い、俺と一緒に起き上がる。

桐乃「あんたってほんと意気地なし。 ばか」

……多分、キスくらいしろとのことだろう。 だけどこの状況でキスなんてしたらどうなるか分からないんだっての。

桐乃には本当に申し訳ないけどさ。

京介「……ごめん」

217: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:21:20.39 ID:1f0QAB9H0
桐乃「そこまで本気で謝らなくても良いって。 ほら、あーん」

桐乃はいつもの様に笑い、スプーンに乗せた食べ物を俺の口へと運んでくる。

優しい奴だよ。 俺の妹は。

桐乃「ひひ。 あたしの手料理をあたしに食べさせて貰うとか、あんた超幸せ者だからね? 分かってんの?」

京介「当たり前だろ? そういうお前はどうなんだよ?」

桐乃「教えてあげなーい。 えへへ」

まあ、言わずともその顔を見ればそんなのは分かるけどな。

218: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:21:49.71 ID:1f0QAB9H0
京介「ご馳走様でした」

桐乃「お粗末様。 で、これからどうするの? エロゲーやる?」

食後にすぐその発想かよ。 お前は。

京介「いや……俺的には風呂に入りたいんだけど……」

桐乃「く……やっぱそう来る?」

京介「……まあな」

桐乃も恐らくは風呂には入りたいのだろう。 だけど、状況が状況だ。

219: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:22:15.62 ID:1f0QAB9H0
京介「でもさ、結構一緒に入ってるんだし、別に良くね?」

桐乃「いつもはお互いあんま見ないようにしてるでしょ! でも今日、この状態で入ったら絶対見ちゃうっての!!」

京介「そうだけどさ……」

京介「だったらどうすんの? お互い順番に扉越しで入るか?」

桐乃「それしか無いでしょ。 てか、今考えたら一緒に入ったら服絶対濡れるじゃん」

……そりゃそうだ。 今着ている服……下は脱げなくも無いが上は脱げない。 ってことはそうなっちまうよな。

220: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:22:56.14 ID:1f0QAB9H0
京介「あー。 じゃ、そうすっか。 最初はお前入っちゃえよ。 俺は外で座って待ってるから」

桐乃「おっけ。 じゃあいこ」

京介「おう」

で、風呂場に到着。

桐乃「ふ、服脱ぐから、目瞑って」

京介「……おう」

今回見たら、さすがに桐乃は今度こそ許してくれないかもしれん。 だから俺は必死に目を瞑り、顔を伏せる。

221: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:23:29.44 ID:1f0QAB9H0
桐乃「……よいしょ」

桐乃の呟く声と同時に、服を脱ぐ音が聞こえる。

……なんか妙にエロいぞおい。

桐乃「ね、ねえ。 ちょっと良い?」

京介「ん? 何だよ?」

桐乃「……その、ブラ外せない」

京介「ぶっ! お、俺に言われても困るっての!!」

222: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:23:56.85 ID:1f0QAB9H0
桐乃「だ、だって片手だと外しにくいの! あたし普段両手使ってるし!」

京介「そんな事情は聞きたくねえよ! 俺にどうしろっつうんだ!?」

桐乃「だから外してって! あんたしかいないでしょ!?」

京介「……目、開けていいのかよ?」

桐乃「そうしないでどうやって外すのよ」

京介「わ、分かった」

ゆっくりと、目を開ける。

223: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:24:23.53 ID:1f0QAB9H0
桐乃は俺に背中を向けていて、既に下着姿。 上も下も。

京介「お、お前なんで下も脱いでるんだよ!?」

桐乃「先に脱いだんだから仕方ないでしょ!! あんま見んなッ!!」

見ない方が無理だっつーの!

だ、だがことは急いだ方が良い。 あまりじろじろ見るのも精神衛生上良くない。 確実に。

京介「……よし」

224: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:24:50.21 ID:1f0QAB9H0
俺は桐乃の背中を見つめ、手を伸ばす。 空いている方の手。

……改めて思うけど、肌綺麗だよなぁ。 間近で見てこれだから、触り心地が良いのも分かるってもんだ。

桐乃「……あんた絶対見てるっしょ。 早くして」

京介「……おう。 わりいわりい」

見てるというか、見蕩れていたという感じだけどな。

俺は桐乃に急かされ、ホックに指を掛け、外す。

225: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:25:16.24 ID:1f0QAB9H0
京介「こ、これでいいか?」

桐乃「……ありがと」

その言葉を聞き、俺は再び目を瞑る。

桐乃「てか、なんでそんな外し慣れてるの?」

京介「べ、別にそんなことはねーよ?」

桐乃「ウソ。 あたしだって片手で外せないのに、ヘンだし」

京介「そりゃあ、自分でやるのと人にやってもらうのじゃ全然違うからじゃね?」

226: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:25:43.28 ID:1f0QAB9H0
桐乃「……なんか怪しい。後で問い質すから。 浮気してたらぶっ飛ばす」

京介「してねえよ! 俺はお前一筋だって!」

桐乃「……なら良いケド。 でも後で理由は聞くからね」

凄く言いたく無い。 ほぼ確実に笑われるから。

桐乃「よし。 もう見てないよね?」

京介「見てねーよ。 さっさと入れ、さっさと」

227: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:26:17.94 ID:1f0QAB9H0
桐乃「ふん。 上に着てた制服は、あんたの腕に掛けとくから。 ヘンなことしたら殺す」

京介「しねえよ! さっさと入れって!」

全く、どんだけ恥ずかしがってやがるんだっての。

そして、ようやく風呂場の扉が開く音が聞こえてきた。

京介「……目、開けても大丈夫か?」

228: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:26:46.83 ID:1f0QAB9H0
「うん。 平気」

反響した声で聞こえ、俺は桐乃が風呂場に入った事を理解し、目を開ける。

俺の腕には桐乃のワイシャツ。 高校に行くときに着ている物だ。 この状況になったとき既にワイシャツ姿だったので、過ごしやすいと言えばそうかもしれない。

で、桐乃は扉ぎりぎりのところでシャワーを使っているようで、やたら近くで音が聞こえる。

まあ、こう繋がれている時点でそうするしかねえんだけど。

にしても。

それにしてもだ。

229: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:27:15.75 ID:1f0QAB9H0
……桐乃の服から、温もりを感じるのだが。

さっきまで着ていたのもあり、暖かい。

しかし動かすわけにもいかず、それに耐えなければならない。

加えて桐乃がシャワーを浴びている音だ。 ふむ。

……待て待て待て。 俺って今かなりの状況じゃねえのか!?

普段一緒に入っているはずなのに、なんで俺はこんなどっきどきしてんだよ!?

230: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:27:53.58 ID:1f0QAB9H0
ああ、マジでやばいっつの。

「なんかヘンなこと考えてない?」

京介「別に考えてねーって!」

お前は俺の考えが読めるのかよ? 怖いって。

もうね。 この状況でそういうことを考えない方がどうかしてるって。 は、早く終わって欲しい。

「匂いとか嗅がないでよ?」

京介「か、嗅ぐわけ無いだろ?」

231: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:28:20.08 ID:1f0QAB9H0
……ちょっとくらいな?

嗅ごうと思って嗅いだわけでは無いから、セーフ!

「……汗とか気になるから、ね」

京介「いや、全然大丈夫だって。 そんなのしなかったから」

「あ、あんたやっぱ嗅いでるじゃん! 後で覚えとけ」

京介「はめやがったな!? お前!」

232: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:29:00.28 ID:1f0QAB9H0
「京介が勝手に引っ掛かったんでしょ! あたしが悪いみたいな言い方しても、あんたが悪いんだかんね」

京介「……後でいっぱい抱き締めてやるから、勘弁してくれよ」

「ま、マジで!?」

「……」

「今の無し!! 今のは無しッ!!」

京介「へっへ。 しっかり聞いちゃったもんね~。 そんな嬉しいのか? おい」

233: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:29:26.24 ID:1f0QAB9H0
「うっさい! 黙れ!」

京介「やだよ~。 録音しちゃったからな」

「は、はぁ!?」

桐乃は言うと、勢いよく扉を開ける。

京介「お、おまっ! か、隠せよ!!」

慌てて顔を逸らす俺。

桐乃「あ、あんたが録音したとか言うからでしょ!? 何してくれてんの!?」

234: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:29:53.50 ID:1f0QAB9H0
京介「冗談だっつの! てか、良いから早く風呂戻れって!」

桐乃「じょ、冗談……?」

桐乃は数秒黙り、次に口を開いた時は、俺の腹辺りに桐乃の足がめり込んだのと同時だった。

俺はその時必死に目を瞑っていたので、もしかしたら拳だったかもしれない。 けど多分、威力的に蹴りだろう。

桐乃「死ねぇええええええぇえええ!!」

恥ずかしがり屋の妹を持つと大変だぜ。 やれやれ。

235: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:30:21.11 ID:1f0QAB9H0
そして二人とも何事もなく入浴を終え、再びコタツ。

桐乃「……チッ」

先ほどから桐乃が何度も舌打ちしているが、何事もなかった。 うむ。

ま、本当のところを言うと俺が入ったときも似たようなやり取りがあったということだ。

ただの喧嘩って奴だな。

京介「んな怒るなって。 な?」

236: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:30:48.22 ID:1f0QAB9H0
桐乃「自分が何してくれたか分かってんの?」

京介「だから謝ったじゃんかー。 お互い様だろ?」

桐乃「あたしは妹、あんたは兄貴。 だからあたしの方が偉いの。 分かる?」

京介「いや全然分からないが……」

桐乃「はぁ。 これだからあんたはダメなの。 あたしみたいなちょー可愛い妹なんて、あたしくらいだからね?」

237: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:31:14.71 ID:1f0QAB9H0
京介「お。 それは分かるぜ! お前は超可愛い!」

桐乃「……」

桐乃は湯上りの顔を更に赤くし、目を見開く。

簡単に言えば、驚いて固まった感じ。

俺はそんな桐乃を優しく抱き締めた。

京介「さっきはごめんな、桐乃」

桐乃「……今回だけだかんね。 許してあげる」

238: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:31:44.79 ID:1f0QAB9H0
京介「おう。 サンキュー」

桐乃「……次やったら、これだけじゃ許さないし」

京介「へへ。 分かったって」

桐乃「……分かればよし」

俺はその言葉を聞くと、桐乃から離れる。 離れるつっても、この手錠の所為で依然、距離は近いけど。

そして桐乃はというと、俺が離れるのが予想外だったのか、どこか寂しそうな顔をしていた。

239: ◆IWJezsAOw6 2013/08/22(木) 13:32:10.37 ID:1f0QAB9H0
桐乃「ちょ……」

京介「ん? どした?」

桐乃「……なんでもないっつの」

京介「はは。 冗談だって」

俺は言って、再度桐乃の体を寄せる。

京介「もうちょっとこうしてるか」

桐乃「か、勝手にすれば……」

それからしばらく、俺と桐乃は無言で身を寄せ合うのだった。


繋がって 終

254: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:02:57.08 ID:+Th5y3R+0
京介「おし。 じゃあ寝るか」

桐乃「うん。 明日、あやせが戻ってきたら電話するね」

桐乃とあれからエロゲーやらで遊んで、既に大分遅い時間。 そろそろ寝ようと提案し、桐乃も二つ返事で頷く。

そして布団を敷き、電気を消した。

桐乃「あ、そだ」

布団に寝転がるとすぐに桐乃は口を開く。

255: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:03:23.37 ID:+Th5y3R+0
京介「ん?」

桐乃「さっきの件、まだなんも聞いてないんですケド」

京介「……さっきの件って?」

桐乃「京介がブラを外し慣れてたこと」

うわ。 てっきりその話は流れた物だとばかり思っていたのに。 嫌なタイミングで思い出す奴だ、全く。

京介「あ、あれは……すげえ苦労したんだぞ? さっき外すのに」

256: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:03:57.32 ID:+Th5y3R+0
桐乃「はいウソ乙。 苦労したのにあんな早く外せるワケないでしょ」

京介「……うう」

桐乃「早く言え」

暗くて桐乃の顔は見えないが、俺の事を睨んでいるのは声色からして分かる。

……言うしかねえのか。

京介「……分かった、話せば良いんだろ」

桐乃「うん。 内容によるケド、許してあげるかもよ?」

257: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:04:30.68 ID:+Th5y3R+0
京介「えーっとだな。 あれは」

京介「……し、調べてたんだよ。 パソコンで」

桐乃「なにを?」

京介「その、外し方」

桐乃「……どうして?」

京介「い、いざというときの為」

桐乃「ふうん。 それっていつの話?」

258: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:04:59.23 ID:+Th5y3R+0
京介「……先月」

桐乃「……そ、それって。 あたしとそーゆうことになった時の為って意味?」

京介「……それしかねーだろ! だから言いたくねえんだよ」

俺がそう伝えると、少々の無言。

なんとも気まずく、俺はどうした物かと思考していたところ、桐乃が口を開く。

桐乃「へええ。 そんなの調べてたんだぁ~?」

京介「う、うっせ! 男なんてそんなもんだっての!」

259: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:06:09.67 ID:+Th5y3R+0
桐乃「ふうん。 ふうううん?」

京介「……んだよ。 許してくれんのか?」

桐乃「ひひ。 どうしよっかな?」

そう笑いながら言うと、桐乃は隣に居る俺に覆い被さるように体勢を変える。

例えて言うならば、俺をビンタで叩き起こすときの様な感じ。 今はそれよりも顔が近いけど。

京介「おま、急になんだよ?」

260: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:06:52.11 ID:+Th5y3R+0
桐乃「ねね、もう一回試してみる?」

京介「な、何を?」

桐乃「決まってんじゃん。 京介がパソコンで調べてたこと」

……そ、そりゃマズイだろ! 色々と!

桐乃「今日だけトクベツに試してもいいケド~」

俺はゆっくりと唾を飲み込み、否定の言葉を口に出す。

261: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:07:48.20 ID:+Th5y3R+0
京介「……後悔してもしらねえぞ?」

いやいや違うだろ! 何言っているんだ俺は!?

桐乃「上等じゃん。 ふひひ」

桐乃「はい。 じゃあこっちから手入れてよ」

桐乃はそう言い、服の下……今は上を着替えることができないからワイシャツに下はいつものパジャマなのだが。

そのワイシャツの背中側を桐乃は少しだけ捲くる。

俺は小さく返事代わりに頷き、ゆっくり、ゆっくりとそこに手を入れた。

262: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:08:16.23 ID:+Th5y3R+0
桐乃「……」

桐乃は黙ったまま俺のことを見つめる。 月灯りでほんのり照らされた顔は妙に色っぽく、俺も視線は外せずにいる。

こいつの肌はやはりすべすべとしていて、柔らかい。 だけど陸上をやっているのもあり、しっかりとしていた。

そして、ついに俺の手は桐乃の背中の上辺りまで回り……。

京介「あ、あれ。 お前」

桐乃「ん~?」

京介「……着けてねえだろ?」

263: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:08:56.24 ID:+Th5y3R+0
桐乃「うん。 寝る前だしね」

桐乃「てか、なに妹の服の中に手突っ込んでんの? シスコンきも~い! ひひ」

京介「お、お前がそうしろって言ったんじゃねえかよ!!」

桐乃「覚えてないし。 ふひひ」

……やられたぜ。 見事に騙された。

京介「この!」

俺の上に乗りケタケタと笑う桐乃を俺はそのままがっしりと抱き寄せる。 片腕で思いっきり。

264: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:09:22.14 ID:+Th5y3R+0
桐乃「ちょ、なにすんの!?」

京介「決めたぜ。 今日はこうやって寝る」

桐乃「は、はぁ!? あたしは抱き枕じゃないっての!」

京介「やだよ~だ。 お前が俺をからかった所為だからな?」

桐乃「……変態」

京介「お前を抱き締められるなら、変態でもいいっての」

桐乃「ふん。 なら、もうちょっと優しく抱き締めてよ。 痛いから」

265: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:09:50.16 ID:+Th5y3R+0
京介「お、おう。 悪い」

俺は力を抜き、優しく抱き締める。

が、そうした瞬間、桐乃は俺の腕を解き、逆に思いっきり抱き着いてきた。

桐乃「ひひ。 あんたがあたしの抱き枕になるの。 絶対離さないから。 今日はこれで寝る~」

京介「……りょーかい」

正直言って気が気じゃないけど……桐乃に抱き締められていると、とても穏やかな気分になれた。

自然と俺も桐乃を抱き締めて、そんな感じで俺と桐乃は眠りに就く。

266: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:10:20.39 ID:+Th5y3R+0
桐乃「ちょっと、いつまで寝てんの?」

頬に衝撃。 ああ、桐乃だ。

京介「んー……。 おはよう」

桐乃「とっとと起きてよ。 あんたが起きないとあたしも起きれないんだから」

そう言い、カチャリという音と共に手錠を俺に見せ付ける。

……起きたら実は夢でしたなんてオチを期待していたが、どうやらそれは無いらしいな。

267: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:10:46.19 ID:+Th5y3R+0
つか、上だけワイシャツって今更ながら超アレだな。 アレって言えば分かるだろ。 アレだよ。

そんで、そんな桐乃と一緒の布団で寝ていたとか、変な罪悪感が沸いてくるぜ。

京介「……ああ、今日あやせが帰ってくるんだっけか?」

桐乃「そ。 午後になるみたいだから、それまでこうだけどね」

京介「……ならもう一回寝ようぜー。 俺眠い」

桐乃「ダーメ! あたしはもうばっちり起きてるんだから!」

268: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:11:15.13 ID:+Th5y3R+0
言うと、桐乃は俺の頬をぺちぺちと叩く。 力は入っておらず、なんだかくすぐったい。

京介「……うー」

眠い物は眠い。 俺って休みの日は基本、昼近くまで寝ているし。

桐乃「おーきーろー」

桐乃は頬を叩くのをやめると、次は俺の頬を引っ張る。 両手で違う方に引っ張っているので、俺の右手もそれにつられ動くこととなる。

……俺の頬はお前の遊び道具じゃねーぞ、くそ。

269: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:11:45.33 ID:+Th5y3R+0
京介「もうひょっとらけなー」

桐乃に引っ張られている所為でうまく喋れないが、俺はそんなのを気にせずに言う。

多分、睡魔はこの世でかなり上位に食い込める強さだろう。

桐乃「……よっと」

桐乃は言い、俺の上で体勢を変え……そして。

270: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:12:11.23 ID:+Th5y3R+0
桐乃「……ん」

キスをしてきた。

キスをしてきた。

キスをしてきた。

俺の唇に自分の唇を重ねてきた。

つまり、キスをしてきた。

271: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:12:40.83 ID:+Th5y3R+0
京介「ばっ! お、お前なんだよ!? な、なんだ!?」

桐乃「ひひ。 起きた? 今度から起こすときこーしよっかな」

京介「た、頼むからやめてくれ! 心臓に悪すぎる!!」

桐乃「だったらちゃんと起きてよ。 起きない京介がわるーい」

京介「わ、わ、わかった。 起きる。 ちゃんと起きます」

桐乃「なら良し。 ほら、いつまでも寝転がってないで。 朝ご飯作るから」

272: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:13:20.87 ID:+Th5y3R+0
……ううむ。 マジで今度はやらないよな? 本当に朝から死ぬ思いをするから、これだけはやめて欲しいぞ。

そりゃあ超、超超超嬉しいけどさ。 本気で死ぬかと思うんだって。 俺からキスするならまだしも、こいつからとか結構レアだし。

京介「……はいよ」

桐乃「朝は楽だし、京介は立ってるだけでいいよ。 邪魔しないでね」

京介「俺的には昨日の夕飯作るときに、邪魔してた感じがすっげーするけどな」

273: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:13:53.55 ID:+Th5y3R+0
桐乃「まあね~。 それがイヤなら一緒に練習すること。 いい?」

ここで「そんなことはない」とか言わない辺り、桐乃だよな。

京介「……ぼちぼちな」

俺の言葉に桐乃はでこぴんで返事をし、台所へと向かう。

……こいつのしっかりした性格を半分ほどで良いから俺に分けて欲しい物だぜ。

274: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:15:34.56 ID:+Th5y3R+0
桐乃「はい、あーん」

桐乃は作ったご飯を俺の口へと運ぶ。

京介「あーん……って、お前なんかノリノリだな」

桐乃「は、はぁ!? なワケないでしょ! チョー嫌々だっての!」

にしては顔だらしなくなってんぞ。 多分、俺もだけど。

京介「へいへい。 で、今日はどうすんだ? 午後まで」

……あれだな! これってあれだ! 新婚夫婦みたいじゃね!?

275: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:16:06.95 ID:+Th5y3R+0
桐乃に言ったらもうやって貰えなくなりそうだから言わないけどさ! そう考えると俺って超幸せじゃね!?

こんな可愛い奴と新婚夫婦みたいになるって、悪くねえぞ!

桐乃「外に出るワケにはいかないし……久しぶりに、なんか雑談でもする?」

京介「雑談なら毎日してねえか?」

276: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:16:33.06 ID:+Th5y3R+0
桐乃「じゃなくて。 こんな状態だしさー。 京介が本当に想っていることとか、聞きたい……かも」

京介「……別に構わないけど、それならお前も話してくれるのか?」

桐乃「まあね。 なんか今日機嫌良いし、いいよ」

ああ、だからあんな朝からテンション高かったのね。 得心いった。

277: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:17:07.84 ID:+Th5y3R+0
で、壁を背に俺と桐乃は並んで座る。

京介「……んー、何から話すか悩むな」

桐乃「とりあえず、この状況になってどう感じてるかで良いんじゃない?」

この状況になって、か。

京介「おう。 分かった」

桐乃「……」

桐乃は黙り、頭を壁に預ける。

278: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:17:42.66 ID:+Th5y3R+0
京介「正直に言うと、あんま変わらないなってのが本当のところかな」

京介「結局はお前とはいっつも一緒だし、そりゃ多少は不便もあるけどさ。 でも、別に負担とかにはならねーかなって思う」

桐乃「……そか」

どこか安心した様に、桐乃は漏らす。

京介「心配だったか? 俺が迷惑してるんじゃねーかって」

279: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:18:09.84 ID:+Th5y3R+0
桐乃「ま、一応はね。 結局はあたしの所為なんだし。 いっつも迷惑ばっか掛けてるなって思ってた」

京介「お前はほんと心配性だよなぁ。 俺はお前に掛けられた迷惑なんて、今となっちゃ楽しいくらいに思ってるんだからよ」

桐乃「だよね。 ひひ」

京介「だからって何でもしていいってことじゃねえぞ? 念の為言っておくけどな!」

桐乃「うーん。 じゃあ、あたしの奴隷になれとかあり?」

京介「……今の時点で半分そんな感じじゃねえか」

280: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:18:37.14 ID:+Th5y3R+0
桐乃「あ、自覚あったんだ」

京介「さっきの発言無しにしていいか?」

桐乃「ダメー。 一度言ったんだから、責任持ってよね」

京介「……へいへい」

桐乃「あはは」

俺も桐乃と同じ様に、壁に頭を預ける。

なんだか、とても心地良い時間に思えるぜ。

281: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:19:03.62 ID:+Th5y3R+0
桐乃「あたしはさ」

桐乃「……これだけ分かっていて欲しいんだケド、毎回毎回……どんなことでも、ね。 しっかり感謝してるから」

京介「知ってるよ。 そんなこと」

桐乃「ひひ。 そか」

桐乃「いつか、しっかり返すから」

京介「何言ってんだよ。 俺は好きでお前の傍に居るんだっての。 返す物なんてねーよ」

282: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:19:33.60 ID:+Th5y3R+0
桐乃「その辺はケジメなんだって。 京介がいくらいらないって言っても、絶対返す」

京介「……そうかい。 んじゃ、ありがたく貰っておいてやるかな」

桐乃「うん。 それで良し」

桐乃は微笑んでいて、俺はそんな横顔を見て、同じように笑っていたと思う。

そして唐突に、桐乃は言った。

桐乃「もし、もしもさ」

283: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:20:00.87 ID:+Th5y3R+0
桐乃「これ、変なフラグとかじゃないから、一応言っておくケド」

桐乃「あたしが明日死ぬってなったら、どうする?」

京介「思いっきりフラグじゃねえかよ……まあ、そうだなぁ」

京介「俺も明日まで生きられれば良い。 つったら、お前は怒るだろうな」

桐乃「……まーね。 本音は嬉しいと思うかもしれないケド、怒ると思うよ」

京介「だったら俺は頑張るしかねえよ。 死にたいって思うかもしれないけど、頑張るしかねえだろ」

284: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:20:28.23 ID:+Th5y3R+0
桐乃「そかそか」

京介「……お前、マジで変な病気とか掛かってないよな?」

桐乃「どんなクソゲーだっつーの。 あるワケ無いでしょ。 あたしが義妹だーって言うくらい、それクソゲーだから」

京介「だよな。 へへ」

今のこの状態だからこそ、こんな会話が出来るんだろうさ。

俺も桐乃も、距離は置けないから。

……少しだけ、あやせに感謝だな。

285: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:20:54.30 ID:+Th5y3R+0
京介「逆にさ、俺が明日死ぬって言ったら、どうする?」

俺は桐乃にそう切り出し、返事を待つ。

桐乃「んー。 お葬式には出てあげるかな」

京介「……今日は本音トークだぞ、おい」

桐乃「ひひ。 まぁ」

桐乃は続けた。 顔を少し上に向けて。

桐乃「泣く、かな」

286: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:21:22.76 ID:+Th5y3R+0
京介「……そっか」

桐乃「うん。 泣く」

京介「なら絶対死ねないか。 俺は決めたし」

桐乃「……あたしを悲しませないって? 前に言ってたケド」

京介「そーいうこと。 失敗することもあるかもしれないけどな」

桐乃「大丈夫っしょ。 この一年……あたし、ずっと幸せだったよ」

京介「そりゃ、最高の言葉だぜ」

287: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:21:51.06 ID:+Th5y3R+0
桐乃「……よし。 じゃあコレ外れたら、エロゲー買ってきて」

京介「なぜそうなる!?」

桐乃「あたしぃ、京介がエロゲー買って来てくれないと死ぬほど悲しいのぉ」

京介「て、てめえ。 人を良い様に使うんじゃねえ!!」

桐乃「あははは。 冗談だって。 一緒に行こう、一緒に」

京介「……おう、そうだな」

急に俺の方を見て笑うんじゃねえっての。 その不意打ちは反則だからな。

288: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:22:19.84 ID:+Th5y3R+0
桐乃「なんかさ」

桐乃「……こんな風に本当のこと話せるなんて、思ってもいなかった。 人生相談始めたばっかのときはさ」

京介「そっか」

桐乃「色々ありがとね。 京介」

京介「俺も、色々ありがとな」

桐乃「京介はまず、あたしが妹だってことに感謝するところからかなぁ」

289: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:22:46.84 ID:+Th5y3R+0
京介「なら、お前は俺が兄貴だってことに感謝するところからだな」

桐乃「はぁ? なに調子乗ってんの、キモ」

そう言う桐乃は、笑顔。

京介「そうかよ。 で、本音は?」

桐乃「感謝してるよ。 ずっと、昔から」

最後に桐乃はそう言った。 俺の右手をしっかりと握りながら。

京介「……へへ」

290: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:23:17.38 ID:+Th5y3R+0
そんな会話をそれからしばらく続け、時刻はやがて昼過ぎになる。

桐乃「あ! あやせからメールきてた」

京介「お。 戻ってきたってメールじゃないか?」

俺の言葉を聞き、桐乃は片手で携帯を操作する。

京介「て、てかさ。 今更だけど……あやせはこの状況を知っているってことだよな? 俺、殺されるんじゃね……?」

291: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:23:51.76 ID:+Th5y3R+0
桐乃「んー? 大丈夫でしょ。 あやせそこまで怒ってないカンジだったし」

京介「……本当か?」

桐乃「もしそうなったら、あたしが守ってあげるから」

京介「頼りになる妹だよ……お前は」

桐乃「ふひひ。 あたしに任せなさい!」

292: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:24:18.24 ID:+Th5y3R+0
桐乃が受け取っていたメールはやはりあやせからで、地元に戻ったから急いでこちらへ来るとのことだった。

桐乃は電話を掛け、あやせと会話をして、数十分もしない内に到着するとのこと。

その電話から本当にすぐにあやせはやってくる。 さすがはあやせさんだぜ!

あやせ「……本当に何しているんですか、お兄さん」

京介「こ、これは事故なんだって! なあ? 桐乃」

桐乃「京介が無理矢理あたしに付けてきたんじゃん? なに言ってんの」

293: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:24:50.24 ID:+Th5y3R+0
お前が何言ってんの!? さっきすっげー頼りになる顔付きで「あたしに任せなさい」って言ってたじゃねーかよ!!

さっきまでのなんかとっても良い雰囲気はどこ行ったんだよ!?

あやせ「全くもう。 桐乃も嘘は駄目だって。 私には分かるんだよ?」

桐乃「……まぁ、あたしの所為なんだケド」

あやせ「素直素直。 あはは」

言い、あやせは桐乃の頭をぽんぽんと叩く。 あやせって強いなぁ、本当に。

294: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:25:20.04 ID:+Th5y3R+0
あやせ「あ、それでですね。 スペアの鍵なんですけど……持って無いですよ、私」

京介「……へ?」

桐乃もそれには驚いたようで、ぽかんとした表情をしていた。

あやせ「だから二人とも、これからずっとこのままということなんですよね……」

京介「ま、マジかよ!? それお前マジで言ってるのか!?」

桐乃「ちょ、あやせメールでも電話でも大丈夫って言ってたじゃん!? ウソだったの!?」

295: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:25:47.50 ID:+Th5y3R+0
あやせ「え~? 方法、あるにはあるんですけどねぇ……」

京介「頼む! あやせ様! お願いします!」

あやせ「こんな変なことをする二人が悪いんですよ? 反省してます? 今回は大丈夫だったみたいですけど、危ないじゃないですか」

京介「反省してるって! 心の底から!」

あやせ「桐乃は、どう?」

桐乃「あたしも反省してるから! お願い、あやせ」

296: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:26:13.30 ID:+Th5y3R+0
桐乃は言うと、上目遣いであやせを見る。 うるうるとした目で。

あやせ「か、可愛い……」

京介「……おい?」

俺が言うと、あやせはこほんと小さく咳払いをし、口を開く。

あやせ「わ、分かりました。 今回だけですからね」

あやせ「というか、本当は二人だけでも外せたはずなんですよ」

あやせ「少し調べれば分かったと思うんですけど……」

297: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:26:41.14 ID:+Th5y3R+0
京介「……って言うと?」

あやせ「ここに丸いところがあるじゃないですか。 これを押し込みながら回すだけで外れるんですよ?」

言い、あやせは実践する。

すると手錠は嘘のように簡単に外れた。

桐乃「……マジで?」

京介「俺たちは一体何をしていたんだ……」

あやせ「あはは、誰も教えてくれなかったんですか?」

298: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:27:12.75 ID:+Th5y3R+0
そんなおもちゃの手錠の構造に詳しそうな奴なんて……。

居るな。 知っていそうな奴が。

京介「……そういや、昨日沙織が言おうとしてたのってもしかして」

あ、あの野郎!! 黒猫の奴もあの様子だと知ってやがったな!?

桐乃「ちょっと待って、でもそれなら……あやせもメールで教えてくれれば良かったよね?」

あやせ「……あ」

京介「お前もかよ!? なんで揃いも揃って俺の周りは面白がる奴ばっかなんだ!!」

299: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:27:38.67 ID:+Th5y3R+0
あやせ「あ、あはは。 で、ではわたしはこれにて失礼しますね。 さようなら」

桐乃「あ、あやせのバカっ! もう一緒にお昼食べてあげないかんねっ!」

あやせ「ご、ごめん! 今度絶対埋め合わせするから、許して桐乃!」

桐乃「ふ~ん。 考えといてあげよっかな~?」

やはり、あやせと桐乃では桐乃の方に分があるのか。 力関係は複雑だなぁ。

あやせ「……お願い、桐乃」

300: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:28:15.57 ID:+Th5y3R+0
桐乃「わ、分かったって。 今度、仕事帰りに喫茶店でもいこ。 それでチャラ!」

あやせ「うん。 そのくらいなら喜んで。 それじゃあ、私は帰るね」

桐乃「ばいばい、あやせ」

あやせはそのまま扉に手を掛け、静止。

あやせ「……あ、そうだ」

京介「ん? まだなんかあったか?」

301: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:28:42.10 ID:+Th5y3R+0
あやせ「桐乃。 今度手錠を貸してって頼む時は、外し方もしっかり聞いてから持って行ってね?」

桐乃「……あ、ああああやせストップ!」

……ほほう。

あやせ「え……?」

あやせは言っては駄目なことを言ったのに気付いたのか、若干冷や汗を掻く。

そして。

あやせ「……よ、用事あるからこれでー」

逃げやがった。

302: ◆IWJezsAOw6 2013/08/23(金) 13:29:08.18 ID:+Th5y3R+0
そして、残されるのは俺と桐乃。

京介「……さて、桐乃」

桐乃「な、なに? あたしもちょっと用事あるんだケドなぁ……」

京介「あやせじゃなくても、嘘だってのは分かるぜ。 理由……教えてくれるよなぁ?」

桐乃「と、とっても深い理由があるの。 マジマジ。 でも、今度ね? えへへ」

京介「超可愛らしく笑っても今日の俺は騙されねえぞ! 観念しやがれ!」

と、こんな感じで今回のひと騒動は幕を閉じるのであった。


思いと想い 終

321: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:35:02.50 ID:VJKbJHv70
2月14日。

当然のことながら、俺は桐乃からのプレゼントを心待ちにしていた。

というのも、先月あれだけ本音トークをしたのだから、俺たちの距離はぐっと縮まったと思うわけよ。 それ以前も大分距離は縮まっていたとは思うがな。

でもなぁ、俺はもっともっと桐乃と仲良くなりたい。 多分、それには終わりが見えないのだろう。 なんてことを感じている。

だからこその、この一年に一回のイベントに期待しているのだが……。

桐乃「あんた、もしかしてあたしからのチョコに期待とかしてんの?」

と、バレンタイン開始から12時間も経たずに、正確に言うと2月14日の朝9時21分頃にこいつはそう言ってきた。 夢も希望もありゃしない。

322: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:35:29.60 ID:VJKbJHv70
お前はもうちょっと、男心を理解してくれ!

京介「そ、そりゃあそうだろ? つか、言わせるなっての……」

桐乃「ふ~~~ん。 そうなんだぁ?」

京介「男だったら当たり前だって。 彼女とか妹とか女の友達とかからそういうのを貰うかもって期待すんのはな」

俺が桐乃にそう告げると、こいつは表情を一変させる。

桐乃「は? 女友達?」

地雷を踏んだ臭いぞ、これ。 一気に不機嫌顔になった。

323: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:36:02.16 ID:VJKbJHv70
京介「黒猫とか沙織とかあやせとか加奈子とか瀬菜のことだって! 他にいねーよ!」

桐乃「てか、それ全部元はあたしの友達なんですケドぉ」

瀬菜は違うだろ。 あいつは元から俺の友達だし。 言ったら「揚げ足とるな!」とか言うから言わんが。

ていうか、元はっていうと今は友達じゃないみたいに聞こえるぜ。

京介「だって仕方ねーじゃん。 お前と遊んでる内に、あいつらとも仲良くなったんだからさ」

桐乃「……ま、そこは百歩譲って許す。 でも、チョコを期待しているってどうゆう了見なワケ?」

324: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:36:38.78 ID:VJKbJHv70
京介「お、男なんてそうだって! マジで!」

桐乃「へえ。 じゃあ男の人に聞いてみよっと」

そう言うと、桐乃は携帯をカチカチ操作。

京介「お、お前男の友達とかいたの……?」

桐乃「はぁ? 京介も知ってる人だって。 御鏡さん」

ああ、びびった。 御鏡かよ。

325: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:37:04.84 ID:VJKbJHv70
桐乃「あ、もしもし~? 久し振り」

と、桐乃は電話を始める。

桐乃「あのさぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだケドぉ」

桐乃「男の人って、皆バレンタインにチョコって期待してるもんなの? 彼女からとか、友達からとか」

桐乃「妹からとか」

桐乃がそう言った直後、正面に座る俺にも聞こえる音量で、御鏡の声が聞こえてきた。

「当たり前じゃないか! 妹からのチョコ……期待しない男なんて居たら、僕が許さない!!」

326: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:37:40.86 ID:VJKbJHv70
桐乃「あ、あはは。 切るね」

そして、通話終了。

京介「……結果は聞かない方が良いか」

桐乃「なんか、傷付いた」

京介「どして?」

桐乃「だって、あたしだって一応女の子の友達なワケじゃん? なのにまるで気にされてなかったのが傷付いた」

御鏡の野郎、俺の妹を傷付けやがって。 今度会ったら手始めに殴っておこう。 うむ。

327: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:38:09.84 ID:VJKbJHv70
京介「あいつのことなんか気にするな! お前には俺が付いているからな!」

桐乃「……そう励まされると、余計落ち込むんですケドぉ」

京介「わ、わりい……」

……マズイ。 気まずいぞ。 ここは空気を変えないと。

京介「そ、それで。 お前は俺にチョコくれるの?」

桐乃「フツーそれ聞く? 察しても黙って待ってるのが紳士でしょ」

京介「最初に「あたしからのチョコ期待してんの?」って言ったのお前だからな!? 忘れたとは言わせねえぞ」

328: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:39:10.15 ID:VJKbJHv70
桐乃「はぁ。 これだからあんたは……」

京介「なんだよ……?」

桐乃「期待してて良いよ。 ね?」

笑って、桐乃はそう言った。

京介「お、おう。 超期待してる」

桐乃「と、ゆーワケで。 一回家から出てって」

京介「なんでそうなるッ!?」

329: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:40:26.38 ID:VJKbJHv70
桐乃「色々準備したいから。 去年は沙織や黒猫に手伝ってもらったケド、今年はあたし一人で作るの。 だから、ね?」

京介「……まだ作って無かったの?」

俺は必死に冷蔵庫の中とか見ないようにしてたっていうのに!

桐乃「だって、京介いっつもあたしの近くに居るじゃん。 作れなかったの」

京介「いや待て、それは違うぞ桐乃。 俺が近くに居たんじゃなくて、お前が俺の近くに居たんだ」

桐乃「なワケ無いでしょ! 昨日だって「桐乃ぉ、桐乃ぉ」って言ってあたしにべったべったしてたじゃん」

京介「それはお前が「京介、えへへ。 甘えていいよ?」とか急に言い出すからだろ!?」

330: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:42:07.14 ID:VJKbJHv70
桐乃「それもう記憶に無いから。 残念でした~」

京介「俺の記憶には残ってるんだっつーの! 今度からお前との会話録音してやろうか?」

桐乃「それやったら、あやせにぼこぼこにしてもらうし」

京介「……お前、あやせの上司か何かか?」

桐乃「ひひ。 この前の手錠のときの話出すとねぇ。 ふひひ」

……こいつの前で弱味を見せるだとか失敗とかしでかしたら、恐ろしいことになるのはあやせも一緒だったか。

331: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:43:10.11 ID:VJKbJHv70
京介「いやつーかそれで思い出した。 あの時、お前結局適当な言い訳して逃げたよな? 桐乃さんよー」

桐乃「時効だから。 きりりん大勝利~!」

京介「……ま、別にいいけどな。 俺の中では桐乃がそういう趣味があるって理解しておくことにするから、さ」

桐乃「勝手に理解すんな! あたしにはそんな趣味無いから!!」

京介「じゃあどうして?」

桐乃「い、言わないし」

京介「ふ~ん。 ならいいや~」

332: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:44:04.33 ID:VJKbJHv70
桐乃「……何その顔。 チョームカつく」

京介「いやいや、だから気にするなって。 俺の中のことだしよ?」

桐乃「あ、あんたねぇ……。 絶対に「そうか、桐乃にはそんな趣味があったのか」とか思ってるでしょ!? 変態!!」

京介「はははは。 そんなことは無いってのー。 何を言っているんだよ桐乃ー」

桐乃「棒読みムカつく! そんな知りたいの? ねえ」

京介「……知りたく無いって言えば嘘になるけど」

桐乃「……」

桐乃「や、やっぱ無し。 言わない」

333: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:44:46.70 ID:VJKbJHv70
へいへい。 そーですかっと。

ま、無理に聞こうとも思わないから構わんがな。

京介「分かったよ。 じゃ、俺は外行ってれば良いのか? お前から連絡来るまで」

桐乃「うん。 そんな時間掛かると思わないし、そこら辺ぶらぶらしといて」

京介「はいよ。 了解しました桐乃様」

334: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:45:32.71 ID:VJKbJHv70
そういう訳で、家を追い出される俺。

ぶらぶらしとけと言われても、行く場所がなぁ。

……とりあえずは散歩でもするか。

そう思い、適当に行く当ても無く歩き始める。

こんな時というのは決まって誰も彼もが暇をしておらず、会って話せる暇潰し相手も見つからないんだよね。

黒猫は妹達の面倒を見ないといけないらしいし、沙織は姉貴とデートすると言っていたし。

それにあやせと加奈子は仕事らしいし。

ま、桐乃抜きで積極的に会おうとは思わないけども。

335: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:46:53.38 ID:VJKbJHv70
はぁ……良い暇潰し相手、居ない物かね。

「よぉ! 高坂!」

ああ、居たわ。 いっつも暇そうな奴が一人。

京介「ええっと、誰ですか。 人違いじゃ」

赤城「お前、親友に会ってひと言目がそれかよ? 俺とお前は一緒にホモゲー買いに行った仲じゃねえか!」

京介「大声で妙な誤解を招く発言してるんじゃねえよ!! 確かに一緒に行ったのは事実だが、お前の言い方は気持ち悪すぎるっての!!」

336: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:47:48.61 ID:VJKbJHv70
赤城「おお、やっぱ俺の親友の高坂じゃねえか。 何知らない振りしてんだよ」

京介「いや……お前と一緒に遊ぶと、大体ろくでも無いことになるからな」

赤城「んなことねーって。 大袈裟だなぁ、高坂は! たまにはゆっくり話そうぜ? な?」

……ま、俺も俺で暇だし良いか。

京介「分かった分かった。 んじゃあ、公園のベンチにでも座って話そうぜ。 なんか話すことあるんだろ?」

赤城「そうなんだよー! さすが高坂、俺の気持ちを理解してくれる良き親友だぜ!」

……こいつ、順調に瀬菜の影響受けつつあるんじゃないか? 少し心配になってきたぞ。

337: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:50:01.07 ID:VJKbJHv70
京介「んで、お前はどうして休日の朝っぱらからこんなところで散歩してんだ?」

赤城「それがさぁ! 瀬菜ちゃんに追い出されたんだよ……「お兄ちゃん、家から出てって」って言われて」

赤城「これってあれだよな? 今日の日付と行動を考えるに……瀬菜ちゃんからのバレンタインチョコだよな!?」

……俺と同じかよ、こいつも。

いやでも待てよ。 そういえば確か……この前、桐乃が「せなちーから、バレンタインのチョコって男の人はどんなのが良いのか教えて欲しいって言われてるんだけど」とか言ってたな。

で、俺は「なんでお前にそれを聞いたのかは謎だが……貰う側としちゃ、どんなのでも嬉しい物だろ」と返した。

338: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:50:37.54 ID:VJKbJHv70
これだけならあれだ。 瀬菜が赤城にプレゼントするんだろうなって思えた。

俺には桐乃が言った最後の言葉がどうしても気になるんだ。 えっと、確か。

「せなちー、彼氏さんを呼んで家でデートするんだって。 なんか良いよね、そういうの」

と。

京介「そ、そうだな! 俺もそう思うぜ、赤城!」

赤城「だろ!? いやぁ、早く瀬菜ちゃんからの呼び出し来ないかなぁ……うへへ」

こいつ、明日自殺でもしてるんじゃないだろうか。 心配になってきた。

339: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:51:20.43 ID:VJKbJHv70
もし赤城が明日生きていたら、間違いなく真壁の死体が発見されるだろう。 俺の身近にこんな犯罪者が居たなんて……怖い怖い。

赤城「つか、そういうお前は何してるんだよ? こんな朝っぱらから」

京介「ん? 俺か? お前と一緒だよ。 家から追い出された」

赤城「へえ。 あれ? でも高坂って、今一人暮らししてるんじゃなかったっけ?」

……まずったか、これは。

京介「あ、あー。 えーっと」

京介「い、妹が家に来てるんだよ。 今な」

340: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:51:50.30 ID:VJKbJHv70
赤城「ほう……つまりは俺と同じ境遇と言う訳か」

京介「補足な。 俺の家は桐乃の友達の集合場所になっているんだ」

赤城「……ドンマイ、高坂」

俺は別々の事実を言っただけで、嘘は付いていない。 そして俺の肩に手を置く赤城の姿が、俺には哀れに見えて仕方なかった。

京介「は、はは。 お前は羨ましいよ、妹に好かれていて」

赤城「だろ? いやぁ、確かに高坂の妹はすげー美人だけどな」

京介「お前もそう思うか!? へへへ」

341: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:52:21.12 ID:VJKbJHv70
赤城「まあな。 モデルもやってるくらいだし、出来ることなら紹介して欲しいくらいだぜ」

京介「あ? 今何て言ったお前。 明日と言わず、今日死にたいのか?」

赤城「……冗談冗談。 お前、目が殺意に溢れてるぞ」

京介「なら良し。 特別に許してやる。 感謝しろよ?」

赤城「お、おう」

赤城「てか、明日と言わずってどういう意味だ?」

京介「ん? そんなこと言ったっけ、俺」

342: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:52:53.38 ID:VJKbJHv70
赤城「言ってたと思うが……」

京介「気のせいだろ。 疲れているんだよ、赤城」

赤城「……確かに最近、瀬菜ちゃんからゲーム買ってきてって頼まれることが増えたからなぁ」

それは恐らく、家に真壁を呼んでいるからだろう。

真実を知ったらどうなることやら。

と、その時に着信音。 俺の携帯のようだ。

京介「おっと、悪い。 電話……じゃねえな、メールか」

343: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:53:37.05 ID:VJKbJHv70
From 桐乃
帰ってきてヨシ! 10分以内ね。 遅れたら罰与えるから。


表現できないが、所々に絵文字が盛り沢山。 可愛らしいメールだぜ。

赤城「んー? 誰から?」

京介「の、覗くんじゃねーよ! 妹からだよ……もう帰って来て良い、だとさ」

赤城「ははは。 まるで奴隷みたいだなぁ! ま、精々頑張れよ? 高坂くん」

上から目線なのがうぜえなこの野郎。 お前、真実を伝えてやろうか!?

……やめておいてやるか。 親友として、最後の情けだ。 感謝しろよ。

344: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:54:17.53 ID:VJKbJHv70
京介「へいへい。 んじゃ、また……いや、じゃあな」

赤城「何故言い直した? 高坂」

京介「気にするなって。 こっちの話だからさ」

赤城「……そうか。 じゃあな、親友!」

良い奴だったよ、赤城。 俺と親友で居てくれてありがとう。

俺は親友である赤城に別れを告げ、帰路に就いた。

345: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:54:56.48 ID:VJKbJHv70
京介「ただいまー」

桐乃「おかえり! 京介!」

やたら機嫌が良いな、とか思いつつ、桐乃の姿を見る。

メイド服。 ネコ耳。 ネコ尻尾。

京介「ど、どうしたの!? その格好!!」

桐乃「この前、これでデートするって言ったじゃん。 だから、ね?」

346: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:56:05.97 ID:VJKbJHv70
京介「確かに言ったが……いきなりくると、びびる」

桐乃「目的それだし。 家デートしよ、家デート」

京介「お、おう……しようか」

はー。 ただチョコを作るだけだと思っていたらこれだぜ。 こいつ、俺を驚かせることに関してはプロすぎる。

そんな桐乃は俺の腕を引っ張り、部屋の中へと連れて行く。

桐乃「じゃーん! どう? 結構色々作ったんだよね」

347: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:57:38.27 ID:VJKbJHv70
未だに仕舞えずにいるコタツの上に、様々なチョコ。 良くもまあ、あれだけの時間で作った物だと感心してしまう。

小さいながらも、ケーキまであるし。 これは多分、冷蔵庫に元々仕舞ってあったのだろう。

京介「すげえな……」

思わず漏れたといった感じで俺が言うと、桐乃は満足そうに笑う。

桐乃「ふひひ。 でしょでしょ?」

京介「食べても、良いか?」

桐乃「うん。 いいよ。 だから早く手洗いとうがいね!」

348: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:58:26.65 ID:VJKbJHv70
京介「おう。 即、行って来るぜ」

桐乃「早くねー」

そしてそれらを済ませ、コタツの中に足を入れる。 桐乃はそんな俺にぴったり寄り添うように、隣に腰を掛けた。

桐乃「ふひひ~。 最初どれにする?」

京介「えっと、んじゃあ、それで」

俺が指差すのはひと口サイズのチョコ。 形もしっかりと整っていて、実に美味しそう。

349: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:59:09.49 ID:VJKbJHv70
桐乃「おっけ。 じゃあ……」

言うと、桐乃はそのチョコを指でつまむ。 そして。

桐乃「はい、あーん」

と、俺の顔の前にチョコを持ってきて、そう言った。

……す、すげえ恥ずかしい。 桐乃の格好もそうだし、何より手から直接ってのがまた。

つか、こいつ……この前の手錠の一件から、この行為にめちゃくちゃはまってるんだよな。 一日一食のどれかで必ずやってくるし。

まあ、俺も桐乃にやってあげているんだけど。

350: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 13:59:47.99 ID:VJKbJHv70
京介「……う、あ、ああ」

俺がどもっていると、桐乃はちょっぴりムッとした顔付きとなる。

桐乃「早く食べてよ。 溶けて来てるじゃん」

桐乃「ほら、あーんってして」

京介「あ、あーん……」

俺が口を開けると、桐乃は指ごと俺の口の中へと運ぶ。

京介「……」

何事かと思い、そのままのポーズで桐乃の方に目だけ向ける。

351: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:00:15.17 ID:VJKbJHv70
桐乃「……チョコ溶けて、指べとべと」

桐乃、顔真っ赤。

……ええっと、だな。

良いのか、本当に良いのか。

そう思いつつ、桐乃を凝視。 これでもかってくらい、凝視する俺。

桐乃「は、早く食べてって」

もうどうなっても知らん!

俺はそのまま、チョコを口の中へ。 勿論、それをつまんでいた桐乃の指も。

で、まあ。 言い辛いから少し省略。

352: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:00:42.77 ID:VJKbJHv70
桐乃「……ど、どうだった?」

京介「う、美味かったぞ。 おう」

桐乃「そ、そか……」

京介「……ちょっと甘さがきつかったかも。 でも悪いってわけじゃねえからな?」

桐乃「良いって良いって。 次の参考にもなるし。 えへへ」

京介「……それと、なんつうか。 桐乃の指も超甘かったというか……そんな感じだった」

桐乃「ば、ばかじゃん」

なんだこの空気! 俺でもくっそ甘い空気ってのがさすがに分かるぞ!? もう俺、死んでも良いかもしれん。

353: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:01:09.73 ID:VJKbJHv70
そしてそれから何個かチョコを食べる。 今みたいなことを繰り返していたと思って貰えれば良い。

で、俺はこう切り出した。

京介「……俺も、お前にチョコ食べさせていいか?」

桐乃「……ほんとに? なら、お願いしよっかな」

桐乃「あ! でも、甘さ抑えてる奴あるから、それが良い。 それとあんま食べると太っちゃうし、ちょっとだけね?」

桐乃は言いながら、チョコをひとつ指差す。

京介「了解。 じゃ、じゃあ……」

俺は先ほどの桐乃のように、チョコをひとつつまみ、桐乃の顔の前へ。

354: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:01:47.49 ID:VJKbJHv70
京介「……桐乃、あーん」

桐乃「……あーん」

俺は桐乃の小さな口の中へ、チョコを持っていく。

桐乃のように指を入れるだなんて真似は正直言って、気が気じゃないので出来ない。 だから若干投げ入れるような形になってしまった。

桐乃「……ん」

桐乃は俺の手首をがしっと掴み、そのまま自分の口へ。 俺の指を口の中へ。

京介「ちょ、ちょっと待てって!」

桐乃「ヤダ。 負けたみたいだしぃ」

355: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:02:13.33 ID:VJKbJHv70
言うと、そのまま桐乃はぱっくり咥える。 で、舐める。

暖かいような、柔らかいような、チロチロとした感触が指の先に伝わってくる。

……や、やべえってこれ。 超気持ち良いぞ!?

京介「お、おま……一旦ストップ! ストップだ桐乃!!」

桐乃「……なに?」

京介「け、結構ヤバイ。 それ」

桐乃「妹に指舐められて興奮してんのぉ? ふひひ」

京介「しない方がどうかしてるっての! と、とにかく一旦やめよう」

356: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:02:47.72 ID:VJKbJHv70
桐乃「ふん。 仕方ないなぁ。 根性無し」

京介「もうそれで良いって……てか、お前はよく平気だな」

桐乃「へ? あ、あたし? あたしはその、べ、別にこのくらいどうってことないってゆうか」

京介「……そうなの?」

軽くショックだ。 だってこいつ、今は嘘付いているようにみえねーし。

桐乃「で、でも! しっかり理由はあるとゆうか……」

京介「……聞いても良いか?」

桐乃「その、言わなきゃダメ?」

357: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:03:16.37 ID:VJKbJHv70
京介「桐乃がどうしても嫌だって言うなら、言わなくてもいいぞ」

桐乃「……ありがと。 でも、うん。 話す」

桐乃は言い、胸に手を当て、続ける。

桐乃「じ、実は。 京介が寝てるときにね。 ちょっとだけだよ? 京介の指、咥えてたりしたことあるから」

聞きたく無かった!! とんでもない衝撃事実じゃないかよそれ!! 十秒前まで時間戻れ!!

358: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:03:43.77 ID:VJKbJHv70
京介「……お、おう」

桐乃「……ごめん」

しおらしく謝る桐乃。 このまま放っておけるわけがない、っと。

京介「気にするなって。 別に嫌じゃねえし、気にしないって。 俺だってお前が寝てる時に体とかめっちゃ触ってるし」

桐乃「は、はぁ!? ど、どこ触ってるって!?」

京介「……あれ?」

今の流れって、俺も言ったら「いいよ。 京介になら」とかそういう感じになる場面じゃなかったの!? 俺すごい失敗してないかこれ!?

桐乃「早く言え」

359: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:04:13.78 ID:VJKbJHv70
桐乃は言い、俺の手首を掴む。 で、再び指を舐め始める。

京介「やめろやめろやめろ!! それヤバイんだって!!」

必死の訴えに桐乃は咥えるのをやめ、言う。

桐乃「だったらどこ触ったか言って」

京介「わ、分かった。 言うから」

京介「……か、顔とか」

桐乃「ふうん。 他には?」

360: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:05:00.62 ID:VJKbJHv70
京介「……髪の毛?」

桐乃「で、次は?」

京介「……あ、あれだ。 腹より上で、肩よりも下の部分とか」

桐乃「あ、あんた胸触ったの!?」

京介「俺だって触ろうと思って触ったわけじゃないぞ? 気付いたら桐乃の胸に手があってだな……」

桐乃「言い訳乙! マジきもい!」

京介「お前のだって似たようなもんだろ!? 勝手に人の指舐めやがって!」

桐乃「さっき京介は「嫌じゃないし、気にしない」って言ったよね? 言ったよね? ひひ」

361: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:05:38.94 ID:VJKbJHv70
京介「そ、そりゃあ……」

桐乃「ふひひ~。 許して欲しい? ねえねえ許して欲しい?」

こいつなぁ、その如何にも萌えメイドって感じの格好で言うのがアレだぞ! ネコ耳ぴょこぴょこ動いてるし。

京介「ゆ……許してください桐乃さん」

桐乃「あーあ、なんかチョコ食べたい気分だなぁ~。 さっきと同じ奴がいいなぁ~」

俺の方をちらちらと見ながら言う。 食わせろということらしい。

京介「……へいへい」

362: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:06:12.91 ID:VJKbJHv70
桐乃「え? なんて? 聞こえなかったんですケドぉ。 まさか「へいへい」とか適当な返事してないよね?」

京介「……はい」

桐乃「ほら、早くして」

言い、桐乃は俺の膝の上へと座る。 メイド服はふかふかしているし、何より後ろから見ると尻尾と耳が超可愛いな。

京介「ほら」

俺はさっきと同じチョコを手に取り、桐乃の口元へ。

桐乃「ほらってなに? 意味分かんな~い。 ふひひ」

昔だったら俺、もう絶対キレてるよ。 今はなんて思うかって? 可愛い妹だ、くらいにしか思わないっての。

363: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:06:39.52 ID:VJKbJHv70
桐乃「あーん」

で、俺の指を舐める桐乃。 こいつこれがやりたいだけじゃねえのか!?

京介「ちょ、待てって……おい」

桐乃「んー?」

文句ある? という感じで俺の事を見る桐乃。 耐えろってか!? いやいや無理無理!!

京介「ま、マジできついから……桐乃」

桐乃「んふふふ~」

俺が何度言っても、こいつは意地悪そうに笑う。 どうやら指を離す気は無いらしい。

364: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:07:05.95 ID:VJKbJHv70
ぶっちゃけると、下の方はかなりヤバイこととなっている。 桐乃の体はあったけえし、こいつは俺の指を舐め続けるし。

そしてそれは桐乃も気付いているはずだ。 なんと言っても、俺の膝の上に座っているんだしな、こいつは。

そんで、それが分かっていて尚やめない。 じょ、上等だぜこの野郎。

京介「き、桐乃。 やめてくれ、頼む」

桐乃「んー。 んひひ」

よし分かった! お前がそうならどうなっても知らん!

京介「……あーん」

桐乃「あーん」

で、俺の指を舐める桐乃。 こいつこれがやりたいだけじゃねえのか!?

京介「ちょ、待てって……おい」

桐乃「んー?」

文句ある? という感じで俺の事を見る桐乃。 耐えろってか!? いやいや無理無理!!

京介「ま、マジできついから……桐乃」

桐乃「んふふふ~」

俺が何度言っても、こいつは意地悪そうに笑う。 どうやら指を離す気は無いらしい。

365: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:07:36.49 ID:VJKbJHv70
俺は桐乃を抱き締め、後ろへと倒れる。 桐乃は何が起こったのか一瞬分からなかったようで、チロチロと舐めていた俺の指を離した。

桐乃「ちょ! え!?」

そのまま体勢を変えて、桐乃に覆い被さるように。

……手、べとべとじゃねえかこのヤロー!

と、よく分からない怒りに身を任せてそのまま桐乃にキス。

桐乃の頭を片手で支えて、奪うようにキスをした。

366: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:08:05.01 ID:VJKbJHv70
それだけではこんなのは我慢できるわけがなく、口の中へと舌を入れる。 まだチョコが残っていたのか、口の中は甘い。

桐乃の唾液も、俺の唾液も、桐乃が食べていたチョコも混じり、甘く、暖かい。

何分も何分もずっと続ける。 桐乃は少し抵抗しているが、それは全て押さえつけた。

桐乃の口の中で俺は舌を動かし、舐める。 先ほどまでの仕返しと言わんばかりに。

桐乃「ん……!」

苦しそうにする桐乃を見て、一気に戻された。 頭が冷えたというよりかは、落ち着けたという感じで。

京介「わ、わりい。 桐乃」

367: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:08:30.84 ID:VJKbJHv70
桐乃「……はぁ……はぁ」

桐乃は息遣いが荒く、肩で息をする。 その口元は俺のか桐乃のかは分からないが、透明な液体が垂れていた。

京介「……ごめん、桐乃」

何度か息を整え、桐乃はようやく口を開く。

桐乃「べ、ベツに良いっての……でも、ちょっとびっくりした」

京介「……すまん」

桐乃「だから、謝らないでって。 びっくりしたけど、京介だったから怖くなかったし……ね?」

368: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:08:58.98 ID:VJKbJHv70
京介「おう……ありがとな」

桐乃はそのまま俺の首へと腕を回し、言う。

桐乃「……でも、京介が我慢できないのと一緒であたしも我慢できないの。 責任取って」

京介「……って言うと?」

桐乃「察しろっつーの……。 その……」

京介「あ、ああ。 分かったよ。 でも、あれだぞ? 前にも言ったと思うけど」

369: ◆IWJezsAOw6 2013/08/24(土) 14:09:55.52 ID:VJKbJHv70
桐乃「知ってる。 だから、そうじゃない奴。 それなら良いっしょ。 ベツに」

京介「分かった。 まあ、前にも今度なって言っちゃったしな……それに、付き合ってるんだしな、俺たち」

桐乃「……うん。 じゃ、ほら」

桐乃の言葉を受け、俺は桐乃を抱き抱える。

そして俺はそのまま、桐乃を布団の上まで運んでやった。

そんな感じの、俺と桐乃の一日の出来事である。


バレンタインの日に 終

392: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 12:58:27.46 ID:9cPqLhfW0
2月の下旬。

バレンタインデーの出来事から一週間ほど経ったある日の出来事。

京介「……今、なんて言った?」

桐乃「だからぁ、水着でグラビアの仕事来てるの。 それやろうかと思ってるんだよね」

こんな感じで桐乃が切り出した所為で、会議開始。

393: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 12:59:02.49 ID:9cPqLhfW0
桐乃が言っていることを纏めると。

1、グラビアを撮る。

2、勿論その時は水着。

3、それの練習として写真を撮って欲しい。

一つ目と二つ目はまあ、分かる。

三つ目なんでそうなった!? 練習ってなんだよ!?

394: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 12:59:30.44 ID:9cPqLhfW0
京介「つか、この部屋はまだ暖房器具とかあるからいいけどさ……このくっそ寒い中、グラビアなんて撮るのか?」

桐乃「撮るのは室内だって。 てか、どうなの? 撮ってくれるワケ?」

京介「……お前が良いなら、別に俺は構わないけどさ」

いやぁ、ていうかそれよりも俺は桐乃がグラビアってのに反対なんだけど。

そういや……昔、黒猫が言ったことあったっけ。 俺が反対すれば、桐乃はやめると。

395: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:00:08.29 ID:9cPqLhfW0
京介「なあ、桐乃」

桐乃「なに? 撮ってくれるんでしょ?」

京介「俺さ、お前がそういう水着姿とかを雑誌に出すのは嫌なんだよ。 だから、今回の断ってくれないか……?」

桐乃「や……ヤダ」

駄目じゃねえかよ! 黒猫の奴、適当なことを言いやがって……。

京介「……そうか」

桐乃「とりあえず練習するんだから撮ってよ! ぼーっとしてないで」

396: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:00:55.03 ID:9cPqLhfW0
ううむ。 桐乃がそう頼むなら仕方ないのか……? 俺としては、何としてでもやめてもらいたいんだけど。

何か良い案は無い物か。

京介「……じゃ、じゃあ桐乃。 もし水着姿を雑誌に出すの止めてくれれば、一日五回キスしてやる! どうだ!?」

桐乃「ご、五回も……?」

京介「十回でも良いぞ!」

桐乃「十回!?」

397: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:01:24.05 ID:9cPqLhfW0
桐乃「…………」

桐乃は顔を強張らせ、ぷるぷると肩を震わせる。

数十秒そうして黙り込んだ内、ようやく口を開いた。

桐乃「そ、それでもダメッ! でも言ったからにはキスしてね?」

京介「お前それは破綻してるじゃねえか! 俺はあくまでも条件として出してるんだからさ!」

桐乃「知らない知らない! あたしが決めたの! あんたは従うの! てゆうか、従え!」

398: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:02:17.12 ID:9cPqLhfW0
理不尽通り越してるぞ、こいつ。

にしてもそんなにキスが嬉しいのか……へへ。

やべえ、俺今、多分顔が相当気持ち悪いことになっていそうだ。

桐乃「と、とにかく! 早く写真撮れっての!」

京介「わ、分かったよ……ちくしょう」

ここまで桐乃が引かないとなると、もうこれ以上は何を言っても無駄だろう。

本当に、本気で全力で嫌だが……桐乃の意思も大事だしな。

399: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:03:17.81 ID:9cPqLhfW0
桐乃「……どかな?」

渋々俺は承諾し、桐乃を待つこと数分。

部屋に戻ってきた桐乃は言いながら、恥ずかしそうに水着を着て俺の前に立っている。

今着ているのはビキニなのだが、ううむ。 さすがはモデル……というか、桐乃。

つか、部屋の中で水着って結構来る物があるな。 で、これからそれを写真に収めると。

桐乃「ちょ、ちょっと。 黙らないでよ」

400: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:03:52.66 ID:9cPqLhfW0
京介「お、おう……わり。 すげー可愛いよ」

桐乃「……ふん」

部屋の中は出来る限り暖かくしていて、桐乃が風邪をひかないようにしているわけだが。

その所為で俺は汗を掻いているのだろうか。 でも、なんか違う意味で汗を掻いている気がしなくもない。

京介「えっと、それで最初はどういう風に撮れば良いんだ? ポーズとか、するんだろ?」

桐乃「うん、まあね。 んじゃ最初はー」

401: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:04:19.28 ID:9cPqLhfW0
桐乃「恋人に呼ばれて振り返った! ってカンジでとろっか」

京介「了解。 ってことは俺が声掛けた方が良いよな?」

桐乃「うん。 あたしは背中向けてるから、京介のタイミングで声掛けて。 そうすれば振り向くから」

京介「おう。 分かった」

そして、俺に背中を向ける桐乃。

仕草とか撮り方とか、当然だけど慣れている感じだな。 モデルってのは皆そうなのかね? 万が一にも俺がなったとしても、慣れる気は全くしねえな。

402: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:04:47.51 ID:9cPqLhfW0
てか……後ろ姿だけでも可愛いなあ、おい! 内緒で一枚撮っとこうかな。

いやでも撮ってるのは桐乃のデジカメだし、後で見られたら言い訳が出来ない。

で、俺の携帯のカメラは音でばれるか……。 くそ。

桐乃「ちょっとまだ?」

ああ、いかんいかん。 ついつい桐乃の後ろ姿を見るのに必死だった。

待たせても悪いし、撮るか。

403: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:05:14.20 ID:9cPqLhfW0
京介「わりわり、んじゃ」

京介「……桐乃ー」

俺が呼ぶと、桐乃は勢いよく振り返る。 で、顔はなんだか怒っている様子。

そんなんで良いのか? とか思いつつも、シャッターを切る俺。

桐乃「なに撮ってんのよ! 今のは違うっての!!」

京介「な、なんだよ? 振り向いたじゃねえかお前!」

桐乃「ち、が、う!! あんたちょっと考えてみ? 「桐乃ー」とかやる気無さそうに呼ばれたあたしの気持ち」

404: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:05:42.83 ID:9cPqLhfW0
京介「……恥ずかしいんだよ! いざ名前呼べって言われても!」

桐乃「ただ名前呼ぶだけじゃん。 恥ずかしがることなんて無いでしょ」

京介「普通に呼ぶだけならいいんだって。 でも予め「名前を呼んで」って言われてから呼ぶのとじゃ全然違うんだっての。 そこまで言うなら、お前ちょっとやってみてくれよ」

桐乃「あたし? ベツに良いケド」

京介「おし。 じゃあほら、俺の名前呼んでみ」

405: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:06:08.51 ID:9cPqLhfW0
桐乃「……う」

桐乃「……京介」

一緒じゃん! さっきの俺と殆ど一緒じゃん!

京介「ほらほらぁ! お前だって同じじゃねーか!」

桐乃「あんたがエロい目であたしのことじっと見てるからでしょ!? 身の危険感じるってーの」

京介「……お前そういうけど、バレンタインの日にあったこと----------」

俺がその日にあったことを言いかける。 すると桐乃は俺の胸倉を掴み、言った。

406: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:06:49.08 ID:9cPqLhfW0
桐乃「忘れろ。 今すぐ。 じゃないと殴る」

京介「お、おう……」

怖いって。 言いながらガンを飛ばすのだけはやめてくれ。

桐乃「とにかく! 次はしっかり呼んでよ。 ちゃんと感情込めて。 おっけー?」

京介「分かった分かった。 任せとけ」

桐乃「よし」

そして、再度俺に背中を向ける桐乃。

407: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:07:16.19 ID:9cPqLhfW0
おし……。 良いぜ、任せとけ。

んで、俺は言う。

京介「超、超超超大好きだぜ桐乃ぉおおおおおおおお!!」

と俺は叫ぶ。 感情込めまくってやったぜ。 感謝しろよ。

すると桐乃は先ほどとは違い、顔を真っ赤に染めて振り返る。 よし撮ろう。

ははは。 今日一番の表情だな、こりゃ。

桐乃「だからとーるーなあああああ!! ばかじゃんばかじゃん!?」

408: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:07:44.53 ID:9cPqLhfW0
京介「何がだよ? お前に言われたように呼んだだけだぞ?」

桐乃「全然意味が違うっての! な、ななななんで大好きとか言ってんの!?」

京介「感情込めた結果だって」

桐乃「そうじゃないって言ってるじゃん! 京介は普通に名前呼ぶだけで良いの! 分かった!?」

京介「わ、分かったって。 次からは気をつける。 だからぽかぽか叩くのやめてくれ」

桐乃「ふん! 次名前呼ぶときヘンなことしたら怒るから」

今でも十分怒ってるじゃねーか!

409: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:08:11.78 ID:9cPqLhfW0
京介「了解了解。 ほら、撮るからもう一回後ろ向けよ」

俺が言うと、桐乃は素直にそれに従い、俺に背中を向ける。

……さて。

さてさて。

俺がそれで退くと思ったかぁ!? へっへっへ。 甘いぜ桐乃よ。

京介「……よし」

410: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:08:41.44 ID:9cPqLhfW0
京介「いやぁ、今日の桐乃も可愛いなぁ。 後ろ姿とか超キュートだぜ。 足もすらっとしてるしよー」

桐乃は体をぴくっと反応させるが、まだ大丈夫。 大丈夫。

京介「お尻も小さくて良いし、くびれもすげー綺麗だなぁ。 絵になる絵になる」

今度は肩をぷるぷると震わせる。 ……まだ大丈夫か?

京介「肌もここからでも分かるくらい綺麗だしな。 振り向いたら超美人なんだろうなぁ。 もしかしたら世界一可愛かったりしてな。 ははは」

桐乃「……い、いい加減にしろぉおおおおお!!」

桐乃の見事なダッシュからの掌打が俺の腹に入り、前のめりになりながら撮影。

デジカメにはむすっとした表情の桐乃が写っていた。

411: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:09:17.54 ID:9cPqLhfW0
桐乃「次そっちね。 しっかりやってよ」

京介「……はいはい」

その後、怒った桐乃から下された命令。 マッサージをしろとのこと。

水着姿の桐乃は布団の上にうつ伏せで寝転がっていて、俺はその上に乗り、肩をマッサージ。

桐乃「んー。 結構上手いじゃん。 ひひ」

京介「そりゃどーも。 他は?」

412: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:09:43.54 ID:9cPqLhfW0
桐乃「もうちょっと下、腰の辺りよろしく~」

京介「はいよ。 ここら辺か?」

俺は言いながら、腰の辺りを指で押す。

桐乃「そうそう……良い感じじゃん」

桐乃「足もヨロシク。 あたしにマッサージできるとか幸せっしょ?」

……若干疲れてきたとは言えねえ! 言ったら間違いなく怒るだろ、こいつは。

413: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:10:13.14 ID:9cPqLhfW0
京介「そうだな。 お前の体にべたべた触れて超幸せだ」

桐乃「き、キモイことゆうな! 変態!」

京介「んだよ。 「マッサージしなさいよ」つったのはお前だぞ?」

桐乃「それはそうだケド……」

ぶつぶつと言う桐乃の言葉を聞きながら、俺は桐乃の足に触れる。

桐乃「んっ」

京介「な、なにエロい声出してんだよ!?」

414: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:10:40.54 ID:9cPqLhfW0
桐乃「あんたがいきなり触るからでしょ!! しかも手付きがエロすぎだっての!!」

……エロい声ってのは否定しないんだな。

京介「そりゃあれだ。 下心ありまくりでマッサージしてるし」

桐乃「よ、よく平気でそんなこと言えるよね……」

京介「だって俺変態だし。 仕方ないだろ?」

桐乃「き、キモ! キモイっての!」

京介「はぁ? おいおい桐乃さん。 お前がいっつも俺に変態変態言ってるのは嘘だったのかよ? まさか桐乃が自分の言葉を否定するとかしねえよなぁ?」

415: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:11:08.77 ID:9cPqLhfW0
桐乃「こ、この……!」

京介「ってわけで、俺はお前を触りまくる。 下心ありまくりで」

桐乃「……サイテー」

と言いつつも、逃げようとはしないのか。 枕に顔を埋めているだけだし。

で、それから少しの間、無言でマッサージ。

桐乃「……ちょっと、京介」

京介「ん? なんだ?」

416: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:11:36.52 ID:9cPqLhfW0
桐乃は体勢を変えようと動き、俺は一度桐乃の上からどく。

そして仰向きになると、こいつはこう言った。

桐乃「……あんたの所為でヘンな気分になったから、ぎゅってして」

京介「……おう」

で、抱き締める。

417: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:12:02.41 ID:9cPqLhfW0
桐乃「……」

無言でばたばたと足を動かす桐乃。 いやいや、どんだけ嬉しいんだ。

京介「嬉しいのか?」

桐乃「そ、それ聞く?」

京介「……悪い悪い。 んじゃ聞き方変える」

京介「顔すっげー赤いな、桐乃」

桐乃「……京介が急に抱き締めてきて暑いの。 ふん」

418: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:12:29.35 ID:9cPqLhfW0
抱き締めろって言ったのはお前のはずなんだけどね。

で、次にこいつはこう言う。

桐乃「……布団掛けて。 あたし水着のままだから、寒いし。 少しお昼寝したいし」

支離滅裂すぎるってーの。 気にしないけどよ。

京介「はいよ」

桐乃「京介も一緒に寝るんだからね。 ぎゅってしたまま」

419: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:13:13.41 ID:9cPqLhfW0
京介「おうおう。 分かってるって」

そう言い、俺は自分と桐乃に布団を掛けて、桐乃を再度抱き締める。

桐乃「……ふひひ」

京介「……なあ、桐乃」

桐乃「ど、どしたの? そんな深刻な顔して」

京介「俺、やっぱお前が雑誌に水着で出るの嫌なんだ。 しつこいけどさ……」

桐乃「……あ、う、うん。 分かった。 良いよ」

420: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:13:39.26 ID:9cPqLhfW0
京介「え? 断ってくれるのか?」

桐乃「トクベツだかんね。 ちゃんとあたしにお礼言いなさいよ?」

なんだ? 案外あっさり承諾してくれるんだな。

京介「好きだぜ、桐乃」

桐乃「……それ、お礼の言葉じゃないし」

なんて言いつつ、満足そうな顔をしている桐乃だった。

421: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:15:47.96 ID:9cPqLhfW0
そんな一日が終わり、数日経ったある日。

これは言うならば後日談的な物。

大学からの帰り道……中学や高校の下校時間と被ったのか、歩いている学生の姿をちらほらと見かける。

友達と楽しげに話しながら帰路に就いている学生。 一人で帰る学生。 カップルなのだろうか、二人で並んで帰る学生。

そしてそんな学生たちの姿の中に、少し寂しげな後ろ姿。

それは俺が知っている奴の物で、咄嗟にその後ろ姿に声を掛けた。

京介「ん? あやせか?」

俺が言うと、その人物は振り返り、口を開く。 いつもの様に。

422: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:16:21.95 ID:9cPqLhfW0
あやせ「お兄さん、もしかして私のストーカーとかしてます? 気持ち悪いですよ」

京介「偶然会ってそこまで言われるとは思って無かったぞ……。 桐乃は一緒じゃねーの?」

あやせ「桐乃は……ええっと、ちょっと学校でやることがあるみたいです」

ふうん? そんなことは聞いてなかったけどな。 まあ、全部を言えってのもおかしな話か。

京介「そっか。 じゃあ今日はあやせ一人なんだな」

あやせ「……まさか、私にセクハラする気ですか。 通報しますよ」

423: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:16:53.94 ID:9cPqLhfW0
京介「しねーよ! ったく」

あやせ「あはは。 そうでしたそうでした。 お兄さんがセクハラするのは今はもう、桐乃に対してだけですよね」

京介「そうそう……俺がするのはあいつだけ----------」

あやべえ、これ誘導尋問だったか!?

あやせ「へえ……」

京介「待て待て待て! 俺は桐乃にセクハラなんてしてないぞ!? 本当に!!」

424: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:17:19.37 ID:9cPqLhfW0
あやせ「どう考えても嘘じゃないですか……だって、桐乃って毎日自慢してくるんですよ。 お兄さんとのこと」

京介「ま、マジで? あいつどんなこと言ってるの?」

あやせ「お兄さんに急に抱き締められて、布団まで連れて行かれて、一緒にお昼寝したとか」

俺が無理矢理してるみたいじゃねえか!! あいつ、なんてことをあやせに言っているんだ……!

あやせ「で、どうなんですか? まさか、桐乃に手を出したりしていませんよね?」

425: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:17:49.74 ID:9cPqLhfW0
京介「え、ええーっと……手を出すって、具体的にどこら辺から?」

あやせ「そんなの決まってるじゃないですか……って、何を言わせようとしているんですか!? この変態ッ!!」

京介「そんなつもりじゃなかったって! でも……」

京介「大丈夫だ。 今の俺に責任が取れないことはしてないからさ」

……正直に言うと、それに近いことにはなってしまったのだが。

物は言い様だな! 嘘は吐いて無いし!

426: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:18:15.53 ID:9cPqLhfW0
あやせ「それなら良いです。 お兄さん、桐乃を支えてあげてくださいね」

何を今更言っているのだろう。 それとも、あやせが言っているのは今、この時のことか?

いや、良いか。

京介「返事はしっかり言葉にした方が良いか? あやせ」

あやせ「いえ、大丈夫ですよ。 ふふ」

京介「だよな。 はは」

427: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:18:42.15 ID:9cPqLhfW0
そして俺は、ひとつ思い出す。

この桐乃と一緒にモデルをやっているあやせを見て、だ。

京介「あー、そういえばさ。 桐乃にグラビアの仕事とかって結構来てんの?」

あやせ「どうしたんですか、急に。 それはまぁ……桐乃って可愛いですし、スタイル良いですし。 結構来てると思いますよ? 私もそういった話は耳にしますし」

あやせ「お兄さんだって、桐乃が水着を着ている雑誌とか持ってたじゃないですか」

京介「いやまあそうだけど……はぁ。 やっぱそうなのか。 ってことはこれからも同じ思いをするってことだよなぁ」

428: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:19:17.56 ID:9cPqLhfW0
あやせ「何をそんなに気に病んでいるんですか? 桐乃からそういう話、ある訳無いと思いますよ」

……いやいや、つい先日あったって。

京介「俺もそうだとすっげー嬉しいんだよ。 でもこの前、水着姿で雑誌に出るとか言ってきてさ。 なんとか今回は断ってくれるってことになったんだけど」

あやせ「……変ですね、それ」

京介「変? 変って、何が?」

あやせ「だって、私が知っている限り……。 桐乃って、そういう仕事は全部断っているんですよ。 それも話があった段階で、です。 多分、お兄さんが嫌がるからだと思いますけど」

429: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:19:48.67 ID:9cPqLhfW0
京介「……そうなのか? ってことは、最初からそんな話は無かったってこと?」

あやせ「だと思います。 桐乃って素直じゃないですし、お兄さんに心配して欲しかったんじゃないですか? 可愛いなぁ」

そ、そうだったのか……。 俺はほんと、すっげえ心配で心配で堪らなかったと言うのによお!

そして多分、桐乃が「写真を撮って欲しい。 練習で」と言ったのはそういうことなのだろう。

……こっちの件については、あやせには言わない方が良さそうだな。

430: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:21:08.23 ID:9cPqLhfW0
京介「なら良かった……本当に良かった」

あやせ「あはは、すごく心配してたんですね。 でも良かったじゃないですか」

あやせ「今度から桐乃が「水着で雑誌に出る」って言った時は、心配してくれって合図ですよ。 覚えておいてくださいね」

京介「……それ良いな! 内心でにやにやできるって訳か……。 ありがとうあやせ!!」

431: ◆IWJezsAOw6 2013/08/26(月) 13:21:36.42 ID:9cPqLhfW0
あやせ「いえいえ。 その、出来ればなんですけど……その時の桐乃の表情の写真とか、欲しいなぁ」

京介「……あやせ」

京介「俺に任せろ!」

そんな風に、こんな感じで。

俺とあやせは少しだけ仲が良くなった。


撮影会 終

444: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:07:56.64 ID:wpaZUU7O0
桐乃「あーきはーばらー!」

桐乃「もうヤバイ! 我慢できない! 早くポスター欲しい!」

京介「しっかし、もう終わったアニメなのに良くもまあグッズが出るもんだな」

桐乃「当たり前でしょ。 メルルは人気あるんだから。 どっかの厨二病アニメとは違って」

桐乃「そ、れ、と。 メルルをもう終わったとかゆうの止めてくんない? まだまだグッズは出るんだし、なんにも終わってませんから」

京介「へいへい……。 ま、お前がそれだけ楽しみにしてるんだったら文句はねーよ」

445: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:08:29.51 ID:wpaZUU7O0
桐乃「ひひ……。 あー! 早くメルちゃんに会いたい!!」

京介「……お前、昨日全然眠れてなかったもんな」

桐乃「そりゃそうでしょ! だって限定品だよ!? しかもメルルの! ふひひ……じゅる」

京介「別にお前が寝れないのは良いとしてさ、何で俺まで付き合わされて起きないといけなかったんだ……」

おかげ様ですげー眠い。 道路にダンボールでも敷いて寝たい気分。

桐乃はどこからエネルギーが出てるのか知らないが、超元気だしさぁ。

446: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:08:56.97 ID:wpaZUU7O0
2月。 この前の雑誌の一件から数日も経っていない内に、俺は桐乃に連れられて秋葉原へとやってきていた。

目的は勿論、例のメルルポスター。 約束ではあったから、まあしょうがねえか。

桐乃「はぁ? そう言ったって、京介だって「お前が隣にいないと俺寝れないんだよ……」って言ってあたしと一緒にコタツ入ってたじゃん。 あたしが無理矢理起こしてたワケじゃないし~」

京介「いやいや! お前が「ね、京介。 隣座って手握って」とか言ってくるからだろ!? 捏造すんじゃねえ!」

桐乃「あんたのが捏造だっての!」

京介「お前のが捏造だ!」

447: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:09:23.90 ID:wpaZUU7O0
と、言い合い。

正直に話すと、まず桐乃が布団の中でもぞもぞ動くので俺は眠れずにいたわけだ。 で、桐乃が一度布団から出て行ったから俺も付いて行った。

そんで、上の様な流れになったってことだ。 どっちもどっちってことにしよう。

桐乃「チッ……とにかくほら、やってるのここだから」

桐乃は地図を広げ、指差す。

京介「へいへい。 んじゃ行くか」

448: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:09:49.47 ID:wpaZUU7O0
桐乃「あんた何も分かってない。 ほら」

桐乃は手を差し出し、言う。

桐乃「いちお、デートでしょ。 手くらい繋いで」

京介「……だな」

桐乃はなんというか、手を繋いだりするのが好きなのかもしれない。 一緒に居られると実感できるからだろうか。

俺はそんな桐乃を見て、少し元気が出てきた。

……いや眠いけど。

449: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:10:17.04 ID:wpaZUU7O0
京介「着いたな!! ここかぁ!!」

桐乃「……なにそのテンション?」

京介「寝てない所為だと思う! 気にすんな!」

一周した感じだぜ。 今ならなんだって出来そうだ。 ははは。

そんな俺の前には建物。 ライブハウス的な感じ。

桐乃「でも、なんか今年って人少ないかな? ネットで見る限り、毎年もっと居そうだったんだケド」

京介「好都合じゃねえか。 先着五十組なんだからさ」

450: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:11:07.98 ID:wpaZUU7O0
桐乃「なら、こんな朝早く来る必要無かったかも……損した気分」

京介「どうせ起きててもすることねーんだし、良いじゃん。 とりあえず入ろうぜ」

桐乃「まぁね。 いこいこ」

そうして、俺と桐乃は店の中へ。

中は薄暗く、同人誌などが並べられている。 見る限りだが、マスケラやらメルルやらもある様だ。

451: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:11:34.75 ID:wpaZUU7O0
「いらっしゃいませー」

そういう女性の店員。 見た感じ結構若い人。 大学生とかだろうか。

桐乃「……」

痛いっての! 無言で足を踏むんじゃねえよ!

桐乃「すいません、メルルのポスターなんですけど」

「お題にチャレンジですね。 えーっと」

452: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:12:08.81 ID:wpaZUU7O0
「夫婦の方ですか?」

京介「ぶっ!」

桐乃「はいそうですぅ~。 この人があたしの旦那なんです~」

一気に機嫌が良くなった!? つうか、適当なこと言うんじゃねえって!

京介「おい桐乃……」

俺がそう声を掛けると、桐乃は俺の首に腕を回し、耳元で言う。

453: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:13:25.65 ID:wpaZUU7O0
桐乃「名前とか書かないといけないからそっちの方が都合が良いの。 それに強ちウソでもないっしょ? ひひ」

京介「……将来的に?」

桐乃「……そ、そう」

一応、桐乃も考えて喋ってはいたんだな……多分。

「あのー」

桐乃「あ、ごめんなさい。 それで、あたしたち夫婦でチャレンジしたいんですけど」

454: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:13:52.25 ID:wpaZUU7O0
夫婦夫婦連呼するなよ! 恥ずかしいじゃねえか!

「分かりました。 こちらの紙に説明が書いてありますので、よく読んだ後に申込書をお願いします」

てっきり適当な物だと思ったけど、結構しっかりしているんだな。 さすがは毎年やっているだけある。

なんでも、ファンの間では結構なイベントらしいし。 桐乃からの言葉をそのまま飲み込む限り。

桐乃「はい」

桐乃はちゃちゃっとそれを書き、俺も習って記入する。

455: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:14:18.25 ID:wpaZUU7O0
「ありがとうございます。 ではあちらへどうぞ」

と、道を指された。

そっちの方へ桐乃と一緒に歩いて向かっている間に、先程渡された案内書を読む。 順番が逆な気しかしねえけど……。

まあ、ここまで来て桐乃が「やっぱやめる」とか言うわけがないから良いけどな。

当たり障りの無いことが書いてあるそれを読み飛ばす。 読み飛ばそうとした。

……最後に一文。

456: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:14:46.44 ID:wpaZUU7O0
『当日撮らせて頂いた写真は、店舗にて展示させて頂きます』

京介「……写真ってなんだ?」

桐乃「さぁ? メルルのポスター取れた人が写真撮影するってことじゃない?」

あー、そういうことか。 よくあるよね、そういうの。

京介「ふうん」

そんな会話をしている内に、到着。

457: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:15:16.27 ID:wpaZUU7O0
既に何人か居る中……あれ。 居る奴全員カップルじゃん。

京介「……毎年こうなのか?」

桐乃「そんなはず無いケド……何でだろ」

まあ、そんな年もあるのかな。

で、受付らしきところへ。

京介「すいません。 メルルのポスターなんですけど」

458: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:15:45.11 ID:wpaZUU7O0
「ああ、お題にチャレンジの方ですね。 どうぞ」

そう言われ、店員は箱を取り出す。

桐乃「引いて良いよ。 京介」

京介「ん、そか。 んじゃあ」

桐乃に言われ、箱の中に手を入れる。

何枚か紙が入っているようで、俺はその中から一枚取り出し、開いた。

459: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:16:12.74 ID:wpaZUU7O0
……。

京介「桐乃、帰ろう」

桐乃「は、はぁ? 今更何言ってんの?」

京介「いや……だってこれ」

「引きましたら、紙をお渡しくださいー」

俺は渋々、その紙を店員へと渡す。

そして店員は言った。

460: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:16:47.39 ID:wpaZUU7O0
「ポッキーゲームですね。 ではこれをどうぞ」

……帰りたい。

桐乃「……やろう!」

なんでお前は元気なんだよ!? 恥ずかしくねえのかこいつ!?

京介「あのすんません……毎年こんなんやってるんですか?」

俺が店員に聞くと、店員は苦笑いをしながら答える。

「いやぁ、今年はちょっとハードなんですよ。 カップル限定になってますし、それでチャレンジする方が少ないんですよね」

461: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:17:19.83 ID:wpaZUU7O0
京介「は、はは……なるほど」

京介「て、てか。 それってここでやるんですか?」

「この部屋の中でしたらどこでも良いですよ。 椅子とテーブルはありますので」

言われ、辺りを見回す。

確かにそこら中に散らばっているな。 中には彼女を背中に乗せて腕立て伏せやってる奴とか居るし。 嫌なお題だな!

で、それより大事なこと。

462: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:17:45.37 ID:wpaZUU7O0
京介「……カップルの近くでカメラ構えてるのは?」

「写真撮影ですよ。 案内書に書いてありましたよね?」

……帰りたい。 切実に帰りたい。

桐乃「ほら、いつまでぼけっとしてんの。 早くやろ」

元気良いなぁ、桐乃さん。

京介「……分かったよ。 とりあえず適当なところ座ろうぜ」

463: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:18:26.02 ID:wpaZUU7O0
桐乃「おっけおっけ。 ふひひ」

俺と桐乃は適当な場所に座る。 テーブルを挟んで向かい合う形。

京介「……」

桐乃「……」

いざやるとなるとすっげえ緊張するんだけど!? ああ、マジでどうしよう。

桐乃「……ほ、ほら。 早くやろうって」

464: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:18:53.44 ID:wpaZUU7O0
桐乃もようやく緊張が追いついてきたのか、視線をあちらこちらに動かしながら言う。

京介「う……んむ」

マジか。 マジでやるのか桐乃さん。 写真に撮られるんだぞこれ!?

桐乃「……チャレンジ一回だけみたいだから、失敗しないでね」

京介「わ、分かった……よし。 じゃあ、やるか」

もうこうなったらやるしかない。 徹夜明けのテンションに任せよう。

465: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:19:24.65 ID:wpaZUU7O0
俺はポッキーを一本取り、桐乃の前に突き出す。

桐乃「あ、あたし?」

京介「……だと嬉しい」

桐乃「……分かった」

桐乃は受け取ると、ゆっくりと口に咥える。

……なんかすげー可愛いなこいつ。 いつものことだが。

466: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:19:52.20 ID:wpaZUU7O0
それと上目遣いはやめて欲しい。 恥ずかしすぎて死ぬ。

桐乃「ん!」

訴えるように言う桐乃。 早くしろってことか。

つってもなぁ! つってもなぁ!?

と、悩んでいるときにカメラを構えた人が横へ。

……よく見ると、さっき受付に居た人だ。 入る時の受付に居た人。

467: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:20:19.54 ID:wpaZUU7O0
桐乃「んー、んー!」

京介「わ、分かったって!」

俺は桐乃に急かされ、桐乃が咥えている方とは反対を口の中へ。

……す、既に近いって! 時々こんな距離にはなるけどさ、なんかこの状況は死にそうになるぞ……。

桐乃「……」

桐乃もどうやら同じ気持ちになっているのだろう。 頬の辺りがひくひくと動いている。

468: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:20:55.02 ID:wpaZUU7O0
しかしいつまでもこの硬直状態のままはさすがにマズイ。 もう心臓ばっくばっくいっているから、いつか死ぬ気がするし。

よ、よし……。 やってやるよちくしょう!

俺は少しずつ食べながら、距離を詰め。

桐乃はちびちびと食べる。 で、段々距離は詰る。

もう、お互いの顔がすぐ目の前。

桐乃は何故かじっと俺を見ているし、どうせなら視線を外して欲しいっての!

469: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:21:30.02 ID:wpaZUU7O0
こ、ここで止まったら一生進めなくなってしまいそうだ。

もう、キスをする寸前の距離。

俺は決意を固めて、桐乃にキスを。

しようとしたところで、ついに限界が来たのか、桐乃の体がぴくっと震える。

次に取った行動は退避。 桐乃は後少しのところで俺から離れようと動く。

470: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:21:59.80 ID:wpaZUU7O0
……ここまで俺に恥ずかしい思いをさせたってのに、逃げるのは許さん!

そう思い、俺は桐乃の頭の後ろ辺りに手を回す。 逃げられないように。

で、そのままキス。

同時にシャッター音。 桐乃は驚いて目を開いて、手はパーの形のまま固まっていた。

471: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:22:26.72 ID:wpaZUU7O0
桐乃「う……ううううう!」

店を出た後から、ずっとこいつはこんな調子。 顔は未だに真っ赤にしていて、時折足を止めては息を整えている。

京介「……大丈夫か?」

桐乃「だ、大丈夫なワケあるかッ!! こんな写真が店舗に貼られるとか!!」

桐乃は言うと、先程撮った写真を俺に見せ付ける。

……目を瞑ってキスしている俺と、顔を真っ赤にして目を見開いている桐乃。

472: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:22:58.38 ID:wpaZUU7O0
京介「でも、メルルのポスター貰えたんだから良いじゃんか」

てか、その写真って買わなくても良かった奴だよね。 五百円って言われてすぐにお前財布出してたよね。

桐乃「そ、それはそうだケド……ふひひ。 メルちゃん……」

桐乃「で、でも恥ずかしい物は恥ずかしいっしょ! しかも京介余裕っぽくてなんかムカつく」

京介「俺だってすっげえ緊張してたっての! だけど、お前が引こうとするからするしかなかったんだって」

桐乃「あたしに無理矢理キスして良いと思ってんの?」

京介「結構してると思うが……」

473: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:23:35.01 ID:wpaZUU7O0
桐乃「うっさい! とにかく帰ったら罰与えるから」

なんだこの罰の連鎖。 ぷよぷよじゃねえんだぞ。

ひとつ終わったと思ったら次があるとかな。

京介「……一体どんな罰なんだ?」

桐乃「今考えてるとこ。 んー」

桐乃「……てか、さっき言ってたことってほんと? 京介も緊張してたっての」

474: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:24:11.17 ID:wpaZUU7O0
京介「当たり前だろ。 お前の顔、近かったし……心臓止まる思いだったっての」

桐乃「ひひ。 そかそか」

桐乃は満足そうに笑い、続ける。

桐乃「よし、よーし! 決めた!」

京介「……今の流れで?」

桐乃「ふひひ。 ちょっと待ってて、京介」

そう言うと、桐乃は近くにあった店の中へ。

数分後に戻ってきて、それから「家にかえろっか」とにこにこ笑いながら言う桐乃が、俺には恐ろしすぎた。

475: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:24:50.78 ID:wpaZUU7O0
桐乃「よし! 京介、そこ座って」

指差す先はコタツの反対側。 桐乃が座る位置とは、という意味で。

京介「ま、待て待て。 先に何するか教えてくれよ」

桐乃「決まってるでしょ。 あたしが負けたみたいでムカつくから、二試合目。 ふひひ」

言うと、桐乃はカバンからポッキーを取り出す。

……こいつ、予め想定してあると、すっげー勢い良いんだよな。 さっきはあれだけ恥ずかしがってたっつうのにさ。

476: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:25:32.43 ID:wpaZUU7O0
そしてこれを断ればどうなるか分かった物じゃない。 俺には桐乃に従う以外の選択肢は無かった。

桐乃「よし。 偉い偉い。 じゃあほら、次は京介咥えてね」

と言い、ポッキーを俺に突き出す桐乃。

京介「ま、マジでやんの……?」

桐乃「その為に買ったんだっての」

京介「お前恥ずかしくねえの!?」

桐乃「一回やってることだしぃ。 それにあの時は人に見られてたじゃん。 今は二人っきりでしょ?」

477: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:26:03.90 ID:wpaZUU7O0
そ、そういう問題かよ!? すげえなこいつ色々と!

桐乃「ほら、早くして」

桐乃はポッキーを俺に突き出したまま、促す。

そして俺にはやはり、従う以外の選択肢は無い。

京介「……やってやるよ、くそ!」

俺は桐乃からポッキーを一本受け取り、口に咥える。

478: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:26:31.40 ID:wpaZUU7O0
京介「……ん」

桐乃「そっそ。 最初から従えっつうのに」

と言いながら、桐乃は反対側を口へ。

や、やべえ。 やっぱりこれ心臓に悪い。

桐乃はさっきと違い、余裕っぽいしなんか腹立つな!

桐乃「んひひ」

桐乃は笑顔のまま、顔を近づけて。

479: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:28:09.52 ID:wpaZUU7O0
……無理!

俺はそう判断をして、桐乃の肩を抑える。

京介「ま、マジで無理だって! お前余裕すぎんだろ!?」

桐乃「はぁ。 あたしだっていちおー、恥ずかしいんだよ? 慣れたってだけで」

京介「で、でもなぁ……」

桐乃「失敗したしもう一回ね。 今度あたしが咥えるから」

と言うとすぐに桐乃はポッキーを一本口に咥える。

480: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:30:41.30 ID:wpaZUU7O0
桐乃「ん~」

にこにこと笑いながら、俺に反対側を突き出す。

……成功するまで終わらないな、これ。

京介「……死にそうだ」

俺は呟き、反対側を口へ。

桐乃「んー」

桐乃は進めと言っている。 俺には分かる。

481: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:31:08.50 ID:wpaZUU7O0
恐る恐る、俺はちびちびと食べ始める。 桐乃は両手に顎を乗せ、そんな俺を笑顔で眺めている。

……な、なんだこの状況。

そして、後もう少しといった感じの距離。

そこで俺は止まる。 か、顔が近すぎだっての!

桐乃はそれを見ると、手を元に戻し、俺のことをじーっと見つめる。 真顔で。

ついには耐え切れなくなり、俺は桐乃から目を逸らした。

482: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:31:35.24 ID:wpaZUU7O0
で、次に起きたこと。

桐乃は俺の頭に手を回し、顔を近付け、そのまま。

驚いて桐乃の方に視線を戻すと、すぐ目の前に桐乃。

一瞬、何をされたのか理解できなかった。

だが、次に桐乃は俺の唇をぺろりと舐める。 で、離れる。

桐乃「ひひ。 あたしの勝ちー」

483: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:32:02.98 ID:wpaZUU7O0
京介「お、お前なぁ!」

桐乃「なぁに? ふひひ」

意地悪そうに桐乃は笑う。

死ぬ死ぬ。 俺ぜってー顔真っ赤になってるってこれ。

桐乃「さっきの仕返し。 どうだった?」

京介「べ、別になんともねーよ! ふん」

俺は必死に言い、立ち上がる。 その場を離れる為に。

484: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:32:31.90 ID:wpaZUU7O0
とりあえず顔でも洗おう。 このままだと頭おかしくなっちまいそうだ。

しかし、そんな俺の腕を桐乃は掴むと、言った。

桐乃「どこ行くの? まだポッキーあるんだケド」

京介「……マジ?」

桐乃「マジマジ。 全部終わるまでが罰だからね。 分かった?」

俺、明日まで生きられる自信がねえぞ。

485: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:33:02.30 ID:wpaZUU7O0
桐乃「……あー、疲れたぁ」

京介「……ほんと、もう許してください」

桐乃「それってあれ? またやりたいってこと?」

京介「断じて違う!! 俺は普通のキスで充分だっての!!」

桐乃「またそーゆうこと言っちゃって。 本当はしたいんでしょ?」

京介「お、お前なんで平気なの……?」

486: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:33:37.62 ID:wpaZUU7O0
桐乃「だから用意できてたし。 いっつも不意打ちでキスしてくる京介に仕返しの意味もこもってるの。 嬉しい?」

京介「……ほう。 なるほどな」

よし、良いぜ。 分かった。

愉快そうに笑う桐乃を見て、俺は一気に距離を縮めてキスをする。

京介「こういうのが駄目ってことか? へへ」

487: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:34:03.18 ID:wpaZUU7O0
桐乃「……っ!」

おお、驚いてる驚いてる。 可愛いじゃん。

桐乃「じょ、上等じゃん。 京介、どうなるか分かってやったんだよね?」

京介「何がだよ? 顔赤いぞ桐乃ぉ? はっはっは」

桐乃「……よく分かった。 覚悟しろ」

桐乃は言うと、カバンをごそごそと漁る。

488: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:34:31.99 ID:wpaZUU7O0
桐乃「明日に取っておこうかと思ったんだケド、京介がそうゆうことするならいいし。 はい、そこ座ってね」

ちょ、ちょっと待て。 何箱あるのそれ? 桐乃さん?

京介「い、いや。 俺これから用事あるんだ」

桐乃「ウソ乙。 昨日「明日は一日暇だから、ポスター取ったらゆっくりしようぜ」って言ってたじゃん」

京介「それはあれだ……昨日の時点では暇だったんだよ。 マジマジ」

桐乃「へえ。 じゃあ携帯見せて。 昨日と今日のメールと電話チェックするから。 予定入るような奴あったかどうか」

京介「け、携帯には無いぞ? 直接会って決めたし!」

489: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:34:58.08 ID:wpaZUU7O0
桐乃「ふう~~~ん。 本気?」

京介「……お、おう。 も、も、勿論」

桐乃「ふひひ~。 そっかそっかぁ。 昨日休みだったよね、あたしと京介」

桐乃「んでぇ、あたしの記憶が正しければ昨日からずっと一緒に居た気がするんだケドぉ」

桐乃「不思議だなぁ~? なのに京介、誰かに会ってたんだぁ? きりりん分っからないなぁ?」

……素直に謝った方がいいな、今の内に。

490: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:35:24.66 ID:wpaZUU7O0
京介「嘘吐いてましたごめんなさい!」

桐乃「……あたしのこと嫌い? 京介」

京介「な、な訳ねえだろ!? 好きだよ!」

桐乃「大好きな人に嘘吐いたんだ?」

自然に「大」って付けたな、桐乃の奴。 つうか、すっげえ楽しそうだな。

京介「ゆ、許してくれ……」

桐乃「ふひひ。 じゃあ分かってるよね? なにすればいいのか」

491: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:36:00.23 ID:wpaZUU7O0
桐乃「まだ二箱あるし、続き続き」

桐乃は言うと、俺の隣へ来る。

桐乃「京介の膝の上座ってやるから。 向かい合ってね。 今日はあたしが恥ずかしい目にあった分、全部倍返しだから」

京介「ほ、本気でやんの?」

桐乃は返事代わりに俺の膝の上へと座る。 勿論、俺の方を見て。

桐乃「絶対逃がさないから。 最後まで付き合ってもらうかんね」

京介「お、俺が死ぬぞ! 割と本気で!」

492: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:36:28.32 ID:wpaZUU7O0
桐乃「きりりんとイチャイチャして死ねるとか最高でしょ?」

京介「ま、まあ……否定はしない」

桐乃「はい。 ってワケでスタートぉー」

ノリノリだな……。 桐乃も桐乃で徹夜明けだから、テンションがおかしいのかもしれんぞ。

いや、そんなことより俺はこの状況をどう打破するかなんだが。

京介「……ん」

493: ◆IWJezsAOw6 2013/08/27(火) 13:36:54.94 ID:wpaZUU7O0
俺は渋々、桐乃に従う。

つうか目合わせられ無い。 無理。

桐乃「なにそっぽ向いてんの」

すると桐乃は言って、キスをしてくる。 しかも普通のじゃない方。

も、もうマジで骨抜きにされた気分。 頭が超ぼーっとするんだよくそ。

桐乃「まだまだあるからね。 ふひひ」

今日、俺が学んだこと。

桐乃を怒らせると、俺の寿命が縮む。


ポッキーゲーム 終

507: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:03:46.06 ID:48SlWUfT0
京介「……桐乃、何で言わなかった?」

桐乃「ベツに。 ゆう必要なかったし」

3月。 京介があたしを呼び出し、今はテーブルを挟んで話し合い。

京介「大事なことじゃねえかよ。 ぶっちゃけると、お前に言って貰えなくて、俺結構ショック受けてるんだぜ」

桐乃「……だって、言ったら絶対反対するじゃん。 今だってそうだし」

話し合っているのは進路のこと。 あたしは……高校を卒業したら、誘われてもいるモデルの仕事をするつもり。 今度は合間とかではなくて、本気で。

508: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:04:19.08 ID:48SlWUfT0
京介「それで最近帰り遅かったのか。 学校に残ってたってのも、進路のことで……ってことか」

桐乃「うん。 そうゆうこと。 でも、もう決めてるから」

桐乃「今回は海外とかじゃないし、ベツに良いでしょ? あたしの人生だから」

京介が嫌だと言うのも分かる。 京介からしたら、あたしがまた海外とかに行くことになるんじゃないかと思ってしまうのも。

正直言って、それは分からない。 仕事の都合でそうなることもあるかもしれない。 だけど、あたしはそれでもしたかった。

……理由は色々あるけど。 一番大きな理由は。

509: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:05:11.71 ID:48SlWUfT0
京介「……桐乃、俺はそれでも反対だよ。 でも、最終的にはお前が決めることだしな。 悪かったよ、説教みたいになって」

京介はそう言うと立ち上がり「風呂に行って来る」と言って部屋を後にした。

……なんだっての。 もう少し引き止めてくれてもよくない? なんて、思う。

ワガママなのかな、やっぱり。

でも、あたしは。

あたしは京介といつまでも暮らしたい。

510: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:05:40.12 ID:48SlWUfT0
一応……あたしが高校を卒業するまでの学費とかは、払ってもらっている。 お父さんとお母さんに。

でも、それがあたしの場合は高校まで。 それなりに貯金もあるけど、大学へ進学ってなると……あたしの貯金だけじゃ、ちょっと厳しい。

これからの生活費とか、そういった物も含めて。

だから、頑張らないと。

京介の為にお金を稼いで、京介の為に仕事して。

京介の為になら頑張れる。

511: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:06:07.98 ID:48SlWUfT0
なのに、どうして今は喧嘩みたいになってしまっているのだろう。

これだと本末転倒じゃん。 もう少し上手く出来たんじゃないかな、あたし。

桐乃「……布団いこ」

エロゲーもやる気分じゃない。 今日は、とにかく寝よう。

時間の経過が解決してくれる問題では、無いけどね。

512: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:06:45.61 ID:48SlWUfT0
次の日も、その次の日も、京介とする会話が減っているのは明らかだった。

違う、避けているのは多分あたし。 京介はいつも通りに接してくれているのに、あたしが素っ気無い返事ばかりをしているから。

こんなあたしでも、あたしはあたしだ。

そして嫌気が差しているときでも、京介は言ってくれる。

「お前、落ち込んでるけどさ。 俺は全部の桐乃が好きだから。 俺はそんなんじゃお前のことは嫌いにならねえよ」

って。

513: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:07:12.41 ID:48SlWUfT0
一番心配していることをフォローしてくれる。 なんとも無い様な顔をしながら。

どれだけあたしのことを分かってくれているのだろう。

そしてどれだけあたしに優しいのだろう。

本当に、全部全部あたしのワガママだってのに。

なんだかもう、どうすれば良いのか分からなくなってしまいそうだ。

京介が言う様に、大学に行けば良いのか。

514: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:07:38.31 ID:48SlWUfT0
でも、それだと金銭面で厳しい。 大学で時間が出来る分を仕事に回せば良いんだろうけど、それだと本職として働いた方が、遥かに時間は作れる。

一番大事なのは、何だろう。

決まってるよね。 一番大事なのは、京介。

そんなのはもう、とっくに分かっているはずなのに。 こうして未だに悩んでいる。

今は家に一人。

京介は大学が夜まであるらしい。 結構あるんだよね、そういうことが。

515: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:08:06.18 ID:48SlWUfT0
そんなとき、電話が鳴った。

発信者は、黒猫。

こんな気分のときに話したい相手では無いけど……。

でも、誰か人の声が聞きたかった。

桐乃「もしもし? なんか用?」

「思った以上に元気そうじゃない。 良かったわ」

516: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:09:50.18 ID:48SlWUfT0
こいつがいきなりそう言うってことは、知っているってことだろう。

桐乃「……京介からなんか聞いてるってことね」

「そうよ。 あなた、すぐ海外へ逃げようとするじゃない。 だから止める為に電話をしたのだけれど」

桐乃「逃げないっての。 今回は」

「なら良いわ。 それで、あなたはどうするつもりなのよ」

桐乃「……モデルの仕事するつもり。 京介には反対されてるケド」

517: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:11:55.03 ID:48SlWUfT0
「何故?」

桐乃「京介の為に……かな」

「それで、その結果……今は若干喧嘩気味になっているのね」

桐乃「……そーゆうこと」

「ここまで見事な本末転倒は中々無いわよ? で、そうなっても止めない理由は?」

桐乃「お金だってーの。 こんなことならブルーレイ全巻店舗ごとに買うんじゃなかった……って後悔中」

518: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:18:42.17 ID:48SlWUfT0
「あらあら。 滑稽だわ」

桐乃「うっさい! だって店舗ごとに予約特典とか付けられたら、全部回るしかないっしょ!」

「……その情熱は素晴らしいわ。 情熱だけね」

「で、冗談話はそこそこにして本題に入りましょうか」

「あなたはどうしたいの? 桐乃」

あたしがどうしたいか。 それは。

519: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:20:21.03 ID:48SlWUfT0
桐乃「……仲直りしたい。 京介と。 そんで、一緒に居たい」

「なら、どうすればいいと思う?」

桐乃「それが分かれば苦労しないって。 てか、あんたも反対なワケ? あたしが働くっての」

「わたしはどちらでも良いわ。 あなたと遊ぶ時間は確実に減るだろうけどね」

桐乃「あたしが大学行った方が減るんだって。 お金の問題はやっぱりあるし」

520: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:20:54.06 ID:48SlWUfT0
「……ちょっと待ちなさい」

「それ、あなた本気で言っているの?」

桐乃「はぁ? 本気で言ってるに決まってるでしょ。 お母さんともお父さんとも、喧嘩みたいになっちゃったんだし」

「いえ、そういうことでは無くて」

桐乃「ならどうゆうこと?」

「……ああ、なんとなく分かったわ。 そうね、これ以上わたしは何も言わない方が良いかもしれない」

521: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:21:42.09 ID:48SlWUfT0
桐乃「……全く意味分からないんですケド」

「あなたが今すべきこと、教えてあげる」

「京介と話し合いなさい。 それだけよ」

桐乃「それはしたんだって。 京介も最終的には納得してくれそうだったケド……」

「心の底から?」

桐乃「そう言われると……違うと思う」

「なら話し合いなさい。 お互い、心の底から納得できるようになるまで」

522: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:22:36.90 ID:48SlWUfT0
桐乃「……」

「では、わたしは妹たちの面倒を見ないといけないから、さようなら」

そう言い、黒猫は電話を切る。

……話し合いをしろ。 ね。

それもお互いが納得できる形で。

それってつまり、あたしか京介のどっちかが引かないといけないってことだよね。

お互いに譲れないところはあるだろうし、上手く行くとは思えないんだけど。

523: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:23:41.86 ID:48SlWUfT0
ぱちん、という音が聞こえた。

目を開けると、目の前に京介。

桐乃「……ちょ、なに?」

あたし、いつの間にか寝ちゃってたのか。

京介「桐乃、もう一回話そうぜ。 お前もそう思ってるんじゃねえかなって、思ったんだけどさ」

524: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:24:07.54 ID:48SlWUfT0
……あんたはエスパーかっつーの。 怖い怖い。

桐乃「良いよ。 あたしは」

時計に視線を向けると、既に夜。

ご飯も作って無いし、お風呂の準備もしていない。

何やってるんだか、全く。

525: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:24:40.81 ID:48SlWUfT0
京介「意見……つうか、意思は変わってないよな。 仕事したいっての」

桐乃「うん……変わってない。 卒業したら、働きたい」

京介「俺もお前の話、まともに聞いてなかったから悪かったよ。 黒猫から電話とか、来たか?」

桐乃「来たよ。 京介が相談したんだろうなって思ったけど、やっぱそうだったんだ」

京介「まあな。 で、そしたらついさっき電話で言われちまったよ。 「あなたたちは本当にそっくりね」って」

桐乃「……そりゃ、兄妹だし」

526: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:26:42.67 ID:48SlWUfT0
京介「だな。 はは」

京介と話していると、理由は分からないけど安心できた。 全てが上手く行くような、そんな感じがした。

京介「で、一番肝心なこと聞いてなかったんだよ。 俺は」

桐乃「……あたしも、それは話してなかった気がする。 一番大事だったのに」

京介は優しく笑うと頷き、口を開く。

527: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:27:29.68 ID:48SlWUfT0
京介「桐乃、仕事をしたい理由ってなんだ?」

桐乃「……あたしは」

桐乃「あたしは、京介ともっと一緒に居たい」

桐乃「だから、働きたいの。 あたしの貯金だけだと厳しいと思うから」

はっきりと言う。 京介の顔をしっかりと見ながら。

すると、京介は立ち上がり、あたしのすぐ横に腰を掛けた。

528: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:28:12.77 ID:48SlWUfT0
京介「……やっべ、なんか笑えてきた」

桐乃「それはちょっと意味分かんないだケド」

京介「はは、桐乃」

言い、あたしを抱き寄せる。 反抗する気もせず、あたしは京介に身を委ねた。

桐乃「……なに?」

京介「ちょっと待ってろ」

529: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:29:52.75 ID:48SlWUfT0
……もうちょっと抱き締める時間あっても良くない?

あ、違う違う。 ついそう思ったけど、今はそんな場合じゃないっての。

桐乃「……」

あたしは黙って、京介を見る。 京介はいつも勉強をしている机のところへ行き、引き出しを開けた。

そこからひとつの手帳を取り出し、あたしの元へと戻ってくる。

京介「俺だって、ただ大学行ってお前と遊んでって繰り返してるわけじゃねえんだよ。 沙織の紹介でバイトしたりしてるしさ」

530: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:30:18.42 ID:48SlWUfT0
京介「で、お前はさっき言ったよな。 「あたしの貯金だけじゃ厳しい」って」

桐乃「……うん」

京介「馬鹿かよ。 俺のも使えば超余裕だっての。 今まで趣味なんて殆ど無かったから、結構あるんだからさ」

京介が渡してきたのは通帳。 そして、京介はあたしの頭の上へと手を置く。

暖かくて、しっかりとした手。

京介「つか、お前は最初にそれを言えって……何かすっげー理由があんのかと思ってたじゃねえか。 今度は本気でそれに打ち込みたい、だとかさ」

531: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:31:50.66 ID:48SlWUfT0
京介「……ああいや、俺は別にお前が本気でやっていないって言ってる訳ではねえぞ? いつだって本気でやってることくらい、知っているし」

桐乃「分かってるよ、京介。 ……分かってる」

桐乃「ほんとに……いいの?」

聞くと、京介は即答。

京介「おう」

桐乃「……ひひ」

532: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:32:16.67 ID:48SlWUfT0
馬鹿みたいじゃん、本当に。

黒いのが言っていたことの意味が、分かった気がする。

桐乃「でも、もう少し引き止めてくれても良かったでしょ! あんなあっさり引き気味になっちゃってさ」

京介「おおう。 びっくりした。 急にいつも通りに戻るんじゃねえっての……」

京介「まあ、なんていうか」

京介「……恥ずかしくて」

頬を掻きながら、京介はそう言う。

533: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:34:00.32 ID:48SlWUfT0
あたしは今のままじゃ厳しいと思って、働こうとして。

京介からしたら、それは問題ではなかった。

……でも、それだと京介が働くのを反対した理由ってなんだろう?

それが気になり、聞いてみた。

桐乃「京介が大学に行けって言ったのって、どーせあたしが海外に行くのを嫌がってとかでしょ?」

京介「……あー。 そうじゃないんだ」

京介「俺はな、あれだ」

534: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:35:01.04 ID:48SlWUfT0
そして、こう続けた。

京介「……単純に桐乃ともっと遊びたかったからなんだよ。 そんな自分勝手な理由で、お前の意思を曲げることなんてできねーって思って」

……たったそれだけ!?

桐乃「だ、だからあんな簡単に引いたっての!? なにそれ!!」

京介「し、仕方ねえじゃん! お前が超真剣な顔して言うからだからな!!」

桐乃「……はぁあああ」

……どっと疲れが押し寄せた感じ。

535: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:35:28.29 ID:48SlWUfT0
何やっているんだろ、あたしたちは。

京介「黒猫が呆れるのも無理はねえな……。 下手な漫才見せられた気分だろ、あいつ」

桐乃「……ひひ。 かもね」

京介「で、どうすんだ」

京介は確認を取るように言ってくる。

あたしはそれに答えた。 小さなすれ違いから生まれた今回の問題を修正する答え。

536: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:36:41.24 ID:48SlWUfT0
桐乃「大学行くよ。 大学に行って、京介といっぱい遊ぶ」

京介「そうか。 へへ」

そうだ。 どうせ行くなら同じ大学に行くとしよう。 で、毎日一緒に大学行ったりしちゃおう。

京介と一緒なのは一年だけだけど、それでも少しでも一緒に居られる時間は多い方が良いし。

桐乃「……それにしても、さっきの理由は酷くない?」

京介「そ、そうか? お前と一緒にめっちゃ遊びたいっていう俺の気持ちだぜ!」

537: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:37:56.47 ID:48SlWUfT0
桐乃「……」

京介「そんな冷めた目で見るなよ……泣くぞ」

桐乃「だって、そこはいつかみたいに「桐乃が居ないと幸せになれねえ!」ってカンジで格好良く言ってよ」

京介「……お前と毎日遊びたい!」

桐乃「そうじゃないっての」

言い、軽く京介の頭を小突く。

538: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:38:29.31 ID:48SlWUfT0
京介「まずはそうだな、今日は月が綺麗に見えるくらい晴れてるから駄目だ。 雨降ってねえと」

桐乃「天気の問題だったの!?」

京介「はは、冗談だっての」

……最後くらい格好良い台詞言ってくれても良いのに。 ったく。

でもそれが京介なのかもね。

539: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:38:56.06 ID:48SlWUfT0
桐乃「よし、なんかすっきりしたかも。 お風呂入ってくるね」

京介「それって、一緒に入ろうって意味か?」

桐乃「違う! 今のはマジで違うから!」

京介「ってことは、別の日はそうだってこと?」

桐乃「……っ!」

ああ言えばこう言うし! なんかムカつく!

京介が言ったそれは否定しないでおくけどね。 否定しないでおくけどチョームカつくっての。

540: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:39:29.57 ID:48SlWUfT0
桐乃「お風呂!」

あたしは言い、逃げるようにその場を後にする。

京介は笑っていて、それが何だか恥ずかしくなってきてしまう。

京介「あー、そうだ。 桐乃」

桐乃「……今度はなに?」

若干不機嫌顔で振り向く。

京介「お前、すっかり忘れてるみたいだな。 丁度良かったぜ」

541: ◆IWJezsAOw6 2013/08/28(水) 11:40:02.79 ID:48SlWUfT0
言うと、京介は綺麗に包装された箱をあたしに渡す。

桐乃「……へ?」

京介「バレンタインデーのお返し。 それとも「あーん」ってした方が良かったか?」

京介は言うと、あたしの頭を撫でる。

顔が赤くなるのを感じて、あたしは俯きながら、思い出した。

今日は3月14日。 ホワイトデーだ。


返す物 終

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桐乃「行ってきます」
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