317: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:21:02 ID:rVSmZeYo
比企谷「……さて」
比企谷「落ち着いたところで、俺の知った情報と状況を教えておく」
白鐘「お願いします」
―――――――――――
白鐘「イザナミ……ですか」
雪ノ下「…………」
比企谷「まあ、雪ノ下のペルソナと関係があるのか、無いのかはわからん」
比企谷「ともかくあいつは、そう名乗り」
比企谷「俺みたいな才能持ちを能力者にした」
比企谷「先のわからない娯楽作品へ仕立て上げる為にな」
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318: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:21:43 ID:rVSmZeYo
里中「最っ低じゃん!」
花村「だな……理由があればいいわけじゃねーが」
花村「できれば聞きたくなかった動機だぜ……!」
りせ「とにかく、後は元凶のそいつを倒せばいいって事ね?」
比企谷「そうなるな」
由比ヶ浜「じゃあ話は簡単だね!」
由比ヶ浜「早くやっつけに行こう!」
クマ「クマ!」
雪ノ下「ちょっと待ってくれるかしら」
天城「どうしたの? 雪ノ下さん」
雪ノ下「その……犯人のイザナミは、どうして比企谷くんの【シャドウ】を呼び起こしたの?」
雪ノ下「もっとはっきり言うと、比企谷くんで『何』をしたかったの?」
比企谷「……はっきり言ってわからん」
比企谷「あいつは俺の【シャドウ】を見た途端」
比企谷「大きく失望していた様に見えた」
雪ノ下「失望?」
比企谷「……そういや」
比企谷「おぞましいが、ここで永遠に暮らす為とか何とか言ってたと思う」
一同「!?」
りせ「暮らす? 比企谷先輩と?」
花村「モテモテだな、比企谷!」
比企谷「うれしくねーっての……」
比企谷「とにかくだ」
比企谷「あいつが今回の騒動の元凶なのは間違いない」
比企谷「詳しくはあいつと対峙してから聞けばいいだろう」
比企谷「そして……叩きのめす!」
オオー!
由比ヶ浜「ヒッキー、ちょっとかっこいいね!」
比企谷「そんなつもりじゃない」
由比ヶ浜「あ、そうだ! 私のペルソナ見てよ!」
由比ヶ浜「えいっ!」
カッ!
比企谷「無駄にペルソナ出してん……!?」
由比ヶ浜「どう? かっこいいでしょ!」
比企谷「お、おう……」
由比ヶ浜「ダーキニーって言うんだ」
由比ヶ浜「とっても強いんだよ?」
比企谷(ダーキニーって……鬼女……うわぁ)
白鐘(比企谷先輩……知っているみたいですね)
花村(まあ……驚くわな)
比企谷「……あ」
花村「? どうした? 比企谷?」
比企谷「…………」///
比企谷「……その、言うの忘れてたが」///
比企谷「助けに来てくれて」///
比企谷「ありがとう、な……」///
一同「!」
花村「へへ、気にすんなよ!」
里中「当然の事じゃん!」
天城「どういたしまして」 クスッ
りせ「ふふふ、ちょっとくすぐったいね」
クマ「クマはセンセイの為なら頑張るクマ!」
白鐘「このくらい、当たり前ですよ」
由比ヶ浜「これくらい何でもないよ! ヒッキー!」
雪ノ下「お礼を言われる程の事じゃないわ」
アハハ……
―――――――――――
黄泉比良坂(よもつひらさか)最深部
ゾロ ゾロ ゾロ…
比企谷「……よお」
イザナミ「ん? ……ほう、君か」
イザナミ「【シャドウ】に食われなかった様だな」
比企谷「俺一人だと、やばかったと思う」
イザナミ「ふん……くだらぬな」
花村「はあ!? くだらねーだと!?」
花村「人の命がかかっているってのに、何言ってやがる!」
イザナミ「失望しただけだよ……」
イザナミ「イザナギを持つ者にな」
比企谷「失望?」
イザナミ「そうだ」
イザナミ「表面上は恨み、妬み、嫉(そね)んでおきながら」
イザナミ「結局は誰かを求める矮小な存在であったのだから」
里中「それのどこがおかしいじゃん!?」
イザナミ「そうとも。 おかしくはない」
イザナミ「『普通の人間』としてね」
天城「どういう意味?」
天城「じゃあ、あなたは『何』を求めているの!?」
イザナミ「ふふふ……」
イザナミ「それは、我と対等なる者」
イザナミ「絶対者なる我と同等の力を持つ者」
イザナミ「我と等しく、憎しみを抱き、恨む者」
一同「……!?」
りせ「何を言ってるの? 訳わかんないよ!」
イザナミ「わからぬのも当然だ」
イザナミ「常人では届き得ぬ高みに我は居るのだからな」
クマ「ムキー! よくわからんけど、バカにするなクマ!」
白鐘「御託はたくさんです。 あなたの引き起こした事象により」
白鐘「人が傷つき、亡くなった方もいる」
白鐘「その償いは……必ずしてもらいます!」
イザナミ「ほう……言っておくが、我は『きっかけ』を与えただけに過ぎん」
イザナミ「『力』を得た者が勝手にやった事……それでも我に責任があるとでも?」
由比ヶ浜「当たり前でしょ!」
由比ヶ浜「あなたを野放しにしてたら、今回みたいな事がまた起こる!」
雪ノ下「必ず、ここで終わらせる!」
ペ ル ソ ナ !!
イザナミ「ふふふ……愚かな」
イザナミ「人の身でありながら、絶対的な力を持つ我に逆らうとは」
イザナミ「役者の分を超え真実を求めすぎた代償……たっぷりと払うがよい」
ゴウンッ……!!
比企谷「くっ……霧が」
雪ノ下「霧が一段と濃くなった……!」
花村「ちっ……!」
ふふふ……
りせ「!!」
りせ「み、みんな! あそこ!」
白鐘「……!」
白鐘「なんて……大きさだ!」
イザナミは、それまでの中性的な人間形態?をやめ
濃い霧を出したかと思うと……巨大な化物へと変化していた。
その姿は
大きなスカート……いや、釣鐘状の白い物体に
包帯をぐるぐる巻きにした人間らしき形状の上半身が
それにちょこんと乗っかっている。
これまでに出会ってきた【シャドウ】のデザインに似た何かを感じるが
大きさが規格外に違っていた。
クマ「あんなの、ただのコケおどしクマ!」
由比ヶ浜「そうよ! 怖くなんか……怖くなんか、ないんだからっ!」
さあ……かかって来るがよい
由比ヶ浜「ダーキニー!!」
花村「ジライヤ!!」
天城「コノハナサクヤ!!」
里中「トモエ!!」
クマ「援護は任せるクマ!! キントキドウジ!!」
白鐘「スクナヒコナ!!」
雪ノ下「回復は任せて!! イザナミ!!」
りせ「しっかりアナライズするから!! ヒミコ!!」
比企谷「イザナ――」
――我は汝――
――汝は我――
比企谷「ぐっ!?」
雪ノ下「!?」
雪ノ下「比企谷くん!?」
――汝、ついに真実の絆を得たり――
比企谷(こ、これは……!?)
――真実の絆――
――それは即ち――
比企谷(間違いない、イザナギが……ペルソナが目覚めた時)
比企谷(あの時に聞こえた、謎の声!!)
――真実の目なり――
比企谷(…………)
――今こそ汝は見ゆるべし――
――様々な究極の力――
――汝のその内に宿せし事を――
比企谷(…………)
―――――――――――
イゴール「ほほう……これは」
イゴール「節目の年を超えられたお客様に」
イゴール「更なる”力”が目覚めた様でございますな……」
マーガレット「これが……”ワイルド”の真の力」
イゴール「誠に……希少なる存在」
イゴール「ふふふ……」
―――――――――――
雪ノ下「大丈夫!? 比企谷くん!?」
比企谷「…………」
比企谷「……!」
比企谷「これは……この力は?」
雪ノ下「比企谷……くん?」
比企谷「……っ!」 グッ…!
比企谷「スカアハ!」
一同「!?」
花村「え!?」
里中「イザナギじゃないの!?」
ガ ル ダ イ ン!
ヒュゴオオオオオオオッ!!
りせ「す、すごい力を持ってるよ! あのペルソナ!」
里中「なになに!? ここに来て比企谷くん、覚醒!?」
由比ヶ浜「ヒッキー、かっこいい!」
比企谷「コウリュウ!」
一同「!!?」
クマ「ま、また、知らないペルソナクマ!」
白鐘「い、いったい、何が!?」
天城「今はありがたいから、いいんじゃないかな?」
比企谷「フツヌシ!」
比企谷「マダ!」
比企谷「ロキ!」
比企谷「ルシフェル!」
比企谷「イシュタル!」
比企谷「ルシファー!」
花村「おいおいおい!? 何回チェンジしてんだよ!?」
雪ノ下「ここまで来るとバーゲンセールね……」
由比ヶ浜「ゆ、ゆきのん。 的確だけど、ありがたみが全然無くなるからやめよう?」
クマ「さっすがセンセイクマ!」
ズゴゴゴゴゴ……
里中「まあ、それはともかく、これで決まったっぽいじゃん?」
天城「そうだよね」
天城「私たちのペルソナの攻撃も入ってるし」
白鐘「さすがに耐えられないでしょう……」
白鐘「……ん?」
りせ「…………」
白鐘「どうしました? 久慈川さん?」
りせ「なんで……どうしてなの……?」 カタ カタ カタ…
白鐘「久慈川さん?」
りせ「みんな、気をつけて! あいつ……」
りせ「全然、弱ってないっ!」
一同「!?」
ふふふ……どうしたんだい?
まさか、そんな小さな力で我を倒す気でいたのかな?
一同「…………」
我を消すなど不可能だ
なぜそれが分からない?
くくく……何も理解していない証拠だね
愚か者め!
里中「嘘でしょ……」
天城「あんなに攻撃を受けたのに……」
花村「へっ……いいじゃねーかよ」
花村「これこそラスボスって感じでな……!」
クマ「ク、クマ、まだ戦えるクマ!」
白鐘「……まだ、これからです!」
由比ヶ浜「た、倒せる……よね?」
雪ノ下「……と、当然よ、由比ヶ浜さん」
りせ「…………」
比企谷「………っ」
この時――
その場にいる誰もが戦慄を覚えた。
――――――――――
花村「うわああああああああっ!!」
里中「花村ぁっ!!」
里中「こんのぉ……! トモエ!」
白鐘「はあ……はあ……」
天城「待ってて、みんな! コノハナサクヤ!」
花村「……す、すまねぇ、天城」
クマ「ペルクマー!!」
比企谷「くそっ! どうなってやがる!?」
比企谷「アメノサギリ?だって、2~3体は倒せてるくらいだろ!」
比企谷「ルシファー!!」
ドゴォォォォォンッ!!
雪ノ下「久慈川さん、どうなの!?」
りせ「ダメ……わかんないよ!」
りせ「あいつのパラメーターは、とっくに限界を超えたダメージを受けてる」
りせ「それなのに……それなのに!」
由比ヶ浜「ダーキニー!!」
由比ヶ浜「もう! 手応えはあるのに、全然弱っている気がしない!」
由比ヶ浜「どこかに弱点とか無いの!?」
俺たちは、全力でイザナミを攻撃していた。
しかし、まったくダメージになっている様子がない……
奴の反撃が大した事ないのが唯一の救いだが
終わりが見えてこない戦いというのは、正直、精神的にキツイ。
イザナミさん、早いとこ死んでくれませんか?
割とマジで
花村「はあっ、はあっ……クソッ」
花村「ジライヤ!!」
由比ヶ浜「ダーキニー!!」
比企谷「……!」
比企谷(ちっ……花村達、直接攻撃が多くなってる)
比企谷(MP的なのが切れかけてるみたいだな……)
比企谷(…………)
雪ノ下「……比企谷くん」
比企谷「どうした? 雪ノ下?」
雪ノ下「私のペルソナも限界が近いわ……このままじゃジリ貧よ」
比企谷「……分かってる」
比企谷「真綿で首を締められてる気分だな」
雪ノ下「的確だけど、今、言わないでくれる?」
白鐘「スクナヒコナ!」
クマ「いい加減、しつこいクマ!」
里中「トモエ!」
天城「はあ……はあ……」
比企谷(くそっ……!)
比企谷(どうする!?)
比企谷(どうすればいい!?)
花村「ち、畜生……」
花村「昔やった、ゲームを思い出すぜ……」
里中「はあ、はあ……ゲーム?」
花村「なんつったかな……」
花村「ラスボスに有効なアイテム忘れて、無駄に攻撃してたってのがあんだよ」
里中「イザナミにもそういうのあれば……って事?」
花村「あるのなら、今からでも取ってく……うおっと!?」
花村「あ、あぶねぇ……」
里中「うかうか無駄話もしてらんないね……」
花村「そうだ、思い出した!」
花村「ひ○りの玉ってアイテムだ!」
比企谷「バーカ……あれはな、それ無しでも一応倒せんだよ」
花村「え? マジで?」
比企谷「確かにラスボス、めちゃくちゃ強いけどな……ん?」
比企谷「ひ○りの……『玉』?」
比企谷「!!」
俺は、不意に上着のポケットをまさぐった。
手にガラス状の、ゴルフボール位の大きさの球体が触れる。
そうだ……いつ貰ったのか忘れていたが
誰かから嘘を暴き、真実を照らすとか何とか言われたと思う。
もうみんな限界が近い。
はっきり言って……はたから見たら痛い動作でしかないが
俺はそれを、謎の球体を自分の頭の上に掲げた……!
シーン…
一同「…………」
由比ヶ浜「……何してるの? ヒッキー?」
比企谷「…………」
天城「それ、ガラス玉?」
花村「……おいおい」
花村「思いつきでも安易すぎだろ?」
比企谷「…………」///
比企谷「お、俺だって、やりたくてやってる訳じゃ」///
……ヒィイイイイイインッ!
一同「!?」
掲げた玉……『宝珠』は
俺に恥をかかせるのに十分なタイムラグの後、輝きだした……!
瞬間。
辺りをおおってた霧が晴れ、イザナミの姿に変化が起こる。
ズズ……ズズズ……
里中「うわっ!? な、何あれ!?」
天城「き、気味が悪い……」
りせ「あれが……あいつの本性!」
花村「マジにドラ○エⅢと同じかよ……」
雪ノ下「>>1って、本当に表現力が無いわね」
比企谷「メタ発言はその辺にしとけ。 あと>>1が泣きそうになってるぞ」
由比ヶ浜「それもメタ発言だよ! ヒッキー!」
白鐘「なんて禍々しい姿だ……」
クマ「ここからが本番クマね!」
ほう……そんな物、どこで手に入れたんだい?
……まあ、そんな事はどうでもいいか
いいだろう
我の本当の力、存分に見せてあげよう
ドゴ――――――――――ンッ!!!
花村「うわあああああああああああっ!!」
里中「きゃあああああああああああっ!!」
クマ「およよよよよよよよよよよよよよよっ!!」
本性?を表したイザナミは……
おぞましい外見をしていた。
大きさこそ違わないものの骨と皮だけの複数の手足と体。
そしてその外皮は暗い紫色をしていて
よりおどろおどろしさを倍増させている。
一言で言うなら、地獄に住まう亡者を複数体混ぜて、巨大にした様な
そんな印象だった。
雪ノ下「くっ……! イザナミ!!」 メディアラハン!(味方全体大回復)
天城「い、いきなり攻撃が強くなった!?」
由比ヶ浜「ダーキニー! みんなを守って!!」
りせ「今までとは比べ物にならない!」
白鐘「ええ……ですが!」
比企谷「これだけ本気になったっつー事は」
比企谷「痛いとこ突かれたっていう証拠でもある!」
白鐘「その通りです! スクナヒコナ!」
……とは言うものの
すでに疲弊している俺たちにとって、状況は決して楽観できない。
正直、俺がもっと早くこれに気がついていれば……!
だが、それを責める奴は誰もいなかった。
嬉しくもあり、辛くもあり、くすぐったい様でもあり
そして……不思議と力が湧いてくる様な気もした。
――――――――――
比企谷「はあっ、はあっ……!」
比企谷「ど、どうだ!? 久慈川っ!?」
りせ「もう少し……もう少しだよ!」
りせ「ダメージは確実に入ってる!」
花村「はあ……はあ……そ、そいつは……朗報……はあ……はあ……」
里中「ぜえ……ぜえ……」
クマ「キ、キントキ、ドウジ……っ!」
由比ヶ浜「ダーキニー……! お願い……もう少し、頑張って……」
雪ノ下「くっ……はあ……はあ……」
白鐘「……スクナ、ヒコ……ナ……っ!」
比企谷(くそったれ……!)
比企谷(みんなの疲労が激しい)
比企谷(このままじゃ……くそ!!)
比企谷「ルシファー!!」
ほう……まだそんな力を残しているのか
やはり君は、侮れない実力を持っている様だね
比企谷「はあっ……はあっ……」
そろそろ終わりにしよう……
我は恨む……幾千の輝きを
幾千の命を!
『幾千の呪言』
比企谷「何!?」
イザナミがそう言葉を発すると
俺の足元から地の底へと誘う黒い腕が数本伸びてきた!
それらが俺の足をつかもうとワラワラと蠢く。
やばい、逃げ場がない!
比企谷「く、くそっ!」
花村「比企谷っ!!」
ドンッ!!
比企谷「!?」
比企谷「花村ッ!!」
間一髪。
鈍い衝撃と共に俺は安全圏へ押し出された。
だが……
花村「うわあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
比企谷「花村ぁ――――――――――!!」
雪ノ下「だめ! 比企谷くん!」
雪ノ下「もう間に合わないっ!!」
断末魔の叫びと共に、地面へと引きずり込まれる花村……
俺は……なす術なく、それを見る事しかできなかった……
比企谷「くそっ……たれがあああっ!!」
『幾千の呪言』
比企谷「!!」
比企谷「くそっ、また!!」
ドンッ!!
比企谷「!?」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「」
比企谷「由比ヶ浜っ!!」
由比ヶ浜「……」 ニコッ
比企谷「っ!!」
比企谷「バカ……ヤロウッ!!」
雪ノ下「由比ヶ浜さんっ!!」
くくく……面白いね
だが、少々面倒だ。
先にその他大勢に消えてもらおう
『幾千の呪言』
クマ「およよ――――――――――!!」
里中「きゃあああああああああああっ!!」
天城「い、いやああああああああああっ!!」
りせ「ひ、比企谷先輩、ごめんなさいっ!!」
白鐘「くっ……! せめて、雪ノ下先輩だけでもっ!!」
ドンッ!!
雪ノ下「きゃあっ!」
雪ノ下「し、白鐘くんっ!?」
白鐘「後は……任せ」
ズズズズズズズ……
比企谷「……っ」
雪ノ下「…………」
ふふふ……
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「比企谷くん」
比企谷「なんだ、雪ノ下」
雪ノ下「何かいい打開策はあるかしら?」
比企谷「……考え中だ」
雪ノ下「無いなら無いって、言ってもいいのよ」
比企谷「死んでも言えるか」
雪ノ下「ふふっ……そう」
雪ノ下「それでこそ比企谷くんよね」
比企谷「…………」
雪ノ下「……ねえ、比企谷くん」
比企谷「…………」
雪ノ下「あなたの手を……握ってもいいかしら?」
比企谷「…………」
比企谷「……ああ」
スッ……
雪ノ下「……ありがとう」
比企谷「……どういたしまして」
さて、さよならだ……
死という現実を受け入れるんだね
興ざめだよ……こんな幕切れになるなんて
『幾千の呪言』
地面から伸びてくるたくさんの黒い腕
俺と雪ノ下は……どうする事もできずに
地の底へと飲み込まれていく……
すまない……白鐘
すまない……みんな
せっかく俺を助けてくれたのに……
そんな懺悔の気持ちの中で
雪ノ下と繋いだ手のぬくもりだけが
唯一の救いだった……
―――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――
―――
―
……………………
……ん?
……誰だ? 俺に話しかけるのは?
マーガレット「どういうつもりかしら? ここまで来て」
……うるせぇ
俺は全力を尽くした……
もう寝かせてくれ……
マーガレット「立ちなさい。 あなたはこんな所で倒れる人ではないわ」
むちゃ言うな……
俺はもう死んだんだよ……
マーガレット「死んだ? 何を言ってるのかしら?」
マーガレット「死人が話せるの?」
…………
マーガレット「あなたは分かっているはずよ」
マーガレット「絆の本質を……」
…………
マーガレット「絆が、あなたに与えてくれるモノを……」
…………
マーガレット「ほら、耳を澄ませてみて?」
マーガレット「せっかく我が主の目を盗んで来たのだから」
マーガレット「無駄足にさせないでくれないかしら?」
…………
葉山「ヒキタニくん。 どうしたんだい?」
葉山「こんな所で寝っ転がって……」
葉山「君はこんな事でへこたれる人間じゃないだろう?」
…………
川崎「……言わんこっちゃない」
川崎「一人で頑張っても辛いって、お前が教えてくれた事だろ?」
川崎「さあ、立ちな。 立ち上がって、さっさと顔を見せに来い」 クスッ
…………
戸塚「八幡……きっと今、辛いんだろうね」
戸塚「でも、僕は知ってる」
戸塚「八幡は必ず立ち上がれる人間だって……」
…………
小町「お兄ちゃん」
小町「小町……お兄ちゃんの事、大好きだよ」
小町「だから、立ち上がって……きっと大丈夫だから」
…………
花村「何してんだよ、比企谷」
花村「お前はここで倒れる人間じゃねーよ」
花村「けど……確かにキツイよな。 よし」
花村「あんまし足しにならねーかも知れないが、俺の力……」
花村「お前に託すぜ!」
花村「スサノオ!」
!?
花村「これは……このペルソナは、お前がくれたもんだ」
花村「もう一息だ。 頑張ろうぜ! 相棒!」
里中「比企谷くん」
里中「正直……腹の立つ事も多かったけど」
里中「あたしは比企谷くんと知り合えて、良かったと思ってるじゃん?」 クスッ
里中「スズカゴンゲン!」
天城「比企谷くん……私ね」
天城「本当のあなたを知る事ができて、嬉しかったよ」
天城「私と同じ様に、いろいろ抱えている人間だってわかったから」
天城「アマテラス!」
りせ「あたしと比企谷先輩の出会いは、あんまり良くなかったね」
りせ「でも……最初から今までずっと変わらない態度で、芸能人としてじゃなく」
りせ「あくまで一人の人間として見てくれた事。 けっこう新鮮で、嬉しかったよ!」
りせ「カンゼオン!」
クマ「センセイ……クマは、嬉しかったクマ」
クマ「センセイに出会えて、みんなに出会えて」
クマ「そんなきっかけを クマにたくさんくれたセンセイは、きっと立ち上がれるクマ!」
クマ「だから、頑張って欲しいクマ!」
クマ「カムイ!」
白鐘「比企谷先輩……大丈夫です」
白鐘「僕の事を認め受け入れてくれた先輩は、誰よりも優しく強い存在です」
白鐘「絶対にこんな事でへこたれる様な人ではありません」
白鐘「あなたとの食事は、いつも楽しいです。 また行きましょう」 クスッ
白鐘「ヤマトタケル!」
由比ヶ浜「やっはろー! ヒッキー!」
由比ヶ浜「これでさ、お互いの事、ある程度わかったよね? ふふっ」
由比ヶ浜「ヒッキーは、もっと、きっと、頑張れるよ!」
由比ヶ浜「でもね、私……これからもヒッキーの事、知っていきたいな」
由比ヶ浜「だから、頑張ろう? 私も応援するから!」 クスッ
由比ヶ浜「ダキニテン!」
雪ノ下「……比企谷くん」
雪ノ下「あなたの抱えてた事……想像もできなかった」
雪ノ下「でも……それでも、私の力を必要としてくれるのなら」
雪ノ下「私は協力を惜しまない」
雪ノ下「だから、こんな事で負けないで立ち上がって」
雪ノ下「伊邪那美大神(いざなみのおおかみ)!!」
足立「なんだい なんだい? こんな所でつまづいてるのか」
足立「僕の事、言えた義理じゃないね……くくく」
足立「……でも、少し安心したよ」
足立「何の事はない。 君も僕と『同じ』って事なんだからね……」
足立「さ、休憩はおしまい。 この優しくないクソな世の中を切り開いていくんだ」
足立「きっと君には……それができるさ」
足立「僕が持つ事の出来なかった”モノ”を」
足立「たくさん持っている比企谷くんになら、ね」
…………
……どいつもこいつも勝手な事いいやがって。
マジにしんどいっつーの……
……でも
ここで立ち上がったら
俺……ちょっとカッコいいかもな。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――
―――
―
……む?
比企谷「…………」
……どういう事だ?
なぜ、死なない?
比企谷「…………」
比企谷「さあな」
……まあいい
『幾千の呪言』
比企谷「…………」
理屈は分からないが
地面から生える気味の悪い黒い腕達は
俺を掴む事ができないでいる。
なんだと……?
……ならば
天より落ちし裁きの雷鳴よ……
『大雷』
比企谷「…………」
並の人間なら、間違いなく黒焦げであろう巨大な電撃
確かに俺に直撃したが、耐えられなくはなかった
どういう事だ……?
なぜ、我と互角なのだ?
比企谷「俺が知るかよ」
比企谷「……けどな」
比企谷「今なら、不思議といろんな事が見える」
比企谷「これのおかげかも知れない」
比企谷「ペルソナッ!!」
伊 邪 那 岐 大 神 !!
(いざなぎのおおかみ)
そ、その力は……!?
有り得ない……”個”の意思が我の力を超えるというのか!?
比企谷「”個”の意思ね……」
比企谷「お前には、これがそう見えるのか」
…………
比企谷「何となく……お前の気持ちが分かった気がする」
比企谷「さあ、もう終わりにしよう」
比企谷「自称”イザナミ”さんよ?」
バカな……人間ごときが世迷言を
我は神だ……
比企谷「そうかよ」
比企谷「だったら、俺のやる事なんざ気にする必要もないよな」
俺はクマのメガネを外し、放り投げた
比企谷「伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)……」
比企谷「人の世に満ちる嘘……幾千の呪言を吹き晴らし」
比企谷「真実を射止める究極の言霊」
比企谷「今こそ、発せぇぇっ!!!」
『幾万の真言』
……ああああああああああああああああああああああああああああっ!!
バ、バカ、な……!!
比企谷「はあっ……はあっ……」
なぜ……人間に……これほどの力が……
お前は……いったい……?
比企谷「…………」
なんという事だ……
この我が……滅び……消えゆくとは……
比企谷「……なあ」
比企谷「一つ聞いておきたい」
…………
比企谷「お前、数ある神の名前から」
比企谷「なんで『イザナミ』を選び、名乗ったんだ?」
…………
比企谷「推測だが……神話のイザナミは」
比企谷「お前の境遇に近い存在であるから、じゃないのか?」
…………
比企谷「だからこそ」
比企谷「『イザナギ』役をする存在が欲しくなったんじゃないのか?」
人間の『負の感情』にもいろいろある。
嫉妬……憎しみ……悲しみ……欲望……妬み……
この世界は、人の意思によって……もっと言うなら
負の意識で作られたのなら
クマを含めた、『意志ある【シャドウ】』もまた、そういった”モノ”から
存在が確定していったんじゃないだろうか?
クマは以前、『寂しくて』外見を可愛くした、と、言っていた
アメノサギリ?は、表面上は公平さを売りにしていたが
『嫉妬』からクマの【シャドウ】に干渉していた
イザナミは、俺に『自分を憎め』と言っていた
イザナミが欲しがっていたものは『寂しさ』から
自分と同じく『憎しみ』を抱く者……つまり
『仲間』が欲しかったんじゃないだろうか……
比企谷「…………」
…………
それを知ってどうなる?
神たる存在の我を打ち破ったお前が
なぜ、そんなことを聞く?
比企谷「気になったからに過ぎないし、それに……」
……それに?
比企谷「ぼっちの気持ちは、同じぼっちにしか分からねーからな」
比企谷「俺にも経験がある」
比企谷「寂しさや孤独を紛らわせる為に」
比企谷「自分より劣る命を使って遊んだものさ」
なに?
比企谷「蟻地獄にアリを放り込んで、必死に這い上がろうとする様をながめたり」
比企谷「捕まえた昆虫をクモの巣に掛からせて藻掻くのを見たりな」
…………
比企谷「お前も”神”を名乗り、人間でそれをやっていたにすぎん」
比企谷「結局……そういう意味では」
比企谷「お前は俺たち人間と『変わらない』事をしていたんだよ」
比企谷「なぜなら……」
比企谷「お前は『人の負の意識』から生まれたのだから」
…………
ふ……ふふ…………ふふふっ!
ふはははははははっ……
比企谷「…………」
……そうだ
その通りだ、人の子よ……
我は……人が……憎かった……
比企谷「…………」
理由なぞない
ただ……『憎かった』のだ
比企谷「…………」
考えた事もなかった……
なぜ、我はこれほど人間が憎いのだろうと
憎いから憎い……そう思っていた
比企谷「…………」
……人の子よ。 今、はっきりと思い出した。
我がイザナミを名乗ったのは……
神話でのイザナミに協賛したからだ
これこそが、我の存在意義なのだと、思えたからだ
比企谷「…………」
だが……全ては、虚構に過ぎなかったのだな……
我は……神などではなく……
”力”を持った……ただの【シャドウ】でしかないのだな……
だから……我は……負けたのか……
比企谷「……そいつは少し違うかもな」
……む?
比企谷「お前が【シャドウ】なのは、まあ、そうだろう」
比企谷「でも、ただの【シャドウ】じゃないのも確かだ」
比企谷「言ってみれば人間に近い存在の【シャドウ】かもしれん」
人間に近い……【シャドウ】……
比企谷「……よし」
比企谷「一つプレゼントしてやる」
プレゼント……?
比企谷「お前は今から、『渚』だ」
なぎ……さ……?
比企谷「もう『イザナミ』じゃないんだろ?」
比企谷「だったら……ちゃんとした『名前』を名乗らないとな」
…………
比企谷「昔な、あるアニメで海と陸の間の……という表現を聞いたことがある」
比企谷「そりゃ波間、『渚』の事だろう、と俺は思った」
比企谷「人と【シャドウ】の間みたいな存在のお前に」
比企谷「ピッタリだと思わないか?」
…………
比企谷「…………」
なぎさ……か……
いい……名前……だな……ふふ……
人の、子よ……いや……
比企、谷……八幡……
比企谷「…………」
礼、を……いう……
あり……が…………とう……
比企谷「…………」
比企谷「……どういたしまして」
比企谷「ゆっくり休むといい……」
比企谷「渚」
俺に礼を言うと
力尽きた『渚』は、静かに、風に舞う砂の様に
崩れて消えて行った……
そして――
…………
――――――――――
????
イゴール「ふふふ……ようこそ、我がベルベットルームへ」
イゴール「こうやってお客様をここへお招きするのも」
イゴール「恐らくこれで最後となりましょう……」
イゴール「神に近しき”力”を持つ存在すら打ち破り」
イゴール「お客様は、新たな『世界』の誕生すら成し遂げられました」
イゴール「お見事でございましたな……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……それはお客様ご自身の目で」
イゴール「ご覧になられた方が早いでしょう……」
イゴール「間もなく、すべての霧は晴れ」
イゴール「おのずと目的地は見えてまいりますから……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……それにしても素晴らしい」
イゴール「お客様の節目の年にふさわしい、実に」
イゴール「有意義な旅にございました……」
イゴール「幾度となく視界を曇らせる虚飾や嘘の霧に阻まれながらも」
イゴール「安易な出口や、まやかしの終点の誘惑に打ち勝ってこられた」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……その通りにございまする」
イゴール「お客様の独自解釈や、大切な人々と絆を築き」
イゴール「真実へまた一歩、また一歩、と近づいてゆく……」
イゴール「その度にわたくし自身も心躍る思いでした」
イゴール「これ程の旅路に立ち会えた事を わたくしも誇りに思っております」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……」
マーガレット「もう間もなく到着します」
イゴール「おお……そろそろ”旅路の真の終点”でございますな」
イゴール「契約はついに果たされました」
イゴール「わたくしの役目もこれまでにございます……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……あなたは最高のお客人でございました」
イゴール「ありがとうございます……」
マーガレット「私からも一言お礼を」
マーガレット「素晴らしき旅路を本当にありがとう」
マーガレット「本音を言うと……少しさみしい気もするけどね」
イゴール「……さあ、お行きなさい」
イゴール「そして、その目で直にご覧になられるとよろしいでしょう」
イゴール「お客様が最後に勝ち取った”世界”が」
イゴール「どの様な素晴らしき明日であるかを……」
マーガレット「行ってらっしゃい、お客様」 クスッ
――――――――――
チチチ…… チュピ、チュピー…
比企谷「…………」
比企谷「……ん」
比企谷「…………」
比企谷「ここは……?」
そこは、どこかの深い森だった。
それも杉とかじゃなく、ブナやナラ、名前もわからない木々が
雑然と生い茂っている印象だ。
比企谷(…………)
比企谷(ともかく、みんなを探さないと……ん?)
不意に、俺は自分の左手が誰かの手を握っている事に気がつく。
比企谷「……雪ノ下」
比企谷(そういや、あの時……もうダメかと思ったあの瞬間……)
比企谷(…………)
比企谷(見たところ、異常は無さそうだな)
比企谷(起こしてみるか……)
比企谷「……おい、雪ノ下」
比企谷「起きろ、雪ノ下」 ペシペシ
雪ノ下「……ん」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「! 比企谷くん……」
比企谷「気がついたか、雪ノ下」
雪ノ下「ここは……どこなの?」
比企谷「俺にもわからん……」
比企谷「最後、イザ……『渚』を倒したと思うんだが」
比企谷「どうにも記憶がはっきりしない」
雪ノ下「『渚』?」
比企谷「みんなを見つけた後で詳しく説明する」
比企谷「立てるか?」
雪ノ下「ええ、多分大丈夫だと……?」
雪ノ下は、自分の右手が俺の左手を握っているのに気がついた。
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……も、もういいから」///
比企谷「お、おう……」///
――――――――――
花村「……!」
花村「比企谷!」
花村「それに雪ノ下さんも」
比企谷「生きていたか、花村!」
花村「へへっ、勝手に殺すんじゃねーよ!」
俺と雪ノ下は、森を少々さまよい、少し開けた場所に出る。
そこに元気そうな花村と、他の全員が揃って休んでいた。
みんな特に問題はなさそうだった。
花村「ところでここは、どこなんだ?」
花村「いや、その前にイザナミとの戦いは、どうなったんだ?」
比企谷「俺が知る限りの事は、今話す」
――――――――――
比企谷「――という訳だ」
花村「へえ……『渚』ね」
りせ「という事は……あの鳥居?がたくさんある世界は」
りせ「比企谷先輩に関係していたんじゃないんだ」
比企谷「ああ。 『渚』が神話を元にイメージしたのかもな」
天城「じゃあ……この世界は?」
比企谷「こればっかりはな……どうも俺の記憶がはっきりしなくて」
比企谷「誰かに俺が新しく作った世界、とかなんとか言われた気がする……」
由比ヶ浜「ヒッキーが作った世界?」
里中「へえー。 比企谷くんてアウトドア派なんだ?」
比企谷「超インドア派です」
雪ノ下「……そうよね」
白鐘「ま、まあ、それはともかく、しばらく探索しませんか?」
クマ「帰るのは、いつでもできるクマ!」
――――――――――
ザッ ザッ ザッ…
里中「それにしても空気がおいしいじゃん?」
天城「八十稲羽も負けてないと思うけど……」
りせ「爽やか~」
花村「自然は豊かっぽいな」
由比ヶ浜「ヒッキーは自然が好きなの?」
比企谷「……嫌いじゃねーけど」
雪ノ下「腑に落ちないの? 自分で作ったのに?」
比企谷「…………」
白鐘「……あ! どうやら森はあそこで終わりみたいです!」
クマ「ウッホホーイ!」
一同「!!」
森を抜け、俺たちの目に飛び込んできた物は
本当の意味で大自然が広がる世界だった。
飛び回る小鳥たち……広大な花畑とそこを舞う蝶蝶……
飲めそうなくらい透き通った水が流れる清流……
遠くに見える雪をかぶった高い山々……
見ていて吸い込まれそうなほど、綺麗な景色だった。
花村「おおー! スゲー!」
里中「絶景かな、絶景かな♪」
天城「風も気持ちいいね、千枝!」
由比ヶ浜「すごい……」
りせ「本当にそれしか言えないね」
白鐘「同感です」 クスッ
雪ノ下「…………」
雪ノ下「比企谷くん?」
比企谷「ん?」
雪ノ下「思っている事があるのなら、はっきり言ってくれないかしら?」
比企谷「…………」
比企谷「……この世界、リスとかの動物はいるのに」
比企谷「人間が居ないと思ってな……」
由比ヶ浜「え?」
比企谷「もし」
比企谷「この世界……俺の『意思』が反映されているのなら、俺は」
比企谷「まだ『人間』に対しての不信感が拭(ぬぐ)えていないのかもな……」
一同「…………」
比企谷「……水を差して済まない」
比企谷「だが、これで本当の意味で」
比企谷「すべてが終わったんだ……とは思う」
……結局
俺は『俺』のままって事なのだろうか。
見た目こそ素晴らしい、北欧風の様な大自然が広がるこの世界。
完璧である必要は無いだろうが……
ケチをつけるのも自分であるのが、妙に滑稽に思えて仕方なかった。
――――――――――
天城屋のとある一室
花村「はあ? クイズ大会?」
クマ「そうクマ!」
花村「おいおい……俺たちテレビの世界から戻ってきたばかりじゃねーかよ」
比企谷「はっきり言って疲れてるんだが……」
クマ「クマはビンビンに元気クマ!」
花村「……パスさせてくれ」
比企谷「……また今度でいいだろ」
クマ「え~! だってユイちゃん、明日帰っちゃうし」
クマ「チャンスは今しかないクマ!」
比企谷「どうする? 花村?」
花村「どうするって言われてもなぁ……」
クマ「むふふ……ちゃんと豪華景品も用意してるクマよ~?」
花村「景品? 何だよ?」
クマ「それは優勝してからのお楽しみクマ!」
比企谷「……って言われてもな」
花村「……クマのバイト代で手に入る豪華景品なんて」
花村「お菓子詰め合わせとか、ホームランバー10本とかだろ?」
クマ「ムキー! ヨースケ、馬鹿にするなクマー!」
??「あら。 面白そうな話、してるわね?」
比企谷「!」
花村「!」
ガラッ
陽乃「うふふ~ごきげんよう♪」
比企谷「……どうも」
花村「……どうもっす」
陽乃「私からも景品用意するから、参加して楽しもうよ?」
比企谷「……疲れてるんで」
花村「……お、俺も」
陽乃「そっか。 残念ね」
陽乃「じゃあ仕方ない。 誰かさんと誰かさんの恥ずかしい話でもして」
陽乃「雪乃ちゃんと盛り上がって来ようかな?」
比企谷「はい?」
花村「は、恥ずかしい話?」
陽乃「んー? たとえばぁ……」
陽乃「修学旅行、クラブの時、ヘベレケ状態の男子高校生の写メとか」
比企谷「!!」
陽乃「夏祭りの時のウブな男子高校生のエピソードとか」
花村「!!」
陽乃「ガールズトークで盛り上がりそうよね~」 ニヤニヤ
花村「ク、クマ吉! ちょうどクイズとかやりたかったんだ!」
花村「ぜひ参加させてくれ!」
比企谷「お、俺もだ!」
クマ「ムホホー! そうこなくっちゃクマ~!」
陽乃「良かったね、クマくん♪」
俺たちは、あの世界……テレビの中の世界から戻って
再び天城屋に宿泊している。
『渚』との戦いは一晩中に及んだみたいで
テレビから出てきた時は、翌日の午後になっていた。
そういえば特に気にもしていなかったが、あの世界とこちら側は
時間がリンクしている。 時差がない。
どうしてなのだろう?
由比ヶ浜は昨日 唐突にここへ来たため
両親に連絡した時、やっぱり怒られたみたいだ。
とりあえず詳しい事情を話せないので、どうしても行きたかったから
という苦しい言い訳みたいな理由で押し通した様子。
……なんか、すみません。
で、そのお礼、という事でもないが
慰労も兼ねて天城屋に……という流れで今に至る。
オフシーズンで空(す)いているし、格安で泊まれたから
お得でちょっと贅沢な気分を味わっていたところ
クマが今の話を持ちかけてきたのだった……
―――――――――――
クマ「レデース、アン、じぇんとるメーン!」
クマ「いよいよこの日がやって来た!」
クマ「気力・能力・クマの気分! 優勝目指して突き進め!」
クマ「マヨナカ横断ミラクルクイズ~!!」
クマ「ドンドンドン、パフーパフー! クマ!」
花村「盛り上げ演出もお前の口かよ……」
比企谷「着ぐるみも白タキシード着てるし……ノリノリだな」
クマ「司会・進行はワタクシ、ジャッスミークマ沢がお送りしますクマ!」
雪ノ下「……このネーミングの元になったネタ」
雪ノ下「今の若い人たち、わかるのかしら?」
由比ヶ浜「ニューヨークへ行きたいかー、でしょ?」
天城「私は○留さんかな。 トメさんの愛称でお馴染みの」
里中「勝てば天国、負ければ地獄。 知力体力時の運! 早く来い来い木曜日!」
白鐘「>>1は参加したかったみたいですが」
白鐘「当時、交通費が片道3万円もかかるので断念したそうです」
りせ「あれって結構大変だったらしいよ?」
りせ「泥んこクイズとかバラマキクイズとかの準備もそうだし」
りせ「それに国際問題になりかけた事とかもあったらしくって……」
陽乃「敗者復活や罰ゲームは、今でもいいアイデアだと思うわよね~」
花村「何でみなさん、そんなにお詳しいんですか……」
比企谷「あと、メタ発言はやめなさい」
クマ「それでは、さっそく始めるクマ!」
クマ「第一問!」
クマ「ユイちゃんがGWに八十稲羽へ来たきっかけは、次の内のどれクマ?」
A 平塚先生の傷心旅行に付き合わされた
B 福引の景品
C ユイちゃん自身が観光目的で
D 修学旅行
里中「あ~……そういや何だっけ?」
由比ヶ浜「これ、私が答えてもいいの?」
クマ「構わないクマ!」
ポーン!
由比ヶ浜「Bの福引の景品!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「正解クマ! さっすがユイちゃんクマ!」
由比ヶ浜「えへへ~」
比企谷「本人なんだから、答えられて当たり前だろ……」
花村「これ、この頃には居なかった白鐘とかには超不利なんじゃね?」
クマ「細かいことは気にすんなクマ!」
花村「おかしいだろ!? クイズとして!」
りせ(まあその時の事、話では聞いてたし)
白鐘(過去を知る事もできるので、ちょっと面白いですけどね)
クマ「第二問!」
クマ「ユイちゃんと一緒にやって来た、セイセイの先生、平塚先生!」
クマ「ぶち切れてセンセイに最初に食らわせた技は、次の内のどれクマ?」
A 衝撃のファー○トブリット
B 撃滅のセ○ンドブリット
C 抹殺のラ○トブリット
D シェ○ブリット・バースト
比企谷「今から考えると、十分訴訟できるレベルだったぞ、あれ」
里中「あれは理不尽だったね~」
雪ノ下「どうせ比企谷くんが、余計な事を言ったからなのでしょうけど……」
ポーン!
花村「Cの抹殺の○ストブリット!」
ブブー!
クマ「外れクマ!」
クマ「正解はAの衝撃の○ァーストブリットクマ!」
花村「いい!? そうだったっけ?」
クマ「ちっちっちっ。 ジャッスミークマ沢は『最初に』って、ちゃんと言ったクマ!」
白鐘(……技の名前から推測できそうなんですけど)
りせ(教師なのに暴力振るったの?)
里中(確かにすごいキャラの先生だったじゃん……)
花村「つか、クマ。 お前あの時いなかったのになんで知ってるんだ?」
クマ「さぁ~て、どんどん行くクマ!」
花村「無視かよ!?」
クマ「第三問!」
クマ「ユキノンが転校してきた時、あるエピソードから付けられた」
クマ「ユキノンへの告白行為の俗称は、次の内のどれクマ?」
A 雪ノ下越え
B 雪ノ下チャンス
C 雪ノ下またぎ
D 雪ノ下くぐり
花村「そういやあったな~。 何だっけ?」
天城「つけられる方は迷惑なんだけどね……あれ」
ポーン!
比企谷「……Dの雪ノ下くぐり」
ピンポン ピンポーン!
クマ「さっすがセンセイクマ! 大正解クマ!」
雪ノ下「くっ……私も押したのに」
由比ヶ浜「次があるよ、ゆきのん!」
里中「なんだかんだ言っても、面白くなってきたじゃん」
りせ「もうすぐあたしかな?」
白鐘「僕の登場は、まだ先そうですね」
クマ「第四問!」
クマ「GW明け、ユキノンが見かけた怪しい人物の名前」
クマ「実はナオトだったけど、ユキノンは間違って覚えてたクマ」
クマ「その間違ってた名前は、次の内のどれクマ?」
A 白三河 直美
B 白無垢 直江
C 白装束 直道
D 白北澤 直茂
花村「あ~、あったあった! えっと……何だっけ?」
比企谷「おかげで怪しい人物って認識だったな」
白鐘「……名刺でも作って渡せば良かったですね」
ポーン!
天城「Bの白無垢 直江!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ユキちゃん正解クマ~!」
天城「やった!」
里中「よく覚えてたね、雪子」
天城「やっぱり珍しい名前だったし……旅館の女将として」
天城「名前は覚えられる様、頑張ってたから♪」
白鐘「なるほど。 仕事柄、そういう事ができる様になってたんですね」
比企谷(……俺はよっぽどの奴じゃないと、なかなか覚えられない)
クマ「第五問!」
クマ「りせちゃんの実家のオトーフ屋さんを訪ねたセンセイとヨースケ」
クマ「その時買ったものは、次の内のどれクマ?」
A おからを3パック
B 絹ごし豆腐を3丁
C 豆乳を1リットル
D がんもどきを6つ
花村「確かにお前、なんか買ってたな?」
比企谷「もう覚えてねーよ……豆腐じゃなかったと思うが」
ポーン!
りせ「Dのがんもどきを6つ!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「正解クマ!」
りせ「うふふ! あたしよく覚えてるよ?」
りせ「花村先輩は鼻の下伸ばしてて、比企谷先輩の目がすっごく怪しかったな♪」
雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…
由比ヶ浜「…………」 ゴゴゴ…
花村「ク、クマ! さっさっと次の問題に行け!」
比企谷「早くしろ!」
クマ「第六問!」
クマ「夏休みに入って、アダっちーの部屋に集結した時」
クマ「男性陣がヒマ潰しにやっていたのは、次の内のどれクマ?」
A 人○ゲーム
B モン○ターハ○ター
C 大乱闘ス○ッシュブ○ザーズ
D トランプの7ならべ
里中「ああ、あたしらがお昼作ってた時だね」
天城「クマくんがすっごく喜んでたよね? 確か」
ポーン!
花村「これは覚えてるぜ。 Aの○生ゲームだ!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「おおー! ヨースケ、正解クマ!」
クマ「クマ、石油王になって、世界経済を引っ張ったクマよ~」
雪ノ下「比企谷くんは?」
比企谷「……小さな工場経営者で終わった」
比企谷「ちなみに花村は学校の用務員で定年」
花村「暖かな家庭を築いたんだからいいんだよ!」
白鐘「な、なんだか、細かい設定まである終わり方ですね……」
由比ヶ浜「私もちょっと参加したかったかも♪」
クマ「第七問!」
クマ「修学旅行での行く先が、センセイのかつて母校だと知った時」
クマ「センセイがハルさんを例えた正確な言葉は、次の内のどれクマ?」
A 四次元ポケットを持った未来のネコ型ロボット
B 4Dポケット持ってる青いタヌキ型ロボット
C 4Dポケット持った自称ネコ型ロボット
D 4Dポケット持ってる自称キャット型ロボット
花村「そんなもん本人以外、分かる訳ねーだろ!?」
由比ヶ浜「うーん……でも、ヒッキーの性格を考えると……?」
ポーン!
白鐘「Dの4Dポケット持ってる自称キャット型ロボット!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「正解クマ!」
白鐘「やった!」
クマ「ナオト、よく分かったクマね~」
白鐘「ははは……まあ、なんとなくですけど、比企谷先輩の事ですし……」///
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「……あの。 どうかしました?」
花村(……な、なんか、緊張感が高まってる様な)
里中(空気、変わったじゃん……)
天城(次は当てるっ!)
りせ(愛のなせる技かぁ♪)
クマ「第八問!」
クマ「修学旅行中、偶然ばったり出会ったハルさんとセンセイ達」
クマ「その時ハルさんは次の内、どの理由でそこに居たクマ?」
A 就職活動
B お見合いをする為
C 休学届けを出してる大学に用事
D 実家に呼ばれて仕方なく
花村(……あれ、本当に偶然だったのかな)
比企谷(……まるでこちらを監視しているのかと思える様なタイミングだった)
ポーン!
陽乃「Cの休学届けを出してる大学に用事!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ハルさん正解クマ!」
陽乃「やった! やっと私も答えられる問題が出たわ♪」
雪ノ下(でも……あの後のクラブでの出来事)
雪ノ下(何があったのだろう?)
由比ヶ浜(あれは酷かったなぁ……)
里中(雪子含め、覚えていなくて幸いだけど……)
白鐘(今にして思えば、大暴露大会でしたね……)
花村(あの時の写メ……まだ持ってるんだよなぁ、陽乃さん……)
比企谷(まあ楽しかった感覚があるのみだが)
りせ(また行きたいな♪)
クマ「第九問!」
クマ「修学旅行最終日、大衆食堂はがくれで食事した時」
クマ「りせちゃんは美味しいけど、次の内の何を気にして控えてたクマか?」
A カルシウム
B ビタミン
C タンパク質
D 炭水化物
花村「あそこのラーメン確かに旨かったよな!」
里中「うーん……なんだったっけ?」
ポーン!
天城「Dの炭水化物!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「正解クマ!」
天城「やった♪」
りせ「うそっ!? あたしも押したのに~!」
里中「早押しだからねー」
雪ノ下「私も分かったのに」
由比ヶ浜「女の子なら誰でも気にするよね~」
白鐘「僕はあまり気にした事はありませんが?」
りせ「……その栄養。 全部胸に行ってるのかなぁ」
白鐘「!?」///
クマ「第十問!」
クマ「センセイの善意で始まった勉強会」
クマ「その時に暴露されたヨースケのうっふん♡な本のタイトルで」
クマ「正しくないのは、次の内のどれクマ?」
A お姉さんの谷間でイって♥
B 姉ちゃんとやろう!
C 揉みしだかれたおっ○い
D 破れたパンストと生足
花村「そのネタ、もう引っ張んのやめて!?」///
里中「あははははは……」
ポーン!
天城「たぶん、Cの揉みしだかれた○っぱいだと思う」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ユキちゃん正解クマ!」
天城「うふふ、二問連続正解! 正しくは巨乳だったよね?」
里中「ゆ、雪子……」///
白鐘(できない……僕にこの問題を答える事はっ)///
りせ(恥ずかしくて答えられなかった……)///
雪ノ下(……まあ健全な男子ならしょうがないけど)///
由比ヶ浜(なんで天城さん答えられるの!? 勉強会って、何の勉強したの!?)///
クマ「第十一問!」
クマ「八十神高校・文化祭で行われた女装コンテスト!」
クマ「クマの優勝で幕を閉じたけど、この時のセンセイが」
クマ「女装でかぶっていたものは 次の内のどれクマ?」
A 黒髪ロングのカツラ
B 金髪ロングのカツラ
C 銀髪ロングのカツラ
D 茶髪ロングのカツラ
比企谷「古傷をえぐるんじゃねぇ!!」///
花村「早く忘れたい……」/// シクシク…
ポーン!
由比ヶ浜「Aの黒髪ロングのカツラ!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ユイちゃん正解クマ!」
由比ヶ浜「よし!!」
天城「私も覚えてたのに~」
里中「確か……ガタイのいいサ○コとか言われてたじゃん?」
りせ「そうそう!」
比企谷「もう忘れてください……」
白鐘「ぼ、僕は、悪くなかったと思いますよ?」
アハハ……
―――――――――――
クマ「さて」
クマ「問題も随分終わって、盛り上がってきましたが!」
クマ「いよいよ次が! ラストファイナル千秋楽問題クマ!」
クマ「ドンドンドン、パフーパフー! クマ!」
花村「ラストもファイナルも千秋楽も同じ意味だっつーの!!」
クマ「もー。 ヨースケは人間がちっちゃいクマね」
クマ「だからカノジョ出来ないクマ」
花村「うっせーよ!?」
天城「けっこう面白かったね、千枝」
里中「ふふ、まあね」
陽乃「白熱したわ~♪」
りせ「いよいよ最終問題かぁ」
白鐘「現在の正解数は……僕と、比企谷先輩」
白鐘「それに雪ノ下先輩と由比ヶ浜さんが同数でトップです」
それ以外(よりにもよって、その顔ぶれで横並びトップですか……)
比企谷「お約束なら最後は、ポイント1億点というのがデフォだな」
天城「あれ興ざめする……」
里中「今までの展開なんだったの?って感じになるじゃん?」
クマ「も、もちろん、そんな事はないクマよ、センセイ?」
花村(やる気だったな……こいつ)
クマ「それでは、ラストファイナル千秋楽問題!」
クマ「最後の戦いにおいて、センセイが掲げた不思議なアイテム!」
クマ「その時、その事を思い出すきっかけとなったゲームのアイテム名は」
クマ「次の内のどれクマ?」
A ドラ○エの「に○のしずく」
B ド○クエⅣの「おう○んのうでわ」
C ドラク○Ⅱの「は○いのつるぎ」
D ○ラクエⅢの「ひか○の玉」
比企谷「どれもこれも皆懐かしい……」
比企谷「終わったドラ○エのレベル上げも楽しい思い出だ」
花村「……想像すると切なくなるから止めろって」
ポーン!
雪ノ下「DのドラクエⅢの「ひかりの玉」!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ユキノン、大正解クマ~!!」
里中「お見事!」
天城「さすが雪ノ下さんね」
りせ「っていうか、当事者の比企谷先輩が答えられないって……」
比企谷「いや……はぐ○メタルと戯れ、パルプ○テ祭りをしたなと思い出に浸って」
由比ヶ浜「そ、そろそろ帰ってこよう? ヒッキー?」
白鐘「優勝は雪ノ下先輩ですね」
陽乃「うふふ、さすが雪乃ちゃんね♪」
ポーン!
雪ノ下「Dのド○クエⅢの「○かりの玉」!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ユキノン、大正解クマ~!!」
里中「お見事!」
天城「さすが雪ノ下さんね」
りせ「っていうか、当事者の比企谷先輩が答えられないって……」
比企谷「いや……はぐ○メタルと戯れ、パルプ○テ祭りをしたなと思い出に浸って」
由比ヶ浜「そ、そろそろ帰ってこよう? ヒッキー?」
白鐘「優勝は雪ノ下先輩ですね」
陽乃「うふふ、さすが雪乃ちゃんね♪」
クマ「いや~、白熱したクイズバトルだったクマ!」
比企谷「ときどき古傷に塩水かけられた気がするがな」
花村(……俺はヤブヘビになりそうだから、あえて突っ込まないでおこう)
陽乃「それにしても花村くんの趣味って、そうなんだー」
花村「やめてー!! 俺のライフ、もうマイナス!!」///
里中「で? なんか優勝者には豪華景品が贈られるとか言ってたけど?」
クマ「もっちろん、進呈するクマ!」
クマ「マヨナカ横断ミラクルクイズ、優勝者には……」
一同「…………」
クマ「クマからの熱いホウヨウと共に、愛情たっぷりの口づけが」
ガシッ!!
クマ「はがッ!!?」
比企谷(うおっ!? 雪ノ下!?)
比企谷(一瞬の内にクマの着ぐるみ外して、中身の頭にアイアンクローをかました!?)
ギリッ…ギリッ…ギリリッ!!
クマ「イタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ!!?!?」
雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…
由比ヶ浜(し、しかも片手でクマくんを持ち上げてる!?)
クマ「ユキノン、ユキノン! 冗談じゃなく痛いクマ!?」
雪ノ下「痛くしてるから当然ね」
クマ「何が気に入らないクマ!? ジュネスのおば様には大人気なのに!?」
花村「……まあ雪ノ下さんは『ジュネスのおば様』じゃねーからな」
花村「つーか、店で何してんだよ、お前……」
花村「あと、俺と比企谷が優勝した時も景品それだったのか?」
クマ「当たり前クマ!」
比企谷「雪ノ下さん、やっちゃってください。 遠慮なく」
由比ヶ浜「え~っと……」
りせ「まあ仕方ないかな」
白鐘「ですね」
天城「一度締めないといけないと思ってたし」
里中「いい機会じゃん?」
陽乃「あらあら♪」
クマ「」
ア―――――――――――!!
―――――――――――
天城屋 露天風呂(現在女性風呂)
チャプン…
由比ヶ浜「ふう……」
由比ヶ浜「やっぱりここの露天風呂はいいな♪」
由比ヶ浜「気持ちいい~」
ガララ…
雪ノ下「……あ」
雪ノ下「由比ヶ浜さん」
由比ヶ浜「あ、ゆきのん」
雪ノ下(……誰もいないと思ったのに)
雪ノ下「こんな遅い時間にどうしたのかしら?」
由比ヶ浜「ん? 私、明日帰るし」
由比ヶ浜「まあ記念にって、思って」
雪ノ下「そう……」
由比ヶ浜「そう言うゆきのんは?」
雪ノ下「エロクマを締めて、少し汗をかいたから」
由比ヶ浜(クマくん……大丈夫かな)
由比ヶ浜「そ、そうなんだ……」
由比ヶ浜「そだ、まだお礼 言ってなかったね」
雪ノ下「何の事?」
由比ヶ浜「交通費とかここの宿泊費とか出してくれて」
雪ノ下「ううん。 それこそ気にしないで、由比ヶ浜さん」
雪ノ下「むしろ足りないくらかも、と思ってるの」
由比ヶ浜「でも……」
雪ノ下「お金、という形になってしまったけど」
雪ノ下「感謝の気持ちに変わりはないわ。 だから……どうしても気になるのなら」
雪ノ下「何か別の形で返してくれたらいいから」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「うん。 わかったよ、ゆきのん」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「…………」
雪ノ下「……ところで」
由比ヶ浜「ん?」
雪ノ下「比企谷くんが私たち……ううん、もっと言うと」
雪ノ下「周りの人達を傷つけない為に、身を引いていってるって」
雪ノ下「どうして足立さんとの あの会話で分かったのかしら?」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「それだけじゃないよ」
雪ノ下「え?」
由比ヶ浜「私はね、ゆきのんやみんなの意見も聞いて」
由比ヶ浜「その上で足立さんとの話でそう思っただけ……」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「今にして思うとね」
由比ヶ浜「年末に私がここを離れる時……ヒッキーは」
由比ヶ浜「不必要に謝っていたなって思えるの」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「その時は……私も小さな違和感しか感じられなかった」
由比ヶ浜「でも、みんなとゆきのんの話……それに」
由比ヶ浜「足立さんとの話で、ヒッキーは」
由比ヶ浜「関わってきた、全員に謝っているんじゃないかって思えた」
雪ノ下「!」
由比ヶ浜「私から見たらヒッキーは何も悪くない」
由比ヶ浜「でもヒッキーは……ヒッキー自身は、そうじゃないんだって」
由比ヶ浜「自分を責め続けているんだって感じて、悲しくなったな……」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「とまあ、こんな感じかな?」
雪ノ下「……ありがとう」
雪ノ下「よく分かったわ」
由比ヶ浜「どういたしまして♪」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「ね、ゆきのん」
雪ノ下「何かしら?」
由比ヶ浜「ヒッキーに気持ち、伝えた?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……あなたが気にする事じゃない」
由比ヶ浜「そう」
由比ヶ浜「だったら……ちょっと意地悪するね」
雪ノ下「え?」
由比ヶ浜「そういうのって、ずるいんじゃないの? ゆきのん」
雪ノ下「……何がずるいの?」
由比ヶ浜「臆病で、傷つく事を恐れて、進もうとしていない」
由比ヶ浜「そんな風に見えるから」
雪ノ下「っ!」
バシャッ!
雪ノ下「勝手な事を言わないで!」
雪ノ下「私は……私はそんな理由でしないんじゃない!」
由比ヶ浜「じゃあ、どんな理由?」
雪ノ下「!!」
雪ノ下「そ、それは……」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「……黙っちゃうんだ」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「…………」
ザバァ……
由比ヶ浜「さて、そろそろあがろっと」
雪ノ下「…………」
ペタ ペタ ペタ… ガララッ
由比ヶ浜「ねえ、ゆきのん」
雪ノ下「……何かしら?」
由比ヶ浜「私……どんな事があっても」
由比ヶ浜「ヒッキーとゆきのんが『特別』である事に……」
由比ヶ浜「変わりはないから」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「じゃ、お休み」
ガララ…… ピシャ
雪ノ下「…………」
―――――――――――
雪ノ下の部屋
コン コン
雪ノ下「はい? どなたですか?」
??「私よ、雪乃ちゃん」
雪ノ下「姉さん? 今頃、何の御用ですか?」
陽乃「とりあえず開けてくれるかな?」
雪ノ下「…………」
ガチャ…
陽乃「ありがとう」
雪ノ下「いえ……それで? ご要件は?」
陽乃「例のクイズの景品を渡そうと思って」
雪ノ下「景品?」
陽乃「うふふ。 ちょっとお邪魔するわね?」
雪ノ下「はあ……」
―――――――――――
雪ノ下「姉さんもそんな約束をしていたんですか」
陽乃「ふふっ。 まあクマくんの景品だけじゃ辛いかな?って思ってたから」
陽乃「あんなのだとは、さすがに思わなかったけど♪」
雪ノ下(……本当かしら)
陽乃「で、これ」 スッ…
雪ノ下「……クッキー?」
雪ノ下(姉さんにしては無難な景品ね?)
陽乃「それは残念賞」
陽乃「参加した人数分用意しておいたの」
陽乃「みんなに配った物と同じ物よ」
雪ノ下「え?」
陽乃「そして、ここからが本当の優勝景品」
雪ノ下「…………」
陽乃「何か悩み事があれば、相談に乗っちゃいます♪」
雪ノ下「……姉さん」
陽乃「うふふ、どう? 豪華でしょ?」
雪ノ下「…………」
陽乃「まあ真面目な話」
陽乃「今日、帰ってきたみんなの中で、雪乃ちゃんだけ」
陽乃「浮かない顔してたから」
雪ノ下「……そんな事は」
陽乃「ううん、もっとはっきり言うと」
陽乃「雪乃ちゃん、何か抱え込んだんじゃないのかな?」
雪ノ下「…………」
陽乃「…………」
陽乃「……言えない、かな?」
雪ノ下「…………」
陽乃「……そっか」
陽乃「そういえばね、比企谷くん」
雪ノ下「…………」
陽乃「今回、私の見立てでは、彼が一番劇的に変わった」
雪ノ下「え?」
陽乃「……ううん、そうじゃなくて」
陽乃「ものすごく落ち着いた雰囲気になった気がする」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……私には、わかりません」
陽乃「そう」
陽乃「でもね、雪乃ちゃん」
雪ノ下「はい?」
陽乃「きっと彼は、これからモテるわよ~?」
雪ノ下「…………は?」
雪ノ下「何を言ってるんですか、姉さん。 くだらない……」
陽乃「あら? 冗談だと思うの?」
雪ノ下「本気でそうおっしゃってるのなら、病院を紹介しますが?」
陽乃「うふふ、大した自信ね♪」
雪ノ下「だから自信などでは……」
陽乃「けどね、雪乃ちゃん」
陽乃「本当にそれでいいの?」
雪ノ下「…………」
陽乃「由比ヶ浜さんは、とっても頑張ってる」
陽乃「境遇に負けず一生懸命で、健気に、それでいて実直に」
陽乃「白鐘くんもそうね。 あの娘は、決定的に『経験』が足りていない」
陽乃「だけど、一途に比企谷くんと向き合っている」
雪ノ下「…………」
陽乃「私は……雪乃ちゃんが何を抱え込んでいるのか、わからない」
陽乃「確かなのは、そのままでいい訳がないって事くらいかな」
雪ノ下「…………」
陽乃「…………」
雪ノ下「お話はおしまいですか?」
陽乃「……雪乃ちゃん」
雪ノ下「もうお引き取りください。 休みますので」
陽乃「…………」
陽乃「……そう」
陽乃「じゃ……そうするわ」
陽乃「お休みなさい、雪乃ちゃん」
パタン…
雪ノ下「…………」
雪ノ下(……もう、何もかもが)
雪ノ下(遅かったのよ……姉さん)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(私は……)
何かを……すべきじゃない――
―――――――――――
由比ヶ浜達の部屋
ヴヴヴ……ヴヴヴ……
由比ヶ浜「……ん」
由比ヶ浜(ケータイ……メール?)
カチャ…
由比ヶ浜「……!」
Re 比企谷
明日、帰る前に高台で話せないか?
由比ヶ浜「…………」
比企谷「…………」
ヴヴヴ……ヴヴヴ……
比企谷「!」
Re 由比ヶ浜
わかった。 10時くらいに
比企谷「…………」
俺は、覚悟を決めた
―――――――――――
翌日の朝
天城屋 玄関ロビー付近
天城「あら? 由比ヶ浜さん、おはようございます」
由比ヶ浜「ああ、天城さん。 おはよう」
天城「お散歩かな?」
由比ヶ浜「ううん……」
由比ヶ浜「ちょっと高台に行ってきます」
天城「高台? ああ、いい天気だし、景色を眺めてくるんだね」
由比ヶ浜「違うよ」
天城「え?」
由比ヶ浜「ヒッキーと話をする為に行くの」
天城「!?」
由比ヶ浜「お昼までには、必ず戻るからね?」
由比ヶ浜「じゃ!」
スタ スタ スタ…
天城「ちょ……由比ヶ浜さん!?」
天城「…………」
天城(……由比ヶ浜さん、なんか、すごく緊張してる感じだった)
天城(これは……やっぱり……?)
―――――――――――
天城屋 とある一室
りせ「それはもう告白しかないんじゃない?」
天城「やっぱりそうかな……」
里中「いよいよかぁ~……うう、なんかあたしまで緊張するじゃん」
里中「比企谷くん、どうするのかなぁ……」
りせ「ね、ね!」
りせ「こっそり見に行こうよ!」
天城「……りせちゃん」
りせ「え?」
天城「私……確かに興味あるけど」
天城「できたら二人きりにさせてあげて欲しいの」
天城「さっきの由比ヶ浜さんを見たから……見てしまったから」
里中「雪子?」
天城「由比ヶ浜さん、緊張感がすごかった」
天城「きっと……全身全霊を傾けて、勇気を振り絞って、告白するつもりだと思うの」
りせ「…………」
里中「…………」
りせ「……わかったよ、天城先輩」
りせ「あたしだってそういう気持ち、大切にしてあげたいし」
里中「そうだね……それがいいよ、絶対」
天城「ありがとう、二人共……」
―――――――――――
天城屋 玄関ロビー付近
白鐘「おはようございます、比企谷先輩」
比企谷「白鐘……おはよう」
白鐘「もうチェクアウト済ませたんですか?」
比企谷「ああ……」
比企谷「…………」
比企谷「そうだ、白鐘」
白鐘「はい?」
比企谷「今日の午後、空いているか?」
白鐘「午後ですか?」
白鐘「堂島さんに改めてお礼を言いに行こうと思って……」
白鐘「ああ、予定では無いので、空いている状態です」
比企谷「そうか……」
白鐘「比企谷先輩?」
比企谷「なら、話をしたいんだが……構わないか?」
白鐘「!」///
白鐘「え、ええ! もちろんです!」///
白鐘「場所は……いつもの愛屋にしますか?」///
比企谷「……いや、できれば静かな場所にしたい」
白鐘「え……」
比企谷「そうだな……夕方の5時くらいに、鮫川河川敷公園でどうだろう?」
白鐘「…………」
白鐘(これは……もしかして……)
白鐘「……わかりました」
比企谷「すまないな」
比企谷「それじゃ、その時に……」
白鐘「はい」
スタ スタ スタ…
白鐘「…………」
白鐘(……返事をくれるんですね、比企谷先輩)
白鐘(…………)
覚悟
危険な事、不利な事、困難な事を予想して、受け止める心構えをする事。
仏語。 迷いを脱し、真理を悟る事。
来るべき辛い事態を避けられないものとして、諦める事。 観念する事。
覚える事。 記憶する事。
知る事。 存知。
正直……今の俺にとって、どの意味にも当てはまる気がする。
曖昧なままで済ませる方が楽なのだろう事は確実だ。
だが、それは他ならない俺自身が嫌なんだ。
嫌悪していた「もの」を受け入れた瞬間から……もう自分を騙す事は出来ないと
分かってしまったのだから
―――――――――――
高台
由比ヶ浜「…………」
比企谷「……待たせたな、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「! ヒッキー……」
由比ヶ浜「ううん、そんな事ないよ」
比企谷「…………」
比企谷「寒くはないか?」
由比ヶ浜「ふふっ、ちょっとだけ寒いかな?」
由比ヶ浜「まだ二月半ばだしね」
比企谷「…………」
比企谷「それで、話なんだが……」
由比ヶ浜「待って、ヒッキー」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「その前に、これを受け取って」
スッ…
比企谷「…………」
比企谷「……チョコか?」
由比ヶ浜「うん」
由比ヶ浜「バレンタインデーは過ぎちゃってるけど……」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「あと、ね」
由比ヶ浜「もう一度、告白させて欲しい」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「私が連れ去られて出来なくなって……」
由比ヶ浜「病院でやった様な、中途半端なやつじゃない」
由比ヶ浜「ちゃんとした告白を……私、したい」
比企谷「…………」
比企谷「なあ、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「お願い、ヒッキー」
比企谷「…………」
比企谷「……わかった、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「ありがとう、ヒッキー」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「今の私は、ヒッキーにいろいろ見られたから」
由比ヶ浜「正直に言うと……恥ずかしい、と言うか、怖い、って言うか」
由比ヶ浜「気持ち悪いって思われているかも知れない、と思ってる自分が居る」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「あの世界に行くまでの私は」
由比ヶ浜「『特別』の意味を履き違えていたのかなって思う」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「だけどね」
由比ヶ浜「やっぱり、変わらないんだよ」
由比ヶ浜「ヒッキーの事、好きだって気持ちは……」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「最初はね。 ヒッキーの事、怖い人かな?って思った」
由比ヶ浜「でも、ゆきのんとも一緒に話とか、部活とかやっていく内に」
由比ヶ浜「いつの間にか、自然な自分で居られる事に気がついた」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「いつまでもその時間が続くって……ううん」
由比ヶ浜「続いて欲しいって、そう思う様になっていて」
由比ヶ浜「私は……戸惑った」
比企谷「……戸惑った?」
由比ヶ浜「うん……」
由比ヶ浜「今まで、経験した事が無かったくらい」
由比ヶ浜「居心地が良くて……ね」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「それからの私は……自分の『価値』を探し始めた」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「ゆきのんとヒッキーにとって、何かしらの役に立ちたいって」
由比ヶ浜「私がゆきのんとヒッキーを『特別』に思うのと同じように」
由比ヶ浜「私を『特別』にして欲しかったから……」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「そんなのは……私のわがままだって」
由比ヶ浜「二人の気持ちを全然考えていないって……」
由比ヶ浜「あの時……あの世界で、やっと分かった」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「けど……けどね……」
由比ヶ浜「それでも……ね」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「ヒッキーの事、好きである事に嘘はないし」
由比ヶ浜「三人で過ごす『特別』より、もっと……」
由比ヶ浜「あなたと一緒に居たい」
由比ヶ浜「あなたと毎日を過ごしたい」
由比ヶ浜「あなたの事を……これからも知っていきたい」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「お願い、ヒッキー」
由比ヶ浜「私と……付き合ってください」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「……なあ、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「……うん」
比企谷「…………」
比企谷「お前が初めてなんだ」
比企谷「俺が『真っ当(まっとう)』な告白なんていうものを受けるの」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「真っ当(まっとう)……?」
比企谷「今までな……俺は」
比企谷「女子の間での罰ゲーム告白とか、そういうのしか経験がない」
由比ヶ浜「! わ、私は……!」
比企谷「由比ヶ浜がそんな事をしないのは、もう分かってる」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……どうして、なんだろうな」
比企谷「由比ヶ浜みたいな可愛い女の子が、俺を好きだって言ってくれて」
比企谷「それが嘘偽りない事だって、真剣に向き合ってくれているって、分かってるのに」
比企谷「俺は……俺の心は……」
比企谷「………………っ!」 ギリッ…!
比企谷「お前じゃないって、言ってるんだよ……!!」
由比ヶ浜「……っ」
比企谷「…………」
比企谷「由比ヶ浜が……どんなにか……」
比企谷「頑張ってきたのか……努力してきたのか……」
比企谷「俺に向き合ってくれたのか……分かっているのに……!」
比企谷「俺は……ぐっ……俺、はっ……くっ……ううっ……」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……泣かないでよ、ヒッキー」
比企谷「……ぐっ……ふっ……ひぐっ……ぐっ……くっ……」
由比ヶ浜「こういうのってさ……普通ふられた方が泣くものなんだよ?」
比企谷「……はっ……ぐっ……くっ……ぎっ……」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……そっか」
由比ヶ浜「ヒッキーは『痛み』に敏感で、いつも泣いていたんだ」
由比ヶ浜「自分でない『誰か』の『痛み』でも……」
比企谷「……ぐっ……ひぐっ……くっ……うぐっ……」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「ヒッキー……私、ちょっと嬉しい」
比企谷「……ひぐっ……くっ……はっ……ぐっ……?」
由比ヶ浜「また一つ、あなたを知ることが出来たから」
比企谷「……ぐっ……由比、ヶ浜……」
由比ヶ浜「彼女になれなかったのは……すごく残念だけど」
由比ヶ浜「私にとって、ヒッキーが『特別』なのは変わらない」
由比ヶ浜「これからも、ずっと……」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「で、これからどうするの?」
比企谷「!」
比企谷「…………」
比企谷「けじめをつけるつもりだ」
由比ヶ浜「……そっか」
由比ヶ浜「頑張ってね、ヒッキー」
比企谷「……ああ」
由比ヶ浜「じゃ、私は、ここの景色をもうしばらく楽しんでから旅館に帰るね?」
比企谷「…………」
比企谷「分かった」
由比ヶ浜「うん! それじゃ、また後で」
比企谷「…………」
比企谷「ああ……また後でな」
スタ スタ スタ…
由比ヶ浜「…………」
最初から……
由比ヶ浜「…………」
勝ち目なんて無かったのかな……
由比ヶ浜「…………」
ううん……そうじゃないよね
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「いい景色……」
由比ヶ浜「天気もいいし、空気も澄んでて、遠くまで見渡せるし」
由比ヶ浜「…………」
後悔はない……と思う。
私は、私の思う様に行動して
自分の気持ちをヒッキーに伝えたんだから。
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……これで」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「OK……もらえたら……」
由比ヶ浜「最高……だった……の、にな……」
そして……ヒッキーもそれに対して
本当の想いを、気持ちを、返してくれた。
だから……
由比ヶ浜「……っ……ふぐっ……くっ……」
由比ヶ浜「うあっ……ああっ……あああああああああっ……!」
由比ヶ浜「ぁ……ああああああああっ……ひっ……ぐっ……」
由比ヶ浜「……うっ……うっ……うあっ……あああっ…………!」
すごく悲しいけど
とんでもなく痛いけど
経験した事ないくらい辛いけど
由比ヶ浜「うああああああああああああああああっ……!」
由比ヶ浜「ひぐっ……ああああああ……ああああああああああっ……!」
由比ヶ浜「ヒッ、キー……! ああああああああああああああああああっ……!」
由比ヶ浜「うあっ……ひぐっ……っ………ああっ………!」
由比ヶ浜「あああああああああああああああああああああああっ……!」
由比ヶ浜「ひっ……ひぐっ……うああっ……あああああああっ……」
私は……ヒッキーを好きになって
良かったって思える。
だって、それは……
私を……ちゃんと見てくれたという事なのだから
―――――――――――
バス車内
ブロロロロロッ…
比企谷(…………)
比企谷(……今頃)
比企谷(泣いているんだろうか……由比ヶ浜)
比企谷(…………)
比企谷(……由比ヶ浜の事)
比企谷(泣かせてばかりだな……俺……)
俺は、俺の気持ちを出来るだけ簡潔に
だが容赦なく由比ヶ浜にぶつけた。
やんわりと断る事も考えたが……
でもそれは由比ヶ浜は元より、何においても
自分の為にならないと判断した。
これでいいのかどうかなんて
もちろん分かる訳もない。
……だけど
完全に間違いだとも思えなかった
―――――――――――
午後
八十稲羽駅
一同「…………」
由比ヶ浜「……え~っと」
由比ヶ浜「み、みんな。 見送りに来てくれてありがとう」
里中「う、うん。 当然じゃん?」
天城「む、向こうでも、元気でね」
花村(……いいか、クマ)
花村(どうして目が腫れてるの?とか、野暮なツッコミ、絶対入れんなよ……?)
クマ(ヨ、ヨースケ……そんなに睨まなくてもわかるクマよ)
白鐘「…………」
比企谷「…………」
りせ(比企谷先輩も泣いた感じがある……)
りせ(どんな話をしたのかな……?)
陽乃「…………」
雪ノ下「…………」
まもなく、1番線に停車中の列車が発車いたします
黄色い線の内側へと……
里中「あ……そろそろ時間だね?」
天城「それじゃあね、由比ヶ浜さん」
クマ「ユイちゃん、また遊びに来て欲しいクマ!」
花村「今度は本格的に遊ぼうぜ! 由比ヶ浜さん!」
白鐘「お元気で」
りせ「またね、由比ヶ浜さん」
陽乃「じゃ、向こうでも元気でね」
雪ノ下「……元気でね、由比ヶ浜さん」
比企谷「…………」
比企谷「……またな、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「うん!」
由比ヶ浜「みんな、また会おうね!」
由比ヶ浜「じゃ!」
プシュー バタン☆
ガタンゴトン ガタンゴトン…
一同「…………」
花村「行っちまったな……」
比企谷「……ああ」
花村「…………」
花村「さて……と」
花村「ちょいと腹減ったな。 おい、クマ」
花村「愛屋でラーメンでも食わねーか? 一杯だけなら おごってやるぜ?」
クマ「ご馳走になるクマ!」
里中「雪子、あたしらも喫茶店でお茶でも飲まない?」
天城「うん。 そんな気分かも」
りせ「あたしも付き合っていいですか?」
天城「いいよ、りせちゃん」
花村「じゃあな、比企谷」
里中「またね、白鐘くん、雪ノ下さん」
比企谷「……お、おう」
白鐘「え……あ、はい」
陽乃「さて、私もジュネスに寄っていこうかな」
陽乃「じゃあね、雪乃ちゃん」
雪ノ下「え?」
雪ノ下「…………」
ゾロ ゾロ ゾロ…
比企谷「…………」
白鐘「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「……帰るわ」
白鐘「そ、そうですね」
雪ノ下「……じゃ」
白鐘(……由比ヶ浜さん)
白鐘(泣き腫らしていたけど、とても清々しい笑顔だった)
白鐘(…………)
白鐘(僕には……どんな答えをくれるのだろう)
白鐘(比企谷先輩)
―――――――――――
夕方
鮫川河川敷公園
スタ スタ スタ…
比企谷「待たせたな、白鐘」
白鐘「いえ」
白鐘「僕も今来たところです」
比企谷「そうか……」
比企谷「良かったら飲むか?」
比企谷「缶コーヒー買ってきた」
白鐘「いただきます」
ズズッ…
白鐘「……ふう」
比企谷「…………」
白鐘「あの……甘いものがお好きなんですか?」
比企谷「ん?」
白鐘「この缶コーヒー、甘めなので」
比企谷「確かに好きだが……MAXコーヒーに一番近い味なんでな」
白鐘「MAXコーヒー?」
比企谷「俺好みの素晴らしい缶コーヒーだ」
比企谷「残念ながら八十稲羽には売っていなかったので、それを飲んでる」
比企谷「まさかジュネスにも置いていないとは……誤算だった」
白鐘「へえ……勝手なイメージなんですが」
白鐘「比企谷先輩はブラックコーヒーを好まれると思っていました」
比企谷「ブラックも飲めなくはないが……」
比企谷「人生は苦い事の連続だから、コーヒーくらい甘くてちょうどいいんだよ」
白鐘「ははは……言い得て妙ですね」
白鐘「なんだか不思議な説得力があります」
比企谷「今度、本物のMAXコーヒーを飲ませてやる」
比企谷「疲れた時に飲むと、最高に旨いぞ」
白鐘「ふふっ、楽しみにしておきます」
比企谷「…………」
白鐘「…………」
比企谷「それで、話なんだが」
白鐘「はい」
比企谷「俺は……」
比企谷「…………」
比企谷「白鐘の気持ちを受け入れる事はできない」
白鐘「…………」
白鐘「……そうですか」
比企谷「…………」
白鐘「理由を聞いてもいいでしょうか?」
比企谷「…………」
比企谷「俺の心が求めているのは、白鐘じゃないからだ」
白鐘「…………」
比企谷「…………」
白鐘「はっきり……言いますね」
比企谷「…………」
白鐘「でも……」
比企谷「…………」
白鐘「僕は……あなたのそういう所」
白鐘「好きです」
比企谷「…………」
白鐘「やっぱり……初めてだからでしょうか」
白鐘「僕は……上手くやる事が出来なかった」
比企谷「バカ言うな」
白鐘「え……」
比企谷「上手いか、下手か、なんて些細な事だ」
比企谷「異性を好きになるなんて、どんな奴でもある事だしな」
比企谷「だが……」
白鐘「…………」
比企谷「それを相手に伝えられるかどうかは、大きな差ができる」
白鐘「……!」
比企谷「お前は……立派に伝えた」
比企谷「だからこそ、俺は……」
比企谷「答えをはっきりと返さなくてはいけないと思った」
白鐘「…………」
比企谷「…………」
白鐘「…………」
白鐘「……ひとつ、聞かせてください」
比企谷「なんだ?」
白鐘「比企谷先輩とは比べ物になりませんが……」
白鐘「この『痛み』に……どう対処したらいいでしょう……」
比企谷「…………」
比企谷「……それは人それぞれだと思うが」
比企谷「俺は……泣く事しか出来なかったな」
白鐘「そうですか……」
比企谷「…………」
白鐘「…………」
比企谷「最後に言っておくが」
白鐘「…………」
比企谷「きっとその『痛み』は無駄にならない」
比企谷「必ず『何か』の役に立つと思う」
比企谷「ソースは俺」
白鐘「…………」
白鐘「ふふっ……そうですね。 きっと……」
比企谷「…………」
白鐘「…………」
比企谷「それじゃ白鐘」
比企谷「またな」
白鐘「……ええ、また」
白鐘「MAXコーヒー、楽しみにしてます」
比企谷「……ああ」
スタ スタ スタ…
白鐘「…………」
白鐘(……予想していたじゃないか)
白鐘(こうなる可能性は……)
原因を考えればキリがない。
出会った時期
知り合ってから過ごした時間
気持ちの伝え方……そして
僕自身の経験の無さ
白鐘「…………」
それらを全て上回っているであろう由比ヶ浜さんですら
彼の隣に居る事を許してもらえなかった。
僕に……勝ち目なんてある訳が……
白鐘「…………」
いや……そんなのは言い訳に過ぎない。
比企谷先輩は、はっきりと『求めている』のは僕じゃないと言った。
恐らく、由比ヶ浜さんにもそう言ったのだろう……
白鐘「……っ」
……けど
白鐘「……うくっ……くっ……」
白鐘「……うっ……ぐっ……くっ……ひぐっ……」
白鐘「ひっく……くっ……うぐっ……うあっ……」
白鐘「………ふ……ぐっ………く……」
白鐘「うっ………くっ……ひぎっ……」
白鐘「…………はっ……」
白鐘「……うぐっ……ぐっ……はっ……っ……あぐっ……」
白鐘「……ひぐっ……うっ……うぐっ……ぎっ……ぐっ……」
やっぱり……僕は……
それでも、僕は……
あなたの隣で、笑っていたかった……
―――――――――――
夜
天城屋 玄関ロビー付近
天城「あら? 比企谷くん?」
比企谷「……今晩は、天城」
天城「…………」
天城(何か……辛そうな顔してるな)
天城「それで、今時分どうしたの?」
比企谷「良かったら、雪ノ下を呼んできて欲しい」
天城「!」
比企谷「……ケータイ、かけてみたけど繋がらなくてな」
比企谷「頼めるか?」
天城「うん。 わかったよ、比企谷くん」
天城「ちょっと待ってて」
スタ スタ スタ…
比企谷「…………」
―――――――――――
天城「…………」
コン コン
天城「雪ノ下さん、居るかな?」
雪ノ下「天城さん? 何かしら?」
天城「今、玄関ロビーに比企谷くんが来てるの」
雪ノ下「…………」
天城「……もう言わなくても分かると思うけど」
天城「雪ノ下さんに会いに来たって……」
雪ノ下「…………」
天城「…………」
天城「ケータイに出ないんだってね、雪ノ下さん」
雪ノ下「…………」
天城「…………」
天城「どうしたの? 雪ノ下さん」
天城「会ってあげないの?」
雪ノ下「…………」
天城「…………」
天城「ねえ、雪ノ下さん」
雪ノ下「…………」
天城「比企谷くん……辛そうだったよ」
雪ノ下「…………」
天城「…………」
天城「……そう」
天城「また、同じ事しちゃうんだ」
雪ノ下「……?」
天城「私、千枝から聞いて知っているよ?」
天城「向こうからこっちに転校する 比企谷くんを見送りに来なかった事」
雪ノ下「!!」
天城「どうしてそういう行動をとったのかは知らないけど」
天城「比企谷くんは、きっと傷ついたと思う」
雪ノ下「……っ」
天城「雪ノ下さんは、比企谷くんをまた傷つけたいの?」
ガチャ
雪ノ下「…………」
天城「…………」
雪ノ下「……会ってくるわ」
天城「うん」
天城「それが良いと思うよ」
―――――――――――
雪ノ下「……おまたせ、比企谷くん」
比企谷「……おう」
雪ノ下「いったい何の用かしら?」
比企谷「ご挨拶だな……」
比企谷「明日でも良かったんだが、教訓は生かさないといけない」
雪ノ下「何の話?」
比企谷「去年の夏、花村に忠告されたんだよ」
比企谷「『ある日』ってのは、突然来るって……」
雪ノ下「…………」
比企谷「少し話がしたい」
比企谷「どこか、静かな場所で」
雪ノ下「…………」
―――――――――――
雪ノ下「……ここなら、大丈夫だと思う」
比企谷「……よりにもよって、山野アナが泊まったあの部屋かよ」
雪ノ下「懐かしいでしょう?」
比企谷「封印したい記憶が盛りだくさんだ……」
雪ノ下「出たの?」
比企谷「超常現象的な事は何もない」
雪ノ下「じゃあ、何g」
比企谷「いい加減、本題に入らせてくれ」
雪ノ下「…………」
比企谷「よし」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……ねえ」
比企谷「……おう」
雪ノ下「本題とやらはまだ?」
比企谷「もう少々お待ちください……」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……よし」
比企谷「最初は……やっぱり外見だな」
雪ノ下「いきなりすぎて良く分からないのだけど」
比企谷「初めて雪ノ下と会った時、噂以上に美少女で驚いた」
雪ノ下「!?」///
比企谷「同時に」
比企谷「俺とは絶対にかかわり合いたくないって顔をされたのも覚えてる」
雪ノ下「…………」
比企谷「平塚に無理やり入部させられて、それも奉仕部とかいう」
比企谷「訳の分からない部活の部長やってるし」
比企谷「なんか、噂とは裏腹な部分もあるんだな、と、しばらくして思った」
雪ノ下「…………」
比企谷「……でもよ」
比企谷「俺も……雪ノ下や由比ヶ浜と同じだったんだ」
雪ノ下「…………」
比企谷「あの部室で過ごす時間……悪い気はしていなかった」
比企谷「いや……むしろ居心地がいいとすら感じていた」
雪ノ下「…………」
比企谷「ところが、だ」
比企谷「俺はだんだんと雪ノ下のギャップが鼻につくようになっていった」
雪ノ下「え……」
比企谷「お前の【シャドウ】が言ってたよな?」
比企谷「周りは自分を聖女か何かみたいに『勝手な』イメージを抱き」
比企谷「そのイメージに合致しない、というだけで去っていくと」
雪ノ下「…………」
比企谷「何の事はない」
比企谷「俺の心にもそういう気持ちがあったって事だ」
雪ノ下「……そう」
比企谷「…………」
比企谷「もっとも、俺は……」
比企谷「そんな自分が気持ち悪くてしょうがなかった」
雪ノ下「……え?」
比企谷「…………」
比企谷「俺は……雪ノ下の事が好きだから」
雪ノ下「っ!?」///
比企谷「その時は素直にその気持ちを受け入れる事が出来なかった」
比企谷「だが、今なら、はっきり言える」
比企谷「雪ノ下を好きでいながら同時に嫌なところに目が行ってしまう事に」
比企谷「自己嫌悪していたのだと」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「ここ八十稲羽に来て、事件に関わっていく内」
比企谷「花村達や雪ノ下、由比ヶ浜にも嫌悪する自分が居る事が分かった」
比企谷「みんなもそういうものを抱え、生きてきたんだと、やっと気がつけた」
比企谷「俺はもうごまかさない」
比企谷「自分にも、雪ノ下にも、周りにも」
比企谷「俺が、雪ノ下雪乃が好きだという気持ちを」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……バカよ、あなた」
比企谷「…………」
雪ノ下「どうして私なの……」
雪ノ下「私は……あなたを傷つけてばかりいたのに……!」
雪ノ下「何かをすればするほど、あなたの心を踏みつけてきたのにっ……!」
比企谷「…………」
雪ノ下「由比ヶ浜さんは……あなたを一生懸命追いかけていた」
雪ノ下「そして私がいくら考えても分からなかった、あなたの気持ちに気がついた」
比企谷「…………」
雪ノ下「白鐘くんは、いつも真摯にあなたと向き合っていた」
雪ノ下「自分の気持ちに素直に従い、あなたの事を想って行動していた」
比企谷「…………」
雪ノ下「私は……私だけが……」
雪ノ下「あなたを……傷つけて来た……」
比企谷「…………」
雪ノ下「比企谷くんの【シャドウ】が言ってた あなたの過去に出てきた」
雪ノ下「あなたを傷つけてきた人達と同じ様な言葉で……」
比企谷「…………」
比企谷「……まあそうだな」
雪ノ下「…………」
比企谷「正直 あれは面食らったが、同時にあそこまではっきり言われると」
比企谷「かえって清々しかったし、それに」
比企谷「『そう思われてもいい』と思って行動もしていたから」
比企谷「別段 気にする必要もない」
雪ノ下「…………」
比企谷「かつての俺が望んでいた」
比企谷「『誰からも好かれる人間』なんてものになる事は不可能だし」
比企谷「それに……」
比企谷「お前は、俺を傷つけている『だけ』じゃなかっただろ?」
雪ノ下「……!」
引き合いに出すのは良くないが……
きっと由比ヶ浜は、近すぎて
白鐘は、逆に遠すぎたんだと思う。
そういう事なのだと俺は感じている。
もちろんこれは俺のわがままで、彼女たちの責任じゃない。
俺にとって……雪ノ下がいつもいい距離でいてくれた。
そして……居て欲しい時にそばに居てくれた。
雪ノ下「……でも、それは」
雪ノ下「私一人の力で出来たわけじゃない」
雪ノ下「それに……そうする事以外、思いつけなかったからにすぎないわ」
比企谷「……そうか」
比企谷「なら、雪ノ下」
雪ノ下「え?」
比企谷「お前の気持ちを聞かせてくれ」
雪ノ下「!!」
比企谷「もう一度言うが、俺は雪ノ下雪乃が好きだ」
比企谷「腐った魚の目だの何だのと容赦のない罵倒してくるが」
比企谷「博学なくせして妙に負けず嫌いだったり」
比企谷「物事に対して加減を知らず、常に120%力を出して倒れこんだり」
雪ノ下「…………」
比企谷「それでいてアドリブが効かず、慌ててトチってしまうところや」
比企谷「姉に対するコンプレックスは人一倍大きかったり……」
雪ノ下「…………」
比企谷「ふと見たら可愛いもの見てにやけてて」
比企谷「とんでもなく可愛い一面を見せてくれたり……」
雪ノ下「…………」///
比企谷「そういった欠点や美徳も含め、雪ノ下雪乃という存在が」
比企谷「俺は好きだ」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「よくもまあ、そんな歯の浮く様な口説き文句が出てくるわね」
比企谷「俺もそう思う」
雪ノ下「だったら、少しは改善する努力をしなさい」
比企谷「時間がなくてな」
雪ノ下「……そう」
比企谷「…………」
雪ノ下「話を要約すると」
雪ノ下「あなたを普段から容赦のない罵倒をする私と……その」///
雪ノ下「か、彼氏、か、彼女の……関係になりたい、と、いう事で……いいのかしら?」///
比企谷「ああ。 それで合っている」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……あなたは、本当にバカなのね」
比企谷「否定はしない」
比企谷「由比ヶ浜や白鐘からの告白を断る、なんていう」
比企谷「もったいないお化けどころか、もったいない魔王すら真っ青になる行動をとったからな」
雪ノ下「本当に……バカよ」
雪ノ下「もう……これ以上……あなたを傷つけない様にしようと思ってたのに」
雪ノ下「結局……あなたの最大のトラウマである告白までさせてしまったのだから」
比企谷「…………」
雪ノ下「私には……その価値がある?」
比企谷「お前が考えてる以上にな」
雪ノ下「いつか、また傷つけられて後悔する事になるかも知れないわ」
比企谷「逆もアリアリだと思え」
雪ノ下「それは想像できない」
比企谷「え? なにその上から目線?」
雪ノ下「ふふっ……」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「私は……私の気持ちは――」
やっぱり……ずるい気がする。
私は、由比ヶ浜さん程の努力もせず
白鐘くんくらいの慎重さも無く
告白の勇気すら持てなかった。
そんな私が……私の想いが報われるなんて
おかしいし、間違っている。
でも……
彼の告白は嬉しくて
罪悪感はあったけど……
由比ヶ浜さんや白鐘くんの顔がチラついたけど……
それでも、私は
雪ノ下「比企谷くんを……比企谷くんの事が」
どうしようもないくらいに
断ち切る事なんて出来ないくらいに
雪ノ下「……好きです」///
比企谷「!!」
比企谷「…………」///
比企谷「そ、そうか……」///
比企谷「よ……はうっ……」
フラッ……ドササッ!
雪ノ下「ひ、比企谷くん!?」
比企谷「わ、悪い……」
比企谷「なんか、急に体中の力が抜けた……」
雪ノ下「大丈夫?」
比企谷「たぶん……」
カタカタカタ…
雪ノ下「……凄く震えてるけど、本当に大丈夫なのかしら?」
比企谷「……たぶん」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「そんなに……緊張してたの?」
比企谷「…………まあ、な」///
雪ノ下「ふふっ……」
雪ノ下「本当にあなたってバカね」
比企谷「……しょうがねーだろ」
雪ノ下「OKの勢いで、押し倒されるかと思ってたわ」
比企谷「それこそアホか、出来るわけねーだろ……」
比企谷「ぼっち歴の長い俺にとって」
比企谷「準備運動なしで北極海に飛こめと言ってるのと同義だ」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「なら……」
ギュッ…
比企谷「!」///
雪ノ下「このくらいなら耐えられる?」
比企谷「余裕かましやがって……」///
雪ノ下「嫌なの?」
比企谷「……最高です」///
雪ノ下「どんな風に?」
比企谷「いい匂いがして、落ち着きます」///
雪ノ下「変態ね」
比企谷「ええ、そうですとも。 変態ですとも。 肯定しますとも」///
比企谷「大好きな雪ノ下雪乃の匂いですからね」///
雪ノ下「…………」
比企谷「……雪ノ下?」
雪ノ下「私も……変態ね」
雪ノ下「あなたの匂い、大好きよ」///
……こうして俺と雪ノ下は
お互いの気持ちを確かめ合い、付き合う事になった。
そこ。 ムードが無いとか、超特急展開とか言わない。
八幡さん、いっぱいいっぱいだったんです……
事情も知り、いち早くそれを見破った天城が
里中や他の連中に電話しまくった事は言うまでもない。
……おい、お赤飯はいらないからな?
由比ヶ浜と白鐘には、ケータイで俺から直接伝えた。
正直、血を吐きそうな感覚を覚えたが
これもまた俺自身の『けじめ』として、やらなければならないと思い
そうした。
二人共……静かに
『おめでとう』と言ってくれた。
おっと……もちろん可愛い妹の小町と
マイベストフレンド・戸塚にも伝えた。
材木座? そんな奴知らん。
それからの俺と雪ノ下だが……
まあ、何て言うか、しばらくぎこちない感じが続いた。
なぜかって?
お互い男女交際の経験なぞ皆無だからである。
やりたいな、と思う事はいろいろあるのだが
それをする為にいちいち時間がかかってしまう。
こらそこ。 決してエロい事じゃないからな?
ああ、それと……周りが俺たち以上に歯がゆかったみたいで
花村は何かに付け『リア充見せつけんな! 羨ましい!』とか言うし
里中達は『キスくらい済ませた?』とか聞いてくる。
……やっとこさ手をつないだくらいです。
でも……そんなぎこちなさも、周りの反応も
何か新鮮で楽しく感じてしまう自分がいた。
八幡さん、いつの間にか悟っちゃいましたか……
後は……【マヨナカテレビ】
『渚』も居なくなり、俺が『作った』というテレビの世界の影響か
もう映ることは無くなっていた。
本当の意味で事件は解決したと言える。
そして……
三学期も終わり、八十稲羽を後にする日が来たのだった
―――――――――――
3月21日 午後
八十稲羽駅 駅前
比企谷「ふう……」
花村「お、来たな比企谷」
比企谷「そりゃ来るだろ」
比企谷「切符代、無駄にしたくないし」
花村「へへっ、相変わらず変わんねーな、お前!」
クマ「センセイ、ずっとこっちにいればいいクマに……」
比企谷「悪いな、クマ」
堂島「お、もう来てたのか、比企谷くん」
比企谷「堂島さん。 お世話になりました」
堂島「ま……言われるほど世話をした覚えは無いがな」
堂島「足立の事は任せてくれ」
菜々子「お兄さん、こんにちは」
鳴上「こんにちは」
比企谷「菜々子ちゃんに鳴上まで見送りに来てくれたのか」
比企谷「ありがとう」
菜々子「ううん。 菜々子の方こそありがとうです」
菜々子「雪乃お姉さん達と一緒に遊べて楽しかった!」
鳴上「良かったな、菜々子」
ハハハ……
里中「おー、何か盛り上がってるじゃん?」
天城「こんにちは、比企谷くん」
りせ「とうとう今日が来ちゃったね……」
りせ「ちょっと寂しいかも」
白鐘「その気になれば、いつでも会いに行けますよ」
比企谷「みんなも来てくれたか」
比企谷「ありがとう」
白鐘(……正直言うと、僕は少し迷いましたが)
白鐘(やっぱり、あなたを見送りたかった)
白鐘(いけないな……まだ引きずっているのか、僕は)
天城「何だかあっという間だったね……」
里中「『渚』を倒してから、ホントそんな感じ」
花村「さ、里中さん? 今は……ほら堂島さんとか、いらっしゃいますし……」
里中「おっと……そうだったじゃん」
堂島「ん? 俺が何か?」
花村「いえいえ、お世話になったな~って話してて」
堂島「ふん……まあ、そういう事にしておこう」
堂島「俺も無粋な真似はしたくないしな」
花村「ははは……」
花村(やっぱ凄みがある人だな……)
りせ「……あれ?」
りせ「そういえば雪ノ下先輩は?」
クマ「そういえば遅いクマね?」
里中「また来なかったりして?」
比企谷「それはない」
比企谷「仮にあったとしても、よっぽどの理由ができたんだろうさ」
天城「お~……」
りせ「信頼されてるなぁ」
花村「くそっ……羨ましいっ」
クマ「ヨースケ……みっともないクマ」
花村「うっせーよ!? お前に言われたくないっての!」
ハハハ……
ブロロロロロ…… キキィ
陽乃「お待たせ~比企谷くん♪」
陽乃「お待ちかねの雪乃ちゃんだよ?」
雪ノ下「ね、姉さん……」///
比企谷「そ、そういうのやめてください。 割とマジで」///
陽乃「んふふー♪」
花村(相変わらず見計らったように登場する人だな……陽乃さん)
里中(でも嬉しそうじゃん。 比企谷くん)
天城(ちょっと羨ましいかも……)
りせ(普段も結構ラヴラヴしてるしなぁ)
白鐘(……目を背けるんじゃない、僕)
クマ「……?」
クマ「ユキノン、その荷物は何クマ?」
雪ノ下「私の荷物だけど?」
里中「え? どこかに出かけるの?」
雪ノ下「出かけるも何も……比企谷くんと同じ電車に乗って帰るのだけど?」
一同「」
菜々子「?」
雪ノ下「……どうかしたのかしら?」
比企谷「えーっと……とりあえず言っておくが」///
比企谷「俺は何も聞いてませんよ?」///
雪ノ下「……姉さん?」
陽乃「うふふ、ごめんね~?」
陽乃「秘密にした方が絶対面白いと思って♪」
里中「うわ……本当に一緒に帰るんだ」
天城「二人っきりで……」
白鐘(……耐えるんだ、僕)
りせ「まあこの二人だし、ある意味自然かも」
花村「普段からバカップル丸出しだからな」
比企谷「どこがだ。 俺たちは清い交際を行っている」
菜々子「お兄ちゃん。 ばかっぷるって、どういう意味?」
鳴上「見ていてイライラしてしまう程の仲y」
堂島「悠! 真面目に答えるんじゃない!」
堂島「菜々子には早すぎる単語だ!」
花村「まあ何にしてもこれで『さよなら』とは思わねぇぜ、俺」
花村「今年のGWとかさ、こっちに来いよ」
花村「いや、むしろ、俺らがそっちに行くってのもアリだよな!」
里中「おお、花村にしちゃいいこと言うじゃん?」
天城「どっちにしても、楽しそうだよね♪」
りせ「うんうん! 集まって楽しく騒ごう!」
白鐘「いいですね、それ」
比企谷「そうだな。 俺も同じ気持ちだ」
雪ノ下「予定が決まったら連絡するわ」
ハハハ……
鳴上「そろそろ時間じゃないのか?」
里中「あー……もうそんな時間かぁ」
天城「名残惜しいね……」
―――――――――――
駅のホーム
花村「それじゃまたな、比企谷」
比企谷「ああ、またな。 花村」
クマ「センセイ。 あの世界の事はクマに任せるクマ!」
比企谷「頼んだぞ」
クマ「何かあったら連絡するクマ」
里中「由比ヶ浜さんにもよろしくね、雪ノ下さん」
天城「みんなで一緒に楽しく騒ごうって、言っておいてね」
雪ノ下「もちろんよ」
まもなく、1番線に停車中の列車が発車いたします
黄色い線の内側へと……
りせ「あ、もう電車が出ちゃう……」
鳴上「向こうでもお元気で」
菜々子「元気でね、お兄さん、お姉さん!」
比企谷「ありがとう、鳴上、菜々子ちゃん」
雪ノ下「そちらもお元気で」
花村「必ず、近い内にまた会おうぜ!」
鳴上「機会があれば、俺も」
白鐘「僕も楽しみにしてます」
比企谷「もちろんだ」
比企谷「必ず、また会おう!」
プシュー バタン☆
ガタンゴトン ガタンゴトン…
一同「…………」
花村「……行っちまったな」
里中「……うん」
天城「それにしても……なんか、さ」
天城「気分的にハネムーンを見送った気が……」
りせ「あ! それそれ!」
りせ「あたしもそんな気がした!」
花村「ははは……俺だけじゃなかったか。 そう思ったの」
白鐘(……へこみます) シクシク…
菜々子「はねむーん??」
鳴上「結婚した男女が……」
堂島「だから早すぎるから、真面目に答えるんじゃない!」
里中「あの二人、上手くいくかな?」
天城「今のところ、心配はないと思うな」
りせ「意外と……由比ヶ浜さんが、いろいろ仕掛けたりして」
里中「ドロドロしそうだからやめなさいよ、そういうの……」
天城「でも、ちょっと興味あるなぁ」
里中「雪子!?」
ハハハ……
陽乃「…………」
―――――――――――
電車内
比企谷「よっ……と」
雪ノ下「あ、私の荷物も金網に上げてもらえるかしら?」
比企谷「おう、いいぞ」
ドサドサ
比企谷「ふう……」
雪ノ下「ありがとう」
比企谷「どういたしまして」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「それにしても……」
比企谷「なんで電車で帰ろうと思ったんだ?」
雪ノ下「私と帰るのは不服?」
比企谷「一言も言ってねーだろ……」
雪ノ下「そうとしか聞こえないのだけど?」
比企谷「ともかく、事前に言っておいてくれ……心臓に悪い」
雪ノ下「お年寄りじゃあるまいし……」
比企谷「弁当とかおやつとか、雪ノ下の分が準備できないだろ?」
雪ノ下「……今回に限り、姉さんに言ってくれないかしら?」
比企谷「ごめん。 そりゃ無理だわ」
雪ノ下「そうでしょう? ふふっ」
ガタンゴトン ガタンゴトン…
雪ノ下「ねえ……」
比企谷「ん?」
雪ノ下「比企谷くんは、『渚』……ううん」
雪ノ下「イザナミとイザナギについて、どう思う?」
比企谷「どう……とは?」
雪ノ下「説明が足りなかったわね」
雪ノ下「神話のイザナミとイザナギの事」
比企谷「ああ……そういう事か」
雪ノ下「自分のペルソナと同じ名前だし……少し調べたりしたわ」
比企谷「実を言うと俺もだ」
雪ノ下「どう思ったのかしら?」
国生みの二神の神話
むかしむかし、あるところに仲睦まじい
男神イザナギと女神イザナミがおりました。
しかし、ある日。
女神イザナミは子供を産んで死んでしまう。
それを男神イザナギは たいそう悲しみ、暗い黄泉の国に行って
そこの住人になっていた女神イザナミを連れて帰ろうとした。
女神は、黄泉の国の神に頼んでくるから待っているようイザナギに言うが
イザナギは我慢できず、女神の様子を見に行ってしまう。
だがそこに居たのは、全身に蛆虫が沸いた、変わり果てた姿の女神だった。
恐ろしくなったイザナギは、その場を逃げ出し
それに気がついた、女神イザナミは怒り狂って追いかける。
追いつかれそうになるもイザナギは、何とか現世に戻り
この世とあの世を結んでいた洞窟の出入り口を大岩で塞ぎ
追いついてきた女神イザナミに別れを告げたのだった……
比企谷「まあ、何て言うか……」
比企谷「両方とも望んだ事でない結果に終わらせてしまったな」
雪ノ下「……そうね」
比企谷「イザナギは……妻であるイザナミを心底愛していた」
比企谷「でも何の代償もなく、死んでしまったイザナミが帰ってくると思い込んでいた」
比企谷「そこに隙があったな」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「イザナミは……きっと迎えに来てくれて喜んだと思う」
雪ノ下「黄泉の国の神に何をお願いしようとしたのか分からないけど」
雪ノ下「蛆虫が湧いた姿で帰る事は望まなかったと思うわ」
比企谷「…………」
雪ノ下「きっと……怒り狂ったのは」
雪ノ下「見られたくない姿を好きな人に見られて、我を忘れたからじゃないかしら」
比企谷「…………」
比企谷「かもしれないな」
雪ノ下「…………」
比企谷「イザナギが約束を破ってしまったのも」
比企谷「暗い黄泉の国、という気味の悪いところから」
比企谷「出来るだけ早く妻を連れて去りたかった、というのがあったのかもしれない」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「そうかもしれないわね……」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「”こんな酷い仕打ちをするのなら”……」
比企谷「!」
雪ノ下「”私は、あなたの国の人間を一日1000人殺します”」
比企谷「…………」
比企谷「”ならば……”」
比企谷「”俺は一日に1500の母屋を建てよう”」
比企谷「”1000が死のうとも万が生まれてくる”」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……ぷっ」
比企谷「……くくっ」
ハハハハハハ……
だけど――
それでも――
俺は――
私は――
お前の事が――
あなたの事が――
大好きです――
―
―――
―――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――
―――
―
約1ヶ月後
総武高校 奉仕部部室
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「……今日もヒマだな」
雪ノ下「平和でいい事じゃない」
由比ヶ浜「先週は忙しかったよね~」
比企谷「忙しいっつーか……」
比企谷「まさか材木座の小説もどきを 3本も読ませられるとは思わなかった……」
雪ノ下「相変わらずの誤字脱字と稚拙な文章だったわね……」
由比ヶ浜「私、もうどんな内容だったか忘れちゃった……」
比企谷「俺は少し覚えてるぞ」
雪ノ下「八幡、当ててみましょうか?」
雪ノ下「あれでしょ? スキーのシーン」
比企谷「……雪乃はニュータイプかよ」
雪ノ下「あれって絶対、私たちとのスキーを参考に描いたものよね」
由比ヶ浜「あ~……冬休みの時の」
由比ヶ浜「私も行きたかったなぁ」
雪ノ下「私は……先週の事といえば」
雪ノ下「八幡の浮気ね」
比企谷「おいこら、人聞きが悪すぎだろ」
由比ヶ浜「あははっ! あれね~」
由比ヶ浜「まさかヒッキーが本気ラブレター貰うなんてね~」
新学期が始まって俺たちは3年生になった。
今年は、いよいよマジで進路を決めなくてはならない重要な年。
節目の年を超えても次の節目が早くも来ちゃいましたよ……
俺と雪乃は、春休み中2回程デートして
お互いの呼び名が名前になっていた。
……まあ映画見て図書館に行っただけですけどね。
おっと、買い物もお付き合いしましたよ、と……
新学期に入って、初めて登校した時
「やっはろー!」という耳慣れた変わった挨拶にびくついた。
はっきり言って、どう顔を突き合わせればいいのか悩んでいたからだ。
だが由比ヶ浜は、俺と雪乃が戸惑うくらいナチュラルに声をかけてきた。
正直……動揺はしたが、まあ由比ヶ浜なりの気遣いだと思うことにし
彼女は今日も元気に奉仕部部員として活動している。
……ん? ラブレター?
まあはっきり言って、99,9999%イタズラだと思ったのだが
なんと0,0001%の奇跡が起こりました。
ラブレターをくれたのは、今年入学した1年生の女子で
まーこれが、初々しいのなんのって……なんといっても小町と同い年だし
……雪乃さん、睨まないでください。
結果? もちろん断りましたとも。
彼女いる歴が約2ヶ月程度の元ぼっちに二股なんて出来る訳が……
あ、いえ。 雪乃という素晴らしい彼女がわたくしに居りますので。
コン コン
比企谷「ん? 誰か来たか」
雪ノ下「どうぞ。 入ってください」
ガララッ
由比ヶ浜「ようこそ、奉仕部へ!」
由比ヶ浜「依頼は何か……な…?」
ゾロ ゾロ ゾロ…
由比ヶ浜「え……? あれ?」
比企谷「……!」
雪ノ下「……え?」
雪ノ下「これは……どういう事なの?」
部室に入ってきたのは全部で3人だった。
1人は全く知らない顔
肩くらいまである茶髪のストレートで、何だかおどおどした様子
顔立ちは無難に可愛いく、なかなかのスタイルの女生徒だ。
もう1人は……見覚えはあるのだが思い出せない。
背中くらいまであるウェーブがかった黒髪で
特筆すべきなのは胸。 間違いなく由比ヶ浜より大きいぞ、この女生徒。
最後の1人はよく知っている顔だった。
どうしてここにいる? 何か事件でも起こったのか?
比企谷「白鐘!?」
白鐘「お久しぶりです、比企谷先輩」
雪ノ下「どうしてここに……それにこちらの二人は?」
?「何だ? 我が分からんか?」
?「比企谷八幡」 クスッ
比企谷「!?」
比企谷「その声……お前、まさか」
比企谷「『渚』か!?」
渚「ふふ、そうだ。 お前が名付けた『渚』だ」
渚「今は『新宮渚(しんぐう なぎさ)』と名乗っている」
雪ノ下「ど、どうして生きてるの!?」
渚「さあ……我にもわからん」
渚「気がついたら、あの世界に横たわっていたのだ」
比企谷「…………」
比企谷「……よし、それはまあいいだろう」
比企谷「ここに来た目的は何だ?」
比企谷「全員、総武高校の制服を着ているのが」
比企谷「わたくし、とっても気になります」
渚「まあそんなに身構えるな。 もう我は何の力も無いただの小娘にすぎん」
渚「ここに来た理由は3人それぞれにあるが……ひとつだけ共通している事があってな」
渚「全員、比企谷八幡が目的だ」
雪ノ下「……なぜかしら」
雪ノ下「私にとって凄く不都合な気がするのだけど」
由比ヶ浜「……目的?」
渚「たとえば、我はな」
渚「比企谷八幡の子を宿したいと思っている」
一同「はあっ!?」///
比企谷「待て待て待て! それは別の意味でってオチだよな!?」
渚「いや? 本気でお前の子供が欲しいと思っているぞ?」
比企谷「」
雪ノ下「な、何でそんな事をっ……」
渚「クマから聞いたが、比企谷八幡は」
渚「あの世界に人間が居ない事を憂いておったのだろう?」
渚「だから、我が一肌脱ごうと思ってな♪」
比企谷「脱ぎすぎです」
渚「もちろん、それがどういう事なのか、どういう意味合いなのかも理解しておる」
渚「それに……我は誰でもいいという訳ではない」
渚「お前と、お前の子供が欲しいのだ……」///
比企谷(う……可愛い……)///
雪ノ下「待ちなさい! あなた、突然出てきて何を言ってるのかしら!?」
雪ノ下「そもそも【シャドウ】である あなたに子供が産めるかどうかも分からないし」
雪ノ下「お産やその費用、それにその後の生活基盤すらあなたには無いわ!」
渚「ほほう。 それがあれば、そなたも認めるのだな?」
雪ノ下「認めるわけ無いでしょう!?」
由比ヶ浜「そ、そうだよ!」
比企谷「し、白鐘!」
比企谷「お前は何をしに来たんだ!?」
白鐘「……表向きはこの2人の監視です」
比企谷「……裏があんのかよ」
白鐘「だ、だって!」
白鐘「僕はまだ、諦めらめきれないんです! 先輩の事!」///
比企谷「」
雪ノ下「」
由比ヶ浜「」
白鐘「僕は……考えました。 考えて気がついたんです」
白鐘「先輩には、僕の、ほんの一部しか見せていないって!」///
比企谷「お、落ち着け、白鐘っ!」
白鐘「先輩、どうですか? この女生徒用の制服」
白鐘「似合っていませんか?」
比企谷「あ、ああ。 合っているぞ……」
白鐘「これからは……僕の『女』としての部分を引き出して」
白鐘「先輩にアタックしていきますのでっ」///
比企谷「」
雪ノ下「」
由比ヶ浜「」
比企谷(……頭痛くなってきた)
雪ノ下(……八幡のせいじゃ……いえ、やっぱりせいかしら?)
由比ヶ浜(…………)
??「…………」
比企谷「それで……白鐘、こっちの茶髪の娘は誰なんだよ?」
白鐘「……声を聞けばわかりますよ」
雪ノ下「声?」
渚「ほれ、咲霧(さきり)。 挨拶しておけ」
咲霧「あ、はい。 私、天野咲霧(あまの さきり)といいます」(cv中尾○聖)
比企谷「」
雪ノ下「」
由比ヶ浜「……え? 何この声?」
比企谷「ま、まさか……その声……その名前……!?」
比企谷「お前、アメノサギリ?か!?」
咲霧「はい」(cv中尾○聖)
由比ヶ浜「ゆきのん、アメノサギリって?」
雪ノ下「後で説明するわ」
雪ノ下「それで……ええと、咲霧?さん」
雪ノ下「八幡にどんな用事があるのかしら?」
咲霧「それは……」(cv中尾○聖)
咲霧「比企谷様が、私を……可愛い私を望まれたからです」///(cv中尾○聖)
比企谷「身に覚えがありませんよ!?」
咲霧「ほら、私に止めを刺すとき」(cv中尾○聖)
咲霧「今度はもっと可愛い姿で生まれてくるんだな……って」(cv中尾○聖)
咲霧「おっしゃってたではありませんか」(cv中尾○聖)
比企谷「」
雪ノ下「……言ったのね?」
白鐘「そういうわけで僕たち、これから総武高校に通いますので」
比企谷「はあ!?」
比企谷「いや白鐘はともかく、他の二人は学力とか戸籍とか保護者とか――」
渚「それについては手紙を預かっておる」
雪ノ下「手紙?」
渚「陽乃、という女からだ」
比企谷「」
雪ノ下「」
由比ヶ浜「陽乃さん?」
雪乃ちゃんへ
どう? 驚いたかなー?
実は内緒にしてたけど、クマくんに頼んで
私も「あの世界」に行ってたんだ♪
で、そこで渚ちゃんと咲霧ちゃんに出会ってね
彼女たちに事情を聞いて、そういう事なら、と
手を貸すことにしたの。 うふふ♪
ん? どうしてかって?
それはねー
倦怠期を回避する為だよ♪
ライバル多いとさ、雪乃ちゃんも努力を怠らないでしょ?
比企谷くんを取られまいと頑張るでしょ? だからだよ!
人間て、平和が続くと飽き飽きしちゃうものだから
いい意味で緊張感を持ってもらうためにやったんだ♪
えらい、私! 姉の鏡だね!
ま、そういうわけで、彼女たちの学力と住処と保護者
それに戸籍は私が何とかしました。
それじゃ、雪乃ちゃん。 頑張ってね♡
あなたの姉より♡
雪ノ下「」
比企谷「あの人、マジで何者なんだよ!? いろんな意味で!」
渚「という事で比企谷八幡」
渚「さっそく子作りをしようではないか♪」
渚「中出しし放題だぞ?」
由比ヶ浜「学校で何言ってるの!?」///
白鐘「そうですよ!」///
白鐘「もっと……こう、プラトニックな関係になりましょう!」///
白鐘「この僕と!」///
由比ヶ浜「そ、それもダメー!」
由比ヶ浜「私だって隙を伺っているんだから!」
一同「え」
由比ヶ浜「はっ!?」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「…………」
雪ノ下「……どういう意味なのかしら?」
由比ヶ浜「あは……は…は……」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「だ、だって!」
由比ヶ浜「ヒッキー、私の本命チョコ受け取ってくれたんだもん!」
比企谷「なっ!?」
雪ノ下「……八幡?」
比企谷「い、いや、あれは、由比ヶ浜のけじめ的なものだと思って!」
由比ヶ浜「それを受け取ってくれたから……私」
由比ヶ浜「きっとまたチャンスが来るって思えたんだから!」
比企谷「ちょ、そんな解釈してたんですか!? 由比ヶ浜さん!?」
渚「そうだな、由比ヶ浜とやら」
渚「最近ではNTRというのも流行っておるらしいしのう♪」
雪ノ下「断じて流行っていません!」
咲霧「まあまあ。 比企谷様も困っておいでですし……」(cv中尾○聖)
比企谷「お前はその声を何とかしてくれ……」
比企谷「口調も手伝って、どうしてもフ○ーザ様に聞こえてしまう……」
雪ノ下「八幡……どうするつもりなの?」
比企谷「どうすると言われても……」
比企谷「つーか、これ俺のせいなの?」
渚「比企谷八幡♡」
咲霧「比企谷様……」///(cv中尾○聖)
白鐘「比企谷先輩……」///
由比ヶ浜「ねねね、ヒッキー!」///
雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…
比企谷「は……はは…は……」
比企谷「……はあ」
やはり、俺の青春ラブコメは間違っている
…………
……でも
どこか、それを楽しく思える自分がいて
そんな自分は――
嫌いじゃなかった
おしまい
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」 3スレ目
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1394614382/)
里中「最っ低じゃん!」
花村「だな……理由があればいいわけじゃねーが」
花村「できれば聞きたくなかった動機だぜ……!」
りせ「とにかく、後は元凶のそいつを倒せばいいって事ね?」
比企谷「そうなるな」
由比ヶ浜「じゃあ話は簡単だね!」
由比ヶ浜「早くやっつけに行こう!」
クマ「クマ!」
雪ノ下「ちょっと待ってくれるかしら」
天城「どうしたの? 雪ノ下さん」
雪ノ下「その……犯人のイザナミは、どうして比企谷くんの【シャドウ】を呼び起こしたの?」
雪ノ下「もっとはっきり言うと、比企谷くんで『何』をしたかったの?」
比企谷「……はっきり言ってわからん」
319: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:23:08 ID:rVSmZeYo
比企谷「あいつは俺の【シャドウ】を見た途端」
比企谷「大きく失望していた様に見えた」
雪ノ下「失望?」
比企谷「……そういや」
比企谷「おぞましいが、ここで永遠に暮らす為とか何とか言ってたと思う」
一同「!?」
りせ「暮らす? 比企谷先輩と?」
花村「モテモテだな、比企谷!」
比企谷「うれしくねーっての……」
320: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:24:01 ID:rVSmZeYo
比企谷「とにかくだ」
比企谷「あいつが今回の騒動の元凶なのは間違いない」
比企谷「詳しくはあいつと対峙してから聞けばいいだろう」
比企谷「そして……叩きのめす!」
オオー!
由比ヶ浜「ヒッキー、ちょっとかっこいいね!」
比企谷「そんなつもりじゃない」
由比ヶ浜「あ、そうだ! 私のペルソナ見てよ!」
由比ヶ浜「えいっ!」
カッ!
比企谷「無駄にペルソナ出してん……!?」
由比ヶ浜「どう? かっこいいでしょ!」
比企谷「お、おう……」
321: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:24:48 ID:rVSmZeYo
由比ヶ浜「ダーキニーって言うんだ」
由比ヶ浜「とっても強いんだよ?」
比企谷(ダーキニーって……鬼女……うわぁ)
白鐘(比企谷先輩……知っているみたいですね)
花村(まあ……驚くわな)
比企谷「……あ」
花村「? どうした? 比企谷?」
比企谷「…………」///
比企谷「……その、言うの忘れてたが」///
比企谷「助けに来てくれて」///
比企谷「ありがとう、な……」///
322: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:25:35 ID:rVSmZeYo
一同「!」
花村「へへ、気にすんなよ!」
里中「当然の事じゃん!」
天城「どういたしまして」 クスッ
りせ「ふふふ、ちょっとくすぐったいね」
クマ「クマはセンセイの為なら頑張るクマ!」
白鐘「このくらい、当たり前ですよ」
由比ヶ浜「これくらい何でもないよ! ヒッキー!」
雪ノ下「お礼を言われる程の事じゃないわ」
アハハ……
323: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:26:33 ID:rVSmZeYo
―――――――――――
黄泉比良坂(よもつひらさか)最深部
ゾロ ゾロ ゾロ…
比企谷「……よお」
イザナミ「ん? ……ほう、君か」
イザナミ「【シャドウ】に食われなかった様だな」
比企谷「俺一人だと、やばかったと思う」
イザナミ「ふん……くだらぬな」
花村「はあ!? くだらねーだと!?」
花村「人の命がかかっているってのに、何言ってやがる!」
324: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:27:41 ID:rVSmZeYo
イザナミ「失望しただけだよ……」
イザナミ「イザナギを持つ者にな」
比企谷「失望?」
イザナミ「そうだ」
イザナミ「表面上は恨み、妬み、嫉(そね)んでおきながら」
イザナミ「結局は誰かを求める矮小な存在であったのだから」
里中「それのどこがおかしいじゃん!?」
イザナミ「そうとも。 おかしくはない」
イザナミ「『普通の人間』としてね」
325: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:28:34 ID:rVSmZeYo
天城「どういう意味?」
天城「じゃあ、あなたは『何』を求めているの!?」
イザナミ「ふふふ……」
イザナミ「それは、我と対等なる者」
イザナミ「絶対者なる我と同等の力を持つ者」
イザナミ「我と等しく、憎しみを抱き、恨む者」
一同「……!?」
りせ「何を言ってるの? 訳わかんないよ!」
326: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:29:44 ID:rVSmZeYo
イザナミ「わからぬのも当然だ」
イザナミ「常人では届き得ぬ高みに我は居るのだからな」
クマ「ムキー! よくわからんけど、バカにするなクマ!」
白鐘「御託はたくさんです。 あなたの引き起こした事象により」
白鐘「人が傷つき、亡くなった方もいる」
白鐘「その償いは……必ずしてもらいます!」
イザナミ「ほう……言っておくが、我は『きっかけ』を与えただけに過ぎん」
イザナミ「『力』を得た者が勝手にやった事……それでも我に責任があるとでも?」
由比ヶ浜「当たり前でしょ!」
由比ヶ浜「あなたを野放しにしてたら、今回みたいな事がまた起こる!」
雪ノ下「必ず、ここで終わらせる!」
327: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:30:23 ID:rVSmZeYo
ペ ル ソ ナ !!
328: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:31:18 ID:rVSmZeYo
イザナミ「ふふふ……愚かな」
イザナミ「人の身でありながら、絶対的な力を持つ我に逆らうとは」
イザナミ「役者の分を超え真実を求めすぎた代償……たっぷりと払うがよい」
ゴウンッ……!!
比企谷「くっ……霧が」
雪ノ下「霧が一段と濃くなった……!」
花村「ちっ……!」
ふふふ……
りせ「!!」
りせ「み、みんな! あそこ!」
白鐘「……!」
白鐘「なんて……大きさだ!」
329: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:32:31 ID:rVSmZeYo
イザナミは、それまでの中性的な人間形態?をやめ
濃い霧を出したかと思うと……巨大な化物へと変化していた。
その姿は
大きなスカート……いや、釣鐘状の白い物体に
包帯をぐるぐる巻きにした人間らしき形状の上半身が
それにちょこんと乗っかっている。
これまでに出会ってきた【シャドウ】のデザインに似た何かを感じるが
大きさが規格外に違っていた。
330: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:33:41 ID:rVSmZeYo
クマ「あんなの、ただのコケおどしクマ!」
由比ヶ浜「そうよ! 怖くなんか……怖くなんか、ないんだからっ!」
さあ……かかって来るがよい
由比ヶ浜「ダーキニー!!」
花村「ジライヤ!!」
天城「コノハナサクヤ!!」
里中「トモエ!!」
クマ「援護は任せるクマ!! キントキドウジ!!」
白鐘「スクナヒコナ!!」
雪ノ下「回復は任せて!! イザナミ!!」
りせ「しっかりアナライズするから!! ヒミコ!!」
331: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:34:21 ID:rVSmZeYo
比企谷「イザナ――」
――我は汝――
――汝は我――
比企谷「ぐっ!?」
雪ノ下「!?」
雪ノ下「比企谷くん!?」
――汝、ついに真実の絆を得たり――
比企谷(こ、これは……!?)
332: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:35:05 ID:rVSmZeYo
――真実の絆――
――それは即ち――
比企谷(間違いない、イザナギが……ペルソナが目覚めた時)
比企谷(あの時に聞こえた、謎の声!!)
――真実の目なり――
比企谷(…………)
――今こそ汝は見ゆるべし――
――様々な究極の力――
――汝のその内に宿せし事を――
比企谷(…………)
333: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:35:57 ID:rVSmZeYo
―――――――――――
イゴール「ほほう……これは」
イゴール「節目の年を超えられたお客様に」
イゴール「更なる”力”が目覚めた様でございますな……」
マーガレット「これが……”ワイルド”の真の力」
イゴール「誠に……希少なる存在」
イゴール「ふふふ……」
―――――――――――
334: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:37:08 ID:rVSmZeYo
雪ノ下「大丈夫!? 比企谷くん!?」
比企谷「…………」
比企谷「……!」
比企谷「これは……この力は?」
雪ノ下「比企谷……くん?」
比企谷「……っ!」 グッ…!
比企谷「スカアハ!」
一同「!?」
花村「え!?」
里中「イザナギじゃないの!?」
335: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:38:13 ID:rVSmZeYo
ガ ル ダ イ ン!
ヒュゴオオオオオオオッ!!
りせ「す、すごい力を持ってるよ! あのペルソナ!」
里中「なになに!? ここに来て比企谷くん、覚醒!?」
由比ヶ浜「ヒッキー、かっこいい!」
比企谷「コウリュウ!」
一同「!!?」
クマ「ま、また、知らないペルソナクマ!」
白鐘「い、いったい、何が!?」
天城「今はありがたいから、いいんじゃないかな?」
336: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:39:04 ID:rVSmZeYo
比企谷「フツヌシ!」
比企谷「マダ!」
比企谷「ロキ!」
比企谷「ルシフェル!」
比企谷「イシュタル!」
比企谷「ルシファー!」
花村「おいおいおい!? 何回チェンジしてんだよ!?」
雪ノ下「ここまで来るとバーゲンセールね……」
由比ヶ浜「ゆ、ゆきのん。 的確だけど、ありがたみが全然無くなるからやめよう?」
クマ「さっすがセンセイクマ!」
337: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:39:57 ID:rVSmZeYo
ズゴゴゴゴゴ……
里中「まあ、それはともかく、これで決まったっぽいじゃん?」
天城「そうだよね」
天城「私たちのペルソナの攻撃も入ってるし」
白鐘「さすがに耐えられないでしょう……」
白鐘「……ん?」
りせ「…………」
白鐘「どうしました? 久慈川さん?」
りせ「なんで……どうしてなの……?」 カタ カタ カタ…
白鐘「久慈川さん?」
りせ「みんな、気をつけて! あいつ……」
338: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:41:21 ID:rVSmZeYo
りせ「全然、弱ってないっ!」
一同「!?」
ふふふ……どうしたんだい?
まさか、そんな小さな力で我を倒す気でいたのかな?
一同「…………」
339: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:42:14 ID:rVSmZeYo
我を消すなど不可能だ
なぜそれが分からない?
くくく……何も理解していない証拠だね
340: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:42:52 ID:rVSmZeYo
愚か者め!
341: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:43:48 ID:rVSmZeYo
里中「嘘でしょ……」
天城「あんなに攻撃を受けたのに……」
花村「へっ……いいじゃねーかよ」
花村「これこそラスボスって感じでな……!」
クマ「ク、クマ、まだ戦えるクマ!」
白鐘「……まだ、これからです!」
由比ヶ浜「た、倒せる……よね?」
雪ノ下「……と、当然よ、由比ヶ浜さん」
りせ「…………」
比企谷「………っ」
342: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/16(水) 20:44:48 ID:rVSmZeYo
この時――
その場にいる誰もが戦慄を覚えた。
351: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 19:58:58 ID:.CuJq6kg
――――――――――
花村「うわああああああああっ!!」
里中「花村ぁっ!!」
里中「こんのぉ……! トモエ!」
白鐘「はあ……はあ……」
天城「待ってて、みんな! コノハナサクヤ!」
花村「……す、すまねぇ、天城」
クマ「ペルクマー!!」
352: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 19:59:33 ID:.CuJq6kg
比企谷「くそっ! どうなってやがる!?」
比企谷「アメノサギリ?だって、2~3体は倒せてるくらいだろ!」
比企谷「ルシファー!!」
ドゴォォォォォンッ!!
雪ノ下「久慈川さん、どうなの!?」
りせ「ダメ……わかんないよ!」
りせ「あいつのパラメーターは、とっくに限界を超えたダメージを受けてる」
りせ「それなのに……それなのに!」
由比ヶ浜「ダーキニー!!」
由比ヶ浜「もう! 手応えはあるのに、全然弱っている気がしない!」
由比ヶ浜「どこかに弱点とか無いの!?」
353: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:00:33 ID:.CuJq6kg
俺たちは、全力でイザナミを攻撃していた。
しかし、まったくダメージになっている様子がない……
奴の反撃が大した事ないのが唯一の救いだが
終わりが見えてこない戦いというのは、正直、精神的にキツイ。
イザナミさん、早いとこ死んでくれませんか?
割とマジで
354: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:01:29 ID:.CuJq6kg
花村「はあっ、はあっ……クソッ」
花村「ジライヤ!!」
由比ヶ浜「ダーキニー!!」
比企谷「……!」
比企谷(ちっ……花村達、直接攻撃が多くなってる)
比企谷(MP的なのが切れかけてるみたいだな……)
比企谷(…………)
雪ノ下「……比企谷くん」
比企谷「どうした? 雪ノ下?」
雪ノ下「私のペルソナも限界が近いわ……このままじゃジリ貧よ」
比企谷「……分かってる」
比企谷「真綿で首を締められてる気分だな」
雪ノ下「的確だけど、今、言わないでくれる?」
355: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:02:36 ID:.CuJq6kg
白鐘「スクナヒコナ!」
クマ「いい加減、しつこいクマ!」
里中「トモエ!」
天城「はあ……はあ……」
比企谷(くそっ……!)
比企谷(どうする!?)
比企谷(どうすればいい!?)
花村「ち、畜生……」
花村「昔やった、ゲームを思い出すぜ……」
里中「はあ、はあ……ゲーム?」
356: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:03:40 ID:.CuJq6kg
花村「なんつったかな……」
花村「ラスボスに有効なアイテム忘れて、無駄に攻撃してたってのがあんだよ」
里中「イザナミにもそういうのあれば……って事?」
花村「あるのなら、今からでも取ってく……うおっと!?」
花村「あ、あぶねぇ……」
里中「うかうか無駄話もしてらんないね……」
花村「そうだ、思い出した!」
花村「ひ○りの玉ってアイテムだ!」
比企谷「バーカ……あれはな、それ無しでも一応倒せんだよ」
花村「え? マジで?」
比企谷「確かにラスボス、めちゃくちゃ強いけどな……ん?」
比企谷「ひ○りの……『玉』?」
比企谷「!!」
357: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:04:46 ID:.CuJq6kg
俺は、不意に上着のポケットをまさぐった。
手にガラス状の、ゴルフボール位の大きさの球体が触れる。
そうだ……いつ貰ったのか忘れていたが
誰かから嘘を暴き、真実を照らすとか何とか言われたと思う。
もうみんな限界が近い。
はっきり言って……はたから見たら痛い動作でしかないが
俺はそれを、謎の球体を自分の頭の上に掲げた……!
358: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:05:46 ID:.CuJq6kg
シーン…
一同「…………」
由比ヶ浜「……何してるの? ヒッキー?」
比企谷「…………」
天城「それ、ガラス玉?」
花村「……おいおい」
花村「思いつきでも安易すぎだろ?」
比企谷「…………」///
比企谷「お、俺だって、やりたくてやってる訳じゃ」///
……ヒィイイイイイインッ!
一同「!?」
359: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:06:44 ID:.CuJq6kg
掲げた玉……『宝珠』は
俺に恥をかかせるのに十分なタイムラグの後、輝きだした……!
瞬間。
辺りをおおってた霧が晴れ、イザナミの姿に変化が起こる。
360: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:07:52 ID:.CuJq6kg
ズズ……ズズズ……
里中「うわっ!? な、何あれ!?」
天城「き、気味が悪い……」
りせ「あれが……あいつの本性!」
花村「マジにドラ○エⅢと同じかよ……」
雪ノ下「>>1って、本当に表現力が無いわね」
比企谷「メタ発言はその辺にしとけ。 あと>>1が泣きそうになってるぞ」
由比ヶ浜「それもメタ発言だよ! ヒッキー!」
白鐘「なんて禍々しい姿だ……」
クマ「ここからが本番クマね!」
361: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:08:38 ID:.CuJq6kg
ほう……そんな物、どこで手に入れたんだい?
……まあ、そんな事はどうでもいいか
いいだろう
我の本当の力、存分に見せてあげよう
362: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:09:35 ID:.CuJq6kg
ドゴ――――――――――ンッ!!!
花村「うわあああああああああああっ!!」
里中「きゃあああああああああああっ!!」
クマ「およよよよよよよよよよよよよよよっ!!」
363: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:10:39 ID:.CuJq6kg
本性?を表したイザナミは……
おぞましい外見をしていた。
大きさこそ違わないものの骨と皮だけの複数の手足と体。
そしてその外皮は暗い紫色をしていて
よりおどろおどろしさを倍増させている。
一言で言うなら、地獄に住まう亡者を複数体混ぜて、巨大にした様な
そんな印象だった。
364: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:12:57 ID:.CuJq6kg
雪ノ下「くっ……! イザナミ!!」 メディアラハン!(味方全体大回復)
天城「い、いきなり攻撃が強くなった!?」
由比ヶ浜「ダーキニー! みんなを守って!!」
りせ「今までとは比べ物にならない!」
白鐘「ええ……ですが!」
比企谷「これだけ本気になったっつー事は」
比企谷「痛いとこ突かれたっていう証拠でもある!」
白鐘「その通りです! スクナヒコナ!」
366: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:13:47 ID:.CuJq6kg
……とは言うものの
すでに疲弊している俺たちにとって、状況は決して楽観できない。
正直、俺がもっと早くこれに気がついていれば……!
だが、それを責める奴は誰もいなかった。
嬉しくもあり、辛くもあり、くすぐったい様でもあり
そして……不思議と力が湧いてくる様な気もした。
367: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:15:15 ID:.CuJq6kg
――――――――――
比企谷「はあっ、はあっ……!」
比企谷「ど、どうだ!? 久慈川っ!?」
りせ「もう少し……もう少しだよ!」
りせ「ダメージは確実に入ってる!」
花村「はあ……はあ……そ、そいつは……朗報……はあ……はあ……」
里中「ぜえ……ぜえ……」
クマ「キ、キントキ、ドウジ……っ!」
由比ヶ浜「ダーキニー……! お願い……もう少し、頑張って……」
雪ノ下「くっ……はあ……はあ……」
白鐘「……スクナ、ヒコ……ナ……っ!」
368: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:16:10 ID:.CuJq6kg
比企谷(くそったれ……!)
比企谷(みんなの疲労が激しい)
比企谷(このままじゃ……くそ!!)
比企谷「ルシファー!!」
ほう……まだそんな力を残しているのか
やはり君は、侮れない実力を持っている様だね
比企谷「はあっ……はあっ……」
369: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:17:03 ID:.CuJq6kg
そろそろ終わりにしよう……
我は恨む……幾千の輝きを
幾千の命を!
『幾千の呪言』
370: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:18:15 ID:.CuJq6kg
比企谷「何!?」
イザナミがそう言葉を発すると
俺の足元から地の底へと誘う黒い腕が数本伸びてきた!
それらが俺の足をつかもうとワラワラと蠢く。
やばい、逃げ場がない!
比企谷「く、くそっ!」
花村「比企谷っ!!」
ドンッ!!
比企谷「!?」
比企谷「花村ッ!!」
371: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:18:58 ID:.CuJq6kg
間一髪。
鈍い衝撃と共に俺は安全圏へ押し出された。
だが……
花村「うわあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
比企谷「花村ぁ――――――――――!!」
雪ノ下「だめ! 比企谷くん!」
雪ノ下「もう間に合わないっ!!」
断末魔の叫びと共に、地面へと引きずり込まれる花村……
俺は……なす術なく、それを見る事しかできなかった……
比企谷「くそっ……たれがあああっ!!」
372: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:19:59 ID:.CuJq6kg
『幾千の呪言』
373: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:21:00 ID:.CuJq6kg
比企谷「!!」
比企谷「くそっ、また!!」
ドンッ!!
比企谷「!?」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「」
比企谷「由比ヶ浜っ!!」
由比ヶ浜「……」 ニコッ
比企谷「っ!!」
比企谷「バカ……ヤロウッ!!」
雪ノ下「由比ヶ浜さんっ!!」
374: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:21:56 ID:.CuJq6kg
くくく……面白いね
だが、少々面倒だ。
先にその他大勢に消えてもらおう
『幾千の呪言』
375: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:23:14 ID:.CuJq6kg
クマ「およよ――――――――――!!」
里中「きゃあああああああああああっ!!」
天城「い、いやああああああああああっ!!」
りせ「ひ、比企谷先輩、ごめんなさいっ!!」
白鐘「くっ……! せめて、雪ノ下先輩だけでもっ!!」
ドンッ!!
雪ノ下「きゃあっ!」
雪ノ下「し、白鐘くんっ!?」
白鐘「後は……任せ」
ズズズズズズズ……
比企谷「……っ」
雪ノ下「…………」
376: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:24:03 ID:.CuJq6kg
ふふふ……
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「比企谷くん」
比企谷「なんだ、雪ノ下」
雪ノ下「何かいい打開策はあるかしら?」
比企谷「……考え中だ」
雪ノ下「無いなら無いって、言ってもいいのよ」
比企谷「死んでも言えるか」
377: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:25:08 ID:.CuJq6kg
雪ノ下「ふふっ……そう」
雪ノ下「それでこそ比企谷くんよね」
比企谷「…………」
雪ノ下「……ねえ、比企谷くん」
比企谷「…………」
雪ノ下「あなたの手を……握ってもいいかしら?」
比企谷「…………」
比企谷「……ああ」
スッ……
雪ノ下「……ありがとう」
比企谷「……どういたしまして」
378: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:26:11 ID:.CuJq6kg
さて、さよならだ……
死という現実を受け入れるんだね
興ざめだよ……こんな幕切れになるなんて
『幾千の呪言』
379: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:27:23 ID:.CuJq6kg
地面から伸びてくるたくさんの黒い腕
俺と雪ノ下は……どうする事もできずに
地の底へと飲み込まれていく……
すまない……白鐘
すまない……みんな
せっかく俺を助けてくれたのに……
そんな懺悔の気持ちの中で
雪ノ下と繋いだ手のぬくもりだけが
唯一の救いだった……
380: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:28:26 ID:.CuJq6kg
―――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――
―――
―
……………………
……ん?
……誰だ? 俺に話しかけるのは?
381: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:29:24 ID:.CuJq6kg
マーガレット「どういうつもりかしら? ここまで来て」
……うるせぇ
俺は全力を尽くした……
もう寝かせてくれ……
マーガレット「立ちなさい。 あなたはこんな所で倒れる人ではないわ」
むちゃ言うな……
俺はもう死んだんだよ……
マーガレット「死んだ? 何を言ってるのかしら?」
マーガレット「死人が話せるの?」
382: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:30:21 ID:.CuJq6kg
…………
マーガレット「あなたは分かっているはずよ」
マーガレット「絆の本質を……」
…………
マーガレット「絆が、あなたに与えてくれるモノを……」
…………
マーガレット「ほら、耳を澄ませてみて?」
マーガレット「せっかく我が主の目を盗んで来たのだから」
マーガレット「無駄足にさせないでくれないかしら?」
383: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:31:29 ID:.CuJq6kg
…………
葉山「ヒキタニくん。 どうしたんだい?」
葉山「こんな所で寝っ転がって……」
葉山「君はこんな事でへこたれる人間じゃないだろう?」
…………
川崎「……言わんこっちゃない」
川崎「一人で頑張っても辛いって、お前が教えてくれた事だろ?」
川崎「さあ、立ちな。 立ち上がって、さっさと顔を見せに来い」 クスッ
384: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:32:17 ID:.CuJq6kg
…………
戸塚「八幡……きっと今、辛いんだろうね」
戸塚「でも、僕は知ってる」
戸塚「八幡は必ず立ち上がれる人間だって……」
…………
小町「お兄ちゃん」
小町「小町……お兄ちゃんの事、大好きだよ」
小町「だから、立ち上がって……きっと大丈夫だから」
385: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:33:04 ID:.CuJq6kg
…………
花村「何してんだよ、比企谷」
花村「お前はここで倒れる人間じゃねーよ」
花村「けど……確かにキツイよな。 よし」
花村「あんまし足しにならねーかも知れないが、俺の力……」
花村「お前に託すぜ!」
花村「スサノオ!」
!?
花村「これは……このペルソナは、お前がくれたもんだ」
花村「もう一息だ。 頑張ろうぜ! 相棒!」
386: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:34:07 ID:.CuJq6kg
里中「比企谷くん」
里中「正直……腹の立つ事も多かったけど」
里中「あたしは比企谷くんと知り合えて、良かったと思ってるじゃん?」 クスッ
里中「スズカゴンゲン!」
天城「比企谷くん……私ね」
天城「本当のあなたを知る事ができて、嬉しかったよ」
天城「私と同じ様に、いろいろ抱えている人間だってわかったから」
天城「アマテラス!」
りせ「あたしと比企谷先輩の出会いは、あんまり良くなかったね」
りせ「でも……最初から今までずっと変わらない態度で、芸能人としてじゃなく」
りせ「あくまで一人の人間として見てくれた事。 けっこう新鮮で、嬉しかったよ!」
りせ「カンゼオン!」
387: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:34:57 ID:.CuJq6kg
クマ「センセイ……クマは、嬉しかったクマ」
クマ「センセイに出会えて、みんなに出会えて」
クマ「そんなきっかけを クマにたくさんくれたセンセイは、きっと立ち上がれるクマ!」
クマ「だから、頑張って欲しいクマ!」
クマ「カムイ!」
白鐘「比企谷先輩……大丈夫です」
白鐘「僕の事を認め受け入れてくれた先輩は、誰よりも優しく強い存在です」
白鐘「絶対にこんな事でへこたれる様な人ではありません」
白鐘「あなたとの食事は、いつも楽しいです。 また行きましょう」 クスッ
白鐘「ヤマトタケル!」
388: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:36:35 ID:.CuJq6kg
由比ヶ浜「やっはろー! ヒッキー!」
由比ヶ浜「これでさ、お互いの事、ある程度わかったよね? ふふっ」
由比ヶ浜「ヒッキーは、もっと、きっと、頑張れるよ!」
由比ヶ浜「でもね、私……これからもヒッキーの事、知っていきたいな」
由比ヶ浜「だから、頑張ろう? 私も応援するから!」 クスッ
由比ヶ浜「ダキニテン!」
雪ノ下「……比企谷くん」
雪ノ下「あなたの抱えてた事……想像もできなかった」
雪ノ下「でも……それでも、私の力を必要としてくれるのなら」
雪ノ下「私は協力を惜しまない」
雪ノ下「だから、こんな事で負けないで立ち上がって」
雪ノ下「伊邪那美大神(いざなみのおおかみ)!!」
389: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:37:14 ID:.CuJq6kg
足立「なんだい なんだい? こんな所でつまづいてるのか」
足立「僕の事、言えた義理じゃないね……くくく」
足立「……でも、少し安心したよ」
足立「何の事はない。 君も僕と『同じ』って事なんだからね……」
足立「さ、休憩はおしまい。 この優しくないクソな世の中を切り開いていくんだ」
足立「きっと君には……それができるさ」
足立「僕が持つ事の出来なかった”モノ”を」
足立「たくさん持っている比企谷くんになら、ね」
390: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:38:29 ID:.CuJq6kg
…………
……どいつもこいつも勝手な事いいやがって。
マジにしんどいっつーの……
……でも
ここで立ち上がったら
俺……ちょっとカッコいいかもな。
391: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:39:37 ID:.CuJq6kg
―――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
―――――――――
―――
―
……む?
比企谷「…………」
……どういう事だ?
なぜ、死なない?
比企谷「…………」
比企谷「さあな」
392: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:40:21 ID:.CuJq6kg
……まあいい
『幾千の呪言』
比企谷「…………」
393: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:41:25 ID:.CuJq6kg
理屈は分からないが
地面から生える気味の悪い黒い腕達は
俺を掴む事ができないでいる。
394: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:42:10 ID:.CuJq6kg
なんだと……?
……ならば
天より落ちし裁きの雷鳴よ……
『大雷』
比企谷「…………」
395: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:43:08 ID:.CuJq6kg
並の人間なら、間違いなく黒焦げであろう巨大な電撃
確かに俺に直撃したが、耐えられなくはなかった
396: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:44:19 ID:.CuJq6kg
どういう事だ……?
なぜ、我と互角なのだ?
比企谷「俺が知るかよ」
比企谷「……けどな」
比企谷「今なら、不思議といろんな事が見える」
比企谷「これのおかげかも知れない」
比企谷「ペルソナッ!!」
397: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:45:51 ID:.CuJq6kg
伊 邪 那 岐 大 神 !!
(いざなぎのおおかみ)
398: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:48:11 ID:.CuJq6kg
そ、その力は……!?
有り得ない……”個”の意思が我の力を超えるというのか!?
比企谷「”個”の意思ね……」
比企谷「お前には、これがそう見えるのか」
…………
比企谷「何となく……お前の気持ちが分かった気がする」
比企谷「さあ、もう終わりにしよう」
比企谷「自称”イザナミ”さんよ?」
399: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:49:29 ID:.CuJq6kg
バカな……人間ごときが世迷言を
我は神だ……
比企谷「そうかよ」
比企谷「だったら、俺のやる事なんざ気にする必要もないよな」
俺はクマのメガネを外し、放り投げた
比企谷「伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)……」
比企谷「人の世に満ちる嘘……幾千の呪言を吹き晴らし」
比企谷「真実を射止める究極の言霊」
比企谷「今こそ、発せぇぇっ!!!」
400: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:50:32 ID:.CuJq6kg
『幾万の真言』
401: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:51:43 ID:.CuJq6kg
……ああああああああああああああああああああああああああああっ!!
バ、バカ、な……!!
比企谷「はあっ……はあっ……」
なぜ……人間に……これほどの力が……
お前は……いったい……?
比企谷「…………」
なんという事だ……
この我が……滅び……消えゆくとは……
比企谷「……なあ」
比企谷「一つ聞いておきたい」
402: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:53:09 ID:.CuJq6kg
…………
比企谷「お前、数ある神の名前から」
比企谷「なんで『イザナミ』を選び、名乗ったんだ?」
…………
比企谷「推測だが……神話のイザナミは」
比企谷「お前の境遇に近い存在であるから、じゃないのか?」
…………
比企谷「だからこそ」
比企谷「『イザナギ』役をする存在が欲しくなったんじゃないのか?」
403: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:54:20 ID:.CuJq6kg
人間の『負の感情』にもいろいろある。
嫉妬……憎しみ……悲しみ……欲望……妬み……
この世界は、人の意思によって……もっと言うなら
負の意識で作られたのなら
クマを含めた、『意志ある【シャドウ】』もまた、そういった”モノ”から
存在が確定していったんじゃないだろうか?
404: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:55:36 ID:.CuJq6kg
クマは以前、『寂しくて』外見を可愛くした、と、言っていた
アメノサギリ?は、表面上は公平さを売りにしていたが
『嫉妬』からクマの【シャドウ】に干渉していた
イザナミは、俺に『自分を憎め』と言っていた
イザナミが欲しがっていたものは『寂しさ』から
自分と同じく『憎しみ』を抱く者……つまり
『仲間』が欲しかったんじゃないだろうか……
405: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:56:40 ID:.CuJq6kg
比企谷「…………」
…………
それを知ってどうなる?
神たる存在の我を打ち破ったお前が
なぜ、そんなことを聞く?
比企谷「気になったからに過ぎないし、それに……」
……それに?
比企谷「ぼっちの気持ちは、同じぼっちにしか分からねーからな」
406: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:57:59 ID:.CuJq6kg
比企谷「俺にも経験がある」
比企谷「寂しさや孤独を紛らわせる為に」
比企谷「自分より劣る命を使って遊んだものさ」
なに?
比企谷「蟻地獄にアリを放り込んで、必死に這い上がろうとする様をながめたり」
比企谷「捕まえた昆虫をクモの巣に掛からせて藻掻くのを見たりな」
…………
比企谷「お前も”神”を名乗り、人間でそれをやっていたにすぎん」
比企谷「結局……そういう意味では」
比企谷「お前は俺たち人間と『変わらない』事をしていたんだよ」
比企谷「なぜなら……」
407: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 20:59:14 ID:.CuJq6kg
比企谷「お前は『人の負の意識』から生まれたのだから」
408: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:00:45 ID:.CuJq6kg
…………
ふ……ふふ…………ふふふっ!
ふはははははははっ……
比企谷「…………」
……そうだ
その通りだ、人の子よ……
我は……人が……憎かった……
比企谷「…………」
理由なぞない
ただ……『憎かった』のだ
比企谷「…………」
409: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:02:43 ID:.CuJq6kg
考えた事もなかった……
なぜ、我はこれほど人間が憎いのだろうと
憎いから憎い……そう思っていた
比企谷「…………」
……人の子よ。 今、はっきりと思い出した。
我がイザナミを名乗ったのは……
神話でのイザナミに協賛したからだ
これこそが、我の存在意義なのだと、思えたからだ
比企谷「…………」
410: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:03:50 ID:.CuJq6kg
だが……全ては、虚構に過ぎなかったのだな……
我は……神などではなく……
”力”を持った……ただの【シャドウ】でしかないのだな……
だから……我は……負けたのか……
比企谷「……そいつは少し違うかもな」
……む?
比企谷「お前が【シャドウ】なのは、まあ、そうだろう」
比企谷「でも、ただの【シャドウ】じゃないのも確かだ」
比企谷「言ってみれば人間に近い存在の【シャドウ】かもしれん」
411: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:04:47 ID:.CuJq6kg
人間に近い……【シャドウ】……
比企谷「……よし」
比企谷「一つプレゼントしてやる」
プレゼント……?
比企谷「お前は今から、『渚』だ」
なぎ……さ……?
比企谷「もう『イザナミ』じゃないんだろ?」
比企谷「だったら……ちゃんとした『名前』を名乗らないとな」
412: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:05:50 ID:.CuJq6kg
…………
比企谷「昔な、あるアニメで海と陸の間の……という表現を聞いたことがある」
比企谷「そりゃ波間、『渚』の事だろう、と俺は思った」
比企谷「人と【シャドウ】の間みたいな存在のお前に」
比企谷「ピッタリだと思わないか?」
…………
比企谷「…………」
なぎさ……か……
いい……名前……だな……ふふ……
413: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:06:51 ID:.CuJq6kg
人の、子よ……いや……
比企、谷……八幡……
比企谷「…………」
礼、を……いう……
あり……が…………とう……
比企谷「…………」
比企谷「……どういたしまして」
比企谷「ゆっくり休むといい……」
比企谷「渚」
414: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:07:48 ID:.CuJq6kg
俺に礼を言うと
力尽きた『渚』は、静かに、風に舞う砂の様に
崩れて消えて行った……
そして――
…………
415: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:09:13 ID:.CuJq6kg
――――――――――
????
イゴール「ふふふ……ようこそ、我がベルベットルームへ」
イゴール「こうやってお客様をここへお招きするのも」
イゴール「恐らくこれで最後となりましょう……」
イゴール「神に近しき”力”を持つ存在すら打ち破り」
イゴール「お客様は、新たな『世界』の誕生すら成し遂げられました」
イゴール「お見事でございましたな……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……それはお客様ご自身の目で」
イゴール「ご覧になられた方が早いでしょう……」
416: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:10:14 ID:.CuJq6kg
イゴール「間もなく、すべての霧は晴れ」
イゴール「おのずと目的地は見えてまいりますから……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……それにしても素晴らしい」
イゴール「お客様の節目の年にふさわしい、実に」
イゴール「有意義な旅にございました……」
イゴール「幾度となく視界を曇らせる虚飾や嘘の霧に阻まれながらも」
イゴール「安易な出口や、まやかしの終点の誘惑に打ち勝ってこられた」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……その通りにございまする」
417: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:11:11 ID:.CuJq6kg
イゴール「お客様の独自解釈や、大切な人々と絆を築き」
イゴール「真実へまた一歩、また一歩、と近づいてゆく……」
イゴール「その度にわたくし自身も心躍る思いでした」
イゴール「これ程の旅路に立ち会えた事を わたくしも誇りに思っております」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……」
マーガレット「もう間もなく到着します」
イゴール「おお……そろそろ”旅路の真の終点”でございますな」
イゴール「契約はついに果たされました」
イゴール「わたくしの役目もこれまでにございます……」
イゴール「…………」
イゴール「ふふふ……あなたは最高のお客人でございました」
イゴール「ありがとうございます……」
418: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:12:04 ID:.CuJq6kg
マーガレット「私からも一言お礼を」
マーガレット「素晴らしき旅路を本当にありがとう」
マーガレット「本音を言うと……少しさみしい気もするけどね」
イゴール「……さあ、お行きなさい」
イゴール「そして、その目で直にご覧になられるとよろしいでしょう」
イゴール「お客様が最後に勝ち取った”世界”が」
イゴール「どの様な素晴らしき明日であるかを……」
マーガレット「行ってらっしゃい、お客様」 クスッ
419: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:13:04 ID:.CuJq6kg
――――――――――
チチチ…… チュピ、チュピー…
比企谷「…………」
比企谷「……ん」
比企谷「…………」
比企谷「ここは……?」
そこは、どこかの深い森だった。
それも杉とかじゃなく、ブナやナラ、名前もわからない木々が
雑然と生い茂っている印象だ。
比企谷(…………)
420: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:13:50 ID:.CuJq6kg
比企谷(ともかく、みんなを探さないと……ん?)
不意に、俺は自分の左手が誰かの手を握っている事に気がつく。
比企谷「……雪ノ下」
比企谷(そういや、あの時……もうダメかと思ったあの瞬間……)
比企谷(…………)
比企谷(見たところ、異常は無さそうだな)
比企谷(起こしてみるか……)
比企谷「……おい、雪ノ下」
比企谷「起きろ、雪ノ下」 ペシペシ
雪ノ下「……ん」
雪ノ下「…………」
421: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:14:47 ID:.CuJq6kg
雪ノ下「! 比企谷くん……」
比企谷「気がついたか、雪ノ下」
雪ノ下「ここは……どこなの?」
比企谷「俺にもわからん……」
比企谷「最後、イザ……『渚』を倒したと思うんだが」
比企谷「どうにも記憶がはっきりしない」
雪ノ下「『渚』?」
比企谷「みんなを見つけた後で詳しく説明する」
比企谷「立てるか?」
雪ノ下「ええ、多分大丈夫だと……?」
422: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:15:43 ID:.CuJq6kg
雪ノ下は、自分の右手が俺の左手を握っているのに気がついた。
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……も、もういいから」///
比企谷「お、おう……」///
――――――――――
花村「……!」
花村「比企谷!」
花村「それに雪ノ下さんも」
比企谷「生きていたか、花村!」
花村「へへっ、勝手に殺すんじゃねーよ!」
423: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:16:39 ID:.CuJq6kg
俺と雪ノ下は、森を少々さまよい、少し開けた場所に出る。
そこに元気そうな花村と、他の全員が揃って休んでいた。
みんな特に問題はなさそうだった。
花村「ところでここは、どこなんだ?」
花村「いや、その前にイザナミとの戦いは、どうなったんだ?」
比企谷「俺が知る限りの事は、今話す」
――――――――――
比企谷「――という訳だ」
花村「へえ……『渚』ね」
424: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:17:58 ID:.CuJq6kg
りせ「という事は……あの鳥居?がたくさんある世界は」
りせ「比企谷先輩に関係していたんじゃないんだ」
比企谷「ああ。 『渚』が神話を元にイメージしたのかもな」
天城「じゃあ……この世界は?」
比企谷「こればっかりはな……どうも俺の記憶がはっきりしなくて」
比企谷「誰かに俺が新しく作った世界、とかなんとか言われた気がする……」
由比ヶ浜「ヒッキーが作った世界?」
里中「へえー。 比企谷くんてアウトドア派なんだ?」
比企谷「超インドア派です」
雪ノ下「……そうよね」
白鐘「ま、まあ、それはともかく、しばらく探索しませんか?」
クマ「帰るのは、いつでもできるクマ!」
425: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:19:07 ID:.CuJq6kg
――――――――――
ザッ ザッ ザッ…
里中「それにしても空気がおいしいじゃん?」
天城「八十稲羽も負けてないと思うけど……」
りせ「爽やか~」
花村「自然は豊かっぽいな」
由比ヶ浜「ヒッキーは自然が好きなの?」
比企谷「……嫌いじゃねーけど」
雪ノ下「腑に落ちないの? 自分で作ったのに?」
比企谷「…………」
白鐘「……あ! どうやら森はあそこで終わりみたいです!」
クマ「ウッホホーイ!」
426: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:20:09 ID:.CuJq6kg
一同「!!」
森を抜け、俺たちの目に飛び込んできた物は
本当の意味で大自然が広がる世界だった。
飛び回る小鳥たち……広大な花畑とそこを舞う蝶蝶……
飲めそうなくらい透き通った水が流れる清流……
遠くに見える雪をかぶった高い山々……
見ていて吸い込まれそうなほど、綺麗な景色だった。
427: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:21:24 ID:.CuJq6kg
花村「おおー! スゲー!」
里中「絶景かな、絶景かな♪」
天城「風も気持ちいいね、千枝!」
由比ヶ浜「すごい……」
りせ「本当にそれしか言えないね」
白鐘「同感です」 クスッ
雪ノ下「…………」
雪ノ下「比企谷くん?」
比企谷「ん?」
雪ノ下「思っている事があるのなら、はっきり言ってくれないかしら?」
428: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:22:42 ID:.CuJq6kg
比企谷「…………」
比企谷「……この世界、リスとかの動物はいるのに」
比企谷「人間が居ないと思ってな……」
由比ヶ浜「え?」
比企谷「もし」
比企谷「この世界……俺の『意思』が反映されているのなら、俺は」
比企谷「まだ『人間』に対しての不信感が拭(ぬぐ)えていないのかもな……」
一同「…………」
比企谷「……水を差して済まない」
比企谷「だが、これで本当の意味で」
比企谷「すべてが終わったんだ……とは思う」
429: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/04/30(水) 21:24:15 ID:.CuJq6kg
……結局
俺は『俺』のままって事なのだろうか。
見た目こそ素晴らしい、北欧風の様な大自然が広がるこの世界。
完璧である必要は無いだろうが……
ケチをつけるのも自分であるのが、妙に滑稽に思えて仕方なかった。
439: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:04:45 ID:bFJ487P6
――――――――――
天城屋のとある一室
花村「はあ? クイズ大会?」
クマ「そうクマ!」
花村「おいおい……俺たちテレビの世界から戻ってきたばかりじゃねーかよ」
比企谷「はっきり言って疲れてるんだが……」
クマ「クマはビンビンに元気クマ!」
花村「……パスさせてくれ」
比企谷「……また今度でいいだろ」
クマ「え~! だってユイちゃん、明日帰っちゃうし」
クマ「チャンスは今しかないクマ!」
440: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:05:49 ID:bFJ487P6
比企谷「どうする? 花村?」
花村「どうするって言われてもなぁ……」
クマ「むふふ……ちゃんと豪華景品も用意してるクマよ~?」
花村「景品? 何だよ?」
クマ「それは優勝してからのお楽しみクマ!」
比企谷「……って言われてもな」
花村「……クマのバイト代で手に入る豪華景品なんて」
花村「お菓子詰め合わせとか、ホームランバー10本とかだろ?」
クマ「ムキー! ヨースケ、馬鹿にするなクマー!」
??「あら。 面白そうな話、してるわね?」
比企谷「!」
花村「!」
441: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:06:34 ID:bFJ487P6
ガラッ
陽乃「うふふ~ごきげんよう♪」
比企谷「……どうも」
花村「……どうもっす」
陽乃「私からも景品用意するから、参加して楽しもうよ?」
比企谷「……疲れてるんで」
花村「……お、俺も」
陽乃「そっか。 残念ね」
陽乃「じゃあ仕方ない。 誰かさんと誰かさんの恥ずかしい話でもして」
陽乃「雪乃ちゃんと盛り上がって来ようかな?」
442: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:07:39 ID:bFJ487P6
比企谷「はい?」
花村「は、恥ずかしい話?」
陽乃「んー? たとえばぁ……」
陽乃「修学旅行、クラブの時、ヘベレケ状態の男子高校生の写メとか」
比企谷「!!」
陽乃「夏祭りの時のウブな男子高校生のエピソードとか」
花村「!!」
陽乃「ガールズトークで盛り上がりそうよね~」 ニヤニヤ
花村「ク、クマ吉! ちょうどクイズとかやりたかったんだ!」
花村「ぜひ参加させてくれ!」
比企谷「お、俺もだ!」
クマ「ムホホー! そうこなくっちゃクマ~!」
陽乃「良かったね、クマくん♪」
443: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:08:46 ID:bFJ487P6
俺たちは、あの世界……テレビの中の世界から戻って
再び天城屋に宿泊している。
『渚』との戦いは一晩中に及んだみたいで
テレビから出てきた時は、翌日の午後になっていた。
そういえば特に気にもしていなかったが、あの世界とこちら側は
時間がリンクしている。 時差がない。
どうしてなのだろう?
444: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:09:54 ID:bFJ487P6
由比ヶ浜は昨日 唐突にここへ来たため
両親に連絡した時、やっぱり怒られたみたいだ。
とりあえず詳しい事情を話せないので、どうしても行きたかったから
という苦しい言い訳みたいな理由で押し通した様子。
……なんか、すみません。
445: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:10:45 ID:bFJ487P6
で、そのお礼、という事でもないが
慰労も兼ねて天城屋に……という流れで今に至る。
オフシーズンで空(す)いているし、格安で泊まれたから
お得でちょっと贅沢な気分を味わっていたところ
クマが今の話を持ちかけてきたのだった……
446: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:11:40 ID:bFJ487P6
―――――――――――
クマ「レデース、アン、じぇんとるメーン!」
クマ「いよいよこの日がやって来た!」
クマ「気力・能力・クマの気分! 優勝目指して突き進め!」
クマ「マヨナカ横断ミラクルクイズ~!!」
クマ「ドンドンドン、パフーパフー! クマ!」
花村「盛り上げ演出もお前の口かよ……」
比企谷「着ぐるみも白タキシード着てるし……ノリノリだな」
クマ「司会・進行はワタクシ、ジャッスミークマ沢がお送りしますクマ!」
511: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:33:48 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「……このネーミングの元になったネタ」
雪ノ下「今の若い人たち、わかるのかしら?」
由比ヶ浜「ニューヨークへ行きたいかー、でしょ?」
天城「私は○留さんかな。 トメさんの愛称でお馴染みの」
里中「勝てば天国、負ければ地獄。 知力体力時の運! 早く来い来い木曜日!」
白鐘「>>1は参加したかったみたいですが」
白鐘「当時、交通費が片道3万円もかかるので断念したそうです」
りせ「あれって結構大変だったらしいよ?」
りせ「泥んこクイズとかバラマキクイズとかの準備もそうだし」
りせ「それに国際問題になりかけた事とかもあったらしくって……」
陽乃「敗者復活や罰ゲームは、今でもいいアイデアだと思うわよね~」
花村「何でみなさん、そんなにお詳しいんですか……」
比企谷「あと、メタ発言はやめなさい」
448: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:14:21 ID:bFJ487P6
クマ「それでは、さっそく始めるクマ!」
クマ「第一問!」
クマ「ユイちゃんがGWに八十稲羽へ来たきっかけは、次の内のどれクマ?」
A 平塚先生の傷心旅行に付き合わされた
B 福引の景品
C ユイちゃん自身が観光目的で
D 修学旅行
里中「あ~……そういや何だっけ?」
由比ヶ浜「これ、私が答えてもいいの?」
クマ「構わないクマ!」
449: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:15:22 ID:bFJ487P6
ポーン!
由比ヶ浜「Bの福引の景品!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「正解クマ! さっすがユイちゃんクマ!」
由比ヶ浜「えへへ~」
比企谷「本人なんだから、答えられて当たり前だろ……」
花村「これ、この頃には居なかった白鐘とかには超不利なんじゃね?」
クマ「細かいことは気にすんなクマ!」
花村「おかしいだろ!? クイズとして!」
りせ(まあその時の事、話では聞いてたし)
白鐘(過去を知る事もできるので、ちょっと面白いですけどね)
450: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:16:41 ID:bFJ487P6
クマ「第二問!」
クマ「ユイちゃんと一緒にやって来た、セイセイの先生、平塚先生!」
クマ「ぶち切れてセンセイに最初に食らわせた技は、次の内のどれクマ?」
A 衝撃のファー○トブリット
B 撃滅のセ○ンドブリット
C 抹殺のラ○トブリット
D シェ○ブリット・バースト
比企谷「今から考えると、十分訴訟できるレベルだったぞ、あれ」
里中「あれは理不尽だったね~」
雪ノ下「どうせ比企谷くんが、余計な事を言ったからなのでしょうけど……」
451: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:17:51 ID:bFJ487P6
ポーン!
花村「Cの抹殺の○ストブリット!」
ブブー!
クマ「外れクマ!」
クマ「正解はAの衝撃の○ァーストブリットクマ!」
花村「いい!? そうだったっけ?」
クマ「ちっちっちっ。 ジャッスミークマ沢は『最初に』って、ちゃんと言ったクマ!」
白鐘(……技の名前から推測できそうなんですけど)
りせ(教師なのに暴力振るったの?)
里中(確かにすごいキャラの先生だったじゃん……)
花村「つか、クマ。 お前あの時いなかったのになんで知ってるんだ?」
クマ「さぁ~て、どんどん行くクマ!」
花村「無視かよ!?」
452: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:18:42 ID:bFJ487P6
クマ「第三問!」
クマ「ユキノンが転校してきた時、あるエピソードから付けられた」
クマ「ユキノンへの告白行為の俗称は、次の内のどれクマ?」
A 雪ノ下越え
B 雪ノ下チャンス
C 雪ノ下またぎ
D 雪ノ下くぐり
花村「そういやあったな~。 何だっけ?」
天城「つけられる方は迷惑なんだけどね……あれ」
453: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:19:34 ID:bFJ487P6
ポーン!
比企谷「……Dの雪ノ下くぐり」
ピンポン ピンポーン!
クマ「さっすがセンセイクマ! 大正解クマ!」
雪ノ下「くっ……私も押したのに」
由比ヶ浜「次があるよ、ゆきのん!」
里中「なんだかんだ言っても、面白くなってきたじゃん」
りせ「もうすぐあたしかな?」
白鐘「僕の登場は、まだ先そうですね」
454: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:20:38 ID:bFJ487P6
クマ「第四問!」
クマ「GW明け、ユキノンが見かけた怪しい人物の名前」
クマ「実はナオトだったけど、ユキノンは間違って覚えてたクマ」
クマ「その間違ってた名前は、次の内のどれクマ?」
A 白三河 直美
B 白無垢 直江
C 白装束 直道
D 白北澤 直茂
花村「あ~、あったあった! えっと……何だっけ?」
比企谷「おかげで怪しい人物って認識だったな」
白鐘「……名刺でも作って渡せば良かったですね」
455: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:21:47 ID:bFJ487P6
ポーン!
天城「Bの白無垢 直江!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ユキちゃん正解クマ~!」
天城「やった!」
里中「よく覚えてたね、雪子」
天城「やっぱり珍しい名前だったし……旅館の女将として」
天城「名前は覚えられる様、頑張ってたから♪」
白鐘「なるほど。 仕事柄、そういう事ができる様になってたんですね」
比企谷(……俺はよっぽどの奴じゃないと、なかなか覚えられない)
456: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:23:05 ID:bFJ487P6
クマ「第五問!」
クマ「りせちゃんの実家のオトーフ屋さんを訪ねたセンセイとヨースケ」
クマ「その時買ったものは、次の内のどれクマ?」
A おからを3パック
B 絹ごし豆腐を3丁
C 豆乳を1リットル
D がんもどきを6つ
花村「確かにお前、なんか買ってたな?」
比企谷「もう覚えてねーよ……豆腐じゃなかったと思うが」
457: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:24:14 ID:bFJ487P6
ポーン!
りせ「Dのがんもどきを6つ!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「正解クマ!」
りせ「うふふ! あたしよく覚えてるよ?」
りせ「花村先輩は鼻の下伸ばしてて、比企谷先輩の目がすっごく怪しかったな♪」
雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…
由比ヶ浜「…………」 ゴゴゴ…
花村「ク、クマ! さっさっと次の問題に行け!」
比企谷「早くしろ!」
458: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:25:18 ID:bFJ487P6
クマ「第六問!」
クマ「夏休みに入って、アダっちーの部屋に集結した時」
クマ「男性陣がヒマ潰しにやっていたのは、次の内のどれクマ?」
A 人○ゲーム
B モン○ターハ○ター
C 大乱闘ス○ッシュブ○ザーズ
D トランプの7ならべ
里中「ああ、あたしらがお昼作ってた時だね」
天城「クマくんがすっごく喜んでたよね? 確か」
459: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:26:47 ID:bFJ487P6
ポーン!
花村「これは覚えてるぜ。 Aの○生ゲームだ!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「おおー! ヨースケ、正解クマ!」
クマ「クマ、石油王になって、世界経済を引っ張ったクマよ~」
雪ノ下「比企谷くんは?」
比企谷「……小さな工場経営者で終わった」
比企谷「ちなみに花村は学校の用務員で定年」
花村「暖かな家庭を築いたんだからいいんだよ!」
白鐘「な、なんだか、細かい設定まである終わり方ですね……」
由比ヶ浜「私もちょっと参加したかったかも♪」
460: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:27:58 ID:bFJ487P6
クマ「第七問!」
クマ「修学旅行での行く先が、センセイのかつて母校だと知った時」
クマ「センセイがハルさんを例えた正確な言葉は、次の内のどれクマ?」
A 四次元ポケットを持った未来のネコ型ロボット
B 4Dポケット持ってる青いタヌキ型ロボット
C 4Dポケット持った自称ネコ型ロボット
D 4Dポケット持ってる自称キャット型ロボット
花村「そんなもん本人以外、分かる訳ねーだろ!?」
由比ヶ浜「うーん……でも、ヒッキーの性格を考えると……?」
461: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:29:04 ID:bFJ487P6
ポーン!
白鐘「Dの4Dポケット持ってる自称キャット型ロボット!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「正解クマ!」
白鐘「やった!」
クマ「ナオト、よく分かったクマね~」
白鐘「ははは……まあ、なんとなくですけど、比企谷先輩の事ですし……」///
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「……あの。 どうかしました?」
花村(……な、なんか、緊張感が高まってる様な)
里中(空気、変わったじゃん……)
天城(次は当てるっ!)
りせ(愛のなせる技かぁ♪)
462: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:30:09 ID:bFJ487P6
クマ「第八問!」
クマ「修学旅行中、偶然ばったり出会ったハルさんとセンセイ達」
クマ「その時ハルさんは次の内、どの理由でそこに居たクマ?」
A 就職活動
B お見合いをする為
C 休学届けを出してる大学に用事
D 実家に呼ばれて仕方なく
花村(……あれ、本当に偶然だったのかな)
比企谷(……まるでこちらを監視しているのかと思える様なタイミングだった)
463: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:31:10 ID:bFJ487P6
ポーン!
陽乃「Cの休学届けを出してる大学に用事!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ハルさん正解クマ!」
陽乃「やった! やっと私も答えられる問題が出たわ♪」
雪ノ下(でも……あの後のクラブでの出来事)
雪ノ下(何があったのだろう?)
由比ヶ浜(あれは酷かったなぁ……)
里中(雪子含め、覚えていなくて幸いだけど……)
白鐘(今にして思えば、大暴露大会でしたね……)
花村(あの時の写メ……まだ持ってるんだよなぁ、陽乃さん……)
比企谷(まあ楽しかった感覚があるのみだが)
りせ(また行きたいな♪)
464: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:32:06 ID:bFJ487P6
クマ「第九問!」
クマ「修学旅行最終日、大衆食堂はがくれで食事した時」
クマ「りせちゃんは美味しいけど、次の内の何を気にして控えてたクマか?」
A カルシウム
B ビタミン
C タンパク質
D 炭水化物
花村「あそこのラーメン確かに旨かったよな!」
里中「うーん……なんだったっけ?」
465: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:33:17 ID:bFJ487P6
ポーン!
天城「Dの炭水化物!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「正解クマ!」
天城「やった♪」
りせ「うそっ!? あたしも押したのに~!」
里中「早押しだからねー」
雪ノ下「私も分かったのに」
由比ヶ浜「女の子なら誰でも気にするよね~」
白鐘「僕はあまり気にした事はありませんが?」
りせ「……その栄養。 全部胸に行ってるのかなぁ」
白鐘「!?」///
466: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:34:08 ID:bFJ487P6
クマ「第十問!」
クマ「センセイの善意で始まった勉強会」
クマ「その時に暴露されたヨースケのうっふん♡な本のタイトルで」
クマ「正しくないのは、次の内のどれクマ?」
A お姉さんの谷間でイって♥
B 姉ちゃんとやろう!
C 揉みしだかれたおっ○い
D 破れたパンストと生足
花村「そのネタ、もう引っ張んのやめて!?」///
里中「あははははは……」
467: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:34:51 ID:bFJ487P6
ポーン!
天城「たぶん、Cの揉みしだかれた○っぱいだと思う」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ユキちゃん正解クマ!」
天城「うふふ、二問連続正解! 正しくは巨乳だったよね?」
里中「ゆ、雪子……」///
白鐘(できない……僕にこの問題を答える事はっ)///
りせ(恥ずかしくて答えられなかった……)///
雪ノ下(……まあ健全な男子ならしょうがないけど)///
由比ヶ浜(なんで天城さん答えられるの!? 勉強会って、何の勉強したの!?)///
468: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:35:55 ID:bFJ487P6
クマ「第十一問!」
クマ「八十神高校・文化祭で行われた女装コンテスト!」
クマ「クマの優勝で幕を閉じたけど、この時のセンセイが」
クマ「女装でかぶっていたものは 次の内のどれクマ?」
A 黒髪ロングのカツラ
B 金髪ロングのカツラ
C 銀髪ロングのカツラ
D 茶髪ロングのカツラ
比企谷「古傷をえぐるんじゃねぇ!!」///
花村「早く忘れたい……」/// シクシク…
469: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:36:45 ID:bFJ487P6
ポーン!
由比ヶ浜「Aの黒髪ロングのカツラ!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ユイちゃん正解クマ!」
由比ヶ浜「よし!!」
天城「私も覚えてたのに~」
里中「確か……ガタイのいいサ○コとか言われてたじゃん?」
りせ「そうそう!」
比企谷「もう忘れてください……」
白鐘「ぼ、僕は、悪くなかったと思いますよ?」
アハハ……
470: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:37:26 ID:bFJ487P6
―――――――――――
クマ「さて」
クマ「問題も随分終わって、盛り上がってきましたが!」
クマ「いよいよ次が! ラストファイナル千秋楽問題クマ!」
クマ「ドンドンドン、パフーパフー! クマ!」
花村「ラストもファイナルも千秋楽も同じ意味だっつーの!!」
クマ「もー。 ヨースケは人間がちっちゃいクマね」
クマ「だからカノジョ出来ないクマ」
花村「うっせーよ!?」
471: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:38:16 ID:bFJ487P6
天城「けっこう面白かったね、千枝」
里中「ふふ、まあね」
陽乃「白熱したわ~♪」
りせ「いよいよ最終問題かぁ」
白鐘「現在の正解数は……僕と、比企谷先輩」
白鐘「それに雪ノ下先輩と由比ヶ浜さんが同数でトップです」
それ以外(よりにもよって、その顔ぶれで横並びトップですか……)
比企谷「お約束なら最後は、ポイント1億点というのがデフォだな」
天城「あれ興ざめする……」
里中「今までの展開なんだったの?って感じになるじゃん?」
クマ「も、もちろん、そんな事はないクマよ、センセイ?」
花村(やる気だったな……こいつ)
472: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:39:45 ID:bFJ487P6
クマ「それでは、ラストファイナル千秋楽問題!」
クマ「最後の戦いにおいて、センセイが掲げた不思議なアイテム!」
クマ「その時、その事を思い出すきっかけとなったゲームのアイテム名は」
クマ「次の内のどれクマ?」
A ドラ○エの「に○のしずく」
B ド○クエⅣの「おう○んのうでわ」
C ドラク○Ⅱの「は○いのつるぎ」
D ○ラクエⅢの「ひか○の玉」
比企谷「どれもこれも皆懐かしい……」
比企谷「終わったドラ○エのレベル上げも楽しい思い出だ」
花村「……想像すると切なくなるから止めろって」
473: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:41:03 ID:bFJ487P6
ポーン!
雪ノ下「DのドラクエⅢの「ひかりの玉」!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ユキノン、大正解クマ~!!」
里中「お見事!」
天城「さすが雪ノ下さんね」
りせ「っていうか、当事者の比企谷先輩が答えられないって……」
比企谷「いや……はぐ○メタルと戯れ、パルプ○テ祭りをしたなと思い出に浸って」
由比ヶ浜「そ、そろそろ帰ってこよう? ヒッキー?」
白鐘「優勝は雪ノ下先輩ですね」
陽乃「うふふ、さすが雪乃ちゃんね♪」
474: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:42:46 ID:bFJ487P6
>>473修正↓
475: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:43:32 ID:bFJ487P6
ポーン!
雪ノ下「Dのド○クエⅢの「○かりの玉」!」
ピンポン ピンポーン!
クマ「ユキノン、大正解クマ~!!」
里中「お見事!」
天城「さすが雪ノ下さんね」
りせ「っていうか、当事者の比企谷先輩が答えられないって……」
比企谷「いや……はぐ○メタルと戯れ、パルプ○テ祭りをしたなと思い出に浸って」
由比ヶ浜「そ、そろそろ帰ってこよう? ヒッキー?」
白鐘「優勝は雪ノ下先輩ですね」
陽乃「うふふ、さすが雪乃ちゃんね♪」
476: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:44:22 ID:bFJ487P6
クマ「いや~、白熱したクイズバトルだったクマ!」
比企谷「ときどき古傷に塩水かけられた気がするがな」
花村(……俺はヤブヘビになりそうだから、あえて突っ込まないでおこう)
陽乃「それにしても花村くんの趣味って、そうなんだー」
花村「やめてー!! 俺のライフ、もうマイナス!!」///
里中「で? なんか優勝者には豪華景品が贈られるとか言ってたけど?」
クマ「もっちろん、進呈するクマ!」
クマ「マヨナカ横断ミラクルクイズ、優勝者には……」
一同「…………」
クマ「クマからの熱いホウヨウと共に、愛情たっぷりの口づけが」
477: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:45:13 ID:bFJ487P6
ガシッ!!
クマ「はがッ!!?」
比企谷(うおっ!? 雪ノ下!?)
比企谷(一瞬の内にクマの着ぐるみ外して、中身の頭にアイアンクローをかました!?)
ギリッ…ギリッ…ギリリッ!!
クマ「イタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ!!?!?」
雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…
由比ヶ浜(し、しかも片手でクマくんを持ち上げてる!?)
クマ「ユキノン、ユキノン! 冗談じゃなく痛いクマ!?」
雪ノ下「痛くしてるから当然ね」
クマ「何が気に入らないクマ!? ジュネスのおば様には大人気なのに!?」
478: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:46:10 ID:bFJ487P6
花村「……まあ雪ノ下さんは『ジュネスのおば様』じゃねーからな」
花村「つーか、店で何してんだよ、お前……」
花村「あと、俺と比企谷が優勝した時も景品それだったのか?」
クマ「当たり前クマ!」
比企谷「雪ノ下さん、やっちゃってください。 遠慮なく」
由比ヶ浜「え~っと……」
りせ「まあ仕方ないかな」
白鐘「ですね」
天城「一度締めないといけないと思ってたし」
里中「いい機会じゃん?」
陽乃「あらあら♪」
クマ「」
479: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:46:57 ID:bFJ487P6
ア―――――――――――!!
480: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:47:54 ID:bFJ487P6
―――――――――――
天城屋 露天風呂(現在女性風呂)
チャプン…
由比ヶ浜「ふう……」
由比ヶ浜「やっぱりここの露天風呂はいいな♪」
由比ヶ浜「気持ちいい~」
ガララ…
雪ノ下「……あ」
雪ノ下「由比ヶ浜さん」
由比ヶ浜「あ、ゆきのん」
481: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:48:32 ID:bFJ487P6
雪ノ下(……誰もいないと思ったのに)
雪ノ下「こんな遅い時間にどうしたのかしら?」
由比ヶ浜「ん? 私、明日帰るし」
由比ヶ浜「まあ記念にって、思って」
雪ノ下「そう……」
由比ヶ浜「そう言うゆきのんは?」
雪ノ下「エロクマを締めて、少し汗をかいたから」
由比ヶ浜(クマくん……大丈夫かな)
由比ヶ浜「そ、そうなんだ……」
482: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:49:50 ID:bFJ487P6
由比ヶ浜「そだ、まだお礼 言ってなかったね」
雪ノ下「何の事?」
由比ヶ浜「交通費とかここの宿泊費とか出してくれて」
雪ノ下「ううん。 それこそ気にしないで、由比ヶ浜さん」
雪ノ下「むしろ足りないくらかも、と思ってるの」
由比ヶ浜「でも……」
雪ノ下「お金、という形になってしまったけど」
雪ノ下「感謝の気持ちに変わりはないわ。 だから……どうしても気になるのなら」
雪ノ下「何か別の形で返してくれたらいいから」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「うん。 わかったよ、ゆきのん」
483: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:50:58 ID:bFJ487P6
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「…………」
雪ノ下「……ところで」
由比ヶ浜「ん?」
雪ノ下「比企谷くんが私たち……ううん、もっと言うと」
雪ノ下「周りの人達を傷つけない為に、身を引いていってるって」
雪ノ下「どうして足立さんとの あの会話で分かったのかしら?」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「それだけじゃないよ」
雪ノ下「え?」
由比ヶ浜「私はね、ゆきのんやみんなの意見も聞いて」
由比ヶ浜「その上で足立さんとの話でそう思っただけ……」
雪ノ下「…………」
484: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:51:38 ID:bFJ487P6
由比ヶ浜「今にして思うとね」
由比ヶ浜「年末に私がここを離れる時……ヒッキーは」
由比ヶ浜「不必要に謝っていたなって思えるの」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「その時は……私も小さな違和感しか感じられなかった」
由比ヶ浜「でも、みんなとゆきのんの話……それに」
由比ヶ浜「足立さんとの話で、ヒッキーは」
由比ヶ浜「関わってきた、全員に謝っているんじゃないかって思えた」
雪ノ下「!」
485: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:52:29 ID:bFJ487P6
由比ヶ浜「私から見たらヒッキーは何も悪くない」
由比ヶ浜「でもヒッキーは……ヒッキー自身は、そうじゃないんだって」
由比ヶ浜「自分を責め続けているんだって感じて、悲しくなったな……」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「とまあ、こんな感じかな?」
雪ノ下「……ありがとう」
雪ノ下「よく分かったわ」
由比ヶ浜「どういたしまして♪」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「ね、ゆきのん」
雪ノ下「何かしら?」
486: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:53:40 ID:bFJ487P6
由比ヶ浜「ヒッキーに気持ち、伝えた?」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……あなたが気にする事じゃない」
由比ヶ浜「そう」
由比ヶ浜「だったら……ちょっと意地悪するね」
雪ノ下「え?」
由比ヶ浜「そういうのって、ずるいんじゃないの? ゆきのん」
雪ノ下「……何がずるいの?」
由比ヶ浜「臆病で、傷つく事を恐れて、進もうとしていない」
由比ヶ浜「そんな風に見えるから」
雪ノ下「っ!」
487: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:54:29 ID:bFJ487P6
バシャッ!
雪ノ下「勝手な事を言わないで!」
雪ノ下「私は……私はそんな理由でしないんじゃない!」
由比ヶ浜「じゃあ、どんな理由?」
雪ノ下「!!」
雪ノ下「そ、それは……」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「……黙っちゃうんだ」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「…………」
488: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:55:41 ID:bFJ487P6
ザバァ……
由比ヶ浜「さて、そろそろあがろっと」
雪ノ下「…………」
ペタ ペタ ペタ… ガララッ
由比ヶ浜「ねえ、ゆきのん」
雪ノ下「……何かしら?」
由比ヶ浜「私……どんな事があっても」
由比ヶ浜「ヒッキーとゆきのんが『特別』である事に……」
由比ヶ浜「変わりはないから」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「じゃ、お休み」
ガララ…… ピシャ
雪ノ下「…………」
489: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:56:19 ID:bFJ487P6
―――――――――――
雪ノ下の部屋
コン コン
雪ノ下「はい? どなたですか?」
??「私よ、雪乃ちゃん」
雪ノ下「姉さん? 今頃、何の御用ですか?」
陽乃「とりあえず開けてくれるかな?」
雪ノ下「…………」
ガチャ…
陽乃「ありがとう」
490: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:57:23 ID:bFJ487P6
雪ノ下「いえ……それで? ご要件は?」
陽乃「例のクイズの景品を渡そうと思って」
雪ノ下「景品?」
陽乃「うふふ。 ちょっとお邪魔するわね?」
雪ノ下「はあ……」
―――――――――――
雪ノ下「姉さんもそんな約束をしていたんですか」
陽乃「ふふっ。 まあクマくんの景品だけじゃ辛いかな?って思ってたから」
陽乃「あんなのだとは、さすがに思わなかったけど♪」
雪ノ下(……本当かしら)
陽乃「で、これ」 スッ…
491: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:58:16 ID:bFJ487P6
雪ノ下「……クッキー?」
雪ノ下(姉さんにしては無難な景品ね?)
陽乃「それは残念賞」
陽乃「参加した人数分用意しておいたの」
陽乃「みんなに配った物と同じ物よ」
雪ノ下「え?」
陽乃「そして、ここからが本当の優勝景品」
雪ノ下「…………」
陽乃「何か悩み事があれば、相談に乗っちゃいます♪」
雪ノ下「……姉さん」
陽乃「うふふ、どう? 豪華でしょ?」
雪ノ下「…………」
492: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:58:59 ID:bFJ487P6
陽乃「まあ真面目な話」
陽乃「今日、帰ってきたみんなの中で、雪乃ちゃんだけ」
陽乃「浮かない顔してたから」
雪ノ下「……そんな事は」
陽乃「ううん、もっとはっきり言うと」
陽乃「雪乃ちゃん、何か抱え込んだんじゃないのかな?」
雪ノ下「…………」
陽乃「…………」
陽乃「……言えない、かな?」
雪ノ下「…………」
陽乃「……そっか」
493: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 21:59:53 ID:bFJ487P6
陽乃「そういえばね、比企谷くん」
雪ノ下「…………」
陽乃「今回、私の見立てでは、彼が一番劇的に変わった」
雪ノ下「え?」
陽乃「……ううん、そうじゃなくて」
陽乃「ものすごく落ち着いた雰囲気になった気がする」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「……私には、わかりません」
陽乃「そう」
陽乃「でもね、雪乃ちゃん」
雪ノ下「はい?」
陽乃「きっと彼は、これからモテるわよ~?」
雪ノ下「…………は?」
494: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 22:01:02 ID:bFJ487P6
雪ノ下「何を言ってるんですか、姉さん。 くだらない……」
陽乃「あら? 冗談だと思うの?」
雪ノ下「本気でそうおっしゃってるのなら、病院を紹介しますが?」
陽乃「うふふ、大した自信ね♪」
雪ノ下「だから自信などでは……」
陽乃「けどね、雪乃ちゃん」
陽乃「本当にそれでいいの?」
雪ノ下「…………」
陽乃「由比ヶ浜さんは、とっても頑張ってる」
陽乃「境遇に負けず一生懸命で、健気に、それでいて実直に」
陽乃「白鐘くんもそうね。 あの娘は、決定的に『経験』が足りていない」
陽乃「だけど、一途に比企谷くんと向き合っている」
雪ノ下「…………」
495: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 22:02:06 ID:bFJ487P6
陽乃「私は……雪乃ちゃんが何を抱え込んでいるのか、わからない」
陽乃「確かなのは、そのままでいい訳がないって事くらいかな」
雪ノ下「…………」
陽乃「…………」
雪ノ下「お話はおしまいですか?」
陽乃「……雪乃ちゃん」
雪ノ下「もうお引き取りください。 休みますので」
陽乃「…………」
陽乃「……そう」
陽乃「じゃ……そうするわ」
陽乃「お休みなさい、雪乃ちゃん」
496: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 22:02:54 ID:bFJ487P6
パタン…
雪ノ下「…………」
雪ノ下(……もう、何もかもが)
雪ノ下(遅かったのよ……姉さん)
雪ノ下(…………)
雪ノ下(私は……)
何かを……すべきじゃない――
497: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 22:03:51 ID:bFJ487P6
―――――――――――
由比ヶ浜達の部屋
ヴヴヴ……ヴヴヴ……
由比ヶ浜「……ん」
由比ヶ浜(ケータイ……メール?)
カチャ…
由比ヶ浜「……!」
Re 比企谷
明日、帰る前に高台で話せないか?
由比ヶ浜「…………」
498: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 22:04:34 ID:bFJ487P6
比企谷「…………」
ヴヴヴ……ヴヴヴ……
比企谷「!」
Re 由比ヶ浜
わかった。 10時くらいに
比企谷「…………」
499: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/12(月) 22:05:38 ID:bFJ487P6
俺は、覚悟を決めた
513: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:36:12 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
翌日の朝
天城屋 玄関ロビー付近
天城「あら? 由比ヶ浜さん、おはようございます」
由比ヶ浜「ああ、天城さん。 おはよう」
天城「お散歩かな?」
由比ヶ浜「ううん……」
由比ヶ浜「ちょっと高台に行ってきます」
天城「高台? ああ、いい天気だし、景色を眺めてくるんだね」
由比ヶ浜「違うよ」
天城「え?」
514: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:37:26 ID:CT7X0ygg
由比ヶ浜「ヒッキーと話をする為に行くの」
天城「!?」
由比ヶ浜「お昼までには、必ず戻るからね?」
由比ヶ浜「じゃ!」
スタ スタ スタ…
天城「ちょ……由比ヶ浜さん!?」
天城「…………」
天城(……由比ヶ浜さん、なんか、すごく緊張してる感じだった)
天城(これは……やっぱり……?)
515: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:38:14 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
天城屋 とある一室
りせ「それはもう告白しかないんじゃない?」
天城「やっぱりそうかな……」
里中「いよいよかぁ~……うう、なんかあたしまで緊張するじゃん」
里中「比企谷くん、どうするのかなぁ……」
りせ「ね、ね!」
りせ「こっそり見に行こうよ!」
天城「……りせちゃん」
りせ「え?」
516: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:39:16 ID:CT7X0ygg
天城「私……確かに興味あるけど」
天城「できたら二人きりにさせてあげて欲しいの」
天城「さっきの由比ヶ浜さんを見たから……見てしまったから」
里中「雪子?」
天城「由比ヶ浜さん、緊張感がすごかった」
天城「きっと……全身全霊を傾けて、勇気を振り絞って、告白するつもりだと思うの」
りせ「…………」
里中「…………」
りせ「……わかったよ、天城先輩」
りせ「あたしだってそういう気持ち、大切にしてあげたいし」
里中「そうだね……それがいいよ、絶対」
天城「ありがとう、二人共……」
517: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:40:02 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
天城屋 玄関ロビー付近
白鐘「おはようございます、比企谷先輩」
比企谷「白鐘……おはよう」
白鐘「もうチェクアウト済ませたんですか?」
比企谷「ああ……」
比企谷「…………」
比企谷「そうだ、白鐘」
白鐘「はい?」
比企谷「今日の午後、空いているか?」
518: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:41:00 ID:CT7X0ygg
白鐘「午後ですか?」
白鐘「堂島さんに改めてお礼を言いに行こうと思って……」
白鐘「ああ、予定では無いので、空いている状態です」
比企谷「そうか……」
白鐘「比企谷先輩?」
比企谷「なら、話をしたいんだが……構わないか?」
白鐘「!」///
白鐘「え、ええ! もちろんです!」///
白鐘「場所は……いつもの愛屋にしますか?」///
比企谷「……いや、できれば静かな場所にしたい」
白鐘「え……」
519: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:41:53 ID:CT7X0ygg
比企谷「そうだな……夕方の5時くらいに、鮫川河川敷公園でどうだろう?」
白鐘「…………」
白鐘(これは……もしかして……)
白鐘「……わかりました」
比企谷「すまないな」
比企谷「それじゃ、その時に……」
白鐘「はい」
スタ スタ スタ…
白鐘「…………」
白鐘(……返事をくれるんですね、比企谷先輩)
白鐘(…………)
520: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:43:10 ID:CT7X0ygg
覚悟
危険な事、不利な事、困難な事を予想して、受け止める心構えをする事。
仏語。 迷いを脱し、真理を悟る事。
来るべき辛い事態を避けられないものとして、諦める事。 観念する事。
覚える事。 記憶する事。
知る事。 存知。
正直……今の俺にとって、どの意味にも当てはまる気がする。
曖昧なままで済ませる方が楽なのだろう事は確実だ。
521: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:44:19 ID:CT7X0ygg
だが、それは他ならない俺自身が嫌なんだ。
嫌悪していた「もの」を受け入れた瞬間から……もう自分を騙す事は出来ないと
522: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:45:09 ID:CT7X0ygg
分かってしまったのだから
523: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:46:19 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
高台
由比ヶ浜「…………」
比企谷「……待たせたな、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「! ヒッキー……」
由比ヶ浜「ううん、そんな事ないよ」
比企谷「…………」
比企谷「寒くはないか?」
由比ヶ浜「ふふっ、ちょっとだけ寒いかな?」
由比ヶ浜「まだ二月半ばだしね」
比企谷「…………」
524: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:47:08 ID:CT7X0ygg
比企谷「それで、話なんだが……」
由比ヶ浜「待って、ヒッキー」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「その前に、これを受け取って」
スッ…
比企谷「…………」
比企谷「……チョコか?」
由比ヶ浜「うん」
由比ヶ浜「バレンタインデーは過ぎちゃってるけど……」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「あと、ね」
525: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:48:29 ID:CT7X0ygg
由比ヶ浜「もう一度、告白させて欲しい」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「私が連れ去られて出来なくなって……」
由比ヶ浜「病院でやった様な、中途半端なやつじゃない」
由比ヶ浜「ちゃんとした告白を……私、したい」
比企谷「…………」
比企谷「なあ、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「お願い、ヒッキー」
比企谷「…………」
526: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:49:35 ID:CT7X0ygg
比企谷「……わかった、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「ありがとう、ヒッキー」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「今の私は、ヒッキーにいろいろ見られたから」
由比ヶ浜「正直に言うと……恥ずかしい、と言うか、怖い、って言うか」
由比ヶ浜「気持ち悪いって思われているかも知れない、と思ってる自分が居る」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「あの世界に行くまでの私は」
由比ヶ浜「『特別』の意味を履き違えていたのかなって思う」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「だけどね」
由比ヶ浜「やっぱり、変わらないんだよ」
527: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:50:52 ID:CT7X0ygg
由比ヶ浜「ヒッキーの事、好きだって気持ちは……」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「最初はね。 ヒッキーの事、怖い人かな?って思った」
由比ヶ浜「でも、ゆきのんとも一緒に話とか、部活とかやっていく内に」
由比ヶ浜「いつの間にか、自然な自分で居られる事に気がついた」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「いつまでもその時間が続くって……ううん」
由比ヶ浜「続いて欲しいって、そう思う様になっていて」
由比ヶ浜「私は……戸惑った」
528: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:51:45 ID:CT7X0ygg
比企谷「……戸惑った?」
由比ヶ浜「うん……」
由比ヶ浜「今まで、経験した事が無かったくらい」
由比ヶ浜「居心地が良くて……ね」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「それからの私は……自分の『価値』を探し始めた」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「ゆきのんとヒッキーにとって、何かしらの役に立ちたいって」
由比ヶ浜「私がゆきのんとヒッキーを『特別』に思うのと同じように」
由比ヶ浜「私を『特別』にして欲しかったから……」
比企谷「…………」
529: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:52:37 ID:CT7X0ygg
由比ヶ浜「そんなのは……私のわがままだって」
由比ヶ浜「二人の気持ちを全然考えていないって……」
由比ヶ浜「あの時……あの世界で、やっと分かった」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「けど……けどね……」
由比ヶ浜「それでも……ね」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「ヒッキーの事、好きである事に嘘はないし」
由比ヶ浜「三人で過ごす『特別』より、もっと……」
由比ヶ浜「あなたと一緒に居たい」
由比ヶ浜「あなたと毎日を過ごしたい」
由比ヶ浜「あなたの事を……これからも知っていきたい」
比企谷「…………」
530: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:53:37 ID:CT7X0ygg
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「お願い、ヒッキー」
由比ヶ浜「私と……付き合ってください」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「……なあ、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「……うん」
比企谷「…………」
532: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:54:38 ID:CT7X0ygg
比企谷「お前が初めてなんだ」
比企谷「俺が『真っ当(まっとう)』な告白なんていうものを受けるの」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「真っ当(まっとう)……?」
比企谷「今までな……俺は」
比企谷「女子の間での罰ゲーム告白とか、そういうのしか経験がない」
由比ヶ浜「! わ、私は……!」
比企谷「由比ヶ浜がそんな事をしないのは、もう分かってる」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「…………」
比企谷「……どうして、なんだろうな」
533: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:56:01 ID:CT7X0ygg
比企谷「由比ヶ浜みたいな可愛い女の子が、俺を好きだって言ってくれて」
比企谷「それが嘘偽りない事だって、真剣に向き合ってくれているって、分かってるのに」
比企谷「俺は……俺の心は……」
比企谷「………………っ!」 ギリッ…!
比企谷「お前じゃないって、言ってるんだよ……!!」
由比ヶ浜「……っ」
比企谷「…………」
比企谷「由比ヶ浜が……どんなにか……」
比企谷「頑張ってきたのか……努力してきたのか……」
比企谷「俺に向き合ってくれたのか……分かっているのに……!」
比企谷「俺は……ぐっ……俺、はっ……くっ……ううっ……」
534: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:56:57 ID:CT7X0ygg
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……泣かないでよ、ヒッキー」
比企谷「……ぐっ……ふっ……ひぐっ……ぐっ……くっ……」
由比ヶ浜「こういうのってさ……普通ふられた方が泣くものなんだよ?」
比企谷「……はっ……ぐっ……くっ……ぎっ……」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……そっか」
由比ヶ浜「ヒッキーは『痛み』に敏感で、いつも泣いていたんだ」
由比ヶ浜「自分でない『誰か』の『痛み』でも……」
比企谷「……ぐっ……ひぐっ……くっ……うぐっ……」
由比ヶ浜「…………」
535: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:58:13 ID:CT7X0ygg
由比ヶ浜「ヒッキー……私、ちょっと嬉しい」
比企谷「……ひぐっ……くっ……はっ……ぐっ……?」
由比ヶ浜「また一つ、あなたを知ることが出来たから」
比企谷「……ぐっ……由比、ヶ浜……」
由比ヶ浜「彼女になれなかったのは……すごく残念だけど」
由比ヶ浜「私にとって、ヒッキーが『特別』なのは変わらない」
由比ヶ浜「これからも、ずっと……」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「で、これからどうするの?」
536: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 19:59:09 ID:CT7X0ygg
比企谷「!」
比企谷「…………」
比企谷「けじめをつけるつもりだ」
由比ヶ浜「……そっか」
由比ヶ浜「頑張ってね、ヒッキー」
比企谷「……ああ」
由比ヶ浜「じゃ、私は、ここの景色をもうしばらく楽しんでから旅館に帰るね?」
比企谷「…………」
比企谷「分かった」
由比ヶ浜「うん! それじゃ、また後で」
比企谷「…………」
比企谷「ああ……また後でな」
スタ スタ スタ…
537: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:00:06 ID:CT7X0ygg
由比ヶ浜「…………」
最初から……
由比ヶ浜「…………」
勝ち目なんて無かったのかな……
由比ヶ浜「…………」
ううん……そうじゃないよね
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「いい景色……」
538: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:01:03 ID:CT7X0ygg
由比ヶ浜「天気もいいし、空気も澄んでて、遠くまで見渡せるし」
由比ヶ浜「…………」
後悔はない……と思う。
私は、私の思う様に行動して
自分の気持ちをヒッキーに伝えたんだから。
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「……これで」
由比ヶ浜「…………」
由比ヶ浜「OK……もらえたら……」
由比ヶ浜「最高……だった……の、にな……」
539: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:01:59 ID:CT7X0ygg
そして……ヒッキーもそれに対して
本当の想いを、気持ちを、返してくれた。
だから……
由比ヶ浜「……っ……ふぐっ……くっ……」
由比ヶ浜「うあっ……ああっ……あああああああああっ……!」
由比ヶ浜「ぁ……ああああああああっ……ひっ……ぐっ……」
由比ヶ浜「……うっ……うっ……うあっ……あああっ…………!」
540: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:03:08 ID:CT7X0ygg
すごく悲しいけど
とんでもなく痛いけど
経験した事ないくらい辛いけど
由比ヶ浜「うああああああああああああああああっ……!」
由比ヶ浜「ひぐっ……ああああああ……ああああああああああっ……!」
由比ヶ浜「ヒッ、キー……! ああああああああああああああああああっ……!」
由比ヶ浜「うあっ……ひぐっ……っ………ああっ………!」
由比ヶ浜「あああああああああああああああああああああああっ……!」
由比ヶ浜「ひっ……ひぐっ……うああっ……あああああああっ……」
541: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:04:12 ID:CT7X0ygg
私は……ヒッキーを好きになって
良かったって思える。
だって、それは……
542: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:05:17 ID:CT7X0ygg
私を……ちゃんと見てくれたという事なのだから
543: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:06:04 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
バス車内
ブロロロロロッ…
比企谷(…………)
比企谷(……今頃)
比企谷(泣いているんだろうか……由比ヶ浜)
比企谷(…………)
比企谷(……由比ヶ浜の事)
比企谷(泣かせてばかりだな……俺……)
544: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:07:23 ID:CT7X0ygg
俺は、俺の気持ちを出来るだけ簡潔に
だが容赦なく由比ヶ浜にぶつけた。
やんわりと断る事も考えたが……
でもそれは由比ヶ浜は元より、何においても
自分の為にならないと判断した。
これでいいのかどうかなんて
もちろん分かる訳もない。
……だけど
545: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:08:28 ID:CT7X0ygg
完全に間違いだとも思えなかった
546: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:09:45 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
午後
八十稲羽駅
一同「…………」
由比ヶ浜「……え~っと」
由比ヶ浜「み、みんな。 見送りに来てくれてありがとう」
里中「う、うん。 当然じゃん?」
天城「む、向こうでも、元気でね」
花村(……いいか、クマ)
花村(どうして目が腫れてるの?とか、野暮なツッコミ、絶対入れんなよ……?)
クマ(ヨ、ヨースケ……そんなに睨まなくてもわかるクマよ)
白鐘「…………」
547: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:10:49 ID:CT7X0ygg
比企谷「…………」
りせ(比企谷先輩も泣いた感じがある……)
りせ(どんな話をしたのかな……?)
陽乃「…………」
雪ノ下「…………」
まもなく、1番線に停車中の列車が発車いたします
黄色い線の内側へと……
里中「あ……そろそろ時間だね?」
天城「それじゃあね、由比ヶ浜さん」
548: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:11:42 ID:CT7X0ygg
クマ「ユイちゃん、また遊びに来て欲しいクマ!」
花村「今度は本格的に遊ぼうぜ! 由比ヶ浜さん!」
白鐘「お元気で」
りせ「またね、由比ヶ浜さん」
陽乃「じゃ、向こうでも元気でね」
雪ノ下「……元気でね、由比ヶ浜さん」
比企谷「…………」
比企谷「……またな、由比ヶ浜」
由比ヶ浜「うん!」
由比ヶ浜「みんな、また会おうね!」
由比ヶ浜「じゃ!」
549: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:12:48 ID:CT7X0ygg
プシュー バタン☆
ガタンゴトン ガタンゴトン…
一同「…………」
花村「行っちまったな……」
比企谷「……ああ」
花村「…………」
花村「さて……と」
花村「ちょいと腹減ったな。 おい、クマ」
花村「愛屋でラーメンでも食わねーか? 一杯だけなら おごってやるぜ?」
クマ「ご馳走になるクマ!」
550: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:13:25 ID:CT7X0ygg
里中「雪子、あたしらも喫茶店でお茶でも飲まない?」
天城「うん。 そんな気分かも」
りせ「あたしも付き合っていいですか?」
天城「いいよ、りせちゃん」
花村「じゃあな、比企谷」
里中「またね、白鐘くん、雪ノ下さん」
比企谷「……お、おう」
白鐘「え……あ、はい」
陽乃「さて、私もジュネスに寄っていこうかな」
陽乃「じゃあね、雪乃ちゃん」
雪ノ下「え?」
雪ノ下「…………」
551: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:14:09 ID:CT7X0ygg
ゾロ ゾロ ゾロ…
比企谷「…………」
白鐘「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「……帰るわ」
白鐘「そ、そうですね」
雪ノ下「……じゃ」
白鐘(……由比ヶ浜さん)
白鐘(泣き腫らしていたけど、とても清々しい笑顔だった)
白鐘(…………)
白鐘(僕には……どんな答えをくれるのだろう)
白鐘(比企谷先輩)
552: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 20:16:15 ID:CT7X0ygg
ちょっと急用が……すみません、中断します。
553: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:03:37 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
夕方
鮫川河川敷公園
スタ スタ スタ…
比企谷「待たせたな、白鐘」
白鐘「いえ」
白鐘「僕も今来たところです」
比企谷「そうか……」
比企谷「良かったら飲むか?」
比企谷「缶コーヒー買ってきた」
白鐘「いただきます」
554: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:04:54 ID:CT7X0ygg
ズズッ…
白鐘「……ふう」
比企谷「…………」
白鐘「あの……甘いものがお好きなんですか?」
比企谷「ん?」
白鐘「この缶コーヒー、甘めなので」
比企谷「確かに好きだが……MAXコーヒーに一番近い味なんでな」
白鐘「MAXコーヒー?」
比企谷「俺好みの素晴らしい缶コーヒーだ」
比企谷「残念ながら八十稲羽には売っていなかったので、それを飲んでる」
比企谷「まさかジュネスにも置いていないとは……誤算だった」
555: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:05:59 ID:CT7X0ygg
白鐘「へえ……勝手なイメージなんですが」
白鐘「比企谷先輩はブラックコーヒーを好まれると思っていました」
比企谷「ブラックも飲めなくはないが……」
比企谷「人生は苦い事の連続だから、コーヒーくらい甘くてちょうどいいんだよ」
白鐘「ははは……言い得て妙ですね」
白鐘「なんだか不思議な説得力があります」
比企谷「今度、本物のMAXコーヒーを飲ませてやる」
比企谷「疲れた時に飲むと、最高に旨いぞ」
白鐘「ふふっ、楽しみにしておきます」
比企谷「…………」
白鐘「…………」
556: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:06:53 ID:CT7X0ygg
比企谷「それで、話なんだが」
白鐘「はい」
比企谷「俺は……」
比企谷「…………」
比企谷「白鐘の気持ちを受け入れる事はできない」
白鐘「…………」
白鐘「……そうですか」
比企谷「…………」
白鐘「理由を聞いてもいいでしょうか?」
比企谷「…………」
557: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:07:53 ID:CT7X0ygg
比企谷「俺の心が求めているのは、白鐘じゃないからだ」
白鐘「…………」
比企谷「…………」
白鐘「はっきり……言いますね」
比企谷「…………」
白鐘「でも……」
比企谷「…………」
白鐘「僕は……あなたのそういう所」
白鐘「好きです」
比企谷「…………」
558: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:08:53 ID:CT7X0ygg
白鐘「やっぱり……初めてだからでしょうか」
白鐘「僕は……上手くやる事が出来なかった」
比企谷「バカ言うな」
白鐘「え……」
比企谷「上手いか、下手か、なんて些細な事だ」
比企谷「異性を好きになるなんて、どんな奴でもある事だしな」
比企谷「だが……」
白鐘「…………」
比企谷「それを相手に伝えられるかどうかは、大きな差ができる」
白鐘「……!」
559: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:10:05 ID:CT7X0ygg
比企谷「お前は……立派に伝えた」
比企谷「だからこそ、俺は……」
比企谷「答えをはっきりと返さなくてはいけないと思った」
白鐘「…………」
比企谷「…………」
白鐘「…………」
白鐘「……ひとつ、聞かせてください」
比企谷「なんだ?」
白鐘「比企谷先輩とは比べ物になりませんが……」
白鐘「この『痛み』に……どう対処したらいいでしょう……」
比企谷「…………」
560: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:11:25 ID:CT7X0ygg
比企谷「……それは人それぞれだと思うが」
比企谷「俺は……泣く事しか出来なかったな」
白鐘「そうですか……」
比企谷「…………」
白鐘「…………」
比企谷「最後に言っておくが」
白鐘「…………」
比企谷「きっとその『痛み』は無駄にならない」
比企谷「必ず『何か』の役に立つと思う」
比企谷「ソースは俺」
白鐘「…………」
白鐘「ふふっ……そうですね。 きっと……」
561: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:12:29 ID:CT7X0ygg
比企谷「…………」
白鐘「…………」
比企谷「それじゃ白鐘」
比企谷「またな」
白鐘「……ええ、また」
白鐘「MAXコーヒー、楽しみにしてます」
比企谷「……ああ」
スタ スタ スタ…
白鐘「…………」
白鐘(……予想していたじゃないか)
白鐘(こうなる可能性は……)
562: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:13:16 ID:CT7X0ygg
原因を考えればキリがない。
出会った時期
知り合ってから過ごした時間
気持ちの伝え方……そして
563: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:14:06 ID:CT7X0ygg
僕自身の経験の無さ
564: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:15:36 ID:CT7X0ygg
白鐘「…………」
それらを全て上回っているであろう由比ヶ浜さんですら
彼の隣に居る事を許してもらえなかった。
僕に……勝ち目なんてある訳が……
白鐘「…………」
いや……そんなのは言い訳に過ぎない。
比企谷先輩は、はっきりと『求めている』のは僕じゃないと言った。
恐らく、由比ヶ浜さんにもそう言ったのだろう……
白鐘「……っ」
565: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:16:42 ID:CT7X0ygg
……けど
566: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:17:34 ID:CT7X0ygg
白鐘「……うくっ……くっ……」
白鐘「……うっ……ぐっ……くっ……ひぐっ……」
白鐘「ひっく……くっ……うぐっ……うあっ……」
白鐘「………ふ……ぐっ………く……」
白鐘「うっ………くっ……ひぎっ……」
白鐘「…………はっ……」
白鐘「……うぐっ……ぐっ……はっ……っ……あぐっ……」
白鐘「……ひぐっ……うっ……うぐっ……ぎっ……ぐっ……」
567: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:18:33 ID:CT7X0ygg
やっぱり……僕は……
それでも、僕は……
568: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:19:34 ID:CT7X0ygg
あなたの隣で、笑っていたかった……
569: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:20:32 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
夜
天城屋 玄関ロビー付近
天城「あら? 比企谷くん?」
比企谷「……今晩は、天城」
天城「…………」
天城(何か……辛そうな顔してるな)
天城「それで、今時分どうしたの?」
比企谷「良かったら、雪ノ下を呼んできて欲しい」
天城「!」
570: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:21:27 ID:CT7X0ygg
比企谷「……ケータイ、かけてみたけど繋がらなくてな」
比企谷「頼めるか?」
天城「うん。 わかったよ、比企谷くん」
天城「ちょっと待ってて」
スタ スタ スタ…
比企谷「…………」
―――――――――――
天城「…………」
コン コン
天城「雪ノ下さん、居るかな?」
雪ノ下「天城さん? 何かしら?」
天城「今、玄関ロビーに比企谷くんが来てるの」
571: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:22:17 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「…………」
天城「……もう言わなくても分かると思うけど」
天城「雪ノ下さんに会いに来たって……」
雪ノ下「…………」
天城「…………」
天城「ケータイに出ないんだってね、雪ノ下さん」
雪ノ下「…………」
天城「…………」
天城「どうしたの? 雪ノ下さん」
天城「会ってあげないの?」
雪ノ下「…………」
天城「…………」
572: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:23:10 ID:CT7X0ygg
天城「ねえ、雪ノ下さん」
雪ノ下「…………」
天城「比企谷くん……辛そうだったよ」
雪ノ下「…………」
天城「…………」
天城「……そう」
天城「また、同じ事しちゃうんだ」
雪ノ下「……?」
天城「私、千枝から聞いて知っているよ?」
天城「向こうからこっちに転校する 比企谷くんを見送りに来なかった事」
雪ノ下「!!」
573: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:23:59 ID:CT7X0ygg
天城「どうしてそういう行動をとったのかは知らないけど」
天城「比企谷くんは、きっと傷ついたと思う」
雪ノ下「……っ」
天城「雪ノ下さんは、比企谷くんをまた傷つけたいの?」
ガチャ
雪ノ下「…………」
天城「…………」
雪ノ下「……会ってくるわ」
天城「うん」
天城「それが良いと思うよ」
574: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:25:11 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
雪ノ下「……おまたせ、比企谷くん」
比企谷「……おう」
雪ノ下「いったい何の用かしら?」
比企谷「ご挨拶だな……」
比企谷「明日でも良かったんだが、教訓は生かさないといけない」
雪ノ下「何の話?」
比企谷「去年の夏、花村に忠告されたんだよ」
比企谷「『ある日』ってのは、突然来るって……」
雪ノ下「…………」
比企谷「少し話がしたい」
比企谷「どこか、静かな場所で」
雪ノ下「…………」
575: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:25:55 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
雪ノ下「……ここなら、大丈夫だと思う」
比企谷「……よりにもよって、山野アナが泊まったあの部屋かよ」
雪ノ下「懐かしいでしょう?」
比企谷「封印したい記憶が盛りだくさんだ……」
雪ノ下「出たの?」
比企谷「超常現象的な事は何もない」
雪ノ下「じゃあ、何g」
比企谷「いい加減、本題に入らせてくれ」
雪ノ下「…………」
比企谷「よし」
576: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:26:55 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……ねえ」
比企谷「……おう」
雪ノ下「本題とやらはまだ?」
比企谷「もう少々お待ちください……」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
577: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:28:18 ID:CT7X0ygg
比企谷「……よし」
比企谷「最初は……やっぱり外見だな」
雪ノ下「いきなりすぎて良く分からないのだけど」
比企谷「初めて雪ノ下と会った時、噂以上に美少女で驚いた」
雪ノ下「!?」///
比企谷「同時に」
比企谷「俺とは絶対にかかわり合いたくないって顔をされたのも覚えてる」
雪ノ下「…………」
比企谷「平塚に無理やり入部させられて、それも奉仕部とかいう」
比企谷「訳の分からない部活の部長やってるし」
比企谷「なんか、噂とは裏腹な部分もあるんだな、と、しばらくして思った」
雪ノ下「…………」
578: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:29:26 ID:CT7X0ygg
比企谷「……でもよ」
比企谷「俺も……雪ノ下や由比ヶ浜と同じだったんだ」
雪ノ下「…………」
比企谷「あの部室で過ごす時間……悪い気はしていなかった」
比企谷「いや……むしろ居心地がいいとすら感じていた」
雪ノ下「…………」
比企谷「ところが、だ」
比企谷「俺はだんだんと雪ノ下のギャップが鼻につくようになっていった」
雪ノ下「え……」
比企谷「お前の【シャドウ】が言ってたよな?」
579: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:30:54 ID:CT7X0ygg
比企谷「周りは自分を聖女か何かみたいに『勝手な』イメージを抱き」
比企谷「そのイメージに合致しない、というだけで去っていくと」
雪ノ下「…………」
比企谷「何の事はない」
比企谷「俺の心にもそういう気持ちがあったって事だ」
雪ノ下「……そう」
比企谷「…………」
比企谷「もっとも、俺は……」
比企谷「そんな自分が気持ち悪くてしょうがなかった」
雪ノ下「……え?」
比企谷「…………」
580: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:31:50 ID:CT7X0ygg
比企谷「俺は……雪ノ下の事が好きだから」
雪ノ下「っ!?」///
比企谷「その時は素直にその気持ちを受け入れる事が出来なかった」
比企谷「だが、今なら、はっきり言える」
比企谷「雪ノ下を好きでいながら同時に嫌なところに目が行ってしまう事に」
比企谷「自己嫌悪していたのだと」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
比企谷「ここ八十稲羽に来て、事件に関わっていく内」
比企谷「花村達や雪ノ下、由比ヶ浜にも嫌悪する自分が居る事が分かった」
比企谷「みんなもそういうものを抱え、生きてきたんだと、やっと気がつけた」
581: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:32:56 ID:CT7X0ygg
比企谷「俺はもうごまかさない」
比企谷「自分にも、雪ノ下にも、周りにも」
比企谷「俺が、雪ノ下雪乃が好きだという気持ちを」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……バカよ、あなた」
比企谷「…………」
雪ノ下「どうして私なの……」
雪ノ下「私は……あなたを傷つけてばかりいたのに……!」
雪ノ下「何かをすればするほど、あなたの心を踏みつけてきたのにっ……!」
比企谷「…………」
582: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:34:35 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「由比ヶ浜さんは……あなたを一生懸命追いかけていた」
雪ノ下「そして私がいくら考えても分からなかった、あなたの気持ちに気がついた」
比企谷「…………」
雪ノ下「白鐘くんは、いつも真摯にあなたと向き合っていた」
雪ノ下「自分の気持ちに素直に従い、あなたの事を想って行動していた」
比企谷「…………」
雪ノ下「私は……私だけが……」
雪ノ下「あなたを……傷つけて来た……」
比企谷「…………」
雪ノ下「比企谷くんの【シャドウ】が言ってた あなたの過去に出てきた」
雪ノ下「あなたを傷つけてきた人達と同じ様な言葉で……」
比企谷「…………」
比企谷「……まあそうだな」
583: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:36:23 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「…………」
比企谷「正直 あれは面食らったが、同時にあそこまではっきり言われると」
比企谷「かえって清々しかったし、それに」
比企谷「『そう思われてもいい』と思って行動もしていたから」
比企谷「別段 気にする必要もない」
雪ノ下「…………」
比企谷「かつての俺が望んでいた」
比企谷「『誰からも好かれる人間』なんてものになる事は不可能だし」
比企谷「それに……」
比企谷「お前は、俺を傷つけている『だけ』じゃなかっただろ?」
雪ノ下「……!」
584: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:37:38 ID:CT7X0ygg
引き合いに出すのは良くないが……
きっと由比ヶ浜は、近すぎて
白鐘は、逆に遠すぎたんだと思う。
そういう事なのだと俺は感じている。
もちろんこれは俺のわがままで、彼女たちの責任じゃない。
俺にとって……雪ノ下がいつもいい距離でいてくれた。
そして……居て欲しい時にそばに居てくれた。
585: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:38:41 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「……でも、それは」
雪ノ下「私一人の力で出来たわけじゃない」
雪ノ下「それに……そうする事以外、思いつけなかったからにすぎないわ」
比企谷「……そうか」
比企谷「なら、雪ノ下」
雪ノ下「え?」
比企谷「お前の気持ちを聞かせてくれ」
雪ノ下「!!」
586: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:39:59 ID:CT7X0ygg
比企谷「もう一度言うが、俺は雪ノ下雪乃が好きだ」
比企谷「腐った魚の目だの何だのと容赦のない罵倒してくるが」
比企谷「博学なくせして妙に負けず嫌いだったり」
比企谷「物事に対して加減を知らず、常に120%力を出して倒れこんだり」
雪ノ下「…………」
比企谷「それでいてアドリブが効かず、慌ててトチってしまうところや」
比企谷「姉に対するコンプレックスは人一倍大きかったり……」
雪ノ下「…………」
比企谷「ふと見たら可愛いもの見てにやけてて」
比企谷「とんでもなく可愛い一面を見せてくれたり……」
雪ノ下「…………」///
587: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:41:36 ID:CT7X0ygg
比企谷「そういった欠点や美徳も含め、雪ノ下雪乃という存在が」
比企谷「俺は好きだ」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「よくもまあ、そんな歯の浮く様な口説き文句が出てくるわね」
比企谷「俺もそう思う」
雪ノ下「だったら、少しは改善する努力をしなさい」
比企谷「時間がなくてな」
雪ノ下「……そう」
比企谷「…………」
雪ノ下「話を要約すると」
雪ノ下「あなたを普段から容赦のない罵倒をする私と……その」///
雪ノ下「か、彼氏、か、彼女の……関係になりたい、と、いう事で……いいのかしら?」///
比企谷「ああ。 それで合っている」
588: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:42:45 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……あなたは、本当にバカなのね」
比企谷「否定はしない」
比企谷「由比ヶ浜や白鐘からの告白を断る、なんていう」
比企谷「もったいないお化けどころか、もったいない魔王すら真っ青になる行動をとったからな」
雪ノ下「本当に……バカよ」
雪ノ下「もう……これ以上……あなたを傷つけない様にしようと思ってたのに」
雪ノ下「結局……あなたの最大のトラウマである告白までさせてしまったのだから」
比企谷「…………」
589: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:43:46 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「私には……その価値がある?」
比企谷「お前が考えてる以上にな」
雪ノ下「いつか、また傷つけられて後悔する事になるかも知れないわ」
比企谷「逆もアリアリだと思え」
雪ノ下「それは想像できない」
比企谷「え? なにその上から目線?」
雪ノ下「ふふっ……」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「私は……私の気持ちは――」
590: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:45:20 ID:CT7X0ygg
やっぱり……ずるい気がする。
私は、由比ヶ浜さん程の努力もせず
白鐘くんくらいの慎重さも無く
告白の勇気すら持てなかった。
そんな私が……私の想いが報われるなんて
おかしいし、間違っている。
591: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:46:06 ID:CT7X0ygg
でも……
592: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:47:16 ID:CT7X0ygg
彼の告白は嬉しくて
罪悪感はあったけど……
由比ヶ浜さんや白鐘くんの顔がチラついたけど……
593: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:48:19 ID:CT7X0ygg
それでも、私は
594: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:49:13 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「比企谷くんを……比企谷くんの事が」
どうしようもないくらいに
断ち切る事なんて出来ないくらいに
雪ノ下「……好きです」///
比企谷「!!」
比企谷「…………」///
比企谷「そ、そうか……」///
比企谷「よ……はうっ……」
フラッ……ドササッ!
595: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:50:05 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「ひ、比企谷くん!?」
比企谷「わ、悪い……」
比企谷「なんか、急に体中の力が抜けた……」
雪ノ下「大丈夫?」
比企谷「たぶん……」
カタカタカタ…
雪ノ下「……凄く震えてるけど、本当に大丈夫なのかしら?」
比企谷「……たぶん」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「そんなに……緊張してたの?」
比企谷「…………まあ、な」///
596: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:51:35 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「ふふっ……」
雪ノ下「本当にあなたってバカね」
比企谷「……しょうがねーだろ」
雪ノ下「OKの勢いで、押し倒されるかと思ってたわ」
比企谷「それこそアホか、出来るわけねーだろ……」
比企谷「ぼっち歴の長い俺にとって」
比企谷「準備運動なしで北極海に飛こめと言ってるのと同義だ」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「なら……」
ギュッ…
比企谷「!」///
雪ノ下「このくらいなら耐えられる?」
597: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:52:29 ID:CT7X0ygg
比企谷「余裕かましやがって……」///
雪ノ下「嫌なの?」
比企谷「……最高です」///
雪ノ下「どんな風に?」
比企谷「いい匂いがして、落ち着きます」///
雪ノ下「変態ね」
比企谷「ええ、そうですとも。 変態ですとも。 肯定しますとも」///
比企谷「大好きな雪ノ下雪乃の匂いですからね」///
雪ノ下「…………」
比企谷「……雪ノ下?」
雪ノ下「私も……変態ね」
雪ノ下「あなたの匂い、大好きよ」///
598: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:53:35 ID:CT7X0ygg
……こうして俺と雪ノ下は
お互いの気持ちを確かめ合い、付き合う事になった。
そこ。 ムードが無いとか、超特急展開とか言わない。
八幡さん、いっぱいいっぱいだったんです……
事情も知り、いち早くそれを見破った天城が
里中や他の連中に電話しまくった事は言うまでもない。
……おい、お赤飯はいらないからな?
599: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:54:36 ID:CT7X0ygg
由比ヶ浜と白鐘には、ケータイで俺から直接伝えた。
正直、血を吐きそうな感覚を覚えたが
これもまた俺自身の『けじめ』として、やらなければならないと思い
そうした。
二人共……静かに
『おめでとう』と言ってくれた。
おっと……もちろん可愛い妹の小町と
マイベストフレンド・戸塚にも伝えた。
材木座? そんな奴知らん。
600: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:55:45 ID:CT7X0ygg
それからの俺と雪ノ下だが……
まあ、何て言うか、しばらくぎこちない感じが続いた。
なぜかって?
お互い男女交際の経験なぞ皆無だからである。
やりたいな、と思う事はいろいろあるのだが
それをする為にいちいち時間がかかってしまう。
こらそこ。 決してエロい事じゃないからな?
601: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:57:08 ID:CT7X0ygg
ああ、それと……周りが俺たち以上に歯がゆかったみたいで
花村は何かに付け『リア充見せつけんな! 羨ましい!』とか言うし
里中達は『キスくらい済ませた?』とか聞いてくる。
……やっとこさ手をつないだくらいです。
でも……そんなぎこちなさも、周りの反応も
何か新鮮で楽しく感じてしまう自分がいた。
八幡さん、いつの間にか悟っちゃいましたか……
602: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:58:06 ID:CT7X0ygg
後は……【マヨナカテレビ】
『渚』も居なくなり、俺が『作った』というテレビの世界の影響か
もう映ることは無くなっていた。
本当の意味で事件は解決したと言える。
そして……
603: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:58:53 ID:CT7X0ygg
三学期も終わり、八十稲羽を後にする日が来たのだった
604: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 21:59:46 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
3月21日 午後
八十稲羽駅 駅前
比企谷「ふう……」
花村「お、来たな比企谷」
比企谷「そりゃ来るだろ」
比企谷「切符代、無駄にしたくないし」
花村「へへっ、相変わらず変わんねーな、お前!」
クマ「センセイ、ずっとこっちにいればいいクマに……」
比企谷「悪いな、クマ」
605: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:00:39 ID:CT7X0ygg
堂島「お、もう来てたのか、比企谷くん」
比企谷「堂島さん。 お世話になりました」
堂島「ま……言われるほど世話をした覚えは無いがな」
堂島「足立の事は任せてくれ」
菜々子「お兄さん、こんにちは」
鳴上「こんにちは」
比企谷「菜々子ちゃんに鳴上まで見送りに来てくれたのか」
比企谷「ありがとう」
菜々子「ううん。 菜々子の方こそありがとうです」
菜々子「雪乃お姉さん達と一緒に遊べて楽しかった!」
鳴上「良かったな、菜々子」
ハハハ……
606: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:01:42 ID:CT7X0ygg
里中「おー、何か盛り上がってるじゃん?」
天城「こんにちは、比企谷くん」
りせ「とうとう今日が来ちゃったね……」
りせ「ちょっと寂しいかも」
白鐘「その気になれば、いつでも会いに行けますよ」
比企谷「みんなも来てくれたか」
比企谷「ありがとう」
白鐘(……正直言うと、僕は少し迷いましたが)
白鐘(やっぱり、あなたを見送りたかった)
白鐘(いけないな……まだ引きずっているのか、僕は)
607: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:02:51 ID:CT7X0ygg
天城「何だかあっという間だったね……」
里中「『渚』を倒してから、ホントそんな感じ」
花村「さ、里中さん? 今は……ほら堂島さんとか、いらっしゃいますし……」
里中「おっと……そうだったじゃん」
堂島「ん? 俺が何か?」
花村「いえいえ、お世話になったな~って話してて」
堂島「ふん……まあ、そういう事にしておこう」
堂島「俺も無粋な真似はしたくないしな」
花村「ははは……」
花村(やっぱ凄みがある人だな……)
りせ「……あれ?」
りせ「そういえば雪ノ下先輩は?」
クマ「そういえば遅いクマね?」
608: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:03:41 ID:CT7X0ygg
里中「また来なかったりして?」
比企谷「それはない」
比企谷「仮にあったとしても、よっぽどの理由ができたんだろうさ」
天城「お~……」
りせ「信頼されてるなぁ」
花村「くそっ……羨ましいっ」
クマ「ヨースケ……みっともないクマ」
花村「うっせーよ!? お前に言われたくないっての!」
ハハハ……
609: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:05:01 ID:CT7X0ygg
ブロロロロロ…… キキィ
陽乃「お待たせ~比企谷くん♪」
陽乃「お待ちかねの雪乃ちゃんだよ?」
雪ノ下「ね、姉さん……」///
比企谷「そ、そういうのやめてください。 割とマジで」///
陽乃「んふふー♪」
花村(相変わらず見計らったように登場する人だな……陽乃さん)
里中(でも嬉しそうじゃん。 比企谷くん)
天城(ちょっと羨ましいかも……)
りせ(普段も結構ラヴラヴしてるしなぁ)
白鐘(……目を背けるんじゃない、僕)
610: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:06:13 ID:CT7X0ygg
クマ「……?」
クマ「ユキノン、その荷物は何クマ?」
雪ノ下「私の荷物だけど?」
里中「え? どこかに出かけるの?」
雪ノ下「出かけるも何も……比企谷くんと同じ電車に乗って帰るのだけど?」
一同「」
菜々子「?」
雪ノ下「……どうかしたのかしら?」
比企谷「えーっと……とりあえず言っておくが」///
比企谷「俺は何も聞いてませんよ?」///
611: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:07:44 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「……姉さん?」
陽乃「うふふ、ごめんね~?」
陽乃「秘密にした方が絶対面白いと思って♪」
里中「うわ……本当に一緒に帰るんだ」
天城「二人っきりで……」
白鐘(……耐えるんだ、僕)
りせ「まあこの二人だし、ある意味自然かも」
花村「普段からバカップル丸出しだからな」
比企谷「どこがだ。 俺たちは清い交際を行っている」
菜々子「お兄ちゃん。 ばかっぷるって、どういう意味?」
鳴上「見ていてイライラしてしまう程の仲y」
堂島「悠! 真面目に答えるんじゃない!」
堂島「菜々子には早すぎる単語だ!」
612: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:08:55 ID:CT7X0ygg
花村「まあ何にしてもこれで『さよなら』とは思わねぇぜ、俺」
花村「今年のGWとかさ、こっちに来いよ」
花村「いや、むしろ、俺らがそっちに行くってのもアリだよな!」
里中「おお、花村にしちゃいいこと言うじゃん?」
天城「どっちにしても、楽しそうだよね♪」
りせ「うんうん! 集まって楽しく騒ごう!」
白鐘「いいですね、それ」
比企谷「そうだな。 俺も同じ気持ちだ」
雪ノ下「予定が決まったら連絡するわ」
ハハハ……
鳴上「そろそろ時間じゃないのか?」
里中「あー……もうそんな時間かぁ」
天城「名残惜しいね……」
613: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:10:04 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
駅のホーム
花村「それじゃまたな、比企谷」
比企谷「ああ、またな。 花村」
クマ「センセイ。 あの世界の事はクマに任せるクマ!」
比企谷「頼んだぞ」
クマ「何かあったら連絡するクマ」
里中「由比ヶ浜さんにもよろしくね、雪ノ下さん」
天城「みんなで一緒に楽しく騒ごうって、言っておいてね」
雪ノ下「もちろんよ」
614: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:11:07 ID:CT7X0ygg
まもなく、1番線に停車中の列車が発車いたします
黄色い線の内側へと……
りせ「あ、もう電車が出ちゃう……」
鳴上「向こうでもお元気で」
菜々子「元気でね、お兄さん、お姉さん!」
比企谷「ありがとう、鳴上、菜々子ちゃん」
雪ノ下「そちらもお元気で」
花村「必ず、近い内にまた会おうぜ!」
鳴上「機会があれば、俺も」
白鐘「僕も楽しみにしてます」
比企谷「もちろんだ」
比企谷「必ず、また会おう!」
615: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:12:29 ID:CT7X0ygg
プシュー バタン☆
ガタンゴトン ガタンゴトン…
一同「…………」
花村「……行っちまったな」
里中「……うん」
天城「それにしても……なんか、さ」
天城「気分的にハネムーンを見送った気が……」
りせ「あ! それそれ!」
りせ「あたしもそんな気がした!」
花村「ははは……俺だけじゃなかったか。 そう思ったの」
616: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:13:34 ID:CT7X0ygg
白鐘(……へこみます) シクシク…
菜々子「はねむーん??」
鳴上「結婚した男女が……」
堂島「だから早すぎるから、真面目に答えるんじゃない!」
里中「あの二人、上手くいくかな?」
天城「今のところ、心配はないと思うな」
りせ「意外と……由比ヶ浜さんが、いろいろ仕掛けたりして」
里中「ドロドロしそうだからやめなさいよ、そういうの……」
天城「でも、ちょっと興味あるなぁ」
里中「雪子!?」
ハハハ……
陽乃「…………」
617: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:15:30 ID:CT7X0ygg
―――――――――――
電車内
比企谷「よっ……と」
雪ノ下「あ、私の荷物も金網に上げてもらえるかしら?」
比企谷「おう、いいぞ」
ドサドサ
比企谷「ふう……」
雪ノ下「ありがとう」
比企谷「どういたしまして」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
618: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:16:47 ID:CT7X0ygg
比企谷「それにしても……」
比企谷「なんで電車で帰ろうと思ったんだ?」
雪ノ下「私と帰るのは不服?」
比企谷「一言も言ってねーだろ……」
雪ノ下「そうとしか聞こえないのだけど?」
比企谷「ともかく、事前に言っておいてくれ……心臓に悪い」
雪ノ下「お年寄りじゃあるまいし……」
比企谷「弁当とかおやつとか、雪ノ下の分が準備できないだろ?」
雪ノ下「……今回に限り、姉さんに言ってくれないかしら?」
比企谷「ごめん。 そりゃ無理だわ」
雪ノ下「そうでしょう? ふふっ」
619: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:17:58 ID:CT7X0ygg
ガタンゴトン ガタンゴトン…
雪ノ下「ねえ……」
比企谷「ん?」
雪ノ下「比企谷くんは、『渚』……ううん」
雪ノ下「イザナミとイザナギについて、どう思う?」
比企谷「どう……とは?」
雪ノ下「説明が足りなかったわね」
雪ノ下「神話のイザナミとイザナギの事」
比企谷「ああ……そういう事か」
雪ノ下「自分のペルソナと同じ名前だし……少し調べたりしたわ」
比企谷「実を言うと俺もだ」
雪ノ下「どう思ったのかしら?」
620: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:19:16 ID:CT7X0ygg
国生みの二神の神話
むかしむかし、あるところに仲睦まじい
男神イザナギと女神イザナミがおりました。
しかし、ある日。
女神イザナミは子供を産んで死んでしまう。
それを男神イザナギは たいそう悲しみ、暗い黄泉の国に行って
そこの住人になっていた女神イザナミを連れて帰ろうとした。
621: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:21:03 ID:CT7X0ygg
女神は、黄泉の国の神に頼んでくるから待っているようイザナギに言うが
イザナギは我慢できず、女神の様子を見に行ってしまう。
だがそこに居たのは、全身に蛆虫が沸いた、変わり果てた姿の女神だった。
恐ろしくなったイザナギは、その場を逃げ出し
それに気がついた、女神イザナミは怒り狂って追いかける。
追いつかれそうになるもイザナギは、何とか現世に戻り
この世とあの世を結んでいた洞窟の出入り口を大岩で塞ぎ
追いついてきた女神イザナミに別れを告げたのだった……
622: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:22:19 ID:CT7X0ygg
比企谷「まあ、何て言うか……」
比企谷「両方とも望んだ事でない結果に終わらせてしまったな」
雪ノ下「……そうね」
比企谷「イザナギは……妻であるイザナミを心底愛していた」
比企谷「でも何の代償もなく、死んでしまったイザナミが帰ってくると思い込んでいた」
比企谷「そこに隙があったな」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「イザナミは……きっと迎えに来てくれて喜んだと思う」
雪ノ下「黄泉の国の神に何をお願いしようとしたのか分からないけど」
雪ノ下「蛆虫が湧いた姿で帰る事は望まなかったと思うわ」
比企谷「…………」
623: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:23:32 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「きっと……怒り狂ったのは」
雪ノ下「見られたくない姿を好きな人に見られて、我を忘れたからじゃないかしら」
比企谷「…………」
比企谷「かもしれないな」
雪ノ下「…………」
比企谷「イザナギが約束を破ってしまったのも」
比企谷「暗い黄泉の国、という気味の悪いところから」
比企谷「出来るだけ早く妻を連れて去りたかった、というのがあったのかもしれない」
雪ノ下「…………」
雪ノ下「そうかもしれないわね……」
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
624: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:24:59 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「”こんな酷い仕打ちをするのなら”……」
比企谷「!」
雪ノ下「”私は、あなたの国の人間を一日1000人殺します”」
比企谷「…………」
比企谷「”ならば……”」
比企谷「”俺は一日に1500の母屋を建てよう”」
比企谷「”1000が死のうとも万が生まれてくる”」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
雪ノ下「……ぷっ」
比企谷「……くくっ」
ハハハハハハ……
625: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:26:13 ID:CT7X0ygg
だけど――
それでも――
626: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:27:12 ID:CT7X0ygg
俺は――
私は――
627: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:28:23 ID:CT7X0ygg
お前の事が――
あなたの事が――
628: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:29:23 ID:CT7X0ygg
大好きです――
629: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:30:54 ID:CT7X0ygg
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―――
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―――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――
630: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:31:55 ID:CT7X0ygg
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―――――――――
―――
―
約1ヶ月後
631: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:33:11 ID:CT7X0ygg
総武高校 奉仕部部室
比企谷「…………」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「…………」
比企谷「……今日もヒマだな」
雪ノ下「平和でいい事じゃない」
由比ヶ浜「先週は忙しかったよね~」
比企谷「忙しいっつーか……」
比企谷「まさか材木座の小説もどきを 3本も読ませられるとは思わなかった……」
雪ノ下「相変わらずの誤字脱字と稚拙な文章だったわね……」
由比ヶ浜「私、もうどんな内容だったか忘れちゃった……」
比企谷「俺は少し覚えてるぞ」
632: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:34:33 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「八幡、当ててみましょうか?」
雪ノ下「あれでしょ? スキーのシーン」
比企谷「……雪乃はニュータイプかよ」
雪ノ下「あれって絶対、私たちとのスキーを参考に描いたものよね」
由比ヶ浜「あ~……冬休みの時の」
由比ヶ浜「私も行きたかったなぁ」
雪ノ下「私は……先週の事といえば」
雪ノ下「八幡の浮気ね」
比企谷「おいこら、人聞きが悪すぎだろ」
由比ヶ浜「あははっ! あれね~」
由比ヶ浜「まさかヒッキーが本気ラブレター貰うなんてね~」
633: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:36:14 ID:CT7X0ygg
新学期が始まって俺たちは3年生になった。
今年は、いよいよマジで進路を決めなくてはならない重要な年。
節目の年を超えても次の節目が早くも来ちゃいましたよ……
俺と雪乃は、春休み中2回程デートして
お互いの呼び名が名前になっていた。
……まあ映画見て図書館に行っただけですけどね。
おっと、買い物もお付き合いしましたよ、と……
634: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:37:30 ID:CT7X0ygg
新学期に入って、初めて登校した時
「やっはろー!」という耳慣れた変わった挨拶にびくついた。
はっきり言って、どう顔を突き合わせればいいのか悩んでいたからだ。
だが由比ヶ浜は、俺と雪乃が戸惑うくらいナチュラルに声をかけてきた。
正直……動揺はしたが、まあ由比ヶ浜なりの気遣いだと思うことにし
彼女は今日も元気に奉仕部部員として活動している。
635: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:39:14 ID:CT7X0ygg
……ん? ラブレター?
まあはっきり言って、99,9999%イタズラだと思ったのだが
なんと0,0001%の奇跡が起こりました。
ラブレターをくれたのは、今年入学した1年生の女子で
まーこれが、初々しいのなんのって……なんといっても小町と同い年だし
……雪乃さん、睨まないでください。
結果? もちろん断りましたとも。
彼女いる歴が約2ヶ月程度の元ぼっちに二股なんて出来る訳が……
あ、いえ。 雪乃という素晴らしい彼女がわたくしに居りますので。
636: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:41:16 ID:CT7X0ygg
コン コン
比企谷「ん? 誰か来たか」
雪ノ下「どうぞ。 入ってください」
ガララッ
由比ヶ浜「ようこそ、奉仕部へ!」
由比ヶ浜「依頼は何か……な…?」
ゾロ ゾロ ゾロ…
由比ヶ浜「え……? あれ?」
比企谷「……!」
雪ノ下「……え?」
雪ノ下「これは……どういう事なの?」
637: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:43:09 ID:CT7X0ygg
部室に入ってきたのは全部で3人だった。
1人は全く知らない顔
肩くらいまである茶髪のストレートで、何だかおどおどした様子
顔立ちは無難に可愛いく、なかなかのスタイルの女生徒だ。
もう1人は……見覚えはあるのだが思い出せない。
背中くらいまであるウェーブがかった黒髪で
特筆すべきなのは胸。 間違いなく由比ヶ浜より大きいぞ、この女生徒。
最後の1人はよく知っている顔だった。
どうしてここにいる? 何か事件でも起こったのか?
638: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:45:09 ID:CT7X0ygg
比企谷「白鐘!?」
白鐘「お久しぶりです、比企谷先輩」
雪ノ下「どうしてここに……それにこちらの二人は?」
?「何だ? 我が分からんか?」
?「比企谷八幡」 クスッ
比企谷「!?」
比企谷「その声……お前、まさか」
比企谷「『渚』か!?」
渚「ふふ、そうだ。 お前が名付けた『渚』だ」
渚「今は『新宮渚(しんぐう なぎさ)』と名乗っている」
雪ノ下「ど、どうして生きてるの!?」
渚「さあ……我にもわからん」
渚「気がついたら、あの世界に横たわっていたのだ」
639: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:46:25 ID:CT7X0ygg
比企谷「…………」
比企谷「……よし、それはまあいいだろう」
比企谷「ここに来た目的は何だ?」
比企谷「全員、総武高校の制服を着ているのが」
比企谷「わたくし、とっても気になります」
渚「まあそんなに身構えるな。 もう我は何の力も無いただの小娘にすぎん」
渚「ここに来た理由は3人それぞれにあるが……ひとつだけ共通している事があってな」
渚「全員、比企谷八幡が目的だ」
雪ノ下「……なぜかしら」
雪ノ下「私にとって凄く不都合な気がするのだけど」
由比ヶ浜「……目的?」
640: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:47:51 ID:CT7X0ygg
渚「たとえば、我はな」
渚「比企谷八幡の子を宿したいと思っている」
一同「はあっ!?」///
比企谷「待て待て待て! それは別の意味でってオチだよな!?」
渚「いや? 本気でお前の子供が欲しいと思っているぞ?」
比企谷「」
雪ノ下「な、何でそんな事をっ……」
渚「クマから聞いたが、比企谷八幡は」
渚「あの世界に人間が居ない事を憂いておったのだろう?」
渚「だから、我が一肌脱ごうと思ってな♪」
比企谷「脱ぎすぎです」
641: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:49:42 ID:CT7X0ygg
渚「もちろん、それがどういう事なのか、どういう意味合いなのかも理解しておる」
渚「それに……我は誰でもいいという訳ではない」
渚「お前と、お前の子供が欲しいのだ……」///
比企谷(う……可愛い……)///
雪ノ下「待ちなさい! あなた、突然出てきて何を言ってるのかしら!?」
雪ノ下「そもそも【シャドウ】である あなたに子供が産めるかどうかも分からないし」
雪ノ下「お産やその費用、それにその後の生活基盤すらあなたには無いわ!」
渚「ほほう。 それがあれば、そなたも認めるのだな?」
雪ノ下「認めるわけ無いでしょう!?」
由比ヶ浜「そ、そうだよ!」
642: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:51:07 ID:CT7X0ygg
比企谷「し、白鐘!」
比企谷「お前は何をしに来たんだ!?」
白鐘「……表向きはこの2人の監視です」
比企谷「……裏があんのかよ」
白鐘「だ、だって!」
白鐘「僕はまだ、諦めらめきれないんです! 先輩の事!」///
比企谷「」
雪ノ下「」
由比ヶ浜「」
643: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:52:13 ID:CT7X0ygg
白鐘「僕は……考えました。 考えて気がついたんです」
白鐘「先輩には、僕の、ほんの一部しか見せていないって!」///
比企谷「お、落ち着け、白鐘っ!」
白鐘「先輩、どうですか? この女生徒用の制服」
白鐘「似合っていませんか?」
比企谷「あ、ああ。 合っているぞ……」
白鐘「これからは……僕の『女』としての部分を引き出して」
白鐘「先輩にアタックしていきますのでっ」///
比企谷「」
雪ノ下「」
由比ヶ浜「」
比企谷(……頭痛くなってきた)
雪ノ下(……八幡のせいじゃ……いえ、やっぱりせいかしら?)
由比ヶ浜(…………)
644: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:53:24 ID:CT7X0ygg
??「…………」
比企谷「それで……白鐘、こっちの茶髪の娘は誰なんだよ?」
白鐘「……声を聞けばわかりますよ」
雪ノ下「声?」
渚「ほれ、咲霧(さきり)。 挨拶しておけ」
咲霧「あ、はい。 私、天野咲霧(あまの さきり)といいます」(cv中尾○聖)
比企谷「」
雪ノ下「」
由比ヶ浜「……え? 何この声?」
比企谷「ま、まさか……その声……その名前……!?」
比企谷「お前、アメノサギリ?か!?」
645: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:54:51 ID:CT7X0ygg
咲霧「はい」(cv中尾○聖)
由比ヶ浜「ゆきのん、アメノサギリって?」
雪ノ下「後で説明するわ」
雪ノ下「それで……ええと、咲霧?さん」
雪ノ下「八幡にどんな用事があるのかしら?」
咲霧「それは……」(cv中尾○聖)
咲霧「比企谷様が、私を……可愛い私を望まれたからです」///(cv中尾○聖)
比企谷「身に覚えがありませんよ!?」
咲霧「ほら、私に止めを刺すとき」(cv中尾○聖)
咲霧「今度はもっと可愛い姿で生まれてくるんだな……って」(cv中尾○聖)
咲霧「おっしゃってたではありませんか」(cv中尾○聖)
比企谷「」
雪ノ下「……言ったのね?」
646: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:56:28 ID:CT7X0ygg
白鐘「そういうわけで僕たち、これから総武高校に通いますので」
比企谷「はあ!?」
比企谷「いや白鐘はともかく、他の二人は学力とか戸籍とか保護者とか――」
渚「それについては手紙を預かっておる」
雪ノ下「手紙?」
渚「陽乃、という女からだ」
比企谷「」
雪ノ下「」
由比ヶ浜「陽乃さん?」
647: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:58:22 ID:CT7X0ygg
雪乃ちゃんへ
どう? 驚いたかなー?
実は内緒にしてたけど、クマくんに頼んで
私も「あの世界」に行ってたんだ♪
で、そこで渚ちゃんと咲霧ちゃんに出会ってね
彼女たちに事情を聞いて、そういう事なら、と
手を貸すことにしたの。 うふふ♪
ん? どうしてかって?
それはねー
649: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 22:59:59 ID:CT7X0ygg
倦怠期を回避する為だよ♪
ライバル多いとさ、雪乃ちゃんも努力を怠らないでしょ?
比企谷くんを取られまいと頑張るでしょ? だからだよ!
人間て、平和が続くと飽き飽きしちゃうものだから
いい意味で緊張感を持ってもらうためにやったんだ♪
えらい、私! 姉の鏡だね!
ま、そういうわけで、彼女たちの学力と住処と保護者
それに戸籍は私が何とかしました。
それじゃ、雪乃ちゃん。 頑張ってね♡
あなたの姉より♡
650: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 23:01:23 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「」
比企谷「あの人、マジで何者なんだよ!? いろんな意味で!」
渚「という事で比企谷八幡」
渚「さっそく子作りをしようではないか♪」
渚「中出しし放題だぞ?」
由比ヶ浜「学校で何言ってるの!?」///
白鐘「そうですよ!」///
白鐘「もっと……こう、プラトニックな関係になりましょう!」///
白鐘「この僕と!」///
由比ヶ浜「そ、それもダメー!」
由比ヶ浜「私だって隙を伺っているんだから!」
651: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 23:02:32 ID:CT7X0ygg
一同「え」
由比ヶ浜「はっ!?」
雪ノ下「…………」
比企谷「…………」
由比ヶ浜「…………」
雪ノ下「……どういう意味なのかしら?」
由比ヶ浜「あは……は…は……」
雪ノ下「…………」
由比ヶ浜「だ、だって!」
由比ヶ浜「ヒッキー、私の本命チョコ受け取ってくれたんだもん!」
比企谷「なっ!?」
652: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 23:04:16 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「……八幡?」
比企谷「い、いや、あれは、由比ヶ浜のけじめ的なものだと思って!」
由比ヶ浜「それを受け取ってくれたから……私」
由比ヶ浜「きっとまたチャンスが来るって思えたんだから!」
比企谷「ちょ、そんな解釈してたんですか!? 由比ヶ浜さん!?」
渚「そうだな、由比ヶ浜とやら」
渚「最近ではNTRというのも流行っておるらしいしのう♪」
雪ノ下「断じて流行っていません!」
咲霧「まあまあ。 比企谷様も困っておいでですし……」(cv中尾○聖)
比企谷「お前はその声を何とかしてくれ……」
比企谷「口調も手伝って、どうしてもフ○ーザ様に聞こえてしまう……」
653: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 23:05:50 ID:CT7X0ygg
雪ノ下「八幡……どうするつもりなの?」
比企谷「どうすると言われても……」
比企谷「つーか、これ俺のせいなの?」
渚「比企谷八幡♡」
咲霧「比企谷様……」///(cv中尾○聖)
白鐘「比企谷先輩……」///
由比ヶ浜「ねねね、ヒッキー!」///
雪ノ下「…………」 ゴゴゴ…
比企谷「は……はは…は……」
比企谷「……はあ」
654: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 23:07:09 ID:CT7X0ygg
やはり、俺の青春ラブコメは間違っている
655: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 23:08:18 ID:CT7X0ygg
…………
656: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 23:09:23 ID:CT7X0ygg
……でも
657: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 23:10:36 ID:CT7X0ygg
どこか、それを楽しく思える自分がいて
そんな自分は――
658: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/05/25(日) 23:11:53 ID:CT7X0ygg
嫌いじゃなかった
おしまい
比企谷「八十稲羽に転校…え?マジで?…」 3スレ目
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1394614382/)
それに、作者がアニメしか観てないことも分かった。